13次五カ年計画の概要

13次五カ年計画の概要
みずほ銀行(中国)有限公司 中国業務部 主任研究員 細川 美穂子
五中全会で13次五カ年計画を議論
5つの発展理論
2015年10月26~29日に開催された中国共産党の第18期中
経済発展目標達成のために①イノベーション
(創新)
、
②協調、
③グ
央委員会第5回総会
(五中全会)
では習近平政権にとって初となる、
リーン
(緑色)
、
④開放、
⑤共有
(共享)
の5つの発展理念が掲げられ
「第13次五カ年計画
(十三五)
」
を議論、
「第13次国民経済・社会
た。
とりわけイノベーションに関しては、
11月3日に記者会見した徐紹
発展五カ年計画
(2016~20年 13.5計画)
の策定に関する党中
史国家発展改革委員会の主任が、
「直面する最大の問題は
『中進
央の提案」
を審議、
採択した。今次五カ年計画の提案では、
小康社会
国の罠』
である」
と発言している。中所得水準にまで達したところで経
(ややゆとりのある社会)
の全面的建設のため、
①経済の中高速成
済が停滞し先進国レベルに到達できなくなる状態を、
中国当局は引
長維持、
②生活水準と質の普遍的向上、
③国民の資質と文明化の
き続き警戒している。徐主任は
「その突破のためにイノベーション発展
著しい向上、
④生態環境の総体的改善、
⑤各種制度の一層の成熟
が出口となる」
と発言している。
イノベーションでは、
I
T
(情報技術)
を中
化・定型化の5つの目標を挙げている
(図表1)
。
心に、
シェアリングエコノミー
(共有経済)
やビッグデータなどを鍵にする
五中全会後に公表されたコミュニケでは
「2020年までに小康社会
計画である。
を全面的に完成させることは、
わが党が決めた
「二つの百年」
(中国
③
「グリーン
(緑色)
」
とは、
環境に配慮した発展を意味している。
こ
共産党創立100年までの小康社会完成と新中国成立100年までの
の単語は、
十二五提案では2回しか登場しなかったが、
十三五提案で
近代化基本的実現)
の奮闘目標の一つ目の百年の奮闘目標である」
は21回と急増しており、
環境に配慮した政策運営はこれまで以上に
としている 。
真剣に取り組まれることが予想される。今後、
グリーンを旗印に、
たとえ
5つの目標のうち、
①経済の中高速成長維持に関して、
経済成長
ば、
国主導で環境技術を試験する特区を作るだけでなく、
低炭素社
目標に関する表現は2005~10年の第12次五カ年計画
(十二五)
会の実現や、
資源循環型の社会システム発展のために、
ゼロ・エミッ
では
「経済の安定的で比較的速い発展」
と表現されていたが、
今次
ション
(廃棄物を一切出さない)
モデルのプロジェクトも実施していく計
十三五提案では
「中高速成長を維持」
とし、
高度成長から中高速成
画である。
このほかに、
大気、
水、
土壌汚染の防止行動計画の本格
長へのソフトランディングを意識した表現に変わっている。
的な実施、
商業利用の目的で天然林伐採を全面停止することなども
具体的な成長目標については、
今回の提案とあわせて公表された
明記された。
*1
「提案に関する習近平国家主席説明」の中で、
「国内総生産
(GD
⑤
「共有
(共享)
」
では、
人民が発展を実感できるようにすることを
P)
倍増のため、
2016~20年の平均成長の最低線は+6.5%以上」
「獲得感」
という単語を用いて強調している。社会保障制度の充実
GDPと収入の倍増
と明記、
十二五の+7.0%から引き下げられた 。
などにより、
人民が最も関心を寄せる、
「最も現実的な利益問題」
を解
は、
2012年の第18回党大会で設定された、
「2020年までにGDPと
決するとしている。
この共享との関連があるとみられるのが、
十三五提
都市農村住民の1人あたり所得を2010年の2倍にする」
目標であり、
案で44回も登場した
「人民」
という単語である。十二五提案の4回か
2014年までの実績と2015年の実績見込みから残りの5年間に必
ら急増している。中国経済が高成長から中高速成長時代へと移行す
要な平均成長率を計算すると+6.5%となる。
る中で、
