NOBORUHIDA

Akita University
秋 田県六郷扇状地 の水文環境
肥
田
登
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pt
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Ⅰ は しが き
筆者 は,秋 田県六郷 扇状地 にお いて地下水位 の変動,地下水 の水 質,地下水 の人工 か ん養,地
下水管理 の あ り方 な どに関す る一連 の研 究 を実施 してい る。若干 の成果 はすで に拙 論 に著 して き
9
8
6,1
9
8
7a,1
9
8
7b,1
9
8
7C)
。小論 の 目的 は, これ らの研 究 との関連 にお いて扇状
た(
肥田,1
地の水文環境 の輪郭 を把握 しよ うとす る もので ある。
Ⅰ
Ⅰ 扇状地 の水 文環境
1 位 置,水系
0-6
0
k
m,東西約 1
2-1
5
k
mに
六郷扇状地 は横手盆地のほぼ 中央部 に位 置す る。盆地底 は南北約 5
及び,東縁 は断層崖 に よって奥羽 山脈 に接 す る。 この断層崖 にそ って南北 に一連 の扇状 地群 が発
達 した。主 な もの は北か ら白岩,斉 内, 川 口,千屋,六郷, 金沢,御所 野,皆瀬 ・成瀬 な どの各
扇状地 であ る。 なかで も六郷 扇状地 は,扇頂 か ら平地 に向 って開 く半 円錐 の形状 が典 型的 な扇 形
をな してい るこ とで よ く知 られ, しば しば教科 書や副読本 な どに も採 用 され て きた。
9
7
6,p.
41お よび添付地質 図 1:5
0,
0
0
0
)に よれば,六
秋 田県総合地質図幅 『
六郷 』 (
秋 田県,1
郷扇状地 は古 い扇状地 の上 に新 しい扇状地 が重 な り合 ってで きた沖積 ・合 成扇状地 で あ る。 ただ
し小論 では一般 的 な通 念か ら上 の図幅上 の新期扇状 地部 を もって六郷 扇状地 を指 す もの とす る。
この意味 でC
7
)
六郷 扇状地 は,南北約 5.
5
k
m,東西約 4k
mの楕 円形 をな し,面積 は約 1
4
nt
k
で あ るO
扇頂 は六郷 町 の関 田にあ り,扇端 に同町 の市街 地 が ある。 関 田か ら市街 地 に至 る周辺 が扇状 地 の
-1
85-
Akita University
図 1 六郷扇状 地の概況
a :市街地、宅地、公共施 設 b :水 田 C :畑地、果樹 園 d :林 、荒地、墓地
e :田沢疏水 f :七 滝土地改良区円筒分水施 設 g :地質柱状 図位 置 1-1
8(
図 2参照 上
図 3参照)0
観測井W l∼W 4 (
0,
00
0(
1
7
9
2
年 4月撮
破線 内は七滝土地改良区の受益地O下 図お よび コンター :六郷 町図 1こ1
影 、国際航業㈱調整) に よる。
9つ
2
5
′
,東経 1
40
0
3
4
′
の
主要部 に当 り,小論 で取 り扱 う対 象 となる (
図 1).扇央部 の野 中は,北緯 3
位置 にある。
扇状地 を発達 させ た河 川は丸子 川 (
鞠子 川)で ある。現 在 の流路 は扇項 部か ら北西 に向 い, 大 曲
m上流 で北側 の善知 鳥 川 と南側 の荒 川 (
上流 で湯 田沢 川)
方面 に流れ る。丸子 川は関 田か ら約 1k
とに分 かれ る1)。 この 2つの支 流域 か ら生産 され た出水 と土砂 が,扇状地 を形成 した こ とにな る。
善知 鳥川流域 は,面積 1
7.
1
4
np
k
, 主流長 1
0
k
mでやや ほ そ長 い。最 高地点 は真昼 岳 の 山頂 にあ り
1,
0
5
9.
