企業の情報化

2015年春学期
「現代の経営」
第7回 企業の情報化
樋口徹
・データとは、ある現象や事実を 文字 や 数字 で記録したもの
⇩⇩⇩
・情報とは、特定の 意図 や 目的 を持って、データを処理・加工し
たものであり。
※情報は意思決定における不確実性を削減する機能を持つ
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企業が合理的に意思決定するには?
この世の中は将来何が起こるかわからない(不確実性)中で、合理的な意思決定を
するには?
①運まかせギャンブル
②予測精度向上(データ取集)
③いろいろな事態を想定(シュミレーション)
企業
意思
決定
結果
企業が何らかの意思決定を下し、それを実行に移したが、結果が期待通りになると
は限らない。その理由は?
スピード が大切
②顧客(消費者)反応が不確定: 市場調査 を実施
③ライバルの反応が不確定: 多様な事態を 想定 しておく
①実行するまでの時間差(状況の変化):
④協力企業の動向(事故や値上げ): 複数社との取引による
リスク
分散2
IT革命の経営的意義
①企業と顧客、および企業間の情報共有
・CRM(Customer Relationship Management ):顧客と良好
な関係を構築し、「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」
を実施することが可能になった。
・SCM(Supply Chain Management):ERP(Enterprise Resource
Plannning; 統合基幹業務 システム)などに
よって、企業の枠を超えて、必要な情報を共有する
こと可能となり、サプライチェーン全体の効率化が
推進された。
②スピード経営の重視
・市場動向に 迅速 に対応が可能な生産・販売体制が構築さ
れた。
※情報システムと 物流 システムの連動が強化さ
れ、さらに代金回収も配達時に行えるようになるな
ど、より効果的に行えるようになった。
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情報システム導入の背景
①経済の成熟化(ある程度成長したが、成長は止まったあるいは
鈍化した状態)
・経済成長(生産能力と所得水準の上昇)により購買力が増加
↓
・多様な ライフスタイル (都市化、女性の社会進出、高齢化)
(成熟市場では細分化が進む;安くて頑丈な製品だけでは売れな
い)
↓
・製品の ライフサイクル の短縮化(成長鈍化により競争激化)
(企業は続々新商品やサービスを投入)
※多様な顧客ニーズを迅速かつ正確に把握し、 多品種少量
の生産・販売を効率的に行う必要性が高まった。
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②ビジネス・プラットフォームとしてのインターネット
インターネットがビジネスの 基盤 となる
・企業内部(情報システムはインターネット経由で従業員を結
びつけている。以前は、口頭、伝言、文書などで伝え
なければいけなかった)
・対顧客(品揃えの確認、受発注、代金決済などがネット上で
広く行われている。以前は、電話や店舗で確認し、店
頭での買い付け、FAXや文書での注文を行わざるを得
なかった。)
・対協力企業(情報システム上で、在庫確認や注文の受発注
が可能になっている。以前は、電話、文書やFAXで注
文・確認していた。)
※ビジネスの様々な側面がネット上で行われるようになった。
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③グローバル化
・企業活動のグローバル化;企業の生産、調達、販売、開発活動
が地球規模で行われるようになっている。
・ サイバー ・スペース;ネット上のスペースでは、時間と空間
を超えて活動が可能となっている。例えば、
以前は設計図を国際郵便で郵送していたが、
電子メールで瞬時に送付することが可能に
なっている。)
・ ロジスティクス ・システムの高度化;ネットで注文したもの
を即座に効率的に届ける仕組みへのニーズ
が高まり、それを遂行する体制が整った。
・国際情勢の安定化;東西冷戦が終わり、政治が安定し、経済的
な結びつきが強くなっている。
※地球規模で迅速かつ効率的に活動することが求められる時代
になっている。
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④タイムベースの競争(迅速な方が得)
・生産(注文後に、迅速に作れれば、余計な 製品在庫 を削
減できる)
※すぐ生産できれば倉庫での保管量を減らせる
・製品開発( 顧客ニーズ は日々変化:開発速度が遅いと
間に合わない)
※新製品を販売すると、とりあえず試しに買う人もいる
ので、新製品を続々と投入する必要がある。
・顧客への迅速な レスポンス (注文から提供するまでに要
する時間が短い企業は強い)
※顧客へのレスポンスを素早くするための仕組み作り
が求められる。
※競合他者より迅速に対応するための仕組みが必要となる。
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企業における情報化
• 企業や組織は人の 集合体 であるので、コミュニケーション
(情報の伝達や意思疎通)が重要な役割を果たす。
• 企業は外部から 収入 を得なければならないので、広告・
宣伝活動や問い合わせへの対応が必要となる。
• 材料や人材など必要な資源を外部から 調達 しなければな
らない時がある。
• 協力 企業との情報共有体制を整備しなければ、ビジネスを
円滑に行うことは困難になっている。
• 業績の向上に向けて、情報の入手・ 分析 が有効な手段と
なる。
• 関係者に向けて適切に 情報公開 しなければ、社会の一
員として認めてもらえない(企業市民としての説明責任)。
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近年の通信技術の進歩に伴うビジネス環境の変化
•
ブロードバンド (高速・大容量ネットワーク)化により、音声・
