20160818週次レポート

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Precious Metals Weekly Update
18 August 2016
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WEEK IN REVIEW:
リオオリンピックにおいて世界記録が誕生する中、市場では世界的な低金利状態を受けて投資家が大量に米国企業の株式を
買い入れたことで米株指数も同様に過去最高水準に達していた。先週、インターネットバブル期であった 1999 年以来で初めて
同日に 3 つの主要米株式指数(S&P500、ダウ平均株価、ナスダック総合)が夫々過去最高水準に達した。但し、インターネット
バブル期とは異なり、足許の米株買いが旺盛である状況は、一部の投資家の説明し難い動きのみに左右されているものでは
なく、寧ろ日本や欧州に代表されるマイナス圏の国債利回りや低金利といった、米株への投資が促される状況を受けた投資家
の合理的な反応によるものである。先週発表された World Gold Council のレポートによれば、先進国の国債のうち約 40%は
利回りがマイナスとなっている。量的緩和政策の下で中央銀行が純資産の買い増しを拡大させたことで幾つかの優良社債もま
たその利回りがマイナス圏にあるという実情を考慮すると、8 月 15 日付の Financial Times が報じている様に利回りがマイナ
スである債券は現在 13 兆ドル以上に上る。これは利回りを求める投資家の資金を国債から株式へ向かわせるだけでなく、リス
ク資産に対するヘッジ目的や、(マイナスの利回りとは対照的である)利回りを持たないという性質からゴールドへの投資を促す
ことに繋がる。足許の株価上昇による影響は、景気動向に敏感なプラチナ・パラジウムを始めとする工業用メタルにも波及して
おり、特にプラチナ・パラジウムに関しては夫々17 ヶ月振り・14 ヶ月振りの高値を記録している。先週金曜日に発表された 7 月
米小売売上高は前月比で横ばいとなり、9 月の米国利上げ観測を後退させるものとなった。フェデラルファンド金利先物市場で
は次の米連邦準備理事会(FRB)で金利が据え置かれるとの予想が 85%となり、今月では最も高くなった。米国経済を長期的
な観点から見る上で重要となる 7 月生産者物価指数は前年同期比で-0.2%とマイナス圏まで下落し、ここ一年で最も大きい下
落幅となった。これによって引き続き米国経済にはインフレ緩和圧力が伴っていることが意識され、FRB が引き続き長期的且つ
段階的な利上げの姿勢を維持する可能性がある。今週発表される 7 月の FOMC 議事録に於いては FRB の意図が更に明確
になる可能性が有り、同議事録の内容はゴールド価格の動向に影響を与えるだろう。議事録が収める議論の内容としては、タ
カ派的な姿勢(堅調な労働市場に対する支持)とハト派的な姿勢(実質インフレ率に対する懸念)の双方が見られると思われる。
しかし実際には同議事録の内容よりも、最新の情報が加味された今週の各地区連銀総裁によるタカ派的、或いはハト派的な発
言内容の方が重視される可能性がある。
プラチナ
先週、プラチナ価格は2015年3月以来のスポット高値である$1,195/ozまで上昇し、今回の高値と2015年3月高値で綺麗なダブ
ルトップを形成した。
プラチナは$1,150/ozを上抜けて数ヶ月振りの高値をつけるなど、先週半ばまでは非常に堅調な推移を見せた。今週金曜日のト
レードで利食い売りが入ったことで$1,150/ozの水準を下抜け、3週間振りの安値である$1,111/ozをつけた。先週のNYMEX非
当業者建玉データによると、ショートカバーが若干見られたことでグロス・ロングは増加し、過去最高数量を更新して110.7tとな
り、ネット・ロングは過去最高水準の93.3となった。投資家は急速にグロス・ロングを積み増し(6週間で31.1tの増加)、一般的に
は利益確定の水準である$1,100/oz上で現在も推移していることから短期的には利食い売りが入る余地が有るものの、ファンダ
メンタル面を考慮するとプラチナ価格にとって長期的にサポーティブな環境が続くと考えられる。
南ア政府より先週発表されたデータによると、6月の南アPGM生産量は前年同期比で4.9%増加したが、5月に在庫が大量に放
出されたため、前月比では12.4%減少している。第1四半期における精錬所の操業停止中に積み上げられたAmplatsの未精錬
在庫は概ね第2四半期に精錬された。ストライキによる操業停止が一切発生しないと仮定すると、これは前年比での今後数か
