有機スペクトル化学

目的・目標
有機スペクトル化学
下記の分析手法の原理や測定方法を理解し、
各スペクトルの解析法を身につけること。
学習教育目標C-4の達成に寄与すること。
赤外吸収分光法、核磁気共鳴吸収分光法
紫外可視吸収分光法、質量分析法、蛍光分光法
第5回
本日のあなたの達成目標
最終の問題では二人掛けで着席
IR および NMR の初歩的な解析法を身につけ、
それを説明できるようになる。
演習のやり方
本日のスケジュール
内容
○ Q4 → Q3 or Q5 → Q7 (残りは自習)
1) 本日の到達目標・本日のスケジュール
2)
○ 考え方の同じところ、違うところをノート
○ それを元に、スペクトル解析のポイントを論述
演習/解説/スコアカード記入
Q4 : 14:50頃
Q5 : 15:15頃
(余裕ある人は残りの問題に挑戦→解答はWebで)
3) 次回の予告
4) Q7論述問題 (15:30頃~ 約30分)
○ それを元に、課題と対策を洗い出し
○ 答えが合っているかどうかではなく、
考え方が合っているかどうか
Q4
Q4
② O
C9H12O
④
③
OHやC=Oはない
一置換ベンゼンで ① Phenyl-H
エ ー テ ル な ら 、 炭 積分比5
素鎖上の酸素の位
置が残された問題
になる
O
C9H12O
①
そ れ で も酸 素 1 個
ならエーテルか?
α-ethoxytoluene
O
②CH2
① Phenyl-H
④CH3
積分比2
③ CH2
積分比2
積分比5
積分比3
H10
OH
TMS
O
6重線
②CH2
④CH3
積分比2
③ CH2
積分比2
積分比3
TMS
積分比
O
1
Q3
Q3
5.170, q
J = 6.9 Hz
積分比 1
7.38 ~ 7.25, m
積分比 5
2.001, d
J = 6.9 Hz
積分比 3
Chemical shift (ppm)
①
②
③
④
3種のプロトンがある。
低磁場の m はフェニル基かな?
5.17ppmは電気陰性な原子(Br)の隣では?
CH3-CH- があるのでは?
Br
d
CH3
CH
CH3
2.001, d
J = 6.9 Hz
積分比 3
CH3
Chemical shift (ppm)
(1-bromoethyl)benzene
CH
q
Q5
Q5 補足!
O
③ ④
O
②
CH
5.170, q
J = 6.9 Hz
積分比 1
Phenyl-H
7.38 ~ 7.25, m
積分比 5
O
CHO
①
C9H10O2
4000
3000
2000
1500
1000
O
H
O
H
左のようなギ酸エステルである可能性を、問題のス
ペクトルだけから排除するのはなかなか難しいが、
この化合物のエチル基のCH2のシグナルは4 ppm
付近までは低磁場にいかないだろう。また、ギ酸の
Hは8 ppm付近に現れることが多い。
500
Wavenumber (cm-1)
O
10.51, s
②
4.137, 9
J = 7 Hz
6.9 ~ 7.9, m
①
③
1.468, t
J = 7 Hz
下の化合物である可能性は排除
することができる。
④
CHO
O
Chemical shift (ppm)
o-ethoxybenzaldehyde
第5回の講義の時点では o-, m-, p-体を区別できなくて構わないが、
o-, m-, p-体を区別するにはどうすればよいか考えてみよう。
OHC
Q7
phenethyl formate
次回の予告
IRおよびNMRスペクトルを解析する際のポイントについて、
200字以内でわかりやすく記せ。
裏面の下書き欄や余白は自由に使ってよい。
下書きなどを消す必要はない。
テキスト、ノ トは使わず、自力で作文する。
テキスト、ノートは使わず、自力で作文する。
NMRスペクトル(2)
次回の達成目標
「3つのポイント」を使って、より多くのNMRス
ペクトルを解析できるようになる
ペクトルを解析できるようになる。
目的
・これまで学んだことを整理すること
・文章作成上の課題を発見すること
2
Q1(1)
Q1(3)
O
C=O伸縮(1700前後)
O
O
O
N
O
N
O
O
O
CHO
C=O伸縮(1700前後)
CHO のC-H伸縮(2820、2720付近に2本)
O
もちろん、 C=C伸縮やC-O-C伸縮、
C-H伸縮も出るだろう
Q1(2)
Q1(2)
N-H伸縮
O-H伸縮
4000
C=O伸縮
N-H変角
3000
2000
イーゼンハイム祭壇画(グリューネ
ヴァルト作、16世紀初め、フランス、
アルザス地方)
1500
「聖アントニウスの火」 はヨーロッパ中世の
3大疫病の一つ。 「神による罪人への罰」
だと考えられていた。
突然手足がしびれ、全身が痙攣し、その
うち四肢に灼けつく感覚を引き起こし、黒
ずんで、やがて手指はちぎれて落ちてしま
う(壊疽)。死産(中絶)、幻覚や痙攣、てん
かんも起こす。
も起 す。
500
1000
波数(cm-1)
紀元前の中央アジアですでに毒性が知られて
いたが、 1670年にライ麦パンが原因と分かり、
1853年にライ麦に寄生する麦角菌が原因である
とようやくわかった。現在では、麦角アルカロイド
ergovalineなどによる中毒と理解されている。
古くからヨーロッパでは、陣痛促進や分娩後の
子宮出血抑制に用いられていた。
ergometrine
麦角アルカロイド類縁体
子宮収縮、陣痛促進、分娩後の出血抑制
(麦角アルカロイドは5-HT1受容体刺激作用
を持ち,拡張した血管を収縮させる。次いで
収縮した血管を拡張する。)
ergotamine
片頭痛薬
http://weltgeist.exblog.jp/7440144/
