低温プローブを搭載した600MHz NMRによる高感度測定

Ⅰ-4
低温プローブを搭載した600MHz NMRによる高感度測定
低温プローブを搭載した600 MHz NMRを新規に導入した。これにより、従来よりも大幅に高感度・短時
間での測定が可能となった。特に、低感度な核種の多核NMR測定や従来装置では実質的に測定困難
なINADEQUATE測定が可能となった。これにより、複雑な構造の解析が可能となる例を紹介する。
低温プローブを搭載したNMRの特徴
※いずれも積算回数:1回
低温プローブとは?
現行500MHz
検出部のユニットを液体窒素(またはヘリウム)で
冷却することで電気抵抗・熱ノイズを減少させ、取
得する信号強度を相対的に高めるプローブ。
特徴
現行装置(500MHz)と比べて1H核で約4倍、13C
核などで約4~5倍と、圧倒的に感度が向上!
高感度NMR
新規測定法
従来装置では非現実的であったINADEQUATE
測定が可能に!
ppm
140
120
100
80
60
40
20
10% Ethylbenzeneの13C NMRスペクトル
多核NMRの高感度測定
L
ki
m
試料;下記構造の光開始剤
濃度;約20 wt/v%
X
Y
G
O
N
P
Y
CH2
O
80
CH3
70
60
K
60
50
40
30
20
f‐Y
g‐Y
i‐Y
ppm
8
INADEQUATE;Incredible Natural Abundance
DoublE QUAntum Transfer Experiment
C-C間の結合を観測する二次元相関分光法
1H-15N
I
O
G
M
L
O K
N J
P
Q
炭素骨格のつながりを把握できる測定法だが、天然存在比1%の13C核が
構造中に連続して存在する確率は0.01%と極めて低く、感度は極めて悪い。
7
N
Y
F
P
C
M
J
6
5
4
I
Solv.
H
G
12
13
E
A
ppm
0
X
DC
A
B
A‐C
E
N
CH2 O
D
CH3
C‐H
B
L
F‐G
K
B‐N
I‐M
I‐P
12
C C C C C C C C
しかし、高感度NMRによって現実的に観測可能な手法となった。
スペクトルを解析することで、より詳細に構造決定を行うことが可能である。
1
F
※「inadequate;不十分な」の意をもじって命名されるほど感度が低く、
従来装置では実質的に測定してもピークが得られなかった。
12
2
HMBCスペクトル
O CH2CH3
C HC N(CH3)2
Q
3
多核を用いた2次元NMR測定により、
詳細な構造解析へも適応可能である。
NMRスペクトル
INADEQUATE測定
13
70
80
では測定に長時間を要し、また時間をかけてもピークが検
出されないことが多々あった。そのような核種に対しても、
ピークを検出することができる。
15N
13
30
15N核は非常に感度が低い(1Hの約1/250000)ため、低濃度
B
その他、29Si, 31P核なども観測可能
12
20
e‐X
40
Y
N
L
12
c‐X
d‐X
50
X E
D
a
c
X
O CH2CH3
C C N(CH3)2
J Q H
e b
d
A
C
M
I
F
g f
H‐Q
ppm
200
150
100
50
0
INADEQUATEスペクトル
2016年6月TRCポスターセッション2016 No. Ⅰ-4
P01465有機分析化学第1研究室20160418
STC:開(20160623)