2016年7月4日号(PDF/441KB)

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2016 年 7 月 4 日
豪州主要経済指標
経済指標・イベント
AiG 製造業指数
今週の注目点
直近
前回
日付
経済指標・イベント
前回
市場予測
51.8
51
7月5日
豪州 オフィシャル・キャッシュレート
1.75%
1.75%
金融市場・原油・為替
指数等
2016年7月1日
2016年6月24日
前週比
2015年7月1日
前年比
S&P/ASX200 指数
5,246.61
5,113.18
+2.6%
5,515.66
-4.9%
S&P/ASX200 不動産投信
1,483.40
1,435.80
+3.3%
1,251.80
+18.5%
豪州 90 日バンクビル利回り
1.95
1.95
+0bps
2.14
-19bps
豪州債券 10 年物利回り
1.95
2.01
-5bps
3.01
-106bps
76.85
76.31
+0.54
94.16
-17.31
0.75
0.75
+0.00
0.76
-0.01
62.80
62.30
+0.5
64.10
-1.3
豪ドル円
豪ドル米ドル(セント)
豪ドル TWI
先週の主な話題
英国の EU 離脱問題(Brexit)に対するグローバル金融市場やグローバル経済の先行き不透明感がいくぶん後退したことから、先週株式市場
は反発しました。先週、主要市場は上昇し、米国株は 5.1%、欧州株が 3.9%、日本株が 4.9%、中国株が 2.5%、豪州株は 2.6%上昇しました。
英国の政治的な混乱にもかかわらず、英ポンドの下落やイングランド銀行(BOE)の金融緩和に対する談話が発表されたことに支えられ、英国
株式市場は 7.2%と急反発し今年の最大の上昇幅となりました。債券利回りは今後もしばらくの間低金利が続くとの見込みから低下した一方、
為替市場は(英ポンドを除き)安定的に推移し、クレジットスプレッドは縮小、コモディティ価格も上昇しました。
先週、Brexit に関していくつかポジティブな展開が見られました。それは英国にとってではなく、その他欧州諸国と世界経済にとって大きな懸念
材料となっていた問題について改善が見られました。第一に、スペインの選挙は与党国民党が議席数を伸ばし、反主流左派のポデモスの議席
が横ばいとなったことです。これは、Brexit の混乱によって投票者が安定を望んだことの表れではないかと見ています。もちろんラホイ首相が率
いる国民党は連立を維持しなければなりませんが、昨年 12 月に行われた選挙後よりは、見通しは明るいといえるでしょう。
第二に、先週 EU 主要国サミットにおいて 2 つの明確なメッセージ出されました:それは英国の離脱から教訓を得て、EU 加盟国を支援し、EU
の結束を固めるというものです;同時に、英国に対しては厳しい姿勢で臨んでいます- EU への義務(人の移動の自由、EU のルールと規制の
遵守、EU 予算への拠出義務)を果たさなければ、EU との自由貿易のメリットを享受することは出来ない、というものです。言い換えれば、離脱
の可能性がある国に対して、英国を“あっさり放免”としないことで、容易に離脱を許す訳にはいかないという強いメッセージを発信しています。
第三に、世界中で各国中央銀行が即座に行動を起こしたことです。BOE が今後の金融緩和を強く示唆、欧州中央銀行(ECB)が債券購入プロ
グラムの枠を拡大することを検討、韓国における新たな景気刺激策、台湾ではもう一段の金利引き下げ、日本での更なる刺激策等が検討され
ました。
第四に、スペインとイタリアの債券利回りが急低下し過去最低を更新しており、今のところ投資家がこれらの国に投資する際、高いプレミアムを
要求していないことを示しています。通貨ユーロを維持するために ECB は「あらゆる手段を駆使する」としていることが支援材料となっています。
最後に、米ドル高に影響を受けやすい資産の市場が崩れなかったことです。実際、原油価格は 50 米ドル近辺を維持しており、銅は上昇、新興
国市場もまずまずです。クレジットスプレッドも拡大しませんでした。1 月、2 月に見られた市場パニックの再現、とはならなかったようです。
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もちろん英ポンドが最悪シナリオを織り込みつつあるように見え、英国の GDP が世界に占める割合が僅か 2.5%しかないことを留意しておくべ