9
m,最 低 地点 は両支流 の合 流地.
勘 二あ り1
0
5
m で あ る。海抜 5
0
0
m まで の面 積 は,坐体 の
55% を占め る。
2.
4
6
hT
f
,主流長 6.
7
k
mで円形 に近 い.最 高地 点 は7
80
m,最低 地 点 は1
0
5
m であ
荒 川流域 は面積 2
る。流域 内 には黒森 山7
6
3.
4
m を含 む。海抜 5
0
0
m までの面積 は全体 の71
%で あ る2)0
両流域 の比積分 (
hyps
ome
t
r
i
ci
nt
e
gr
al
)を求 め る と,善知 鳥川流域 が44%,荒 川流域 が47%で
あ り,善知 鳥川流域 の万 でやや蘭析 が進 んで い るこ とが わか る。
善知 鳥川水系 は1,
1
6
4の 1次の水 流数 を有 し,荒 川 と合 流す る手前 で 6次 の水流 とな る。この間
の平均分岐比 は4.
2で あ る。荒 川 (
七 滝川 を除 く)水系 の方 は, 1次 の水 流数 が 1,
4
8
9でや は り 6
次の水流 に まで発達 して善知 鳥川 と合 流す るO平均 の分 岐比 は4.
5で ある3)0
2 扇面 の勾配
扇面 の勾配 は どの程 度の もので あるか, 1ニ2
5,
0
00の地形 図 を用いて計 測 してみ る。 関 田の集
-1
8
6-
Akita University
蒲 よ り約 5
0
0
m 東北の扇頂部 に基点 をお くO位 置 は3
9
0
2
4
′
4
4′
′
N,
1
4
03
5
′
3
0
′
′
E,
標 高9
7
m で ある。 こ
0
の基点 よ り東北東か ら南西の扇端 に向 けて放射上 に 7方向の断面 を とる。つ ぎに各方向 ご とに 5
m 間隔の各等高線問の勾配 を読 み とる。 こ うして得 られ た 7方 向の勾配 を平均 す る と,高度別 に
0-8
5
m :0.
0
1
6
5,8
5-80
m 二0.
0
1
4
5,8
0-7
5
m :0.
0
1
3
2,
つ ぎ の よ う な 結 果 が 得 ら れ た。9
75-7
0
m :0.
01
25,70-65
m :0.
01
21,65-60
m :0.
011
9,60-55
m :0.
01
08,55∼50
m:
0.
01
0
6,50-45
m :0.
01
0
9,4
5-4
0
m :0.
0
0
91,4
0-3
5
m :0.
0
0
8
3,3
5-3
0
m :0.
0
0
5
60
0
m 以下 ,5
0-8
0
m,
8
0
m∼扇頂 までの 3つ の斜面部 に分 け
これ らの値 か ら,扇面 はお よそ標高 5
0
m 以下 では勾配 の オー ダーが 1
03で あ り,5
0
m 以上 に比べ て小 さい。5
0
m 以上 で勾配
られ る。5
02とな る。そ して と くに8
0
m 以上 にお いて 1
/
5
0を越 える所 も現 れ,勾配 は一段 と大
のオー ダー は1
き くなる。
扇面 勾配 の増減 は,扇状地形成 の時期 区分 を行 う場合 に 1つの指標 として用 い られ るこ とが あ
る4)。 しか し上 の値 を もって六郷扇状地 の形成 時が 2期 ない し 3期 に分 け られ る と速 断す るわ け
にはゆか ない。
3 地質
六郷 扇状地 は第四紀更新世 末 ∼完新世 (1万年前 まで)に形成 され た もの とされ る5'
O ここで は
第四紀 の沖積 層の下部 にある千屋層 を扇状 地 の基盤 と考 えてお きたいo
千屋 層6
)
は,新 第三期の末期 に当 る鮮新世 に形成 され た もので,層厚 は大 きい ところで数百 メー
