九州・沖縄の金融経済概況

2016 年 9 月 14 日
日本銀行福岡支店
Bank of Japan Fukuoka Branch
九州・沖縄の金融経済概況
(2016 年 9 月)
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1.総論
○
九州・沖縄の景気は、熊本地震の影響が和らぐ中、猛暑による押上げもあって、緩や
かに回復している。
最終需要の動向をみると、個人消費は、観光面で各種観光支援策の効果がみられるな
ど熊本地震の影響が全体として和らぐ中、猛暑による押上げもあって、このところ回復
しつつある。住宅投資は、振れを伴いつつも緩やかに持ち直している。設備投資は、高水
準で推移しているが、熊本地震の影響により、一部に投資の先送りや維持・補修投資の
実施など上下双方向の動きがみられている。公共投資は、被災地以外における大型案件に
加え、熊本地震の復旧工事もあって、持ち直している。輸出は、自動車や半導体関連を中
心に増加している。
こうした中で、生産は、熊本地震後の操業再開や操業度を高める動きが広がっている
ほか、海外向けの増産効果もあって着実に増加しており、地震前を上回る水準となって
いる。雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実に改善しており、雇用者所得は振れを
伴いつつも緩やかに持ち直している。
先行きについては、熊本地震の復旧・復興需要の進捗度合いのほか、海外経済や金融
市場の動きが当地経済に与える影響について注視する必要がある。
1
<景気判断の前回との比較>
基調判断
項目
前回
今回
熊本地震の影響が和らぐにつれて、緩や 熊本地震の影響が和らぐ中、猛暑による
かに持ち直している。
押上げもあって、緩やかに回復している。
景 気 全 体
消費者マインドが依然として慎重ながら、
熊本地震に伴う営業面への影響が和ら
個 人 消 費 いでいるほか、観光面においても各種観
光支援策の効果がみられ始めており、全
体として持ち直しつつある。
観光面で各種観光支援策の効果がみら
れるなど熊本地震の影響が全体として和
らぐ中、猛暑による押上げもあって、この
ところ回復しつつある。
需 要 項 目
熊本地震の影響により、一部に建築工事
振れを伴いつつも緩やかに持ち直してい
住 宅 投 資 の遅れなどがみられているものの、緩や
る。
かに持ち直している。
被災地以外における大型案件に加え、 被災地以外における大型案件に加え、
公 共 投 資 熊本地震の復旧工事もあって、持ち直し 熊本地震の復旧工事もあって、持ち直し
に転じている。
ている。
高水準で推移しているが、熊本地震の影
響により、一部に投資の先送りや維持・
設 備 投 資
補修投資の実施など上下双方向の動き
がみられている。
輸
出
高水準で推移しているが、熊本地震の影
響により、一部に投資の先送りや維持・
補修投資の実施など上下双方向の動き
がみられている。
自動車や半導体関連を中心に持ち直し 自動車や半導体関連を中心に増加して
ている。
いる。
産
熊本地震後の操業再開や操業度を高め
熊本地震後の操業再開や操業度を高め
る動きが広がっているほか、海外向けの
る動きがみられるほか、海外向けの増産
増産効果もあって着実に増加しており、
効果もあって、このところ増加している。
地震前を上回る水準となっている。
雇 用 ・所 得
労働需給は着実に改善しており、雇用者 労働需給は着実に改善しており、雇用者
所得は振れを伴いつつも緩やかに持ち 所得は振れを伴いつつも緩やかに持ち
直している。
直している。
生
2
2.個人消費
○
個人消費は、観光面で各種観光支援策の効果がみられるなど熊本地震の影響が全体と
して和らぐ中、猛暑による押上げもあって、このところ回復しつつある。
▽個人消費関連の動向
非耐久消費財
耐久消費財
百 貨 店 売 上 高
