九州・沖縄の金融経済概況

2016 年 8 月 10 日
日本銀行福岡支店
Bank of Japan Fukuoka Branch
九州・沖縄の金融経済概況
(2016 年 8 月)
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1.総論
○
九州・沖縄の景気は、熊本地震の影響が和らぐにつれて、緩やかに持ち直している。
最終需要の動向をみると、個人消費は、消費者マインドが依然として慎重ながら、熊
本地震に伴う営業面への影響が和らいでいるほか、観光面においても各種観光支援策の
効果がみられ始めており、全体として持ち直しつつある。住宅投資は、熊本地震の影響に
より、一部に建築工事の遅れなどがみられているものの、緩やかに持ち直している。設備
投資は、高水準で推移しているが、熊本地震の影響により、一部に投資の先送りや維持・
補修投資の実施など上下双方向の動きがみられている。公共投資は、被災地以外における
大型案件に加え、熊本地震の復旧工事もあって、持ち直しに転じている。輸出は、自動車
や半導体関連を中心に持ち直している。
こうした中で、生産は、熊本地震後の操業再開や操業度を高める動きがみられるほか、
海外向けの増産効果もあって、このところ増加している。雇用・所得情勢をみると、労
働需給は着実に改善しており、雇用者所得は振れを伴いつつも緩やかに持ち直している。
先行きについては、熊本地震の復旧・復興需要や官民の各種観光支援策の効果が波及
する時期や程度について、注視する必要がある。また、海外経済や金融市場の動きが当
地経済に与える影響についても注視する必要がある。
1
<景気判断の前回との比較>
基調判断
項目
前回
景 気 全 体
今回
熊本地震の影響により観光面などで弱い
動きが続いているものの、営業や生産活 熊本地震の影響が和らぐにつれて、緩や
動など供給面の正常化が進むもとで、緩 かに持ち直している。
やかに持ち直している。
熊本地震に伴う営業面への影響は和ら
いでいるものの、消費者マインドが依然と
個 人 消 費 して慎重なほか、観光面の大幅な落ち込
みが続いており、全体として弱めの動きと
なっている。
消費者マインドが依然として慎重ながら、
熊本地震に伴う営業面への影響が和ら
いでいるほか、観光面においても各種観
光支援策の効果がみられ始めており、全
体として持ち直しつつある。
需 要 項 目
熊本地震の影響により、一部に建築工事 熊本地震の影響により、一部に建築工事
住 宅 投 資 の遅れなどがみられているものの、緩や の遅れなどがみられているものの、緩や
かに持ち直している。
かに持ち直している。
被災地以外における大型案件に加え、 被災地以外における大型案件に加え、
公 共 投 資 熊本地震の復旧工事もあって、持ち直し 熊本地震の復旧工事もあって、持ち直し
に転じている。
に転じている。
高水準で推移しているが、熊本地震の影
響により、一部に投資の先送りや維持・
設 備 投 資
補修投資の実施など上下双方向の動き
がみられている。
高水準で推移しているが、熊本地震の影
響により、一部に投資の先送りや維持・
補修投資の実施など上下双方向の動き
がみられている。
新興国経済の減速などの影響は残るもの
の、熊本地震による供給制約が和らいで 自動車や半導体関連を中心に持ち直し
出
いるほか、海外向け自動車等の増産効果 ている。
もあって、持ち直している。
輸
産
熊本地震後の操業再開や操業度を高め 熊本地震後の操業再開や操業度を高め
る動きがみられるほか、海外向けの増産 る動きがみられるほか、海外向けの増産
効果もあって、このところ増加している。
効果もあって、このところ増加している。
雇 用 ・所 得
労働需給は着実に改善しており、雇用者 労働需給は着実に改善しており、雇用者
所得は振れを伴いつつも緩やかに持ち 所得は振れを伴いつつも緩やかに持ち
直している。
直している。
生
2
2.個人消費
○
個人消費は、消費者マインドが依然として慎重ながら、熊本地震に伴う営業面への影
響が和らいでいるほか、観光面においても各種観光支援策の効果がみられ始めており、
全体として持ち直しつつある。
▽個人消費関連の動向
非耐久消費財
耐久消費財
百 貨 店 売 上 高