画像・動画などが送れるようになった。
• ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入
者専用線;電話用の銅製の回線を利用し、下りの通信速度を速
めたもの)、CATV(ケーブルテレビ回線を活用)、FTTH(Fiber to
the home;光ファイバー)など家庭までブロードバンド化が進展し
た。
• インターネット技術+モバイル(機器)技術 ⇒ ユビキタス ・
ネットワーキング(あまねく利用可能)
•
クラウド コンピューティング(アプリはサーバーのものを利用
し、データはサーバーに保存する)
• ビッグデータ (大量のデータを入手・分析し、貴重な情報を
発見する)
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企業経営における情報化の進展①1960年代
• 1960年代の企業では、 データ処理 が中心であった。
• 主な業務内容は、計算(科学分野)、 経理 業務、 給与 計算
であった。
• 活用されたコンピュータは、メインフレーム・コンピュータ(企業の基
幹システムなどに用いられ、大量の データ を処理することがで
きる大型汎用機)であった。
※汎用機(多様な作業を同時並行的に行う) ↔専用機
• 当時は、一台のコンピュータを 多数 のユーザーが利用。
※1969年には、アメリカ国防総省はインターネットの前身であるARPANET
(Advanced Research Projects Agency Network)を開発し、軍事利用をしていた。
出所:
http://www.mugendai-web.jp/
archives/1209
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企業経営における情報化の進展②1970年代
• MIS(Management Information System;経営情報システム);
経営者や管理者の 意思決定 を支援する目的で構築さ
れた。しかし、実際には、意思決定を支援するだけの力は
無かった 。
• FA(Factory Automation); 生産 活動の自動化や省力化を進
展させた。
• OA(Office Automation); 事務 処理の効率化を進展させた。
※単純(定型的)作業では効果が出るようになったが、複雑な
作業や非定型的な作業ではまだ難しかった。
※生産者側の情報化が中心で、企業によってプロトコル(通信
規約)が異なっていたので、 クローズド ・ネットワークで
あった(スタンドアローン)。
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企業経営における情報化の進展③1980年代
• 情報ネットワークの時代( 通信技術 の進展と 通信 の自由化
を背景に、回線によってコンピュータ(企業)間が連結。
• FA(工場内)は、FMS(Flexible Manufacturing System; 多品種少量
生産が可能)、そして CIM(Computer Integrated Manufacturing;営業
部門と 連動 して製造可能)に進化した。これらによって、市場の
ニーズに応じて無駄なく、迅速に生産することができるようになった。
• 事務作業は、LAN(Local Area Network; 構内通信網 )によって、
OA機器がネットワークに結ばれた。
• 1980年代後半には、情報システムを戦略的に活用し、競争優位を獲
得しようとするSIS(Strategic Information System)が出現。
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1980年代後半の戦略的情報システム構築事例①
(事例1)アメリカン航空の 座席予約 システム
作業の 合理化 を目的として、アメリカン航空は座席予約端
末を 旅行代理店 に設置した。その結果、アメリカン航空に
おける座席の割り当て作業が激減しただけでなく、 予約 が増
加した(旅行代理店で予約時に座席を予約できるので、安心・便
利であった)。
※情報システムの導入=作業工程の見直し
上手に、作業工程を見直し、情報システムを導入できれば、コス
ト削減と売上増を 同時 に達成できることがある( 利益 の
増加に直結)。
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1980年代後半の戦略的情報システム構築事例②
(事例2)ヤマト運輸の 運行 情報システム
• ヤマト運輸は、1987年に、 無線 による運行情報システムを
全国展開した。
• それによって、 集荷 指示を適宜出せるようになった。トラッ
ク運転手が車庫で急な集荷指示を受けるより、近所を走ってい
るトラック運転手が集荷した方が時間短縮( ガソリン 代や
人件費 の削減)と 利用者 へのサービス向上になる。
• さらに、配達ミスや集荷忘れ等が発生した場合に、該当するト
ラックドライバーに迅速に対応ができ、利用者の不満をある程
度に抑えることができる。当然、利用者から運送状況(到着時
間など)の問い合わせに ある程度 回答することもできる。
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1980年代後半の戦略的情報システム構築事例③
(事例3)セブンイレブンの POS システム
• セブンイレブンは1982年にPOS(Point of Sales: 販売時点
情報管理)システムを導入した。
• レジにおいて、バーコードをスキャンすることによって、レジで
の 清算 時間が短縮され、打ち間違い(入力ミス)などが激
減した。
• さらに、営業終了後に、売上を計算し、売れ筋を把握する必要
がなくなった( 即日 把握できるようになった)。
• これによって、売れ筋商品の 品切れ と死筋の 売れ残り
を最小限に抑えることができた。
※売上を増加させ、費用を削減させる効果があったので、利益
増加につながった。
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企業経営における情報化の進展④1990年代