トルに及ぶ。岩相 は硬岩,砂 岩,砂硬層,泥岩,凝 灰岩 か ら成 り,下部 に亜炭 を混有す る。一部
に透 水性 の よい砂喋層 を含む ため, 第四紀 の沖積 層 と見分 けに くい ところ もあ る。
)
。 それ に よる と地表面か ら基盤 ・
千屋 層
扇状地 を とり囲む形で, 3地点の試す い柱状 図が あ る7
0
m,扇端 の市街地 (
赤城 ) で少 な くて も7
0
m,局
までの厚 さは, 扇状地 の南端 (
仙南村篭林 )で5
状地 の東端 (
千畑町 中野)で 1
0
7
m で ある。
第四紀沖積 層の層序 は,か な らず Lも明確 に とらえ られてはいない。 ただ これ までに行 われて
きた 2,3の電気探査 な どの結果 に よればS
)
,扇頂 か ら扇端 にが ナて2
0-3
0
m 深 までの地 質は,シ
ル ト ・粘 土質層 を挟 んではい るが主 に砂裸 層か ら成 る もの を推定 され る。 と くに扇頂 か ら扇 央の
9
8
5
年 9月に野 中付近 (
海抜 6
0
m)で行 った人工 かん養 用
浅 層部 は巨磯 を多 く含んでい る。実際 に1
の ス リッ ト掘 削工事 にお いて, 3m 深 まで の層 か ら径 3
0
c
m∼5
0
c
mほ どの 巨磯 の混 入が確 認 され
た。
8か所 の柱状 図 を
このほか扇端部 にはい くつ かの地 質柱状 図が存在す る。六郷 町 の協 力 を得 て 1
入手 し, それ らを転記 して図 2に ま とめた。番号 で 6, 9,1
4,1
6は土質柱状 図 で あ り, ほかは
井 戸柱状 図で あ る。 いずれ も記載者 が異 な るので,地質判定 につ いての若干の差 異 は まぬがれ な
い。 これ らの柱状 図か らつ ぎの点が読 み とれ る。 第 1に,砂礁 層 お よび粘 土 ま じ り砂磯 層が主体
である。硬 径 は大 き く巨襟 の ま じる層 もあ る。 第 2に,粘土層が所 どころに挟 まれ るが,層 の連
続性 はか な らず Lも明瞭 ではない。不連 続 な粘 土層 が局部 的 に入 り組 んで い る もの と思 われ る。
0
m お よび40
m 深前後 に薄 い泥炭層の認め られ る個所 が ある。
第 3に,1
地質柱状 図に よる砂襟 層 な どの確 認 は,電気探査 の結果 を裏づ ける もので あ る。 しか しこれ ら
の柱状 図に して も,深 さの点 か ら第四紀沖積 層 の基底面 を追跡す る ところ までは入 りこめ ない0
4 水収支
分水 界に よって区切 った横 手盆地域 の水収支 (
1
9
41-7
0
年 の平均 ) に注 目 してみ よ う (
肥軌
1
9
80)
。年 平均 降水 量 (P)は2,
0
0
5
m
mで あ る。 月最 大降水 量2
41
m
mは 7月に現 れ, 月最小 降水量 1
0
4
-1
8
7-
.
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:
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3 1
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:
A
冒
図 2 六郷扇状地扇端部の地質柱状 図
消雪井) 3.
琴平 町 (
消雪井) 4.
琴平町 (
消雪井 )
1.
.
罵町 (
消雪井) 2‥罵町 (
5.
.
罵町 (
消雪井 ) 6.
町営住宅
7.
同(
安楽寺 ) 8.
町立幼稚 園
9.
町 立体 育館
1
0.
亀谷外科 医 1
1.
六郷 高校 1
2.
学校給 食セ ンター 1
3.
六郷 町赤城 1
4.
六郷小学校
1
5.
