mediastudies20120203

メディア社会文化論
2012年02月03日
配付資料
3.1.2上田修一の定義
• 1)メディア=媒体
• 2)メディア=従来からのマス・メディア
• 1)2)共に「情報を運ぶ乗り物」
3.2メディア概念の諸相1
• メディア・・・表層、表象・・・例「流行は時代を
表すメディアだ」
• 表現・・・「芸術作品は作者の心を表すメディ
ア」「時代の空気を表すメディア」・・・マクルー
ハンはじめ、芸術畑の人がメディア論に
• Mediate「媒介する、取り持つ」・・・ならば酒、
カラオケ、ゲーム、美味しい食事、夜景、格好
良い車も「メディア」だね?!!飲みュニケーショ
ン
メディア概念の諸相2
• 人を表すメディアは?・・・服装、表情、顔、ス
タイル、容姿・・・遺伝情報を選ぶためのメディ
ア
• 脳、脳を模したコンピュータ・図書館もメディア
• これらを「メディア」という語→表現?サイン?
• フェースシート項目(人口学的変数)とメディア
(配付資料p16)
3.3メディアの対概念の多義性1
• メディアの対概念・・・典型は「情報」
• マクルーハンなら「メッセージ」
• 「メッセージ」は何?・・・思考、意味・・・解釈を
伴う(情報は解釈を必ずしも伴わない)・・・
コード(文法)理解必須、コンテクストも。
• 解釈なき情報はありうるか否か?「もの」なの
か・・・ただし読まれない情報はある
• →読み取り機械の保管の問題とも関連する。
3.3メディアの対概念の多義性
• 読み取りするリーダとデータ双方を保管する
必要性
• ・・・読み取る側も読み取られる側も双方メ
ディア(→マクルーハンのメディア概念の重層
性に)
4.メディアからマス・メディアへ
• 4.1中井正一のメディア論(これについて今
回板書で少し述べたのみ)、マクルーハンの
メディア論の纏めと、マス・メディア論への視
座(示唆)
4.1.1マス・コミュニケーション論とマス・メ
ディア論(そもそもはあまり分けて専門家も
使っていないと思われる)
4.1.1マス・コミュニケーション論と
マス・メディア論
• マス・コミュニケーション論の大きな問題関
心・・・受け手の主体性をどう捉えていくか?
• べき論(Sollen)・・・メディア・アクセス権の主
張、公共圏、コミュニティ・メディア論
(CATV、死語となった「ニューメディア」論)・・・
受け手の主体性をいかに確保していくか
• 実態論(Sein)・・・効果論研究や「利用と満
足」研究・・・受け手が本当に送り手のいいな
りになっているのか?
マス・メディア実証研究の主流
-効果論研究
• 1)弾丸理論・皮下注射モデル・・・ナチズムや
オーソン・ウェルズ「火星人襲来」が背景に
• 2)限定効果説
カッツ&ラザースフェルト マス・コミュニケー
ションの二段の流れ仮説
「オピニオン・リーダ」「小集団(準拠集団)」
• 3)強力効果説(2.に較べて相対的に「強力」
という意味)新しい効果論
強力効果説についての主な2つ
• 3)強力効果説
• 3.1)アジェンダ・セッティング(議題設定機
能)仮説
• 3.2)沈黙の螺旋状階段
3.1)アジェンダ・セッティング(議題
設定機能)仮説
• アジェンダ・セッティング・・・議題設定機能
• マス・メディアは議題(イッシュー)の提示に大
きな機能/イッシューの賛否には影響与えな
い(「強力」効果論といっても・・・)
しかし
• 賛否に関係ないとはいえ、実質ある事柄の賛
成派・反対派のいずれかに利することに
アジェンダ・セッティングでの「強力」に
なる実例
•
1)女系天皇・女性天皇をもう政治課題にし
ないとの安倍首相(当時)の意向→メディアが
受け取る→報道を減らす→結果的に、女性天
皇に反対する自民党の一部勢力の意見に有
利な状況を作り出す
• (あるいはもう少し最近でいえば)小沢元幹事