きだとしても、英国の資産に対する試練はこれからも続くでしょう。また、連鎖反応的なユーロ圏離脱リスクに関する不透明感も継続するでしょう
- イタリアの上院改革に関する国民投票が 10 月に行われる予定で、オーストリアでは憲法裁判所が大統領選の無効を認定したことから、9 月
または 10 月に大統領選挙がもう一度行われることが決定しており、これらは今後注視すべき大きなイベントとなるでしょう。しかし少なくともこれ
までのところは、ユーロ圏とグローバルに対する Brexit のリスクは限定的なものに思われます。
豪州では、連邦選挙の投票が終わりましたが、事実上の少数党政府がまた次の 3 年間も続くだけのような結果となり、景気と金融市場にとって
大きな成果をもたらすものではありませんでした。与党・保守連合が少しリードしているように思われますが、議席数はこれまでのところ非常に僅
差となっており、結果は早くとも火曜日までは分からないと思われます。たとえ与党・保守連合が政権を樹立できたとしても、上院では緑の党や
その他少数政党がキャスティングボードを握ると見られ、与党政府にとって大きな制約となり、これまで同様、事実上の少数党政府が誕生するこ
とを意味します。結果的に、今後 3 年間の政府支出の抑制や、財政赤字の解消、与党・保守連合が掲げる、法人税を削減をして経済改革を側
面支援する生産性の抜本的な改革を推し進められる見通しは低いでしょう。与党・保守連合政権が豪州建築建設委員会を復活させるのに十分
な議席を確保することもほとんど不可能な状況です。
一方で、もし労働党(ALP)が勝利するなら、医療と教育に対する支出の拡大ペースが加速し、高所得者に対する増税(ネガティブギアリング、ス
ーパーアニュエーション、キャピタルゲインなどに対する軽減税率の縮小)によって財源の一部を捻出することになりますが、今後数年間は財政
赤字が拡大することになるでしょう。ALP はまた、銀行に対する司法調査を進めることが想定され、与党保守連合下の政府の時よりも経済への
介入が大きくなる可能性があります。
今後 3 年間、再び少数政党による政府が続くならば、同じく少数政党による政権であったギラード/ラッド政権(2010-13 年)や与党・保守連合
(2013-16 年)のように、たびたび上院で法案が否決される等、与党は困難な政策運営を強いられることになり、豪州経済にとって良い結果とな
らないでしょう。どちらが勝利するにせよ、国債格下げのリスクが一段と上昇したことを意味します。
ALP が掲げる財政出動や(高所得者に対する)増税をうたった選挙キャンペーンが奏功している背景には、英国の Brexit の結果や、米国にお
けるトランプ氏やサンダース氏の躍進に見られるように、中間層の投票者が規制緩和や小さな政府、グローバリゼーションといった経済的合理
主義政策から距離を取り、左派寄りにシフトしている影響があることは明らかです。これは長期的な成長見通しにとってネガティブ要因であり、投
資リターンにおける制約条件となるでしょう。
解散総選挙が発表されてから 8 週間経ちましたが、豪州株式市場はほぼ横ばいとなりました。次の表は、1983 年以降に実施された 12 回の選
挙のうち 8 回の選挙において、選挙後 3 ヵ月で平均 4.8%上昇したことを示しています。今回も豪州株式市場は、選挙後 3 ヵ月で上昇するでし
ょうか?選挙から解放されたことは支援材料になると考えられるものの、今回も少数党政府になる可能性が高く、上院を掌握することができない
こと、季節要因として 7-9 月期は軟調となる傾向があること、Brexit の不確実性等から短期的には株式市場は上値の重い展開になると考えられ
ます。とはいえ、年末にかけては上昇すると見ています。
選挙の前と後の豪州株式市場
選挙
勝利
政党
1983 年 3 月
ALP
豪州株 選挙前 8
週間の変化率(%)
- 0.6
1984 年 12 月
ALP
0.0
5.4
1987 年 7 月
ALP
3.7
15.9
1990 年 3 月
ALP
7.0
3.5
1993 年 3 月
ALP
連合
9.0
3.2
1996 年 3 月
2.3
2.0
1998 年 10 月
連合
2.6
11.1
2001 年 11 月
連合
5.9
5.4
2004 年 10 月
連合
5.9
9.9
2007 年 11 月
ALP
2.9
11.7
2010 年 8 月
ALP
連合
0.5
5.7
2013 年 9 月
平均
2016 年 7 月
?
