保育士における援助専門職との協働による発達支援について -療育に関する理解- ○滋野井一博1・小正浩徳2・赤田太郎3・友久久雄1 (1龍谷大学文学部・2龍谷大学大学院臨床心理相談室・3龍谷大学短期大学部) キーワード: 保育士 発達支援 協働 Research on Understanding of the Developmental Supports through the Team Approach among Support Professionals in Nursery Teacher Kazuhiro SHIGENOI1, Hironori KOMASA1 , Taro AKADA2 and Hisao TOMOHISA1 (1 Faculty of Letters Ryukoku Univ.,2 Ryukoku Univ.Junior.College.) Key words: nursery teacher, developmental supports, team approach 目 的 前回の発表(2011)では,障害児に発達支援を実施している保 育士における「発達障害」に関する理解に見られる傾向につ いて検討した。その結果, 保育士は発達障害を理解する際, 保 育の専門性として発達障害児が在籍する集団全体の発達課題 や集団を構成する子どもとの関わりを念頭に置きながら,個々の子 どもにおける具体的な発達的な特性と研修会等で得られた知識 とを組み合わせて包括的に捉える傾向が示唆された。さらに,就 学前の発達支援において,保育士と発達支援を実施している専 門職が協働していく上で,発達支援の特性について相互の専門 性について理解を深めていく必要性が再認識された。 そこで,本調査では,発達支援を取り組んでいる保育士を 対象に調査し,発達支援を協働する施設で実施されている療 育に関する理解の傾向を明らかにすることを目的とする。 対 象 と 方 法 1.対 1.対 象 保育士20名を調査の対象とする。 2 .方 法 ①書面による調査:保育士から見た『療育』について自由記 述にて実施する。 ②面接による調査:書面による調査の後,自由記述の内容確 認を目的として実施する。 ③分析の手順:各項目について複数の記述を可とし,その内 容と人数を分析する。 結 果 <療育の事業特性に関する項目 <療育の事業特性に関する項目> の事業特性に関する項目> 表 1 に示したごとく,療育の事業特性に関する項目で最も 多かったものは「発達支援{11 名(55.0%)}」であった。次いで「障 害・病理{6 名(30.0%)}」「要支援的保育{6名(30.0%)}」「高度な専 門性{5 名(25.0%)}」 「子育て支援{4 名(20.0%)}」, 「多職種協働{4 名(20.0%)}」であった。 表 1. 事業特性に関する項目 (N=20) 項 事業特性 目 人数 % 発 達 支 援 11 55.0 障 害・病 理 6 30.0 要支援的保育 6 30.0 高度な専門性 5 25.0 子育て支援 4 20.0 多職種協働 4 20.0 <療育の取組に関する <療育の取組に関する項目 の取組に関する項目> 項目> 表2に示したごとく,取組の特徴として最も多かった項目は 「その子に応じた対応{9 名(45.0%)}」 であった。次いで「苦手の 克服・積み上げ{8 名(40.0%)}」「心理的なケア{7 名(35.0%)}」,で あった。取組の内容で最も多かったものは「不適応行動に関する 援助{5 名(25.0%)}」「発達の遅れに関する援助{5 名(25.0%)}」であ った。次いで「身体運動に関する援助{4 名(20.0%)}」「対人関係 に関する援助{4 名(20.0%)}」 「コミュニケーションに関する援助{3 名(15.0%)}」であった。 表 2.取組に関する項目 項 目 特 徴 内 容 (N=20) % 人数 その子に応じた対応 9 45.0 苦手の克服・積み上げ 8 40.0 心理的なケア 7 35.0 不適応行動に関する援助 5 25.0 発達の遅れに関する援助 5 25.0 身体運動に関する援助 4 20.0 対人関係に関する援助 4 20.0 コミュニケーションに関する援助 3 15.0 <療育の 療育の実施形態 実施形態に関する 形態に関する項目 に関する項目> 項目> 表 3 に示したごとく,療育の実施形態として最も多く示された ものは「個別アプローチ{9 名(45.0%)}」 であった。次いで「グルー プアプローチ{5 名(25.0%)}」「親子アプローチ{4 名(20.0%)}」であ った。 表 3.実施形態に関する項目 (N=20) 項 目 人数 % 実 施 形 態 個別アプローチ 9 45.0 グループアプローチ 5 25.0 親子アプローチ 4 20.0 考 察 保育士は,療育の理解として, 発達的課題を有する個々の児 童に対して,その障害や発達特性を把握し,医学的・発達的な専 門的知見に基づいて個別のアプローチを中心とした発達支援を 実施する事業であるととらえていることが窺える。その具体的な療 育の取組については,「不適応行動」「発達の遅れ」「身体運動」 「対人関係」「コミュニケーション」に関する発達援助として実践の 中に保育的活動と共通するものがあるととらえている傾向が示さ れた。 また,保育士は,療育の事業として,発達障害を有する児童の養 育者に対する子育て支援に着目していることが示されていた。ま た、取組の実施形態についても親子のアプローチについて着目 していることが示された。この点について,面接調査では,療育者と の協働の有用性のひとつとして養育者の障害受容に向けた療育 的アプローチに期待している意見が述べられた。 さらに,療育の事業特性として,高度な専門性を有しているという 認識とともに,臨床心理士,言語聴覚士,作業療法士などの多職種 が協働して実践している点に着目していることが示された。この点 について,多職種の専門家の意見が包括的に情報として得られる ことも発達支援を協働していく有用性のひとつとして,保育士がと らえている傾向が示唆された。 引用文献 滋野井一博他(2011)保育士における発達障害の理解について ⅠⅠ-発達障害に関する理解-日本心理学会第 75 回発表論文 集,p.278.
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