月における月間販売数量に対しては引き続きサポーティブなものとなるだろう。
パラジウム
先週、パラジウムは14か月振りのスポット高値をつけて8月前半から続く下方トレンドを脱しており、また短期的な相対力指数に
関しては売られすぎでも買われすぎでも無い水準に回帰した。次の心理的節目は$700/ozにあると見られる。
薄商いであった先週水曜日の午前中、まとまった数量の買いが入ったことでパラジウムは14か月ぶりのスポット高値である
$747/ozをつけた。ドルが対ユーロや対円で下落したことがショートカバーの引き金を引いた可能性が有る。先週の米商品先物
取引委員会(CFTC)のデータによると、スポット価格は9カ月振りの高値をつけたのにも関わらずNYMEXのグロス・ショートは4
週間振りの高水準となった。パラジウムは価格が上昇した後に売り込まれて1.2%値を下げる形で先週を終え、2週連続の下落
Platinum prices $/oz
Palladium prices $/oz
Gold prices ($/oz)
Silver prices ($/oz)
last week:
last week:
last week:
last week:
1,200
1,000
8-Aug
12-Aug
Change: -1.8%
Support: $1,058
Resistance: $1,195
Outlook:
750
1,400
21
700
1,350
20
650
1,300
8-Aug
12-Aug
Change: -1.2%
Support: $632
Resistance: $747
Outlook:
19
8-Aug
12-Aug
Change: 0.1%
Support: $1,321
Resistance: $1,400
Outlook:
8-Aug
12-Aug
Change: 0.7%
Support: $19.08
Resistance: $25.36
Outlook:
Precious Metals Weekly Update
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18 August 2016
となった。6月半ば以降でこの2週間は最も軟調な推移となった。先週時点ではグロス・ロングは微増し、グロス・ショートは微減
している。NYMEXにおける投機筋のネット・ロングは依然として過去最高水準の51%を維持しており、投資家はパラジウムに
投下する資金を今後増加させる余地があるとみられる。
パラジウムの需給面ファンダメンタルは依然として非常に堅調である。先週発表された中国自動車販売台数は、引き続き政府
による刺激策が自動車市場に想定通りの効果を与えているため、直近17か月間で最も成長率が高い結果となった。これは即
ち、自動車の排ガス規制装置向けのパラジウム取引量が増加することを意味する。供給面に目を移すと、Norilsk Nickelでの
製錬工程の再編成を背景にロシアからの供給量が低調となる懸念や、南アでの労働争議の可能性、スクラップの流動性の低
さ等から、引き続きスポンジはタイトな状況が続いている。投資家はこのことについて未だ完全には認識していない可能性が有
る。
ゴールド
ゴールドの価格動向は岐路に立たされている。株が値を下げたことはゴールドの強材料となっているが、それよりも今週の米
連邦公開市場委員会(FOMC)議事録発表でのFOMCメンバーのコメントが価格動向を左右する材料となるだろう。
6月初旬から続いていた上方トレンドチャネルを下抜けたゴールドは価
ゴールド価格推移(USD/oz)
格動向の岐路に立たされている。今後上昇基調に戻るとすれば、年初
来高値である$1,375/ozまで上昇する可能性がある一方で、2011年の
高値から続く長期的な下落基調を辿る可能性もある。ゴールド価格の
短期的な材料は今週水曜日のFOMC議事録発表におけるFRBメンバ
ーのコメントである。特に今年度投票権を持つNY連銀総裁のダドリー
氏(ハト派で知られる)、セントルイス連銀総裁のブラード氏(タカ派で知
られる)、そしてダラス連銀総裁のカプラン氏による発言内容に注目が
集まるだろう。もし今週のFOMC議事録公表において足許の米国失業
率が利上げ実施に踏み切る水準まで回復しているという点が強調され
れば、彼らの発言の内容次第でフェデラルファンド金利先物市場で利上
げが織り込まれていない現状に何らかの変化をもたらす可能性がある。 Source: Mitsubishi from Bloomberg
斯様な状況下ではゴールドは下方圧力に晒されるだろう。一方で、もし
