更新日:2016/10/4 調査部: 高木路子 企業:低油価に伴う探鉱への影響 (各社の財務諸表及び各種報道等) ・新たな石油・ガス発見埋蔵量は近年減少傾向を示しており、2015 年は低油価が追い討ちをかけて新規 発見量は過去最低水準であった。さらなる影響が予想される。 ・IEA によれば、世界の上流開発はこの2年で4割強削減されたと推計される。別の調査機関によれば、 世界の探鉱費は価格高騰期に比べて5割以上が減少することが見込まれている。低油価により探鉱専 業企業の破綻や買収、中小企業やメジャーの探鉱費の削減が行われ、掘削数も減少している。 ・高油価当時は、需要の堅調増により将来も開発が可能であるとして投機的な資金が集まりやすくフロン ティア探鉱が推し進められたが、市場環境が様変わりし収益確保までの道筋が描けなくなった。Shell や Statoil がアラスカ探鉱を中止するなど新規エリアでの試掘を取りやめ、既存生産エリア等の商業化に近 い案件において新たな油ガス層の発見に努めている。 ・継続して探鉱ホットなエリアとしては、既存エリアのメキシコ湾、西アフリカ沖、南米大西洋、豪州、ある いは消費地に近いミャンマー、あるいは地中海、黒海(すべて大水深)などであり、近年では、メキシコの 沖合、エジプト沖、モーリタニア/セネガル沖、南米ガイアナ沖、ミャンマー沖等で新たな油ガス層発見の ニュースが報じられている。引き続き、同地域での資源の評価作業や同周辺への新規参入などが予想さ れる。 ・低油価の状況下では、能動的に資産買収することで開発案件の形成を追求する企業も見受けられる。 オペレーター権も含めた資産の売却が行われるケースもみられ、ExxonMobil、Woodside や国営石油会 社など M&A を選好する企業は開発の主導権を含めたポジション確保に動いている。あわせて周辺での 探鉱事業を視野に入れた拡大展開で地域的なポジションの強化の動きもみられる。 1.2015 年の石油・ガス発見埋蔵量、過去最低水準 各種レポートによれば、2015 年の石油・ガス埋蔵量発見量は過去最低水準である。特に石油埋 蔵量は最低の 27 億バレルを記録したとの報告もある。世界の年間石油消費量は 350 億バレルであ り、10%もカバーできていない水準である。 2014 年に急落した原油相場は現在 40-50 ドル付近で小康状態にあり、先物相場も 2020 年頃ま で 50 ドル台前半で取引されている。この価格水準では投資を増やせず、バランスシートの安全性 を優先して石油企業は上流活動のさらなる縮小を余儀なくされている。IEA によれば、世界の探鉱 開発費はこの2年間で4割強がカットされたと推定(図1)。別の調査機関の推定では、世界の探 –1– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 鉱費は価格高騰期に比べて5割以上減少したと推定されている。さらなる埋蔵量発見への影響も予 想される。 (IEA 2016) 図1.IEA による世界上流投資の支出見通し 2.新たな探鉱事業のトレンド 近年、主な新規探鉱エリアは沖合の大水深海域、海象条件の厳しい海域や開発が難しい北極圏、 あるいは超高圧の大深度へとシフトしていることから、探鉱地域のマチュア化に伴う発見リスクの 高まり、加えて掘削環境の複雑化で1本あたりの掘削にかかる時間や費用も高まっている。探鉱事 業は商業発見のリスクが高い上に生産開始するまでに早くても4-5年~長ければ 15 年以上と相 当な時間がかかる。先行き不透明の中では各社の探鉱活動も短期的な収益確保が期待できる案件に シフトさせて開発費と同様に軌道修正・見直しを行っている。 特に、先の高油価時は、需要さえあれば将来開発が可能であり、投機的な資金も集まりやすく石 油企業によってフロンティアでの探鉱が推し進められた。しかし市場環境が様変わりし、低油価環 境下においては Shell や Statoil がアラスカ探鉱を中止などフロンティアでの探鉱を見直し商業化 に近い案件の新たな油層発見に努めている。 3.世界で減少する掘削活動 掘削サービス会社 Baker Hudges による稼働中のリグ数は、2014 年央時点で約 1380 基であっ たのが、2016 年 7 月には 30%減の 970 基まで減少している(表1)。特に地域ごとに偏りがみら れる。中東地域がほぼ横ばいに対して、中南米地域のリグ稼働数が 2014 年 7 月に比較して 55% 減と大幅に減少している。大水深探鉱などの試掘案件が多いアフリカ沖合は掘削数がピーク時に比 –2– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 べて 70%減少しており、掘削活動の減速感が一段落した他地域と異なり、依然として減速傾向が みられる(図2)。また、陸上掘削と沖合掘削で比較すると、陸上掘削のピークが価格下落をし始 めた直後の 2014 年 7 月であったが、沖合掘削のリグ稼働数ピークは4ヶ月後の 2014 年 11 月で あった。陸上掘削に比べて海上掘削は、掘削計画の変更やリース契約調整などにおいて市況変動に 伴う時間的なラグが長いことが背景にあると推測される。 