長の在日外国人参政権を与える意向も
• 2)憲法改正論議・・・従来、国会において議
論すらタブーであった→今はそれを議論する
こと自体は与野党共に合意→議論する中で、
(社民党、共産党を除いて)与野党共に改憲
そのものも(9条に触れるか否かは別にして)
否定はしない(テレ朝の姿勢)
• 3)日本の核兵器保有・・・憲法同様、論じるこ
と自体がタブー(なぜだか知ってる?)→北朝
鮮の核保有という事態→核保有の是非を論じ
ることそのものは国会においてもマス・メディ
アにおいてもタブーではなくなってきている。
• 政府や与党が、アジェンダを決めていき、そ
れに大手マス・メディアが追随している現状が
あるように思われる。
• 当初野党だった民主党政権が出来た・・・「政権
選択」が、アジェンダ、イッシューに。
• それを防ごうと麻生太郎は「政権選択よりも政策
を」と叫んだが(今年度の主専攻実習でこの辺、
今回実証を試みた)。
• どちらに入れるべきかはマス・メディアは語らな
い/だけど「政権選択」がイッシューにはじめて
なったので、民主政権の芽が出た。
3.2)沈黙の螺旋状階段仮説
•
•
•
•
サイレント・マジョリティ
黙っている多数派と、饒舌な少数派
見かけ上の多数派はどちら?
人は孤立をおそれる動物(ノエル・ノイマン)
・効果論→マス・メディア論、メディア
の棲み分けの議論
[べき論]・・・大資本によるマス・メディアVS 小資
本による地域メディアという対立図式
• あるいは不特定多数への新聞VS 多様の少
数者への出版といった図式
• 公平原則のある放送VS 自由だが公平中立を
主体的に標榜する新聞VS 自由かつ中立性も
気にしなくて良い出版
• このような中において、携帯やネットといった
新しいメディアはどのように位置づけられるの
か?・・・そもそもワンセグに代表されるように、
こういったメディアの分類そのものを無効にす
るのが、携帯やネットであるともいえる(マル
チメディアの一つの意味)
• →限定効果論は「パーソナル・メディア(会話)
vsマスメディア」という図式を前提に
• ネット社会のネットはパーソナル?マス?(有
馬哲夫・早大教授)
[実態論]
• 効果論・・・それぞれの時期における主流のメ
ディアが会話との対照での、調査対象に
• 理論枠組上はメディアの区分(どれが良いか
といったべき論のような)はない
• しかし限定効果論-「べき論」としてあった受
け手の主体性を実証レベルで再認
• 他方、児島和人「パーソナル・インフルエンス
再考」
• 「べき論」の方の機能の棲み分けに当然、
人々への効果・影響の内実も関わってくると
考えられる可能性がある
• べき論と実態論の統合?
• 受け手の主体性の「べき論」と「実態論」を実
践的な統合・・・メディアリテラシーの実践
4.2.2 マクルーハン、中井の示唆と
受け手の双方向性
• 双方向性・・・マクルーハン、中井ともに重視。
しかしマクルーハンは解釈の自由から来るも
の(文学研究がもと)。中井も印刷本の解釈
の多様性。
• 対等性と双方向性
• ミッテル
• メディウム
• 垂直性に対する水平性
• 垂直性(神と人)(死者と生者)(後世の人へ
のコミュニケーション)(貴族と平民)(知識人
と大衆)etc次元の異なる者相互が交わらず
に場所・領域としてのみ存在している状態・・・
メディウム (それら相互に動き・交流があれば
ミッテル)
• 透明でない媒介
• 対等性と双方向性 interactivity
透明な媒介
• 1)基本的に次元の同じ者のやりとり
• 2)次元の異なる者を同じと見なして行うやりとり
• しかし次元の本来違うものが対等性を発揮しよ
うとするから、その壁こえのエネルギーが意味を
持った。今は逆。単なる水平性の増加としての
対等性。
• 情報媒体の相対的な稀少性の減少も背景に