世界経済の不透明性に言及するようなハト派的発言が見られた場合には、ゴールドはサポートされるだろう。北半球が薄商い
となる夏季期間において、議事録公表後に同内容が消化され、注目材料が先日の7月雇用統計から議事録の内容にシフトして
いけば、同内容はゴールド価格に対してFOMCメンバーが想定しているよりも大きな影響を及ぼす事になるだろう。結局、主要
各国が導入したマイナス金利によって足許で広がっている低金利環境は中期的にゴールドのサポート要因となり得る。しかし
FOMC議事録やイエレンFRB議長の発言の中で、直近の米経済に対するポジティブな見方だけでなく、米国大統領選挙による
不安要素を排除するような発言が見られることで米利上げ観測が再燃するようなことがあれば、ゴールドは短期的に売り込ま
れる可能性がある。
CFTCが集計した8月3-9日の週の非当業者建玉データによると、ヘッジファンドを含めた資金運用業者や他の投機筋はゴール
ドのロング・ポジションを手仕舞っている一方で、ショート・ポジションを依然積み増している。マーケットではグロス・ロングが過
去最高値の93%となっている一方でグロス・ショートは過去最高値の48%に留まっており、ポジションの偏りが見られる。ゴール
ドETF残高は8月に入っても増加を続けており、最初の2週間で15.6t(0.9%)増加した。一方で、中国の現物取引量は特に少なく、
上海黄金交易所(SGE)のゴールド取引量は、8月最初の2週間で前年同期比45%の減少となった。インドでは8月15日が独立
記念日であったが、先週の国内価格は国際価格に対し$30-40/oz程ディスカウントとなっていた。年後半に入るとモンスーンに
よる降水量が平均降水量を上回るとみられ、結果的に農村部の住民の収入増加に繋がり、祭りや結婚式の時期に突入するこ
とで金の現物需要が高まる可能性がある。インド市場における現物需要は年後半にかけて回復していく可能性がある。
シルバー
シルバーは6月初旬から続いていた上方トレンドチャネルを下抜けた。
米国7月の小売売上高と生産者物価指数が共に市場予測を下回る弱い結果となった事で高値圏にあった状態から利益確定の
売りが入った事もあり、先週シルバーはゴールド同様に下方圧力に晒された。とは言うものの、シルバーは貴金属の中で何と
か上昇して1週間を終えた唯一のメタルとなった。先週シルバー価格は$20/ozを挟んだ比較的広いレンジで推移し、今週水曜
日のFOMC議事録発表までは同レンジでの推移が続くと見られる。同議事録内ではタカ派的意見・ハト派的意見どちらも見ら
れる可能性があるが、これらは市場ではあまり重要視されないと見られる。次回のFOMCは9月の第3週を予定しており、それ
までは8月後半に行われるジャクソンホール会議におけるイエレン議長の講演が直近の注目材料となるだろう。
CFTCのデータによると、前週のCOMEXシルバーはグロス・ショートが僅かな増加を見せたのに対し、グロス・ロングは依然と
して過去最高値に近い23,483tとなった。ETF残高の増加も依然続いている。価格上昇が影響した事で、コインへの投資は今月
低調であった。
18th August, 2016
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Precious Metals Weekly Update
18 August 2016
ECONOMIC CALENDAR Source – Bloomberg
Aug-15
US:
8 月 NY 連銀
製造業景気指数
前 0.55 予 2.00
Aug-16
UK:
7 月消費者物価指数
前 0.5% 予 0.5%
7 月生産者物価指数
前 -0.4% 予 0.0%
Germany:
8 月 ZEW 景況感調査
前 -6.8 予 2.0
US:
7 月消費者物価指数
前 1.0% 予 0.9%
7 月住宅着工件数
前 118.9 万件 予 118.0 万件
ロックハート・アトランタ連銀講演
Aug-17
US:
FOMC 議事録発表
MBA 住宅ローン申請件数
前 7.1%
ブラード・セントルイス連銀
総裁講演
Aug-18
UK:
7 月失業率
前 4.9%
7 月小売売上高
前 3.9% 予 3.8%
EU:
7 月消費者物価指数
前 0.2% 予 -0.5%(前月比)
前 0.2% 予 0.2%(前年比)
US:
7 月景気先行指標総合指数
前 0.3% 予 0.3%
ダドリー・NY 連銀総裁及び
ウィリアムズ・サンフランシスコ
連銀総裁講演
DATA BANK: Source – Mitsubishi from Bloomberg updated at 14.20 BST on 15
