通電急速加熱を用いた鋳鉄の半溶融鍛造

通電急速加熱を用いた鋳鉄の半溶融鍛造
塑性加工研究室 鈴木 和仁
半溶融鍛造の利点
鋳造に比べ
・欠陥が少ない
・ネットシェイプ
・製品精度が高い
鍛造に比べ
・加工荷重が低い ・複雑形状
アルミニウム合金(融点614℃)
高融点(融点1180℃)
ねずみ鋳鉄 FC250
球状黒鉛鋳鉄 FCD600
金型
ビレット
通電
通電加熱半溶融鍛造法
通電加熱
急速加熱(1∼2秒)
カムシャフト 半溶融素材搬送が不要
(鋳鉄,鋳造)
本研究の目的
・鋳鉄FCD600,FC250の通電加熱特性
・カムシャフト形状の半溶融鍛造
通電加熱特性
材料
FCD600
FC250
1150∼1180
A357
565∼617
高融点
融点 / ℃
投入電力量 大
鋳鉄:共晶組成
温度での液相率制御 難
スパーク発生
不安定加熱
投入電力量で液相率制御
半溶融鍛造
カムシャフト形状
・充満挙動 ・硬さ試験
・組織観察
1.通電加熱実験方法
2.鋳鉄の通電加熱特性
3.ビレット内の液相率の推定
4.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験方法
5.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験結果
通電加熱実験方法
通電時加圧力PH
4.9∼19.6MPa
銅圧盤
給電ケーブル
10□
絶縁スリーブ
φ20
銅電極
銅圧盤
30
コンテナ
(SUS304)
通電電圧
6.58 Vrms
20
鋳鉄ビレット
(FCD600 , FC250)
30
銅電極
投入電力量Q
22∼27 kJ
1.通電加熱実験方法
2.鋳鉄の通電加熱特性
3.ビレット内の液相率の推定
4.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験方法
5.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験結果
鋳鉄FCD600ビレットの加熱
(Q=20 kJ,FH=9.8MPa,0.7s)
銅電極
鋳鉄ビレット
銅電極
通電時加圧力PHと投入電力量Qの加熱状態への影響
均一加熱
変形あり
スパーク
20
20
15
15
10
10
5
0
端部局部加熱
通電時加圧力 PH / MPa
通電時加圧力 PH / MPa
均一加熱
変形なし
28
22
24
26
投入電力量 Q / kJ
(a) FCD600
5
0
22
24
26 28
投入電力量 Q / kJ
(b) FC250
通電加熱中での高さの変化 (Q=24kJ)
20
初期高さ
FCD600,PH=9.8
高さ / mm
FC250,PH=9.8
15
10
FCD600,PH=19.8
FC250,PH=19.8
5
通電終了時間
0
1
2
通電開始からの時間 / s
3
通電加熱中での電流密度と圧盤間電気抵抗の変化
(PH=9.8MPa , Q=24kJ)
120
80
60
40
FCD600 電流密度
FC250 電流密度
85A/mm2 0.5
FC250 電気抵抗
0.4
加熱効率の差 0.3
FCD600 電気抵抗
0.2
電気抵抗
20
0
95A/mm2 0.6
0.2
0.4
0.6
0.8
通電開始からの時間 / s
0.1
0
1
電気抵抗 / mΩ
電流密度 / A/mm2
100
0.7
(a)FCD600
50μm
(b)FC250
1.通電加熱実験方法
2.鋳鉄の通電加熱特性
3.ビレット内の液相率の推定
4.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験方法
5.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験結果
通電加熱中のビレットの温度と投入電力量測定方法
φ10
鋳鉄ビレット 20
E
熱電対
銅電極
給電ケーブル
50
70
絶縁体
通電電圧
6.58 Vrms
温度と単位体積当たりの投入電力量の関係
液相率 fL
1400
温度 / ℃
1200
1000
800
液相
固相
FC250
液相率 fL
1
0
FCD600
600
400
200
0
FCD600
FC250
断熱
100
75
50
25
単位体積当たりの投入電力量 / J/mm3
液相率と投入電力量の関係(FCD600,10 □×20h)
1200
溶融開始点
溶融開始点
0.26
液相
固相
温度 / ℃
1000
0
1
800
液相率 fL
600
熱効率約27%
400
200
0
加熱実験装置銅圧盤間(Q=23kJ)
加熱実験装置ビレット10mm間
液相率測定装置ビレット10mm間
10
20
投入電力量Q / kJ
液相率と投入電力量の関係(10□×20H)
1.0
液相率fL
0.8