経済成長率という数字だけでなく、
人民の生活実感の向上を
*2
図表1. 13次五カ年計画の主要目標
1
2
3
4
5
6
7
2020年までに国内総生産
(GDP)
と住民平均収入を2010年の2倍にするために2016 〜 2020年のGDP
経済の中高速成長の
成長率を平均6.5%以上に維持、産業のミドル・ハイエンド化、農業の現代化、工業化と情報の融合的発
維持
展、先進製造業と戦略的新興産業の発展加速、新産業・新業態の絶えざる成長、サービス業の比率向上
イノベーション騒動型 イノベーション騒動型発展戦略の実施、全要素生産性の明らかな向上、科学技術と経済の深い融合、重点
発展で顕著な成果
領域と革新技術での重大な突破の取得、
自主イノベーション能力の全面的増強
投資・企業効率の明らかな上昇、都市化の質の明らかな改善、戸籍人口都市化率の上昇、区域協調発展
発展の協調性の明ら
の新枠組みの形成、発展空間の配置の最適化、対外開放の深さと広さに絶えざる向上、輸出入構造の絶え
かな増強
ざる最適化、国際収支の基本的均衡
人 民の生 活 水 準・質 公共サービスの健全化・均等化・生産年齢人口における就学年数の延長、収入格差の縮小と中等収入人
の普遍的な向上
口比率の上昇、貧困からの脱却と貧困県の消滅
国民資質と社会文明「中国夢」
と社会主義確信価値観の浸透、愛国主義、社会主義思想の称揚、道徳素質や科学文化素質の
度の顕著な向上
明らかな向上、法治意識の増強、支柱産業としての文化産業の発展、中華文化の影響力の持続的拡大
生態環境の質の総体 生産・生活スタイルのグリーン化・低炭素化、
エネルギー開発・利用効率の大幅向上、
エネルギー・水資源の
的改善
消費抑制、建設用地・炭素排出総量の抑制、主要汚染物排出の大幅減少
各種制度のさらなる成 国家ガバナンス体系とガバナンス能力の現代化、法治政府の基本的構築、財産権の保護、開放型経済新
熟化・定型化
体制の基本的形成、現代軍事体系の整備、党の建設制度化水準の向上
(資料)
国民経済および社会発展の第13次五カ年計画要綱
20 mizuho global news | 2016 JUL&AUG vol.86
目指す方針が明確となっている。
十三五計画の主要目標任務と
重要措置
2016年3月5~16日に開かれた第12期全国人
民代表大会(国会に相当。以下
「全人代」
) 第4回
会議では、
政府活動報告、
国民経済・社会発展計
画案、
予算案、
第13次五カ年計画要綱*3などが採
択された。2016年は第13次五カ年計画
(十三五)
の初年度に当たっており、
その基本理念について
図表2. 12次、13次五カ年計画「要綱」経済社会発展の主要目標比較
(十二五)
種類
経済
発展
科学
技術
教育
(十三五)
指標
単位 2010年
39.8
兆元
・GDP(国内総生産)
43.0
%
・GDPに占めるサービス業比率
47.5
%
・都市化率
(%)
89.7
%
・九年義務教育徹底率
82.5
%
・高校入学率
1.75
%
・GDPに占める研究開発費比率
1.7
件
・人口1万人あたり特許保有件数
億ムー
18.18
・耕地保有面積
・単位工業生産額
(1万元)
あたりの水使用
%
量削減
・農業灌漑用水の有効利用係数
−
0.5
・一次エネルギー消費に占める非化石燃料
%
8.3
比率
資源 ・単位GDPあたりのエネルギー消費量削減
環境 ・単位GDPあたりのCO2排出削減
化学的酸素要求量COD
・主要汚染物
二酸化硫黄SO2
質の総排出
アンモニア性窒素
量削減
窒素酸化物Nox
・国土の森林被覆率
・国土の森林蓄積量
・都市住民1人あたり可処分所得
・農村住民1人あたり純収入
・都市部登録失業率
・5年間の都市部における新規雇用増加数
国民
・都市部基本養老保険の加入者数
生活
・都市農村三項目基本医療保険加入率
都市保証型住宅建設
総人口
平均寿命
2015年
55.8
47.0
51.5
93.0
87.0
2.2
3.3
18.18
11.4 [3.1] 拘束目標
%
[16] 拘束目標
[17]
[8]
[8]
[10]
[10]
[1.3]
[6]
>7
>7
20.36
137.0
19,109
5,919
4.1
2.57
134,100