表1.掘削リグ装置の稼働数の変化(陸上、沖合別) (基) 陸上 アフリカ アジア・太平洋 欧州 中南米 中東 全体 2014 年 7 月 91 140 98 339 378 1046 2016 年 7 月 70 98 52 153 339 937 増減(%) -23% -30% -47% -55% -10% -32% 沖合 アフリカ アジア・太平洋 欧州 中南米 中東 全体 2014 年 7 月 46 113 55 68 54 336 2016 年 7 月 12 88 42 33 51 228 増減(%) -74% -22% -24% -51% -6% -33% ロシア、イラン、中国陸上を含まない データ出所:Baker Hughes 図2.地域別のリグ稼働変化 イラン、ロシア、中国陸上、北米を含まず –3– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 4.探鉱費の削減 メジャー、中堅・中小の民間企業は、開発コストの削減、探鉱費の削減、操業費の削減など全面 的に支出費用の削減を行っている。石油開発事業に占める探鉱費は、企業の E&P 投資戦略によっ て様々であるが、2013 年当時では、メジャークラスであれば上流支出の 10%台前半、E&P 企業 では中堅どころで同 10%程度から探鉱重視では 50%超と高い企業もみられる。 低油価環境に適応するための探鉱計画見直しにあたり、大手企業はフロンティア探鉱を取りやめ、 既存生産地に回帰したり、新たな油・ガス層発見したエリアでの評価作業に絞り込むなど比較的知 見を有するエリアに集中する。加えて将来の開発を見据えて市場アクセスが容易な案件、あるいは 合意形成しやすい少数のコンソーシアムによる案件なども円滑な事業推進につながりやすいと考 えられる(図3)。 図3.低油価環境下での探鉱計画の際の視点 低油価環境下での探鉱する際の視点 ・フロンティア ⇒ 既存油・ガス田あるいはその周辺 知見のない ⇒ 知見のある地域・国 ・試掘 ⇒ 埋蔵量評価 <加えて開発・生産を踏まえ> ・既存施設や出荷インフラあり(新規より拡張) ・消費地に近い、市場アクセスしやすい ・パートナーが少ない ・小規模、短期間で開発可能 ・海上より陸上、非在来型資源よりも在来型 ・より良好な契約条件 ・政治/経済の安定や産油国政府サポート –4– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 5.企業別にみる傾向 2006 年から 2013 年ごろまでの価格高騰期において探鉱活動を通じて企業価値を高めていた探鉱専 業の石油会社は、低油価後、大きく二つのグループに分かれた。一つは、探鉱が成功して現在生産が 開始し、キャッシュフローによって独立経営しているグループ、もう一つは、生産収入もほとんどなく新た な資金調達ができずに破綻あるいは豊富な資金を有する企業や他社に買収されているグループである。 後者は、Heritage や African Oil などで上場廃止やキャッシュが潤沢な企業の傘下となった。前者は、ガ ーナの Ten 油田などを生産開始した Tullow Oil やセネガルでの新たなガス発見で引き続き成長路線を 描く Kosmos Energy である。Tullow Oil は、探鉱費が以前は支出の過半を占めていたが、2016 年計画で は全体の 10%程度まで削減し、金額ベースでは 2013 年比で8分の1相当まで削減した(図4)。 表2.探鉱専業会社 Heritage Afren African Oil(加) -Lundin Group- 低油価による経営体制変更 事業エリア カタール投資ファンド Al Mirqab ウガンダ、コンゴ民主共和国 Capital (元SWF の CEO が経営)による 買収(2014) 資金難、ロンドン上場廃止(2015) ナイジェリア、サントメ・プリンシ ペ他 IFC(World BankGroup), Helios ケニア、エチオピア Investment Partners からの資金支援 トロント、ストックホルムで上場 図4.Tullow Oil 上流支出 E&P 事業者は、原油価格の下落が販売収入に直撃する。そのため、バランスシート維持に向け –5– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 非戦略的地域資産の売却を進めて投資エリアの集中化を図っている。開発費の大幅な削減とともに、 探鉱費の削減もあわせて実施されている(図5)。例えば、Occdidental は、中東でも非戦略地域 としたリビア、イラク、イエメンでの操業を縮小し、中東のコアエリア(アブダビ、カタール、オ マーン)、国内では Bakken を撤退して最大鉱区保有する Permian に集中化する。こうした戦略 投資先の見直しの中で探鉱活動の縮小を進める。ConocoPhillips は、キャッシュフローをもたらさ ない大水深探鉱から全面的な撤退を検討していると表明しており、既に 2016 年7月に西アフリカ のセネガルで探鉱活動を行う現地子会社を豪州のWoodsideに350百万ドルで売却すると発表した。 