1EVC19 - 日本心理学会

保育士における援助専門職との協働による発達支援について
-療育に関する理解-
○滋野井一博1・小正浩徳2・赤田太郎3・友久久雄1
(1龍谷大学文学部・2龍谷大学大学院臨床心理相談室・3龍谷大学短期大学部)
キーワード: 保育士 発達支援 協働
Research on Understanding of the Developmental Supports through the Team Approach among Support Professionals in Nursery Teacher
Kazuhiro SHIGENOI1, Hironori KOMASA1 , Taro AKADA2 and Hisao TOMOHISA1
(1 Faculty of Letters Ryukoku Univ.,2 Ryukoku Univ.Junior.College.)
Key words: nursery teacher, developmental supports, team approach
目
的
前回の発表(2011)では,障害児に発達支援を実施している保
育士における「発達障害」に関する理解に見られる傾向につ
いて検討した。その結果, 保育士は発達障害を理解する際, 保
育の専門性として発達障害児が在籍する集団全体の発達課題
や集団を構成する子どもとの関わりを念頭に置きながら,個々の子
どもにおける具体的な発達的な特性と研修会等で得られた知識
とを組み合わせて包括的に捉える傾向が示唆された。さらに,就
学前の発達支援において,保育士と発達支援を実施している専
門職が協働していく上で,発達支援の特性について相互の専門
性について理解を深めていく必要性が再認識された。
そこで,本調査では,発達支援を取り組んでいる保育士を
対象に調査し,発達支援を協働する施設で実施されている療
育に関する理解の傾向を明らかにすることを目的とする。
対 象 と 方 法
1.対
1.対 象 保育士20名を調査の対象とする。
2 .方 法
①書面による調査:保育士から見た『療育』について自由記
述にて実施する。
②面接による調査:書面による調査の後,自由記述の内容確
認を目的として実施する。
③分析の手順:各項目について複数の記述を可とし,その内
容と人数を分析する。
結 果
<療育の事業特性に関する項目
<療育の事業特性に関する項目>
の事業特性に関する項目>
表 1 に示したごとく,療育の事業特性に関する項目で最も
多かったものは「発達支援{11 名(55.0%)}」であった。次いで「障
害・病理{6 名(30.0%)}」「要支援的保育{6名(30.0%)}」「高度な専
門性{5 名(25.0%)}」 「子育て支援{4 名(20.0%)}」, 「多職種協働{4
名(20.0%)}」であった。
表 1. 事業特性に関する項目
(N=20)
項
事業特性
目
人数
%
発 達 支 援
11
55.0
障 害・病 理
6
30.0
要支援的保育
6
30.0
高度な専門性
5
25.0
子育て支援
4
20.0
多職種協働
4
20.0
<療育の取組に関する
<療育の取組に関する項目
の取組に関する項目>
項目>
表2に示したごとく,取組の特徴として最も多かった項目は
「その子に応じた対応{9 名(45.0%)}」 であった。次いで「苦手の
克服・積み上げ{8 名(40.0%)}」「心理的なケア{7 名(35.0%)}」,で
あった。取組の内容で最も多かったものは「不適応行動に関する
援助{5 名(25.0%)}」「発達の遅れに関する援助{5 名(25.0%)}」であ
った。次いで「身体運動に関する援助{4 名(20.0%)}」「対人関係
に関する援助{4 名(20.0%)}」
「コミュニケーションに関する援助{3
名(15.0%)}」であった。
表 2.取組に関する項目
項
目
特
徴
内
容
(N=20)
%
人数
その子に応じた対応
9
45.0
苦手の克服・積み上げ
8
40.0
心理的なケア
7
35.0
不適応行動に関する援助
5
25.0
発達の遅れに関する援助
5
25.0
身体運動に関する援助
4
20.0
対人関係に関する援助
4
20.0
コミュニケーションに関する援助
3
15.0
<療育の
療育の実施形態
実施形態に関する
形態に関する項目
に関する項目>
項目>
表 3 に示したごとく,療育の実施形態として最も多く示された
ものは「個別アプローチ{9 名(45.0%)}」 であった。次いで「グルー
プアプローチ{5 名(25.0%)}」「親子アプローチ{4 名(20.0%)}」であ
った。
表 3.実施形態に関する項目
(N=20)
項
目
人数
%
実 施
形 態
個別アプローチ
9
45.0
グループアプローチ
5
25.0
親子アプローチ
4
20.0
考 察
保育士は,療育の理解として, 発達的課題を有する個々の児
童に対して,その障害や発達特性を把握し,医学的・発達的な専
門的知見に基づいて個別のアプローチを中心とした発達支援を
実施する事業であるととらえていることが窺える。その具体的な療
育の取組については,「不適応行動」「発達の遅れ」「身体運動」
「対人関係」「コミュニケーション」に関する発達援助として実践の
中に保育的活動と共通するものがあるととらえている傾向が示さ
れた。
また,保育士は,療育の事業として,発達障害を有する児童の養
育者に対する子育て支援に着目していることが示されていた。ま
た、取組の実施形態についても親子のアプローチについて着目
していることが示された。この点について,面接調査では,療育者と
の協働の有用性のひとつとして養育者の障害受容に向けた療育
的アプローチに期待している意見が述べられた。
さらに,療育の事業特性として,高度な専門性を有しているという
認識とともに,臨床心理士,言語聴覚士,作業療法士などの多職種
が協働して実践している点に着目していることが示された。この点
について,多職種の専門家の意見が包括的に情報として得られる
ことも発達支援を協働していく有用性のひとつとして,保育士がと
らえている傾向が示唆された。
引用文献
滋野井一博他(2011)保育士における発達障害の理解について
ⅠⅠ-発達障害に関する理解-日本心理学会第 75 回発表論文
集,p.278.