訪日外国人客を含めて高額品に弱さがみられているものの、化粧品、飲食
料品などが堅調に推移しており、全体としては猛暑による強弱両方の影響
など振れを伴いつつも持ち直している。
スーパー売 上 高
熊本地震による営業面への影響が和らいでいるほか、猛暑により季節商品
が伸長していることから、緩やかに増加している。
コンビニエンスストア売上高
新規出店効果や各種販促施策に加え、猛暑効果による押上げもあって、こ
のところ伸びを高めている。
家
猛暑によりエアコン等の販売が増加しているほか、熊本地震に伴う買い替
え需要も継続していることから、白物家電やテレビを中心に堅調な動きが続
いている。
電
販
売
乗用車新車登録台数
(含む軽自動車)
サービス
旅 行 ・ 観 光
被災地での買い替え需要もあって、全体として持ち直している。
当地発の旅行取扱額は、海外向けはテロを含めた政情不安の影響から減
少が続いているが、国内向けは各種観光支援策などによって九州域内向
けを中心に持ち直しつつある。この間、観光面においても、熊本地震による
観光地の被災や消費者マインドへの影響が続いているものの、各種観光支
援策などによって持ち直している。
3.住宅投資
○
住宅投資は、振れを伴いつつも緩やかに持ち直している。
7月の新設住宅着工戸数は、貸家の減少を主因に前年を下回った。
4.公共投資
○
公共投資は、被災地以外における大型案件に加え、熊本地震の復旧工事もあって、持
ち直している。
7月の公共工事請負金額は、市町村発注分の減少を主因に前年を下回った。
5.設備投資
○
設備投資は、高水準で推移しているが、熊本地震の影響により、一部に投資の先送り
や維持・補修投資の実施など上下双方向の動きがみられている。
6月短観における2016年度の設備投資(除く電気・ガス)は、製造業・非製造業とも
に前年を小幅に上回る計画(全産業:+1.4%、製造業:+1.9%、非製造業:+0.6%)
となっている。
7月の建築物着工床面積(民間非居住用、後方3か月移動平均)は、2か月連続で前
年を上回った。
3
6.輸出
○
輸出は、自動車や半導体関連を中心に増加している。
7月の輸出額(九州経済圏)は、アジア向けを中心に前年を下回った。
7.生産
○
生産(鉱工業生産)は、熊本地震後の操業再開や操業度を高める動きが広がっている
ほか、海外向けの増産効果もあって着実に増加しており、地震前を上回る水準となって
いる。
▽主要業種の生産動向
械
自動車は、海外向けを中心に高水準で推移している。船舶は、高水準横ばい圏
内の動きとなっている。
電 子 部 品 ・デバイス
操業再開や操業度を高める動きに加え、新型スマートフォン向けの増産効果もあ
って、増加している。
はん用 ・生 産 用
・業 務 用 機 械
旺盛な海外需要などから持ち直しており、高水準の生産となっている。
化
学
新興国や資源国向けが持ち直していることから、生産水準を高めている。
鉄
鋼
新興国や資源国向けで持ち直しに向けた動きがみられており、低水準ながら底
打ちしつつある。
品
国内需要は引き続き堅調ながら、熊本地震の影響が残存していることから、横ば
い圏内の動きとなっている。
輸
送
食
機
料
8.雇用・所得
○
雇用・所得情勢をみると、労働需給は着実に改善しており、雇用者所得は振れを伴い
つつも緩やかに持ち直している。
労働需給をみると、有効求人倍率は上昇基調をたどっており、7月は過去最高水準と
なった。
6月の雇用者所得総額は、一人当たり現金給与総額の増加を主因に前年を上回った。
9.物価
○
7月の消費者物価指数(九州地区、生鮮食品を除く総合)は、前年並みとなった(7
月:0.0%)。
10.金融
○
7月の預金残高をみると、個人・法人預金を中心に前年を上回った。
○
7月の貸出残高をみると、法人向けや個人向けを中心に前年を上回った。
○
8月の企業倒産をみると、件数は前年を下回ったものの、負債総額は前年を上回った。
以
4
上