同現地操業会社は、既発見油田及び3つの探鉱鉱区を保有していた。 図5.E&P 企業の上流支出(例) 図6.メジャーの上流支出 $MM メジャーの探鉱開発費 探鉱比率(右軸) 45,000 25% 24% 40,000 21% 19% 35,000 20% 20% 15% 30,000 25,000 13% 11% 12% 10% 8% 10% 10% 8% 10% 10% 10% 8% 20,000 15,000 5% 開発費 0% 10,000 5,000 探鉱費 -5% 資産取得費 0 -10% 2013 2014 2015 2013 ExxonMobil 2014 Shell 2015 2013 2014 2015 BP 2013 2014 Chevron 2015 2013 2014 2015 Total 財務諸表より作成、BPはRosneft分は含まない –6– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 欧米メジャー企業は全般的に2013年の投資額ピーク時に比べて2015年の探鉱費実績は20-33% 減(BP のみ 60%減)で、開発費の 0-26%減に比べて削減幅が大きい(図6)。 メジャー各社は、2015 年央頃より、探鉱活動の大幅縮小に転じている。BP は、フロンティア 探鉱をすべて延期し、開発に近い案件の探鉱に絞り込むと説明している。同社は、コスト負担を最 大限に削減するために 2015 年に既に探鉱費を大幅に削り、2016 年は前年比同水準を予定、主に メキシコ湾、アンゴラ、アゼルバイジャン、ロシア(Rosneft との共同)、エジプト(地中海)、 豪州などの既存開発海域での探鉱である。 Shell も、2015 年 7 月-8月にアラスカの北極圏チャクチ海での試掘を行ったものの同年 9 月 に当地での探鉱作業をすべて中止すると発表したが、他方でごく最近、年内にも既発見エリアでも あるタンザニアでの試掘を実施する計画を表明した。Shell は、2013 年の探鉱費用として BG を含 めて 70 億ドルを投じていたが、2014-2015 年は 50-55 億ドル水準、2016 年はさらに削減して 探鉱費を最大 25 億ドルとしており、2013 年比で 65%削減である。2017 年以降も同水準を予定し ている(図7)。 Total は、2015 年秋の4つの重点戦略の中で探鉱の継続を掲げているが、2016 年は 15 億ドル 程度を予定している。ウルグアイ大水深での探鉱はドライであったことが既に発表されている(図 8)。 メジャーの探鉱井(評価井含む)は、ExxonMobil を除き 20%-30%前後の掘削数の減少がこ の2年間でみられた(図9)。 図7.Shell の探鉱支出実績と見通し 出所:Shell のウェッブサイトより –7– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図8.近年の発見とメジャーの探鉱エリア 図9.メジャーの探鉱井掘削数(北米除く) (基) 探鉱井(北米除く)の推移 40 ExxonMobil, Chevron, Totalは北米・南米を除く 数値 その他は北米を除く数値 30 20 10 0 ExxonMobil 財務諸表より作成 Shell 2013 BP 2014 Chevron Total 2015 最近、新たな油ガス層が発見されたエリア(図 9)としては、石油では大水深の中南米のガイア ナ(ExxonMobil)、大水深のメキシコ湾(米国側 Shell, メキシコ側領海線近く PEMEX)、ガス では、東地中海の大水深のガスとしてエジプト沖合(Eni, BP)、また黒海(Lukoil, ExxonMobil) や西アフリカのセネガルやモーリタニア沖(Kosmos, Cairn)で、その他、カナダ東海岸(北極海並 みの海象条件、Statoil)やミャンマー大水深(Daewoo)などが報じられており、こうした発見海域 では追加探鉱作業や新規事業者の参入が予想される。 –8– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 6.単独探鉱よりも資産取得と組み合わせ 強固なバランスシートを維持するために多くの企業が開発段階や開発検討中の既発見の資産を 含めて売却計画を有している。 そのような中で M&A の好機と捉えて、戦略的な資産買収に乗り出す企業も見受けられる。企業 価値の維持や開発案件の形成を追求している。 例えば、 メジャーの ExxonMobil や豪州の Woodside は LNG やガス開発を念頭においた投資戦略とみられる。パプアニューギニアで LNG 生産を行っ ている ExxonMobil は、将来のガス供給ソースとなりうるガス田権益を保有する地元小規模企業 InterOil を買収する提案を行った。既に同企業の買収で Oil Search/Total が合意していたのにも関 わらず、ExxonMobil は提示額を引き上げて対抗案を提示し、9 月下旬に Oil Search の株主総会が 開催され、買収が最終決定された。