5.時間の流れのなかにある言葉を
記録する媒体としての紙
• 紙切れから本へ
• 稀少材としての木簡、石・・・永遠に残るような
言葉、墓碑銘のようなもの。
• 恐らくは、時間の流れの中にある存在を悠久
の時間の中に位置づけようとする試み。
• 紙の発生・・・でも当初は重要な手紙と記録に。
• 一枚物の紙・・・散逸する可能性のあるメモや
通知文
非常に大ざっぱに分けると
• 本(写本)・・・時間性の(時間的延長を意識し
た、タイムリーであるという意味ではない、と
いうかその反対)メディア
• 本(印刷本)・・・時間性とともに空間性の(空
間的広がりも意識した)メディア
マクルーハンと中井正一の印刷本(印
刷メディア)への評価
• マクルーハンの評価・・・このような印刷本の
空間性を表音文字の普遍性に還元して批判
• 文字文化の問題を写本より活字本は強化
• 中井正一の評価・・・印刷本・・・複製可能、商
品・・・写本より一方向的。しかし多様な解釈
の可能性。目の見える関係での合評会・相互
討論→双方向性への兆し
「委員会の論理」(1936)
中井正一の戦前の代表作
• 「いわれる論理」・・・ギリシアの問答法。文
字・・・奴隷のフェニキア人の専有物・・・双方
向
• 「書かれる論理」・・・中世の写本・・・教会が文
書を独占。聖書の解釈権を独占・・・一方向
• 「印刷される論理」・・・近代の印刷本・・・大量
の複製・・・それ自体は一方向・・・しかし多様
な読み方・読書会等を通じて多様な解釈・・・
双方向性の復活
各メディアの関連付置-時間性、空間性を軸に
より時間性(垂直性)←
→より空間性(水平性)
写本
印刷本(当然写本の方が活字本より左側)
雑誌
新聞
ラジオ
テレビ
電子メディア(双方向性の典型)
比較的左側の媒体もそもそもは、より左に対し
て速報的(空間的)媒体だった・・・
• 雑誌は本よりは速報的であるし、個人的であ
るし(journal はフランス語の日記の意味、ま
た日誌の意味も)、新聞は(「新」しく「聞」く
newspaper ということからも、新しい事柄・
「ニュース」を伝える「紙」媒体)である。
• その「新聞」という速報的メディアに本来あっ
た速報性のお株を奪うのが、ラジオやテレビ
であるといえる。
アメリカの新聞は地方紙主体
• ・ただ日本のように全国紙がある場合は、雑誌よ
りも新聞の方が購読者が多いという意味で上記
の図のように、より空間的広がりがあるといえる
が(当然、時間的蓄積性の逆の極としてのタイム
リー性は、洋の東西問わず雑誌よりも新聞の方
があるが)、単純に配布されるエリアの空間的広
がりでは、必ずしも新聞の方が大きいとはいえな
い。アメリカでは地方紙主体であるし。ただ地域
の広がりというよりも、購買者の多さという点で
はこの表はいえる。
6.本(書籍)
6.1本の存在論-本の垂直性
• 本の垂直性(後世を意識した媒体性)・・・そ
の垂直性を強く示すのもの
• 過去には写本(cf中井正一「委員会の論理」
1936)、
• 現在は、本の市場の外にある図書館。
(公共図書館の無料原則の潜在的な理由であ
るかも)
垂直性と物神性
• 本の物神性・・・このような本の垂直性と随伴
して(平行して)本の物神性というものが生じ
てくる。
• 「本は踏むべからず」
反対に
• プリントアウトした資料・・・使わなくなったら裏
紙はメモに
• 古新聞・・・ちり紙交換、ゴザ、レジャーシート
物神化(フェティシズム)
• 下着フェチ、脚フェチ・・・下着、脚によって本
来性欲が充たされるわけではない。
• 貨幣へのフェティシズム・・・貨幣を万能の価
値のように崇めること。本来、労働時間の記
録・証明にすぎない。労働時間の交換の媒体。
• 物神化(フェティシズム)=本来崇拝すべきも
のでないものを、神のように崇めること