73.5
指標
単位 2015年
67.7
兆元
(1) ・GDP(国内総生産)
8.7
万元/人
(2) ・労働生産性
経済
56.1
%
(3) ・都市化率 常住人口
発展
%
戸籍人口
%
50.5
(4) ・GDPに占めるサービス業比率
2.1
%
(5) ・研究・試験発展経費投入強度
イノ
6.3
件
(6) ・人口1万人あたり特許保有件数
ベー
55
%
(7) ・科学技術進歩貢献率
ション
40
%
(8) ・インターネット普及率 固定ブロードバンド
騒動
57
%
移動ブロードバンド
%
(9) ・住民1人あたり可処分所得
−
年
(10)・生産年齢人口平均教育年限
10.23
万人
(11)・都市農村新規就業人数
−
民生・
万人
(12)・農村貧困人口の脱貧困
−
福祉
%
(13)・基本養老保険の加入率
82
万棟
(14)・都市農村バラック地区住宅改造
−
歳
(15)・平均寿命
18.65
億ムー
(16)・耕地保有面積
−
万ムー
(17)・新規建設用地規模
−
%
資源・(18)・GDP1万元あたりの水使用量削減
%
−
環境 (19)・単位GDPあたりのエネルギー消費量削減
・一次エネルギー消費に占める非化石燃料
%
12
(20)
比率
(21)・単位GDPあたりのCO2排出削減
−
(22)・国土の森林被覆率
%
21.66
森林
・国土の森林蓄積量
億㎥
151
空気 (23)・地級以上都市の空気の質の優良日数比率
%
76.7
・微小粒子状物質
(PM2.5)
基準未達の地
%
−
級以上都市の濃度削減
%
66
(24)・Ⅲ類またはそれ以上の水の比率
・劣Ⅴ類水
(Ⅴ類水基準を上回る水)
比率
%
9.7
化学的酸素要求量COD
%
−
地表 (25)
・主要汚染物
水
二酸化硫黄SO2
%
−
質の総排出
アンモニア性窒素
%
−
量削減
窒素酸化物Nox
%
−
[30] 拘束目標
0.53 [0.03] 予測目標
%
%
%
億㎥
元
元
%
万人
億人
%
万戸
万人
歳
種類
年平均増減率
7.0% 予測目標
4ポイント 予測目標
[4] 予測目標
[3.3] 拘束目標
[4.5] 予測目標
[0.45] 予測目標
[1.6] 予測目標
[0] 拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
21.66
拘束目標
143.0
拘束目標
>26,810
予測目標
>8,310
予測目標
<5
予測目標
[4,500] 予測目標
3.57 [1] 拘束目標
[3] 拘束目標
[3,600] 拘束目標
<139,000 <7.2% 拘束目標
74.5 [1] 予測目標
(注)
1.
GDPおよび都市・農村住民収入は2010年の価格。 2.
[ ]
内は5年間累計。 3.
都市農村
三項目基本医療保険加入率:都市職員基本医療保険、都市住民基本医療保険、新型農村合作
医療の加入総数の総人口比率。 4.1ムーは、6.667アール、15分の1ha
(資料)
中華人民共和国国民経済社会発展第十二次五カ年計画要綱
2020年
年平均増減率
>92.7 >6.5% 予測目標
>12 >6.6% 予測目標
60 [3.9] 予測目標
予測目標
−
45
56 [5.5] 予測目標
2.5 [0.4] 予測目標
12 [5.7] 予測目標
60 [5.0] 予測目標
70 [30] 予測目標
85 [28] 予測目標
>6.5 予測目標
−
10.8 [0.57] 拘束目標
[>5,000]予測目標
−
[5,575] 拘束目標
−
90 [8] 予測目標
[2,000] 拘束目標
−
[1] 予測目標
−
18.65 [0] 拘束目標
[<3,256]拘束目標
−
[23] 拘束目標
−
−
[15] 拘束目標
15
[3]
拘束目標
−
[18] 拘束目標
23.04 [1.38] 拘束目標
165 [14] 拘束目標
>80
−
拘束目標
−
[18] 拘束目標
>70
<5
−
−
−
−
−
−
[10]
[10]
[10]
[10]
拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
拘束目標
(注)
1.