米町 (
消雪井) 1
6.
六郷 町役場 1
7.
六郷 町農協 1
8.
町営住宅 位置 につ いては図 1参照。
a :砂 b :玉石、裸 C :粘土 d :シル ト e :粘土質、粘土 ま じr
) f :シル ト質
g :砂質 h 二腐植上 i:泥炭 j :泥岩
m
mは 5月に現 れ る。冬季 間, とくに1
2-1月の降水量が相対 的 に大 きいので,冬半期 の降水 量 は
夏半期 の降水量 を上 回 る。Th
o
r
nt
h
wa
i
t
e法 に よって求 め た年平均 の可能蒸発散 量 (
E)は6
6
3
m
m
で ある。上 の P,E両者 の値 か ら年平均の過剰水分 量 は1
,
3
4
2
m
mとな る。横 手盆 地のほぼ 中央 にあ
る六郷 扇状 地の場合 も, これ らの値 と大 同小 異のはずで ある。
市街地の最大積 雪深 は平年 で 1
3
0
c
m程度 で あ る (図
3参 照)。最近 の例 を見 る と1
9
8
5-8
6
年 冬の
1月2
6日に8
6
c
mを記録 した.
7日に1
9
4
c
m,雪の少 なか った1
9
8
6-8
7
年 冬の ピー クは
ピー クは 2月1
積雪深 は扇端 か ら扇頂 にむ けて約 2
0
c
mほ どの増加 をみ る。
5 土地利用
水 田 :市街地 で活用 されて い る地下水の主 なか ん養源 は扇状地面 で ある。扇状地 の土地利 用は
どの よ うな もので あろ うか。図
1には1
9
72年撮影 に よる六郷 町図 1:
1
0,
0
0
0に基づ いて土地利用
の実態 を 4つの項 目に分 けて示 した。水 田,畑地 ・果樹 園,市街地 ・宅地 ・公共施 設,林 ・荒地 ・
墓 地で ある。つ ぎに扇頂 の七 滝土地改 良区の円筒分水施 設の地点 をA とし, 市街地 に流れ こむ地
図
下水 のか ん養域 を配 慮 して扇状地面 に任意 の扇 形 ABCをつ くる(
1
)0
BC間 は5
0
mの コン
ター を境 界 とす る。 そ して扇形 内の土地利 用 を 5m間隔の コンター で区切 られ た標 高区別 に計測
-1
8
8-
Akita University
した。結果 は表 1の とお りで あ るO
表 1 扇形 ABC (図 1)の標高 区別 土地利用
f
標高m 面 積 kt
内
水田
5
0-5
5 1.
4
2
0
5
5-6
0 1.
2
1
3
6
(
)
∼6
5 0.
9
8
2
6
5-7
0 0.
8
4
8
7
0-7
5 0.
4
5
5
7
5-8
〔
) 0.
5
3
0
8
0-8
5 0.
2
5
8
8
5-9
0 0.
1
0
3
果
畑 樹 地
園
6
0.
3
8
3.
6
7
9.
9
9
1.
7
8
8.
7
8
1.
5
8
5.
8
6
1.
2
%
訳
宅
市
公共施
衝 地
設 墓
荒 柿 地
8.
6
3.
4
2.
2
2.
0
1.
7
0.
6
0
4.
3
2
7.
9
1
2.
5
1
7.
0
3.
9
7.
8
1
5.
0
1
3.
5
2
1.
6
3.
2
0.
5
0,
9
2.
4
1.
8
2.
9
0.
7
1
2.
