仕様書 - NEDO

仕様書
材料・ナノテクノロジー部
1.件名
スマートセルによる物質生産分野の研究開発の方向性に係る検討
2.背景及び目的
近年、バイオテクノロジーの基礎技術であるDNAシーケンサーが超低コストで利用可
能となる一方、ゲノム編集技術などの新しい革新的基盤技術の登場によりスマートセル※
を容易に作成できる環境が整いつつある。これらの基盤技術は、高度な情報処理技術の発
展と併せて、各国の大学、企業等であらゆる種類の生物の遺伝子情報とその機能の解析を
促進させている。これにより生物の機能を遺伝子レベルで認識・利用することで、新たな
物質を製造できる世界が開かれつつある。例えば、医療分野ではこれまで「低分子化合物」
が主流だったところから、生き物が生み出す抗体等のたんぱく質をデザインして薬に使用
する「バイオ医薬品」が台頭し、医薬品市場の上位を占めるようになっている。また、工
業分野においても生物の機能を最大限活用することで、酵素、化粧品、化成品などの物質
が製造されつつある。
このような背景から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「N
EDO」という。
)では、平成28年度から「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開
発」プロジェクトを実施している。このプロジェクトは、遺伝子設計に必要となる精緻で
大規模な生物情報を高速に取得するシステム、細胞内プロセスの設計、ゲノム編集などを
産業化するための技術開発を行い、これらを利用して植物等による物質生産機能を制御・
改変することで、省エネルギー・低コストな高機能品生産技術の確立を目指すものである。
本調査事業では、進展著しい“スマートセルによる物質生産分野”を対象に、各国にお
ける最新の政策動向・技術動向に係る調査、我が国の競争力分析、事業化ターゲットとす
べき戦略物質の検討等を行い、今後取り組むべき技術面、制度面の方策を明らかにするこ
とを目的とする。
※スマートセル・・・高度に機能がデザインされ、機能の発現が制御された生物細胞
3.事業内容
(1)世界各国における政策動向・技術動向の調査
米国、欧州、中国、シンガポール等を対象にスマートセルによる物質生産分野の政策動
向や技術動向を調査する。具体的な調査事項は以下の通り。
各国のスマートセルによる生産物質分野に関連した最新の政策動向を整理する。
各国のナショナルプロジェクトや代表的な企業(大手企業、ベンチャー企業)、大学等
の研究計画・取組内容。
特に、各機関が標的としている戦略物質とスマートセルデザインのために情報科学を
どのように融合させようとしているかについては、具体化して整理する。
海外のiGEMなど、関連分野の裾野を広げるような顕著な取組内容。
(2)事業化ターゲットとすべき戦略物質の検討
化学工業プロセス等との比較におけるバイオプロセスの優位性、コスト性を整理したう
えで、我が国が産業的にターゲティングすべき戦略物質(標的化合物)を検討する。検討
の際は、市場規模やコスト、社会的意義、文献等のエビデンスをもとに複数の有識者によ
り議論する。具体的な検討事項は以下の通り。
物資生産において原料として利用している枯渇資源を列挙し(たとえば天然ゴム、バ
ニリン等香料、パームオイルなど)
、それら原料ならびに最終製品がバイオプロセス生
産に転換される可能性を検討すると共に、その技術的課題を抽出する。
現在工業プロセス(バイオプロセス以外の化学工業プロセス、天然物から抽出等)で
生産されている化学物質について、需要が伸びている化学物質、低コスト化により需
要増加が期待される化学物質を列挙し、それらがバイオプロセス生産に転換される可
能性を検討すると共に、その技術的課題を抽出する。
現在工業プロセス(バイオプロセス以外の化学工業プロセス、天然物から抽出等)で
生産されており、かつバイオプロセスでの合成ルートが公知になっていながらバイオ
プロセスで生産されていない化学物質について、バイオプロセスで工業化されない理
由、技術的課題を抽出する。
バイオプロセスの特徴である光学異性体の制御により産業化されている化合物を列挙
し、その産業分野や周辺化合物に関して、今後産業化が期待される化学物質を列挙し、
それらが実現される可能性を検討すると共に、その技術的課題を抽出する。
その他潜在的な市場の洗い出し、成長事業領域でのブレークスルーの実現可能性等も
適宜検討する。
上記検討結果から、実現可能性(コスト、技術面)
、市場規模、社会的意義等の観点で
我が国がターゲティングすべき重要領域(複数)を選定する。加えて、その領域のコ
スト構造を分析し、ブレークスルーが必要とされる要素技術を明らかにする。
(3)我が国が構築すべきエコシステムの検討
(2)の戦略物質を生産するために、我が国が構築すべきエコシステムを技術的、経済
的、制度・人材的に検討する。検討の際は、文献等のエビデンスをもとに複数の有識者に
より議論する。具体的な検討事項は以下の通り。
(2)の戦略物質を生産するためにどのようなエコシステムが確立される必要がある
か検討する。技術面については、遺伝子配列デザイン、遺伝子操作技術、育種・選抜
技術、培養技術、抽出・精製技術等の生産工程の整理、経済面に関しては、各生産工
程に係る産業構造の整理、制度・人材面については、産業構造を成立させるために必
要な施策の整理を行う。
上記エコシステムの各要素について、現状とのギャップ、日本の強み・弱みを分析す
る。
上記ギャップを埋めるための技術課題やコスト的課題等を抽出し、そこに日本の強み
が生かせるか検討する。
上記ギャップを埋めるために、必要なアプローチ(海外との連携含め)を検討する。
(4)必要となる施策のまとめ
(1)から(3)までの調査結果を踏まえ、NEDOおよび経済産業省と密に協議し、
国内において求められる施策(技術開発、制度等)を取りまとめる。
4.NEDOとの連携
事業実施にあたっては、NEDOと綿密に協議した上で進めること。
5.調査期間
NEDOが指定する日から平成29年3月31日(金)
6.予算額
1,000万円以内
7.成果報告書の提出
提出期限:平成29年3月31日(金)
提出部数:電子媒体CD-R(PDFファイル形式)1部
提出方法:
「成果報告書・中間年報の電子ファイル提出の手引き」に従って提出のこと。
http://www.nedo.go.jp/itaku-gyomu/manual_tebiki_index.html
8.報告会等の開催
調査期間中または調査期間終了後に、成果報告会及び関連する委員会等での報告を依頼
することがある。
9.他調査事業との連携
平成28年度調査事業「バイオエコノミーの現状分析とスマートセルが変える未来像に
関する調査」と調査内容を適時共有し、効率的な事業推進を図ること。