GDP、労働生産性は比較可能価格、絶対数は2015年価格により算出。 2.
[ ]
内は5年間累計。
3.
PM2.5の未達は年平均値が35ミリグラム/㎥超を指す。 4.1ムーは、6.667アール、15分の1ha。
5.Ⅲ類:生活飲用水。Ⅴ類農業用水区、一般景観の確保
(資料)
中華人民共和国国民経済社会発展第十三次五カ年計画要綱
は2015年10月の五中全会
(中国共産党第18期中央委員会第5
*8
⑤金融リスクを防止・解消
(デレバレッジ)
」
をしっかりと遂行、
第13
「提
回総会)
で決めた
「提案」
で公表済みである*4。今次全人代では
次五カ年計画の経済社会発展の良好なスタートを切る、
としている。
案」
の理念をより具体化させた十三五
「要綱」
について議論された 。
以上は中国全国の五カ年計画であり、
主要産業ごと、
地域
(省、
「要綱」
に挙げられた経済社会発展の主要目標を十三五と十二五
市)
ごとの五カ年計画も策定、
公表予定である*9。
*5
とで比較すると、
十三五計画には、
資源・環境、
森林、
空気、
地表水と
いった生態環境関連の指標が多く盛り込まれた。一方、
人口構成変
化を反映して、
十二五計画に盛り込まれていた総人口の抑制目標は
採用されなかった
(図表2)
。
*1 新華社2015年10月29日
「中国共産党第十八期中央委員会第五次全体会議コ
ミュニケ」。中国共産党創立100年は2021年、新中国成立100年は2049年
*2 新華社11月3日
「习近平:关于《中共中央关于制定国民经济和社会发展第十三
个五年规划的建议》的说明(第13次国民経済・社会発展5カ年計画策定に
関する党中央提案に関する習近平説明)」
中国政府網11月9日
「新闻办就解读十三五规划建议有关情况举行吹风会(新
「小康社会の全面的建設、構造改革推進の
正念場の年」
李克強総理による政府活動報告*6は、
2016年を
「小康社会の全
聞弁公室が十三五計画提案についてのブリーフィングを挙行)
」
同ブリーフィ
ングで発言した楊偉民中央財経領導小組弁公室副主任は、
「6.5%自体は目標
ではない。最終目標設定は来年3月まで待つ必要がある」
と発言、経済成長率目
標はまだ設定されていないと指摘。来年3月の全国人民代表大会
(全人代=国
会)
での承認が必要だと述べた
面的建設、
構造改革推進の正念場の年」
と位置付け、
政府活動を
*3 中华人民共和国国民经济和社会发展第十三个五年规划纲要
順調に進めるため、
「①マクロ政策は安定させ、
②産業政策は正確
*5 中华人民共和国国民经济和社会发展第十三个五年规划纲要
*4「みずほ中国 ビジネス・エクスプレス経済編No.52」
に、
③ミクロ政策は活性化、
④改革政策は着実に、
⑤社会政策で下
*6 中国政府網3月17日「政府工作报告(政府活動報告)—2016年3月5日在第
の全体的な考えを実行、
「安定成長と構造調整のバランスを
支え*7」
*7「宏观政策要稳、产业政策要准、微观政策要活、改革政策要实、社会政策要托
しっかりと押さえ、
経済の動きを合理的な範囲内に保ち、
供給側の構
底」。2015年12月の中央経済工作会議で定められた
「構造改革の五大政策支
造的改革を重点的に強化し、
発展の新たな原動力の育成を急ぎ、
従
*8「去産能、降成本、去庫存、補短板、去杠杆」。2015年12月の中央経済工作会
来の比較優位の改良・進化をはかり」
「
、①過剰生産能力の解消、
②
企業のコスト引き下げ、
③不動産在庫の解消、
④有効供給を拡大、
十二届全国人民代表大会第四次会议上 国务院总理 李克强」
柱」
議で定められた
「構造改革の五大任務」
*9 公表のタイミングはまちまちで、特に産業ごとの五カ年計画は、2016年中に公表さ
れない場合もある
mizuho global news | 2016 JUL&AUG vol.86 2 1