?
豪州株 選挙後 3
ヵ月の変化率(%)
19.8
4.6
1.0
1.6
- 0.6* ?
4.8
?
*総選挙発表後 8 週間 ASX 全普通株指数 出所:ブルームバーグ、AMP キャピタル
世界経済指標
米国経済指標は概ね堅調な結果となりました。ISM 製造業景況指数は力強く上昇し、2 ヵ月続けて 5 月も個人支出が底堅い成長を見せ、消費
者信頼感指数は上昇、S&P/ケース・シラー米住宅価格指数も上昇、6 月のマークイット米国サービス業 PMI は 51.3 と上昇しており、新規失業
保険申請件数は低水準で推移しています。中古住宅販売仮契約と貿易収支は市場予想を下回りましたが、1-3 月半期の国内総生産(GDP)成
長率は 1.1%と上方修正され、4-6 月期の伸び率も反発が見込まれるため、年率約 3%となると思われます。
ユーロ圏の経済の景況感が 6 月は僅かに下落しましたが、緩やかな成長を示す水準を維持しており、銀行貸出の上昇が見られるなどポジティ
ブな兆候が窺えます。6 月のインフレ率は上昇しましたが、総合インフレ率で前年比 0.1%、コアインフレ率は同 0.9%と低水準に留まっています。
5 月の日本の雇用統計は堅調に推移しました。住宅着工件数が増加、4-6 月期の日銀短観企業景況感調査結果はほぼ変わらず、家計支出と
鉱工業生産が低調、そしてコアインフレ率は下落し前年比 0.6%となったことで、さらなる金融緩和を後押しする圧力になっています。
6 月の中国の製造業 PMI はほとんど変化せず、6.5%~7%の GDP 成長率と整合的な数値となっています。
豪州経済指標
豪州では、Brexit の結果の影響を判断するにはまだ早い段階ではありますが、ANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)/ロイ・モーガンの
週次消費者信頼感によるとあまり影響は見られず、1.7%低下したものの依然として長期平均を上回る水準となっています。一方、求人件数は
5 月までの 3 ヵ月では低下しましたが、年率では堅調な雇用の伸びを示しています。不動産投資家に対する民間新規融資は 5 月に鈍化しモメ
ンタムは減速しており、企業融資も鈍化しています。6 月の主要 4 都市における新築住宅価格は下落しましたが、シドニーとメルボルンでは引き
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続き堅調でした。5 月の新築住宅販売件数は減少したものの、中古住宅のオークション物件落札件数も引き続き堅調です。AiG 製造業 PMI は
51.8 に改善しました。
今週の注目点
今週は間違いなく英国の Brexit による混乱が見られ、神経質な展開となるでしょう。しかし、欧州における新たな進展が見られないことで徐々
に収まる可能性があります。豪州では選挙結果が見られますが、しかしもし前述の通りの結果であれば、影響はさほど大きくないと思われます。
米国では、非農業部門雇用者数は、予想を大きく下回った 5 月の 3 万 8 千人増から 6 月は 17 万 5,000 人増と反発すると見られますが、失業
率は 4.8%となり、平均時給は前年比 2.7%となる見込みです。しかし、Brexit による信頼感や今後の成長に対する懸念を勘案すると、FRB に
よる 7 月の早急な利上げ後押しするには不十分ですが、米国の今後の成長に対する懸念を緩和する材料にはなるでしょう。一方、7 月の ISM
非製造業景況指数(総合)は 53.3 とまずまずの水準を維持すると予想され、一方で貿易収支を踏まえれば 5 月の貿易赤字は若干悪化すること
が見込まれます。直近の FRB 政策会合の議事録も公表される予定ですが、非常にハト派的な内容と予想されます。ただ、Brexit の結果が既に