9
BCは50mグ)コンターを境界 とする
C
六郷 町 図
1:1
0,
0
0
0し
1
9
7
2
年 4月撮 影 、 国 際航 業 ㈱ 調 整 ) に
基づいて作成。
ここで注 目してお きた いのは,扇状地 の土地利 用の大部分 は水 田で あ る とい うこ とであ る。全
8%に達 す る。 標高6
5-7
0
mにお いては9
0% を上 回 る。
体 の7
9
6
3
年に
水田は もともとこの よ うに 多 くを占めては いなか った。扇状地 の水 田は, 田沢疏水 が 1
完成す るこ とに よって飛躍的 に拡 大 した。 それ以前 の水 田は, 図 1に破 線 で示 す よ うに比較 的扇
頂郡 を対 象 とした七 滝土地改良区の受益地 に限 られて いた。水 田以外 の土地 は林地 ・荒地 が主 で
あった9)。
かんが いシステム :扇状地 の水 田は, 2つの系統 のかんが い用水一 七 滝土地 改良区の関 田分水
系 と田沢疏水系一 に よってかんが い され る。 関 田分 水 のかんが い用水源 は,丸 子 川の表流水 で あ
る。土地改良区の管理 す る取水 口は 3か所 に分 け られて い るが,扇状地 の水 田かんが いに直接 か
かわ る取水 口は,関 田堰 で ある。関 田堰 に よる取水量 は,最 大 で 1.
8m3
/
s
e
c,平均 で0.
2
4
6m3
/
S
e
e(
過
午,慣行水利権 )で あ り, ここで取 り入れ られ た水 は, 円筒分水施 設 (
図 1の A地点) に よって
1
0か所 に分 け られ る。 この なかで野 中堰 , 筑後 屋敷堰,増堰 な どが図 1に示 した主 に扇頂部付近
9
8
5)
0
の受益地 に水 を供給 す る(
秋 田県七 滝土地 改良区,1
このほかの水 田は, 田沢疏水系 の用水 に よってかんが い され る。扇状地 にかかわ る田沢疏水 の
分水 口は, 図 1に示 した1
3- 1- 2,1
4- 1-2の 4か所 で ある。 ただ し受益町村 は六郷 町 のほ
か千軋
仙南の両町村 を含 む。秋 田県田沢疏水 土地改良区の 「
取水計画 お よび分水 口別 かんが い
9
7
9
年 度の 田沢疏水 の通水期 間は, 5月 1日か ら 9月1
0日まで とされ,
用水配分計画」に よる と,1
4つC
7
)
分水 口を合 わせ たかんが い面積 と分水 量 は, それ ぞれ,6
4
2
ha,3.
4
5m/
s
e
cで あ ったO
扇状地の農家 を例 に, 水稲 にかかわ る農 作業 の流れ を表 2に示 した。 かんが いの期 間は 5月初
旬に始 ま り, 8月未 に終 るo
3
なお市街地の西側 に接 す る永 日
引ま, か って扇端 の湧泉群 の水 を引いて拓 かれ た もので ある.六
8
0
haに達 した とい う。しか し最 近 は田沢疏水 の水 が潤沢 に使 え
郷町産業課 による と,その広 さは4
るため に,湧水 かんが いの システムは崩れつつ あ る。
-1
8
9-
Akita University
表 2 六郷扇状地 丁農家の農作 業 (
水稲 )の実績 ,1
9
77年
農
作
肥
業
料
・ そ
の
他
重 カ リ醸 し
4
0
k
g/反 J りン化苦土妄 r
AO
k
g/戻)
媒耕起 した田 をさらに掘 l
)起 こす
米畔のす き間 をな くし漏 水 を防 ぐ
MO粒剤 1枚分
2i4I6-トリクロル7 ェ ノー ルー4'
一
ニ トロ7
ェニ ルエ- テル 9%)
7 ゾワン粒 割 り モチ病, 夜分
/イソプ ロピル-1・3-ブナ オ
病害 虫,成分
ス ミチ オン乳 剤 \
/ メチル 13-/チ ル 4-ニ トロ
7 ェ二 J
レ)す すホ スフ ェー ト5
