静電紡糸ナノファイバーの 製造と新規用途開発 九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門 助教 境 慎司 1 研究背景 高電圧を印加 原料溶液 静電紡糸法の特徴 •さまざまな高分子溶液に適用可能 •容易に直径数十~数マイクロメートルの繊維が得られる •繊維径の制御が容易に行える(印可電圧の操作) •紡糸装置が簡便かつラボスケールの装置なら格安で作れる •得られる構造体は不織布 2 静電紡糸法に関する文献数の推移 1600 1400 ナノ繊維 1200 文献数 1000 800 600 400 200 0 1994 静電紡糸 1996 1998 2000 2002 2004 2006 発表年 古くて新しい技術 – 1934年にプラスチックの静電紡糸に関する特許 3 我々の検討対象 バイオに関わる用途にゾル-ゲル法を経て得られるシリカか らなる/シリカを含む静電紡糸ファイバーを利用 1. 無機シリカファイバーを動物細胞培養担体として利用 2. シリカ修飾酵素を含むファイバーを物質生産用反応膜とし て利用 3. 新規バイオ関連用途の開発 4 1. 動物細胞培養担体 動物細胞培養担体 細胞培養ディッシュなどの二次元培養は細胞の形態や機能 が生体内の細胞とは異なることから、生体外で生体内と同 様の三次元細胞を培養する技術が広く求められています。 さらに、実際の利用を考えると ・ オートクレーブで滅菌可能であること ・ 培養中に材料の分解が起こらないこと ・ 細胞の観察が容易であること ・ 細胞を高密度で培養可能であること をいずれも満たす担体は有用性が高い 5 1. 動物細胞培養担体 静電紡糸無機シリカファイバー不織布の特徴 • 数百ナノメートルのファイバーからなり、空隙率は95%以上 • PVA・ポリスチレン・キトサン・ゼラチンなどの静電紡糸不織 布はオートクレーブ滅菌が難しいのに対して、オートクレーブ が可能 • -Si-O-Si-の無機骨格で構成されるため化学的安定性が高い • 繊維径が細く、空隙率も高いため光を透過しやすく光学顕微鏡 でも観察しやすい 2cm 6μm 6 1. 動物細胞培養担体 細胞培養に使用した結果 Fig. ヒト骨芽細胞株 MG63のシリカファイバー上での増殖挙動. 7 1. 動物細胞培養担体 シリカファイバーに熱処理を行うと 未熱処理 200μm 培養1日後 培養14日後 200μm 500度 熱処理 200μm SEM観察写真-培養14日目 200μm 容易に繊維の親疎水性をコントロールできる 8 1. 動物細胞培養担体 想定される用途 ・ 3次元細胞組織化観察実験用担体 ・ 抗体医薬等生産用バイオリアクター用培養担体 ・ 抗ガン剤および各種薬物の代謝シュミレータ用担体 ・ 再生医療用担体 9 1. 動物細胞培養担体 企業への期待 動物細胞の培養に関するニーズを持つ企業との共同 研究を希望 細胞培養担体以外にも広範な応用用途が考えられる 材料なので技術相談・各種問い合わせを歓迎します。 現在の共同研究機関: 福岡県工業技術センター, 日本バイリーン 10 本技術に関する知的財産権 【発明の名称】 ナノファイバーを含む新規スキャフォールド およびその用途 【公開番号】 特許公開2007-319074 【出願人】九州大学, 福岡県 【発明者】境慎司,川上幸衛,山田裕介,山口哲,金沢英一 11 2. 酵素固定化担体 酵素固定化担体 酵素は一般的な化学触媒と異なり,特異性が高く,常温常 圧の緩和な条件下で効率よく反応を触媒することから,食 品,医薬品,化学工業などに広く利用されている。 高価な酵素を再利用しやすくするために行われるのが担体 への固定化である。 http://www.agen.ufl.edu/~chyn/age4660/lect/lect_21/lect_21.htm 12 2. 酵素固定化担体 シリカ修飾リパーゼ包括ファイバー不織布の特徴 ・ 約1μmのファイバーからなり、空隙率は95%以上 ・ リパーゼの周囲には活性化のためのシリカゲルが存在する ・ 裁断によって容易に成形が可能である ・ 従来の固定化担体と比較して基質/生成物の拡散距離が短い 5 μm 13 2. 酵素固定化担体 リパーゼのシリカ修飾 リパーゼ 生体内(水中):脂質の加水分解を触媒 有機溶媒中:エステル合成・交換反応を触媒 基質 疎水的な環境下に置くと lid リパーゼが活性化 アルキル基含有シリカ微粒子 有機溶媒中での反応において 活性の向上, 熱安定性の向上 リパーゼ 14 2. 酵素固定化担体 単位酵素量当たりの反応初速度 [μmol・min-1・mg-1] 性能評価結果 約20倍 約5倍 リパーゼ シリカ修飾 リパーゼ包括 リパーゼ包括不織布 不織布 Fig. 各試料の単位酵素量当たりの反応初速度 15 2. 酵素固定化担体 不織布の特徴を活かした流通型反応器への適用 生成物 不織布(8枚)をホルダーに固定 基質溶液 ポンプ 円形に成形した不織布 16 2. 酵素固定化担体 想定される用途 ・ バイオ燃料製造プロセスへの利用(JSTの受託研究進行中) ・ エステル交換・エステル合成反応による医薬品等の製造 17 2. 酵素固定化担体 企業への期待 現在、リパーゼを使用したプロセスを利用している、 または今後利用してみたいと考えている企業は是非 問い合わせ下さい。 特に将来の事業化に向けたシステムを扱える企業と の共同研究を希望します。 現在の共同研究機関: 福岡県工業技術センター, 日本バイリーン 18 本技術に関する知的財産権 【発明の名称】固定化酵素ナノファイバー及びその製造方法 並びに該ナノファイバーを用いた反応装置 【公開番号】 特許公開2009-5669 【出願人】九州大学, 福岡県 【発明者】境慎司,川上幸衛,安徳浩一,山口哲 19 その他の保有技術 その他の保有技術 【発明の名称】機能性キトサン誘導体、キトサン架橋物、及 びキトサン架橋物の製造方法 【公開番号】特許公開2008-174671 【出願人】九州大学,焼津水産化学工業株式会社 【発明者】境慎司,川上幸衛,山田裕介,渡辺一浩 【発明の名称】多糖質微粒子及び多糖質微粒子の製造方法 【公開番号】 特許公開2008-174510 【出願人】九州大学, 焼津水産化学工業株式会社 【発明者】境慎司,川上幸衛,橋本一郎,渡辺一浩 20 その他の保有技術 フェノール性水酸基導入キトサン 酵素反応前 酵素反応後 ・中性でも可溶 ・ペルオキシダーゼやチロシナーゼの酵素反応でゲル化する (pH7, 室温) ・W/Oエマルションを利用して薬物等包括微粒子も作製可能 21 その他の保有技術 多糖質微粒子の新たな作製法 包括直後 フェノール性水酸基導入高分子溶液 ペルオキシダー ゼを含む液滴 8日後 H2O2が拡散 H2O2を溶解させた有機溶媒 マウスES細胞から得られた胚様体様組織 100μm ・動物細胞でさえも生存を保ったまま微粒子に包括可能 ・タンパク質・水溶性の薬剤なども包括可能かつ有機溶媒中 での微粒子形成のため非常に高い包括率 22 お問い合わせ先 九州大学工学研究院化学工学部門 助教 境 慎司 TEL FAX e-mail 092-802 - 2768 092-802 - 2768 sakai@chem-eng.kyushu-u.ac.jp 23
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