th
Aug-19
US:
カプラン・ダラス
連銀総裁講演
August
Metal Price Indications (US$/oz)
Current spot price
Change from yesterday's close (%)
Platinum
1,116
-0.69
Metal Forward Swap Indications (basis points)
1m
Platinum
Mid point of spreads
90.00
Daily change
0.00
Palladium
Mid point of spreads
40.00
Daily change
0.00
Gold
Mid point of spreads
97.00
Daily change
-1.00
Silver
Mid point of spreads
112.50
Daily change
-0.50
Palladium
686
-0.11
Gold
1,338
0.17
Silver
19.79
0.38
3m
6m
12m
92.50
0.00
105.00
0.00
100.00
0.00
40.00
0.00
40.00
0.00
40.00
0.00
105.00
0.00
108.00
0.00
109.00
0.00
117.50
-4.50
117.50
-4.50
118.50
-2.50
PGM Sponge Indications ($/oz)
JMUK sponge vs. Zurich ingot switch
Platinum
Mid point of spreads
Palladium
Mid point of spreads
1.00
0.00
2.00
1.00
0.00
2.00
1m
0.51
-0.00
3m
0.82
0.00
6m
1.21
0.00
12m
1.53
0.01
Latest
Daily change (%)
EUR / USD
1.12
-0.17
USD / JPY
101.11
0.19
ZAR / USD
13.34
0.99
DXY
95.65
0.08
Non commercial futures
As at 2nd Aug 2016
Net long position (Moz)
Weekly change (%)
Platinum
3.0
6.1
Palladium
1.6
12.0
Gold
32.4
4.9
Silver
545.0
1.9
Platinum
2.4
-4.7
Palladium
2.4
-12.5
Gold
65.2
35.8
Silver
657
-0.9
Gold
16,177
-5
0.6
0.7
-0.1
Silver
300
-91
LIBOR (%)
USD LIBOR Indication
Daily change
Foreign exchange indications
Exchange Traded Funds
Total holdings (Moz)
Weekly change (%)
Physical flows in China
SGE turnover (kg)
Comparison with 30-day average (%)
Local premium /discount (%)
Daily change (%)
Platinum
158
28
7.0
0.5
6.5
PGM basket price indications
USD basket price per ounce
Daily change (%)
ZAR basket price per ounce
Daily change (%)
18th August, 2016
944
-0.5
12,599
-1.5
948.8444
12787.00667
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3
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Precious Metals Weekly Update
Spot
Gold
Forwards
Silver
Platinum
Leases
Palladium
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Futures
Rhodium
Options
Ruthenium
Swaps
Iridium
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