00
/
o)
E
E
l
植 え し3ha)
硫安 (
1
0
k
g/
良)-苗の活着の促 進
植つ け
ス ミチ オン乳 剤 とカ ス ミン乳 剤の混合 (
1
5
0[
/良. 1
0
0
0倍液 )
病害 虫防除 L
全水田)
か スカマ イノン 2% 塩酸塩 23
0
/
O)
カス ミン乳剤 (イモチ病.成分
全田溝掘 り中干 し
※排 水溝 を掘 り. 酸素 欠乏 を防 き根の伸長 を回 るため中干 しす る
病 害 中防除
オ り/
+メ- ト粒剥 くイモチ病 , 3k
g′
/
丸 或分 3ア リルオキン
-1・2-ベ ンゾ イソチ7 ゾー タ
レ1・1-ンオキ/ ト8%1
(
ササ 二 ンキ田のみ)
間断濯水
田面が完全 に覆
われ ない程 度
病害 虫防除 し
全E
B)
ヒ ノサ ン粉 剤 「イモチ鳳
3k
g/反,成分 0エチ 7
い S・
S-
ジ7 ェ二J
L
/
/チ オホ ス7ェ- ト15
%)
ササ ニ /キE
E
l
以外)
追 い肥 し
チ /ソ12
k
g
/良
航空防 除
E
L
,
Lて
ス ミチ オン乳 剤 とラフサ イ トゾル しイモチ病 1 と水の混/
病害 虫防除 (
一部 の水 EEl)
※ イモチ病の傾 向が少 しあ ら1っ
れ た乱
追 い肥 f
ササ ニ シキB
]のみ '
h
TK化 荻
追 い肥 (
ササ ニ /キ田の一部 )
尿素 1k
g/反
深 水 と間断濾 水
6℃以下 の時 に深水 L
I
Oc
m以上 ) て1
6℃以上の時に間断潅水
気温 か1
1 1 6の比率
127
′
′
ha
け ノソ12
k
g/反
ヒ ノサ ン粉 剤 3k
g/良
カ リ12
k
g
ナ ノソ12
k
g/反
/ 皮
/
'
L
カ リ12
k
g
/戻
追 い肥 (
ササ ニ シキ田のみ 〕
h
TK化故
追 い肥 、
言‡ 三 至芸も1,
完全落 水
尿素 少 々.秋諸現 象の防止 硝石の老化 を防 ぐ、
利巧こ'
L
戴ササニ /キ作付面 暗 3反歩
ア キヒ7
)り作付面積 5乾,
S
出荷
6 地下水位
扇央 ∼扇端 間で,観測井W l∼W 4に よ り地下水位 の変動 を測定 した。観測井 の位 置 は図 1に
示 した。1
9
7
9
年 4月か ら8
3
年1
0月 までの水位 の経時変化 は,図 3に示 す とお りで あ る。 ここでW
lか らW 3までの黒丸 は, 1日 1点 1
2時の水位 で あ り,W 4は毎 回 7時の水位 で あ る。 また同国
には六郷 扇状地 に もっ とも近 い大 曲気象観 測所 (
3
9
O
2
9.
3
′
N,1
4
0
0
3
0.
0
'
E,標 高 3
0
m)
1
0)
の 日降水
量 (
m
m) を付 した。 さらに積 雪藻 は,大 曲気象観測 所の記録 と, 市街 地の東側 にあ る七滝 土地改
良区前で測定 した もの とで あ る。
これ らの観 測結果 か ら六郷 扇状地 の扇央 ∼扇端 の地下水位 は, かんが いお よび積 雪 ・融雪 の影
響 を強 く受 けなが ら大略つ ぎの よ うな変動特性 を示す。 第 1に,地下水位 は 4月上旬 の融雪時 と
5-8月のかんがい期 に高 く,非 かんが い期 に低 いO 第 2に,融雪 に よる地下水位 の ピー クは,
扇 央部 の積 雪深 がゼ ロにな る時点 と一致す る。 第 3に,冬季 間の地下水位 は,積 雪深 の大 きさに
対 応 して変動 し,積 雪深が最 大 となる時期 に地下水位 は最低 とな る。 これ らの特色 はW 1∼W 4
-1
9
0-
Akita University
▼
r
■
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l
.