0.6
FC250
0.4
0.2
0
FCD600
5
10
15
20
投入電力量Q / kJ
25
30
10
計算に用いた軸対称モデルと要素分割モデル
銅圧盤(純銅)
40
銅電極(純銅)
24
ビレット
(FCD600,FC250)
φ12
φ30
(a) 計算に用いた軸対称モデル
(b) 要素分割後のモデル
シミュレーションに用いた材料特性
熱伝導率
/ W・m-1・K-1
比熱
/ J・kg-1・K-1
融点 / ℃
材料
密度
/ kg・m-3
FCD600
7.25×103
5.1347+0.0317T 590.22+0.4893T 501.25+1.024T
1150
1180
FC250
7.25×103
9.5856+0.0355T 590.22+0.4893T
765+0.765T
1150
1180
SUS304
7.92×103
15.0+0.0143T
48.7+0.0223T
715+0.583T
1398
1453
純銅
8.93×103
407.7-0.0714T
368.3+0.143T
14+0.068T
電気抵抗率
/ nΩ・m
固相点 液相点
1083
T : 温度 / ℃
通電加熱終了後のビレットの軸方向温度分布計算結果
1200
固相線温度
温度 / ℃
1000
800
600
400
200
0
0.4
0.8
1.2
1.6
2.0
ビレット下端からの距離 / mm
2.4
通電加熱終了後のビレットの液相率分布計算結果
(通電時間1.1s)
銅電極
液相率fL
0.00
0.10
0.40
鋳鉄ビレット
0.60
0.60
(a) FCD600
(b) FC250
1.通電加熱実験方法
2.鋳鉄の通電加熱特性
3.ビレット内の液相率の推定
4.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験方法
5.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験結果
カムシャフト形状の半溶融鍛造実験装置
4 8 4
銅圧盤
給電ケーブル
銅電極
φ16
φ12
16 8 24
金型(SUS304)
鋳鉄ビレットφ12×24H
(FCD600,FC250)
0.5
絶縁スリーブ
銅圧盤
φ12
φ16
鍛造品寸法
カムシャフト形状の半溶融鍛造実験条件
通電時加圧力PH
9.8MPa
電流
鍛造圧力PF
90MPa,180MPa
通電電圧
6.58 V
投入電力量Q:26∼36 kJ
液相率fL: 0.05∼0.80
1.通電加熱実験方法
2.鋳鉄の通電加熱特性
3.ビレット内の液相率の推定
4.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験方法
5.カムシャフト形状の半溶融鍛造
実験結果
半溶融鍛造後のビレット外観(FCD600, PF=90MPa)
未充満
充満
金型形状
5mm
(a) fL=0.05
(b) fL=0.30
(c) fL=0.55
鍛造圧力PFと液相率fLの充満状態への影響
鍛造圧力 PF / MPa
100
100
未充満
0
鍛造圧力 PF / MPa
200
200
充満
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
液相率 fL
(a) FCD600
未充満
0
充満
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
液相率 fL
(b) FC250
半溶融鍛造後ビレット縦断面(FCD600)
分離
5mm
(a) fL=0.30
PF=180MPa
A
A
(b) fL=0.80
PF=180MPa
引け巣
A-A
観察部位
200μm
(c) fL=0.80
PF=90MPa
分離
半溶融鍛造後の組織 (FCD600, PF=180MPa)
(a) x = 8mm
( i ) fL=0.30
(b) x = 12mm
X
(c) x =16mm
分離
素材
200μm
(a) x = 8mm
( ii ) fL=0.80
(b) x = 12mm
(c) x =16mm
半溶融鍛造後の硬さ分布(FCD600, PF=180MPa)
1000
ビッカース硬さ HV20
チル化
800
fL= 0.80
600
fL= 0.30
400
素材
200
0
x
5
10
15
距離 x / mm
20
まとめ
1)通電加熱を用い,FCD600 ,FC250を半溶融状態
に加熱できる.
2)均一加熱には,FCD600,FC250ともに9.8MPaの
通電時加圧力が最適である.
3)温度と投入電力量の関係から,ビレット内の液相率
が推定できる.
4) FCD600およびFC250の通電加熱半溶融鍛造が
可能である.低液相率,高鍛造圧力の条件で分離
および引け巣が抑制できる.