訪日外国人客を含めて高額品に弱さがみられているものの、熊本地震の影
響を受けていた営業面が正常化したほか、クリアランスセールや化粧品、飲
食料品の堅調さから全体として持ち直している。
スーパー売 上 高
消費者マインドは依然として慎重ながら、熊本地震による営業面への影響
が和らいでいるほか、気温が高めに推移したことに伴い季節商品に動意が
みられるなど、持ち直している。
コンビニエンスストア売上高
新規出店効果や各種販促施策などから、着実な増加が続いている。
家
気温が高めに推移したことに伴いエアコン等の販売が増加しているほか、
熊本地震に伴う買い替え需要もあって、白物家電やテレビを中心に堅調な
動きとなっている。
電
販
売
乗用車新車登録台数
(含む軽自動車)
サービス
旅 行 ・ 観 光
軽自動車で燃費不正問題の影響が一服しているものの、普通・小型車の伸
びが鈍化していることから、全体としては横ばい圏内の動きとなっている。
当地発の旅行取扱額は、海外向けはテロを含めた政情不安の影響から減
少が続いているが、国内向けは各種観光支援策などによって九州域内向
けを中心に持ち直しつつある。この間、観光面においても、熊本地震による
観光地の被災や消費者マインドへの影響が続いているものの、各種観光支
援策などによって持ち直しに向けた動きがみられている。
3.住宅投資
○
住宅投資は、熊本地震の影響により、一部に建築工事の遅れなどがみられているもの
の、緩やかに持ち直している。
6月の新設住宅着工戸数は、分譲の減少を主因に前年を下回った。
4.公共投資
○
公共投資は、被災地以外における大型案件に加え、熊本地震の復旧工事もあって、持
ち直しに転じている。
6月の公共工事請負金額は、県等発注分の増加を主因に前年を上回った。
5.設備投資
○
設備投資は、高水準で推移しているが、熊本地震の影響により、一部に投資の先送り
や維持・補修投資の実施など上下双方向の動きがみられている。
6月短観における2016年度の設備投資(除く電気・ガス)は、製造業・非製造業とも
に前年を小幅に上回る計画(全産業:+1.4%、製造業:+1.9%、非製造業:+0.6%)
となっている。
6月の建築物着工床面積(民間非居住用、後方3か月移動平均)は、4か月ぶりに前
年を上回った。
3
6.輸出
○
輸出は、自動車や半導体関連を中心に持ち直している。
6月の輸出額(九州経済圏)は、アジア向けを中心に前年を下回った。
7.生産
○
生産(鉱工業生産)は、熊本地震後の操業再開や操業度を高める動きがみられるほか、
海外向けの増産効果もあって、このところ増加している。
▽主要業種の生産動向
械
自動車は、海外向け新型車の増産は一服したものの、熊本地震後の挽回生産も
あって、高水準で推移している。船舶は、高水準横ばい圏内の動きとなっている。
電 子 部 品 ・デバイス
操業再開や操業度を高める動きに加え、新型スマートフォン向けの増産効果もあ
って、増加している。
はん用 ・生 産 用
・業 務 用 機 械
操業再開や操業度を高める動きなどから、持ち直している。
化
学
新興国や資源国向けが持ち直していることから、生産水準を高めている。
鉄
鋼
新興国や資源国向けで持ち直しに向けた動きがみられており、低水準ながら底
打ちしつつある。
品
国内需要は引き続き堅調ながら、熊本地震の影響が残存していることから、横ば
い圏内の動きとなっている。
輸
送
食
機
料
8.雇用・所得
○
雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実に改善しており、雇用者所得は振れを伴い
つつも緩やかに持ち直している。
労働需給をみると、新規求人の増加が続く中、有効求人倍率は上昇基調をたどってお
り、6月は過去最高水準となった。
5月の雇用者所得総額は、一人当たり現金給与総額の増加を主因に前年を上回った。
9.物価
○
6月の消費者物価指数(九州地区、生鮮食品を除く総合)は、前年並みとなった(6
月:0.0%)。
10.金融
○
6月の預金残高をみると、個人・法人預金を中心に前年を上回った。
○
6月の貸出残高をみると、法人向けや個人向けを中心に前年を上回った。
○
7月の企業倒産をみると、件数は前年を上回ったものの、負債総額は前年を下回った。
以
4
上