周知となっているため、あまり参考にはならないと考えられます。
中国では、6 月の CPI は前年比 2%程度となり、一方、PPI は引き続き軟調となる見込みです。
豪州では、豪州準備銀行(RBA)が 2 ヵ月連続で政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートを維持すると見られます。前回の金融政策会合
において、RBA は現在の金利水準は妥当との判断を示しています。Brexit や豪州総選挙関連のリスクが金利引き下げの条件を増加させている
ものの、現段階では RBA は情報を見極め静観する姿勢を維持するでしょう。我々は依然として、まだ年内もう一段の引き下げを予想しており、8
月の政策会合で引き下げると見ていますが、そのころまでには Brexit や豪州総選挙のリスクがより明らかになっており、4-6 月期のインフレデー
タも出そろっているでしょう。その間、ここ数ヵ月堅調な伸びとなっていた建築許可件数は 5 月は急落すると見られますが、小売売上高は緩やか
な伸びが見込まれます。ANZ 求人広告件数、5 月の貿易収支も同じくリリースが予定されています。
相場見通し
Brexit の不確実性と、季節要因として 7-9 月期は軟調となる傾向が高いことから、短期的には株式市場のボラティリティが一段と高まることが
予想されます。豪州の選挙結果は、同じく短期的には豪州株式市場の重石となるでしょう。とはいえ、今年は年末に向けて株式市場はさらに上
昇すると見ています。その理由としては、株式のバリュエーションが債券と比べて割安であること、世界的に超低金利環境が継続していること、
緩やかな経済成長が続いていることなどが挙げられます。
現在、債券利回りが極めて低い水準にあることから、国債投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。ただし、世界的に低成
長、余剰生産能力や低インフレが見込まれることから、過度に債券投資に対して弱気になることは難しいと思われます。とはいえ、最近の債券
利回りの上昇は、債券利回りが急騰するリスクをはらむほど、非常に低い水準となっています。
商業用不動産やインフラ資産は、今後も投資家による利回り追求の動きから恩恵を享受する見通しです。
今後 1 年間の主要都市の住宅価格の上昇率については、融資基準の厳格化と供給増加によってシドニー、メルボルンでの過熱感が沈静化に
向かうと想定されるため、3%程度に鈍化することが見込まれます。また、パースやダーウィンでは値下がりが続く一方、ブリスベンでは上昇する
と見られます。
現金および銀行預金からのリターンは低迷するでしょう。
豪ドルはまだフェアバリュー(適正価値)よりは高いことから、長期的には下落基調となるでしょう。というのも、RBA が政策金利の引き下げを行
っている一方で、FRB はいずれ利上げを再開すると見られており、今後、金利差の縮小が見込まれることや、国債格付けの格下げリスクが見え
隠れしていること、コモディティ価格が依然低迷していることなどから豪ドルがフェアバリューを下回るのも珍しいことではないためです。豪ドルは
今後 1 年間で、1 豪ドル 0.60 米ドル近辺まで下落する可能性があると見ています。
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当資料は、投資の参考となる情報の提供を目的として、AMP キャピタル・インベスターズ・リミテッド(オーストラリアにおける登録番号:
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