リ 障 い つ 嗅覚 害 に て

No.19
発行者:竹田綜合病院
編集者:図書委員会
発行日:平成 28 年 10 月 1 日
嗅覚 障リ
害 に つい て
耳鼻咽喉科領域は感覚器の集合であり、その機能が障害されると生活の質は著しく低下します。
聴覚障害、平衡機能障害、嚥下障害、音声機能障害などは周囲からもその障害を理解されやすいですが、
嗅覚障害は本人の自覚症状のみであるため、周囲からわかりにくいという特徴があります。
この障害は、生活の質が低下するのみならず、焦げたにおいやガス漏れのにおいなどの危険察知が困難
になり、生命を脅かすリスクもあります。一般に嗅覚は 30 歳を過ぎると低下していくと言われており、
80 歳以上では約半数が嗅覚障害を有していると報告されています。
嗅覚障害は原因別に
①副鼻腔炎による嗅覚障害
②感冒後嗅覚障害(ウイルス性上気道感染)
、
③外傷性嗅覚障害、
④先天性嗅覚障害、
⑤原因不明嗅覚障害
などに分けられます。
原因不明嗅覚障害の多くは加齢によるものと考えられており、80 歳以上では原因不明嗅覚障害の割合が
嗅覚障害全体の 50%を超えているという報告もあります。またアルツハイマー病やパーキンソン病などの
神経変性疾患において嗅覚障害を伴うことは以前より知られていました。近年これらの病態が詳細に解明
され、嗅覚機能の評価がパーキンソン病などの神経変性疾患の鑑別診断や認知症発症の予測に有用との報
告が見られるようになり、注目されています。
嗅覚障害の検査は、耳鼻咽喉科で行います。まずビデオスコープを用いて鼻内をよく観察し、CT などの
画像検査を併用して副鼻腔炎の有無など器質的な異常を評価します。嗅覚検査は静脈性嗅覚検査(アリナ
ミンテスト:アリナミンを静脈注射して匂いを感じる時間を計測する)
、基準嗅力検査(T&T オルファクト
メトリー:5 種類の基準臭を低濃度から順に嗅いでもらい、においを感じる濃度とにおいを判別できる濃度
を測定する)がありますが、後者は検査がやや煩雑で装置もやや大がかりなため、施行できる施設は限ら
れています。治療は副鼻腔炎などの鼻副鼻腔疾患を認めた場合には手術療法を行います。その他の原因の
場合は、発症からの時期を考慮してステロイド点鼻や各種漢方の内服などを比較的長期間行い経過を見て
いきます。
嗅覚障害に限らず、鼻症状でお困りの方はぜひ当院耳鼻咽喉科へご相談ください。
(耳鼻咽喉科
安原一夫)
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(放射線科
小林
瞳)
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