L
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(56)
i …wl
こ
こ
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一
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l
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I
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㌔
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:
7
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.
、
.
,
,
WZ
一I
1979-80
一
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.W4
,
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仰
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,
一
日W3 '
.
.
(
52)
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56)
1
981-82
'.W4
・
(
52)
:
ー`
-̀ ー
d
一
'
.
∼
-W 1
図 3 六郷扇状地扇央∼扇端の地 下水位 の変動 1
9
7
9.
4
-83.
1
0
pは 日降水 量mm(
大 曲)、Sは積 雪深 :破線 は大 曲、実線 は六郷 町 (
七 滝土地改良区前)
の間に共通 してお り,観 測井 間の変動パ ター ンに大 きな差異 はない。 このほか降水 量の 多い時 に
は, それにそった地下水位 の一時的 な上昇 が認め られ る。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ む すび
以上,六郷 扇状地 の水文環境 の概要 につ いて水系,地質, 降水,土地利 用,地下水位 な どの観
点か ら述べ て きた。 これ らの こ とが らは,地下 水の利 用,収支,水質, 人工 かん菱 な ど六郷 扇状
-1
91-
Akita University
地 の地 下 水研 究 の 冒頭 に位 置 す る もの で あ り, 研 究全 体 の理 解 をはか るため に取 りま とめ た もの
で あ る。 今後 , 一 連 の研 究 の集 大 成 を期 し, 改 め て大 方 の ご批 判 を仰 ぎた い と考 えて い る。
付記
1,62年 度文 部 省科 学 研 究 費一般 研 究 C (
課題 番 号 61
580209,代 表 ・肥 田)
小論 は, 昭和 6
に よる研 究 成果 の 一部 で あ る。
注
1
)丸子 J
L
I
は扇状地付近 では現在 で も鞠千 日は い う。丸子川は本来大 曲付近 での呼称 。ただ し,最近 の地
形図か らは鞠子川の文字が消 えている。 また荒 川は湯 田沢 川の下流部での呼称 であ る.
2)善知 鳥 川流域 1
7.
1
4
nP
k
,荒 川流域 2
2.
46
hf
の各高度別面積 比 を求 めて以下 (
善知 鳥 川流域 %,荒 川流
0
0-2
0
0
m (
1
8.
6,1
3.
3
),2
0
0-3
0
0
m (
1
0.
7,1
8.
3
),3
0
0-4
0
0
m (
l
l.
8,1
9.
0),
域%)で 示 す と,1
4
0
0-5
0
0
m (
1
4.
2,2
0.
1
),5
0
0-6
0
0
m (
1
2.
8,1
4.
5
上 6
0
0-7
0
0
m (
1
3.
1,1
0.
5
),7
0
0-8
0
0
m (
l
l.
4,
4.
0),8
0
0-9
0
0
m (
5,
5,0.
3
),9
0
0-1,
0
0
0
m (
1.
4,0)
,1,
0
0
0
m∼(
0.
5,0)で ある。 1:2
5,
0
0
0
地
形図 を使用。
3
)水系分析 には 1:2
5,
0
0
0
地形図 を使 用 した0
4
)六郷 扇状地の分類,時期 区分 については,藤原 し
1
9
5
4,p.
6
7-6
9
),小西 (
1
9
6
6,p.
2-4),近藤 (
1
9
6
9,
p,
3
),秋 田県 (
1
9
7
6,p.
