高次元画像からの 最適図形認識

高次元画像からの
最適図形認識
東京農工大学 大学院工学研究院
先端電気電子部門
教授 清水 昭伸
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背景
• 医用画像解析のためには臓器認識(セグメンテーション)は必須
• 特に,膵臓のように,低コントラストかつ形状の個人差が大きい
臓器の正確な輪郭の特定は困難
例) 3次元腹部CT像上の膵臓
正確なセグメンテーションのためには
形状の統計的変動に関する事前知識の利用が不可欠
2
関連研究
 過去10年間で形状に関する事前情報(制約形状)を用いる
手法が数多く報告される
3
同時最適化の目的関数
1
0
4
関連研究
• 形状を考慮可能なセグメンテーション
– 一般的形状
• 楕円 [Slabaugh and Unal, 2005]
• 塊状 [Funka-Lea et al., 2006]
• コンパクト形状 [Das et al., 2009]
– 特定の形状テンプレート
• ユーザー定義の任意形状
[Freedman and Zhang, 2005]
• 統計的形状モデル (SSM; Statistical Shape Model→対象の統計的変
動を正確に記述可能) の生成する形状
[Grosgeorge et al. 2013, Nakagomi et al., 2013,
Shimizu et al. 2010, Malcolm et al. 2007]
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統計的形状モデル(SSM)
多様な臓器形状
任意形状生成
固有形状空間
任意形状 パラメータ
X V α  μ
-1.5 
-1.0 
-0.5
1st mode
μ
+0.5
2nd mode
+1.0
+1.5
α1(1st mode)
3rd mode
固有形状行列 平均形状ベクトル
6
統計的形状モデル(SSM)
固有形状空間
0
7
統計的形状モデル(SSM)
重みW
0.5
レベルセット関数
0
符号付き
距離変換
画素数
学習ラベル
症例数
固有形状空間
PCA
+
…
…
0
-
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統計的形状モデル(SSM)
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関連研究
• セグメンテーション x と形状 y の同時最適化
SSMから生成される
形状集合
– Kohli et al. (2008)
• Stick-man model
• 勾配法による最適化
– Chen et al. (2013), Xiang et al. (2013)
解の大局的最適性は
保証されない
• Point distribution model (PDM)
• 反復法に基づく最適化
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関連研究
• セグメンテーション x と形状 y の同時最適化
テンプレート集合
– 任意の大量の図形形状 (Lempitsky et al. 2012)
• Branch-and-bound法により大量のテンプレートの中から
最適な形状を効率的に探索
• 事前の探索木生成(形状生成と階層
クラスタリング)のコスト大
 約 107 個の 2 次元形状
を扱うのが限界
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関連研究の問題点
• セグメンテーション x と制約形状 y の同時最適化
SSMの生成可能な
– 3次元医用画像の同時最適化問題の大きさ 全ての形状集合
• 例)
画像サイズ:256×256×256 [voxel]
固有形状空間の基底数 d = 2
3次元医用画像の場合
従来 [Lempitsky et al., 2012]
形状数
109 ~
~ 107
画素数
107 ~
~ 105
 最適化のためには,画像サイズを2桁,形状数を2桁以上大きくする必要あり
 従来法で解く場合,2[PB]のメモリと1千万年*の計算コストが必要
(* 通常のPCを用いた場合)
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目的
SSMから生成される全形状を対象とした
制約形状とセグメンテーションの同時最適化
Pancreas
Efficient optimization by
Branch-and-bound search
in an eigenshape space
JI=70.5%
CV of 140 CT volumes
Ave. JI=62.3%, DSI=74.4%
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目的関数の最適化
• 提案手法
– SSMから生成可能な全形状を対象
– 最適な形状探索を最適なパラメータの探索問題に置換
– 最適化手法
 branch-and-bound による最適化 (Clausen et al., 1999)
従来法との違い: 事前の探索木生成が不要(探索の過程で動的に木を生成)
探索時の下界は凸多胞体の頂点のみから計算
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Branch-and-bound法
