No.18 - 竹田綜合病院

No.18
発行者:竹田綜合病院
編集者:図書委員会
発行日:平成 28 年 7 月 21 日
認 知 症リ
の は な し (後編)
前回お話しした通り、認知症は今や珍しい疾患ではありません。過度に恐れず、疾患の正しい知識をも
って適切に対処することが重要です。
「認知症のはなし後編」となる今回はアルツハイマーの症状と治療・
対処法などについてお話しいたします。
認知症の症状はアルツハイマーに限らず、中核症状と行動・心理症状(以前は周辺症状といわれました
が、今は BPSD と言います)に分けられます。中核症状とは、記憶障害、思考力・判断力の低下や自分が置
かれている状況が分からなくなる見当識障害など、神経細胞が減ることによって起こる、認知症の中核と
い
ど せい
なる症状を言います。BPSD には妄想・幻覚、易怒性・暴力、徘徊、うつ・不安、意欲の低下などの症状が
あります。これらの症状が絡み合ってその人の病像を形成することになります。
さて治療ですが、前編でも述べました通り原因が特定されておりませんので、病気の根本から治してし
まうような治療(原因療法)は(研究は進んでいますが)今のところまだありません。しかしアミロイド
が沈着(前編参照)した結果、脳の中ではアセチルコリンという物質の働きが落ちていることが判ってい
ます。とすればその物質の働きをあげる治療が効きそうですね?‥その通りです。それが現在最もよく行
われている治療で、機能低下のスピードがゆっくりになる、表情が良くなる、会話が増える、意欲が増す
などの効果が見られます(個人差があります)
。しかし、全ての症状を消してしまうことは困難。症状が多
少残っていても、自分らしい快適な生活が送られるようにしていくことが大切です。介護者の対応一つで
症状(特に上記の BPSD)が大きく変化することも知られています。そのためには薬以外での対応もとても
重要となります。地域全体が連携して、ご本人と介護者を支援する仕組みが必要です。
竹田綜合病院は、認知症疾患医療センター(会津における認知症診療の基幹病院)として、神経内科と
精神科が協働して診療にあたっています。神経内科が主に診断と早期の治療、精神科が進行期の様々な症
状に対応し、地域の先生方との連携の下で看護、介護、保健・福祉、行政など各専門職と協働して、認知
症の人も介護する人も、住み慣れた土地でその人らしい生活ができるよう、支援しております。また、沈
着したアミロイドを壊すといったような新しい治療の治験も積極的に行っております。ご自身や大切な人
の物忘れが気になったら、遠慮せずにかかりつけの先生に相談してみましょう。自分らしい人生を楽しむ
ために、認知症についてよく知り、上手に対応していきましょう。アルツハイマー以外の認知症について
は、別の機会にお話しすることにしましょう。
(神経内科
石田義則)
~図書の紹介~
子宮頸がん・子宮体がん・卵巣が
ん治療ガイド
新刊図書の一部です.
アレルギーの知識
動脈硬化という敵に勝つ
渡辺正樹著(ワールドプランニング)
動脈硬化とは何か、日常生活、食事に対す
る意識を高め予防することの大切さが良く
わかる本です.
日本婦人科腫瘍学会(金原出版)
患者さん、ご家族が知りたい情報を各疾
患別、共通項目別に解説してあり大変参
考になる本です.
父よ、ロング・グッドバイ
男の介護日誌
今日が人生最後の日だと思って
生きなさい
小澤竹俊著(アスコム)
人には必ず生きている意味があり、自分の
価値があり果たすべき役割があるという言
葉に、心やすらぐお勧めの本です!
盛田隆二著(双葉社)
「十年にわたる父の介護は、十年にわたる
父との別れでもあった」この言葉に介護す
る息子の思いが込められた本です..
宮本昭正著(医薬ジャーナル社)
増加するアレルギー疾患の知識とその検
査法について書かれています.知識を深
めるための一冊です.
18歳のビッグバン
小林春彦著(あけび書房)
誰もがみえない「何か」を抱えて生きてい
る. 28 歳の著者はどう向き合って生きて
いるのか.ぜひ読んでみてはいかがでしょ
うか.
お 勧 め の 一 冊
梅雨の季節になり雨が降る日が多くなりました。
そんな日はお部屋の中でゆっくり本を読んで過ごされるのはいかがですか。
今回ご紹介するのは「人生最後の食事」という本です。
舞台はドイツの首都ハンブルグにあるホスピスで働く料理長と、その施設に入居して
いる方々のドキュメント本です。主人公のループレヒトは牧師の家系に育ちますが、牧師にならず調理師
の道に進みます。三ツ星レストランでの修業は厳しく辛いですが、どんなにお客様に喜ばれても調理のみ
で、お客様の前にでることのできない仕事に疑問を持ちます。そして、ホスピスで働くことを決意します。
「命を延ばすことはできなくとも、その人に残された時間を充実させることはできる」を信念に入居者に
食事を作り続けます。そして、入居されている方の部屋を訪ね食べたい物を伺い料理を作ります。失敗し
たり罵声を浴びせられたりしますが、“人生最後の食事”として一人一人の思いに応えようと努力するの
です。料理は食べることにより、本人の思い出や感覚を甦らせてくれるものだと改めて思いました。
皆さんもこの本を読んで好きな料理を食べることの幸せを感じてみませんか。(栄養科
菅野万記子)
【がん相談支援センターからのお知らせ】
毎月 1 回患者図書室に於いて
がん患者サロン「あづまっぺ」を開催しています。今年、5年目を迎え
まました。院内の色々な方々による“ミニミニ講演”も大好評を得ています。がんに罹られた方やご家族
の方、お茶を飲みながら、一緒にお話ししませんか?どうぞお気軽にご参加ください。
【ミニミニ講演の予定(14 時~)】
◇7月30日(土)
「がん治療による脱毛への対応」
ウィッグ(かつら)の専門指導員
*14時~ 2階会議室にて実施予定(女性の方のみ)
◇8月23日(火) 「口腔ケアに関するお話(テーマは未定)
」
歯科衛生士 渡部 志保氏
がん相談支援センター 宮下千賀子