• 企業間の取引情報の交換に必要な EDI (Electric Data
Interchange;電子データ交換)が整備され、 企業間情報 ネッ
トワークが進展。
• CALS (Continuous Acquisition and Life-cycle Support;生産・
調達・運用支援統合情報システム)によって、部門間や企業間で
の情報交換ルールが標準化され、情報の共有化が進み、リード
タイムの短縮や生産性が向上した。
※CALSの前身は米国国防総省が開発した「コンピュータによる調達とロ
ジスティクスの支援(システム)」で、
情報システムであった。
兵器
の調達のための戦略的
• ワークステーションやPCなどのように小型のコンピュータの性能
が向上し、価格も下落し、利用者の裾野が急拡大した。小型機を
中心とした、 CSS (Client Server System;クライアント・サー
バー・システム)が主流となった。
※東西冷戦後の1991年にARPANETを商業用に開放され、
IT革命
へ
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企業経営における情報化の進展⑤2000年以降
インターネット時代の2つの動き
( ネットワーク のネットワーク)
(1)イントラネット(Intranet≒LAN)
インターネット技術が未熟の時は、個別の構内通信網を結びつけ
ることが難しかった。現在は、技術的には問題はないが、外部から
のアクセスを遮断し、 情報漏えい や サイバー攻撃 を防
止するためにイントラネットを構築する場合がある。
(2)エクストラネット(Extranet)
子会社や取引先との 連携 強化を目的とし、子会社や取引先の
LANをネットワーク化したもの。子会社や取引先の材料、部品、製
品在庫などが把握できるので、急な注文に対応できるかが判断で
きる。さらに、 受発注 や 決済 なども円滑に行えるようにも
できる。
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情報ビジネスの主な種類
(1)「ハードウェアー・ビジネス」
コンピュータの開発・製造・販売に関するビジネスにおいては、デス
クトップ型からノート型、さらには、タブレット型に小型化が進んでい
る。販売形態は、店舗販売型から 無店舗 販売型の直接販売方
式が急増している。
(2)「ソフトウェア・ビジネス」
OS(Operating System)や汎用ソフトなどの開発・販売に関しては、
最善のソフト(オンリー・ベスト・ワン)以外は不要とされる傾向があ
る(例えば、MSのOfficeなどが事務ソフトの主流)。インターネット上
のブラウザーや 検索エンジン の重要性が増している。
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情報ビジネスの主な種類(続き)
(3)「 コンテンツ ・ビジネス」
映像、音楽、書籍、ゲームなどがオンラインで提供されるよ
うになっている。DVD、CD、書籍などの実物の作成、輸送や
保管の手間が省ける。注文や取得の手軽さなどによって、
消費者側と供給者側に受け入れられた(コストが大幅に削
減されるので、低価格での販売も可能)。
(4)「 電子商 取引」
インターネット上で、商品の受発注や決済を行う取引である。
必ずしもすべての行為がインターネット上で完結している必
要はない。宅配などによって、支えらえている面がある。ア
マゾンや楽天などが代表例。
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物流活動における多様な情報システム投資の効果
情
調達
• 調達先
選定
• 発注
• 在庫情
報把握
• 配送状
況把握
• 決済
など
報
シ
ス
テ
ム
保管
加工
出荷
販売
• ロケー
ション
管理
• 在庫管
理
• ピッキ
ング指
示
など
• 生産計
画策定
• 生産管
理
• 作業者
の管理
• 生産状
況の把
握
など
• 梱包作
業支援
• 在庫管
理
• 発送作
業支援
• 運送手
配
• 配状況
確認
など
• 受注管
理
• 販売作
業支援
• 在庫管
理
• 顧客情
報管理
など
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情報システムへの投資の評価
情報システムへの評価(=投資・運用効果/コスト)
定量的 に測定可能な評価指標
・収益に関する指標
-売上高・営業利益・経常利益
-売上高利益率(=利益/売上高)
-投資利益率(=利益/投資額)
※能率性、経済性、生産性に関するものなども定量的に測定
可能(⇒数値化)
・情報システムコスト
-技術導入・システム開発コスト
-情報システム構築コスト
-システム運用コスト(電気代、監視スタッフの人件費等)
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EUCと全体的保有コスト(Total Cost of Ownership)
• エンドユーザーコンピューティング (EUC)によって、
情報の専門家以外の利用が進んだので、システムは分散型
になり、要するコストの種類が多様化した。
※昔は大型のホストコンピュータが中心であったが、現在
はPCの個人利用が進み、多様な場所で多様な用途で利
用されている。
• 技術進歩によって、だれでもコンピュータが使える時代になっ
たので、エンドユーザーが快適に活用できるようにするため
のコストが必要となる。
※全体的保有コストに類似の言葉として、ライフサイクル・
コストがある。両者の大きな違いは、ライフサイクル・コ
ストには廃棄に要する費用が含まれていることである。
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定性的(定量化困難)な項目の影響
・ 意思決定 の支援
(人の行動は意思決定の塊:必要な情報の取得の容易さ)
(情報システムが提供した情報の有効性)
・企業イメージの向上(手書きやEメールの請求書イメージは?)