下界
根ノード
(全制約形状集合)
最小の下界
front B
A
C
下界の単調性
葉ノードが単集合
葉ノード
(単一の制約形状)
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下界の計算
•
パラメータ空間で下界を計算する方法
Jensen's
Inequality
st-mincut
16
下界の計算
∴
otherwise
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探索アルゴリズム
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新技術の要約
統計的形状モデル(SSM)による形状制約付きの最適化問題を
Branch and Bound法により非常に効率良く行う方法を提案
• 実空間での制約形状の探索の問題をSSMの固有形状空間における
パラメータ探索問題に置換
– 事前の探索木形状が不要
– 固有形状空間の凸多胞体の頂点のみから最適解探索時の下界
が計算可能
109個以上の3次元形状から極めて効率的に最適解を探索可能
• 従来:2[PB]メモリ,1千万年以上の計算時間
• 提案:1[GB]メモリ,3~4分の計算時間
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実験条件
早期相
門脈相
晩期相
• 試料画像
– 造影腹部CT画像140例
(早期・門脈・晩期相)
• 前処理
– 画像サイズの縮小: 256×256×(335–340) [voxels]
– 時相間位置あわせ
• 正規化相互情報量に基づく時相間レジストレーション
– 空間的標準化
• 自動抽出した56点のランドマークに基づく症例間レジストレーション
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セグメンテーション結果の例
(セグメンテーション) (制約形状)
Optimal x*
Optimal y*
• 提案手法により制約形状とセグメンテーションが改善
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140例の膵臓セグメンテーション結果
セグメンテーション
制約形状
p < 0.01
p < 0.05
90
62.28
61.00
70
58.65
p < 0.01
80
60
34.86
Amount of energy reductionE
(Proposed - Lempitsky et al.)
JI of shape prior [%]
JI of segmentation [%]
50
50
40
0
32.80
70
60
エネルギーの差分
(提案 - Lempitsky)
40
30
30
20
-427.9
-500
-1000
-1500
20
10
10
0
Proposed Lempitsky et al. w/o prior
0
-2000
Proposed Lempitsky et al.
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実用化に向けた課題
‐セグメンテーションのブレークスル―に必須の三技術‐
1. セグメンテーションと形状制約の同時最適化(本新
技術)
2. 目的関数の最適設計
真の輪郭の位置で評価値が最小になる目的関数
の設計法
3. SSMの精度向上
多様体上の平均
多様体上の形状分布の
S
線形空間
統計モデル化
2
多様体
S1
加算平均
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企業への期待
• 未解決の「目的関数の最適設計」や「SSMの精度向
上」に一緒に取り組んでくれる企業との共同研究を
希望
• 医用画像認識は,医用画像解析ソフトウエアの開発,
例えば医用画像に基づく診断支援,治療支援など,
様々な応用の基礎となる重要な処理
(※認識精度が診断支援や治療支援の精度を左右)
• 医用画像を対象とした解析ソフトウエアの開発を考
えている企業には、本技術の導入が有効と思われる
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称
:画像処理装置、方法、
およびプログラム
• 国際出願番号 :PCT/JP2015/073277
(国際公開番号 WO2016/027840)
• 出願人
:国立大学法人東京農工大学
• 発明者
:清水昭伸,斉藤篤
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産学連携の経歴
• 2004年-2005年 富士写真フィルムと共同研究
および,技術指導を実施
• 2007年-2008年 キヤノンに対する技術指導を実施
• 2008年-2009年 キヤノンと共同研究実施
• 2011年-2012年 キヤノンと共同研究実施
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お問い合わせ先
東京農工大学
先端産学連携研究推進センター
産学連携担当
T E L 042-388-7550
F A X 042-388-7553
e-mail [email protected]
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