Woodside も、約1年前に PNG やイラク等で活動する豪州の OilSearch の買収に失敗した後も、前述のように、最近、BHP Billiton より西豪州沖の既発見ガス 資産の取得、さらに ConocoPhillips のセネガル沖の大水深の全資産を取得した。 ノルウェーの国営石油会社 Statoil も、資金繰りに困った企業のノルウェー放出の資産を買い取 り、さらにオペレーター権利を含めてブラジル Petrobras が放出したプレソルトの既発見油田の権 益を取得するなどの動きがみられる。同社は、ニカラグアやカナダなどの沖合探鉱鉱区の取得を含 めて比較的に精力的なポートフォリオ拡大の動きが見受けられる。 石油企業は、事業化の見通しが立たない既発見油・ガス資産については、資金調達のためのファ ームアウトあるいはオペレーター権を含めた売却の場合がみられ、資金面で余裕のある企業や戦略 的な M&A を選好する企業はこうした機会に開発の主導権を含めたポジション確保に動いている (図 10 )。その地域的なポジション構築を狙って、獲得権益の周辺探鉱鉱区の参入をも視野に入れ ている。例えば、ExxonMobil は、パプアニューギニアでは企業買収による陸上ガス田権益だけで なく、同時並行して、沖合大水深探鉱鉱区の権益取得を行った。また、Woodside も、2016 年、 ConocoPhillips からのセネガル沖の権益取得だけでなく、Impact が売りに出した同国の大水深探 鉱にもファームインし、モーリタニア側とあわせて大規模なガス田の発見が確認されている西アフ リカの西部海域での事業拡大を図った。Woodside にとってはこの西アフリカ沖合は、国内の LNG 開発に投資集中する 2007 年頃まで主体的に上流事業を行なってきた海域であり、知見を有する。 –9– Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図 10.2016 年 M&A に積極的な企業 米メジャーExxonMobil ・パプアニューギニア資産 (InterOil買収提案、沖合大水深 鉱鉱区の取得) 豪E&PのWoodside ・Oil Search買収失敗 ・BHP Billitonから豪Scarboroughガス 資産を取得 ・セネガルとギニアビサウ共同開発区 の探鉱権益をImpactより取得 ・ConocoPhillipsからセネガル大水深 既発見油田と探鉱鉱区取得 カナダSuncor ・オイルサンド:Canadian Oil Sand 買収、Murphy権益取得 ・北海:OMVよりRosebank油・ガス 田権益 ノルウェー国営石油Statoil ・Lundin Petroleum 株式20% ・Tullow Oilノルウェー権益取得 ・ブラジル大水深Petrobrasの Carcará油田権益(Op.)の取得 ・英領北海(Op.)の資産取得 7.まとめ ・新たな在来型の石油・ガス発見埋蔵量は近年減少しており、また低油価が追い討ちとなって 2015 年の発見量は過去最低水準であった。今後も低油価による探鉱低調が予想されることから、さらな る影響が予想される。 ・IEA によれば、世界の上流開発はこの2年間で4割強が削減されたと推定。別の調査機関の推計 では、世界の探鉱費は価格高騰期に比べて5割以上減少したと推定されている。低油価により探鉱 専業企業の破綻や買収、中小企業やメジャーの探鉱費の削減が行われ、世界的にも掘削数が減少し ている。 ・今年上半期の大規模事業の最終投資決定(FID)は油・ガスあわせて6件ほどで、経済性確保の 見通しが立たず開発決定が延期されている事業が増えている。探鉱案件の生産開始までの道筋は一 層不透明となっている。 ・高油価時は、将来の需要増大を見越して探鉱事業に投機的な資金も集まりやすく、未探鉱エリア での掘削が推し進められたが、市場環境が様変わりし、Shell 等がアラスカでの事業を中止するな どのように未探鉱エリアでの探鉱活動を取りやめ、既存生産エリア等の商業化に近いエリアに絞っ て油・ガス発見を追求している。 – 10 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ・こうした探鉱活動の低迷によって、新しい探鉱エリアのサービス企業・コントラクターの雇用削減、さらに 破綻にもつながる。市場環境が改善しても早期の探鉱再開に繋がらないリスクを抱えている。 ・また、フロンティア探鉱をファイナンスしてきたファンド等が、探鉱向けの資金投入を嫌気して、成熟油 田の投資を好む傾向に変化しているとの指摘もある。 ・現在のような環境下では、戦略に合致した資産を能動的に買収することで開発案件の形成を追求する 企業も見受けられ、それにあわせて周辺での探鉱事業の展開に乗り出し、コア地域の形成及びポジショ ン強化を図っている。 – 11 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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