・顧客へのサービスの向上(ネットで注文できる便利さは?迅速
な対応の評価は?待ち時間が短くなった効果は?)
・競合他社との差別化(競合他社とどのように差別化したか?)
・社員のモラール(意欲)向上
(社員のやる気はどの程度上がった?下がった?)
※このような定性的指標は情報システムの評価が正確に測定
できない。
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情報システムの定量的な評価の問題点
(1) タイムラグ の存在
システムが稼働してから効果が出るまでに長期間かかることもある。
さらに、その効果が定量的に把握できるまでにも時間がかかる。
(2)情報技術以外との相乗的効果
情報投資→(従業員→組織)行動の変化→効果
例.POS導入→ レジ打ち 無し(ミス減・時間短縮)→売れ
筋把握→業績向上
(3)間接的・波及的効果の存在
「業務合理化のため→製品サービスの質向上→顧客満足向
上に情報化推進」
※本来の目的以外で効果
(4)収益性と情報化投資の間に相関関係があるとは言えない
情報化投資を行えば、自動で収益性が上がるわけではない
( 内部プロセス の見直しが必要)。
投資分(=コスト)を上回る利益を稼ぐのは大変。
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システム監査(集中化・広域化にともないリスク増大)
システム監査の目的( 法律 上の義務ではない)
• セキュリティ向上(リスク回避、悪影響最小化)
システム監査の目的は、情報システムの信頼性、安全性およ
び効率性の向上を図り、情報化社会の健全化を推進すること。
• 情報投資コストの妥当性
情報投資のコストとパフォーマンスを比較(過剰投資や投資不
足解消)
• システム化の目的との整合性
情報システム投資がその目的(業績向上のための業務改善)
にどれだけ貢献したかを評価し、対応する。
※システム監査は、企画、開発、運用に関係のない 第三者
のシステム監査人がおこなうのが望ましい。
※電子商取引(eコマース)の進展によって、情報セキュリティ対
策の重要性が増している。
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情報システムのアウトソーシング(外注)の背景
背景1 中央集中制御型から 分散 型システムへの移行
・多数のパーソナル・コンピュータとクライアントサーバー型システムが主流
になる(様々な場所で多様な使い方がされるようになっているので、集中的
に管理するのが困難になる)。
背景2 統合ソフトウェアの性能向上
・ パッケージソフト の利用(膨大な費用と時間が嵩む自社用ソフトウェア
の開発の必要性が消失)
背景3 ASP(Application Service Provider)とiDC(internet Data Center)事業者増
・アプリ(ケーションソフト)を提供(アプリの多様化)
・iDC(ウェブサーバー管理を受託する会社)
背景4 専門知識の迅速な獲得とコストの削減
自社で雇用した情報関係の要員に対して、常に最新の技術を活用できる状態
を維持させるのは困難である。必要な技術を持った人間を適宜活用できるよう
にする。
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情報システムのアウトソーシングの問題点
• 情報システムの構築や運営に関する知識やノウハウの 蓄積
ができない(外部企業が蓄積)
• 手放した知識やノウハウを再度手に入れるのは大変(外部企業
への依存が強まる)
• トラブル発生時に対応が遅くなる
• 適正な価格に関する知識がなくなるので、 価格交渉力 が
弱まる。
• 大切な顧客情報や商品情報、技術情報などが委託業者を経由
して漏えいする恐れがある。
• 戦略策定に必要な知識や情報がなくなる。(本業に悪影響を及
ぼす)
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