本のフェティシズム①
• 本のコレクション、つんどく・・・読まれてなん
ぼのものなのに
• 蔵書・文庫・傷めずに読む(書き込み厳禁)→
一つの図書館の源流か
• 単にテープやマイクロフォンがなかった時代、
著者の声や考えを記録したものにすぎない
本のフェティシズム②
1.本を踏むべからず
• →知-集合性の証としての本への尊敬の念を、子供に植
え付ける。集合性への畏れ、おののき
2.行間を読め
• 読書百遍、意自ずから通ず。
• →ある種の「全体性」が本にはあるとみなされる。作者の
単なる「部分」ではなく、「部分」でありつつ「全体」を象徴す
るものとして捉えられる。本当は作者の考えの一プロセス
を示すものに過ぎないのに。
3.「人間書物」という言い方。ミハイル・イリーン(1895-1953)
『書物の歴史』
• これは逆にいえば、知恵者の人間よりも、書物の方が 本
来上という意識があることがうかがわれる。
本のフェティシズムの理由
• 1.宗教上の教典や歴史、特に正史が紙(あ
るいは紙の前史となる文字の記録媒体)の利
用をかなり独占
▽昔のヨーロッパの大学、神学部中心。
日本でも鎌倉五山、京都五山は学問の中心、
bible は語源的に本の意味もある。the Book
は「聖書」の意味にも。
神学や仏教哲学が学問・哲学の中心であった。
修道院の図書館の姿にみられるもの
• 2.従来の本 聖書、歴史書・・・集合性の証し(デュル
ケム)
▽現在の本 でも 内なる他者性を含める・媒介性(矛盾
するものを媒介し=結びつけつつ、体系づける)
少なくとも、本の素材となった雑誌や新聞の記事(書
き下ろし以外の本の場合)や著者のメモ(書き下ろし
の場合)の作成にかかった時間よりも遙かに多くの時
間が1ページあたりに投入される。
▽労働価値説的にも、雑誌や新聞よりも価値がある。そ
れだけ時の試練に耐えうる。
• 3.本の物神性の背景としての、言葉の物神
性
▽「神は細部に宿る」
▽「人生は一行のボードレールに若かず」
• 4.蓄積的で精査されて作られる情報源であ
り、更新がしづらいだけに、普遍的真理が盛
り込まれていると考えられる可能性が高い。
▽ネット情報の反対の正確
6.2出版社の二つの仕事
• 「本屋」という言葉の二義性、多義性
• 出版屋さん?書店さん?場合によって印刷
屋とも
• 現在の出版社の主な仕事
・・・雑誌作りと本作り(ただし双方はだいぶ違
う)
「書き下ろし」
• 従来「書き下ろし」は、本の帯の謳い文句・売
り文句
• 普通、本は書き下ろしではなく、雑誌の連載
で書かれる。
雑誌の編集部員の二つの機能
• 雑誌作り・・・新聞作りと本作りの中間的性格
• 編集部員が新聞同様自分で記事を書く場合
(記者的機能)
• 編集部員が外部の寄稿者の原稿を割り付け
ていく場合
(編集者的機能)
大手出版の商社的機能
• 大手出版社
• 編集や雑誌制作は子会社や別会社に(外注・
アウトソーシング)
• 自分たちは実質、名前を貸したり、販売網を
提供したりするだけという場合もある。
• 雑誌でも記者的機能はしなくなる(外注ゆえ)
• 商社的機能
本のみの出版社
• 本のみの出版をする会社
• ほとんど人員を要さずに、大きな仕事
• 全国的に良く知られているところでも、社員数
名も・・・採用は一社当たり10数年に一度
• 本作りは、電話一本と人脈があれば出来る
• 窮極の外注産業・・・文章は作家先生や有名
教授。印刷は印刷屋さん、製本は製本屋さん、
表紙デザインはデザイナー。
• 昔は、印刷屋と出版屋と本屋(場合によって
は版画屋、画家、作家)がある程度、同じ人
物や企業によって担われていた
↓
• 分業化
(出版社をはじめ)全てのマス・メディア産業
• 商社的機能(編集者的機能の窮極)
• 記者的機能(自前でものを作る)
企業の大規模化
現代に近づく
• 記者的機能→商社的機能