buchi21.blog64.fc2.com/category4-1.html Wikipedia
http://www.myu.ac.jp/~farm/farm/inoueta/shokai/index.html http://www.kimiafarma.co.id/?page=product_detail&cat=3&subcat=311&prod=81
http://www.stronarafala.com/historia_choroby/historia_choroby_dokumenty_html/lek_nitrazepam.html
http://weltgeist.exblog.jp/7440144/ buchi21.blog64.fc2.com/category4-1.html Wikipedia http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/poisoning/ergo.html
http://www.myu.ac.jp/~farm/farm/inoueta/shokai/index.html http://www.kimiafarma.co.id/?page=product_detail&cat=3&subcat=311&prod=81
http://www.stronarafala.com/historia_choroby/historia_choroby_dokumenty_html/lek_nitrazepam.html
Q2
c)
Q2
a)
CH3
m-トルイル酸
4000
CH3
H
N
O
n-ブチルアセトアミド
COOH
d)
麦角
3000
2000
1500
1000
500
b)
OH
o-クレゾール
クレゾ ル
4000
4000
O
3000
2000
1500
1000
500
O
酢酸n-ブチル
3000
2000
1000
1500
Wavenumber (cm-1)
500
e)
NH2
tert-ブチルアミン
4000
3000
2000
1000
1500
Wavenumber (cm-1)
3
Q7
Q6
CH3-CH2-CH2-NO2
解答例
IRスペクトルの解析ではスペクトル全体を7つのエリアに分け
て、特性吸収帯の有無を調べる。特に、1500 cm-1より高波数
側に特徴ある伸縮振動吸収帯をみつけることが大切である。N
MRスペクトルの解析では、各シグナルのスピン スピン結合、
MRスペクトルの解析では、各シグナルのスピン-スピン結合、
化学シフト、積分比を調べることがポイントである。特に、シグナ
ルの分裂には炭素鎖の連結の仕方を、化学シフトには芳香環
や電気陰性な原子の有無などを示す重要な鍵がある。
(198字)
C-H伸縮
N-O伸縮
CH3-CH2-CH2-NO2
積分比と分裂本数からわかる。
NO2の隣は低磁場側
Q8
Q8解答例
次の①~③を、この順番で、適切な接続表現を用いて、一連の文
章にまとめよ。ただし、内容を変えない程度に文末を変更してよい。
①どう手を付けていいか分からない現在の状況を、なんらかの形で
問題として表現すること、この点こそが、問題解決のプロセス全体
の中で一番むずかしい。
②直面している状況がどんなものか理解していなくては問題を適切
に表現することはできないのに、問題を表現することによってはじ
めて状況が理解できる。
③状況を理解していることと問題を表現できることとは、表と裏の一
見パラドクス的な関係にある。
Q9
~解説~
「パラドクス的な関係」は、「理解していなければ表現できない」と
「表現できなければ理解できない」との対立関係を表している。つ
まり、③は②の解説である(②=③)。このことから、②と③はひと
まとまりで、①の理由を与えるという文章構造が見えてくる。
Q10, 11
d
t
d
①→d) CHCl2-CHCl-CHCl2
d
m
d
④→a) (CH3)2CH-CH2Br
s
s
②→b)) CH2Cl-CCl2-CH3
③→e)
s
d
m
d
⑤→c) (CH3)2CH-CH2-CO-CH3
①どう手を付けていいか分からない現在の状況を、なんらかの形
で問題として表現すること。この点こそが、問題解決のプロセス全
体の中で一番むずかしい。なぜなら、 ②直面している状況がどん
なものか理解していなくては問題を適切に表現することはできない
のに、問題を表現することによってはじめて状況が理解できるから
である。つまり(すなわち)、③状況を理解していることと問題を表
現できることとは、表と裏の一見パラドクス的な関係にある。
s
s
OHC
CHO
Q10
左の化合物にはOHとCOOHの間に分子内水素結
合があり、それゆえ、右のC=O伸縮振動が化合
物に比べて低波数シフトしている。
Q11
d
m
a)(CH3)3CH
s
t
t
c) CH3OCH2CH2Br
d
q
b) CH3CHBr2
t
q
s
d) CH3CH2COOCH3
4
Q12
Q13
s
d m
d
O
IR, 13C-NMR
iso-propyl methyl sulfone
O
H3C
H3C MgBr
g
C
CH
H
C
N
H3C
C
NH2
N MgBr
OH2
H
C
NH3
OH
O H
4000
S CH
O
1303
1132
3000
3
2000
1000
1500
500
Wavenumber
W
b (cm
( -11)
(CH3)2CHS
1.407, d
CH3S
J = 6.8 Hz
2.854, s
(CH3)2CHS
3.131, 7重線
J = 6.8 Hz
O
Chemical shift (ppm)
5