41
)な どにふれ られている。扇状地の分類 に藤原 (
1
95
4)は, 湧泉 の分布,扇
1
9
7
6)は,扇面勾配の増加,
状地勾配の異状,表土の状態,土地利用 と植生の 4指標 を用い,秋 田県 (
末端湧水帯の分布,微地形の保有状態 な どを用いた。
5
)六郷扇状 地の形成期 について秋 田県 (
1
9
7
6,付 図)は更新世末期 とし,斉藤 (
1
9
8
3,p.
6
4)は横手盆
地の扇状地 を一括 して完新世 で ある とす る。
6
)小西 (
1
9
6
6,pβ),秋 田県 (
1
9
7
6,p.
3
4)に よる。
7)小西 (
1
9
6
6,p.
9-1
0),秋 田県 (
1
97
6,第3
4図, 第4
6図,付図) を参照。 なお小西 (
1
9
66,p.
1
0)お
1
9
6
6,p.
4
0
)は六郷町市街地 (
赤城)の第四紀層厚 を1
3
9
m とす る。
よび狩野 ・上 田 (
8)農林省東北農政局 (
1
9
65,p.
5お よび2
8),近藤 (
1
9
6
9,p.
l
l
)による。
9)大 日本帝国陸地測量部,大正 2年測図同 5年製版,大正 5年 3月3
0日発行 ,1:5
0,
0
0
0
地形図六郷 に
よる。
1
0
)秋 田県気象 月報 による。
文
献
秋 田県 (
1
9
7
6
):秋 田県総合地質図幅 『
六郷 』
.7
0
ぺ- ジ+付図.
秋 田県七滝土地改良区 (
1
9
85)I 『
七瀧用水』同改良区,4
2
ペー ジ.
藤原健蔵 (
1
95
4):横手盆 地未練 北半分 の地形一 断層崖下 にみ られ る地形- .東北地理, 第 7巻 第 2号,
6
3-6
9
.
肥田登 (
1
9
80
):秋 田県横手盆地の水収支 1
94
1-1
9
7
0
年.秋 田大学教育学部研究紀要 (
人文 ・
社会)
,第3
0集,
9
6-1
0
1
.
肥田登 (
1
9
8
6)二秋 田県六郷町の湧泉の分布 , 湧出量お よび水質 につ いて.秋 田大学教育学部研究紀要 (
人
文 ・社会),第3
6
集,7
3-8
6.
肥田登 (
1
9
87a):秋 田県六郷扇状地 における池 を用いた浸透実験.地下水学会誌,第2
9
巻 第 1号 ,1
9-2
5
.
-1
92-
Akita University
肥田登 (
1
9
87b):秋 田県六郷 町 の 自家 用消雪パ イプの使用状況 につ いて.秋大地理, 第34号,27-33.
1
9
87C):水 田 を用 いた積 雪期 間の地下水 人工 かん義一 秋 田県六郷扇状地 の例一 .日本地理 学会予
肥 田登 (
稿集 ,3
2,6
2-6
3.
狩 野豊太郎 ・
上周 良一 (
1
9
6
6)・横手盆地 々下地質 につ いて・秋 田大学鉱 山学部地下資源開発研 究所報告,
第3
4
号 ,3
5-45.
近藤思三 (
1
9
6
9巨 六郷 町扇状地地下水 調査報文.六郷 町, 1-1
7
.
小西泰次郎 (
1
9
6
6)ニ秋 田県横 手盆地 の水理地質学 的研究・地質調査所報告, 第21
6
号, ト 3
7
.
農林 省東北農政局 (
1
9
6
5):秋 田県仙北平野地 区 ・
地下水調査 報告 書 (
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
報)
. 地質地下 水調査報告 集, 第 8
集,調査者 :磯 崎,赤 間, 酎 寸,松 岡, 1-5
2
.
斉藤享治 (
1
9
8
3
):扇状地 の形態 僧 迄 の統計分析 に よる岩層供給 量 と河床変化 の時代変遷.地理学評論,
第5
6
巻 第 2号 ,6
1-8
0.
-1
93-