会社法1 第4回 本日のお題 • 株式総論(一部は前回の復習) • 株主平等の原則 • 株式の共有 • 株主の権利の行使に関する利益供与 • 株式譲渡の基礎 2015/12/7 専修大学2015 2 株式総論(承前) 2015/12/7 専修大学2015 3 全部取得条項付種類株式 ④少数派株主の締め出し完了 普通株 全部取 得条項 A種類株 ①種類株式発行 ②定款変更で普通株に 全部取得条項付加 普通株 全部取 得条項 ③株主総会特別決議で 株式を強制取得 4 立法の経緯 ① 当初は、破綻の危機に瀕した会社に新たなスポン サーがつき、既存株主の株式を無価値にして、新 スポンサーが新株を引き受ける場面を想定(会社 更生等における100%減資スキームと同様の効果 を予定) ② 立法の過程で、条文上、利用場面を限定する要 件を立てることが困難であるとされて、目的要件 による絞りは断念 ③ 立法後は、本来の目的ではなく、少数派株主の締 め出し、MBO等の目的で用いられることがほとん ど 5 全部取得条項付種類株式の問題点 ① 少数派株主の締め出しに全部取得条項付種類株 式を用いることの可否 ⇒裁判例は明文の目的規制がないことを理由に許容(対価 が著しく低廉というような事情がなければ「著しく不公正」 (831Ⅰ③)な決議に該当せず。東京地判H22.9.6インター ネットナンバー事件) ② 会社に株式を取得された「元」株主も決議取消訴 訟の原告適格を有する(東京高判H22.7.7日本高 速物流控訴審判決他) ⇒②は改正で明文化 6 ③ 振替制度採用会社においては、価格決定の申立 てに際し、会社側が株主の地位を争う場合には、 審理終結までに個別株主通知がされる(=通知が 会社に到達する)ことが必要(裁決H22.12.7メディ アエクスチェンジ事件) ④ 取得条項付加の定款変更決議と取得決議が同時 になされた場合、株主は116条の株式買取請求権 を行使することも、172条の価格決定の申立てをす ることもできるが、取得の効力発生後は買取請求 不可(最決H24.3.28) 7 全部取得条項付種類株式制度改正 ① 取得決議の総会の2週間前と価格決定申立通知・ 公告日の早い日から取得条件等の事前開示(171 の2) ② 差止請求規定の導入(171の3) ③ 価格決定申立期間を「総会から20日」⇒「取得日の 前20日」に変更(172Ⅰ) ⇒「定款変更+取得決議+取得」を同時に行うコンボを封じ る ④ 価格決定申立株主についての取得の効力を否定 (173Ⅱ) 8 種類株式発行手続き 株式の種類/号 種類株主総会決議 定款記載事項 108Ⅲにより先延ばし可 譲渡制限 ④ 特殊決議* ・譲渡制限 ・みなし譲渡承認 ・譲渡制限 取得請求権 ⑤ 特別決議 ・取得請求権 ・対価 ・請求可能機関 ・取得請求権 取得条項 ⑥ 総株主の同意 ・条件または期限 ・対価 ・一部取得の方法 ・一定の日に取得する旨 ・具体的取得日 ・一部取得の方法 ・対価の種類 全部取得条項 ⑦ 特別決議* ・対価 ・あれば総会決議の条件 ・取得対価の決定方法 剰余金配当 ① 特別決議 ・決定方法(要綱) ・具体的決定方法 ・財産の種類 残余財産分配 ② 特別決議 ・決定方法(要綱) ・具体的決定方法 ・財産の種類 議決権 ③ 特別決議 ・議決権行使可能事項 ・あれば議決権行使条件 ・議決権行使可能事項 拒否権 ⑧ 特別決議 ・拒否権行使可能事項 ・あれば拒否権行使条件 ・拒否権行使可能事項 取締役・ 監査役選任 ⑨ 特別決議 ・人数 ・人数 ・共同選任ならその旨と人数 ・共同選任する旨と人数 ・あれば変更条件と変更後 ・社外取締役・監査役 9 株主平等の原則 10 株主平等の原則 I. 意義 1. 基本的な意義 株式の内容の平等(現行会社法では廃棄) 同じ株式を有する株主の取扱いの平等(会109Ⅰ) 2. 「平等」の内容 基本的には出資額(株式数)に応じた比例的平等 • 1株1議決権(308Ⅰ) • 配当基準(454Ⅲ)、残余財産分配請求(504Ⅲ) ※株主総会での質問権をどう考えるかには議論あり 11 3. 株主平等原則の例外 i. 株式の内容に基づく例外 ① 種類株式(108) ② 株式の属人的定め(109Ⅱ) ii. 株式のコンディションに基づく例外 ① 基準日後に取得された株式(124) ② 単元未満株式 iii. その他の例外 ① 単独株主権、少数株主権の行使 ② 不利益を被る株主が任意に不平等な扱いを承諾した場合 ③ 株主共同の利益、企業価値が毀損される場合(後述) 4. 株主平等原則の効果と機能 効果:株主平等原則に違反する行為は一律無効 趣旨:多数決の濫用から少数派を保護 12 II. 株主平等原則の適用範囲 分配可能額のない会社が一部株主に財産を贈与するこ とは株主平等原則違反で無効(最判S45.11.24百(1)-12) 株主優待制度については見解が分かれるが、現在の多 数説は(少なくとも現在の上場企業が行う程度であれば) 株主平等原則には違反しないと解している 13 III. 株主平等原則の限界 ・・・株主平等原則は常に絶対の原則なのか 1. 差別的行使条件付新株予約権 買収防衛策として、新株予約権を株主割当発行(あるい は株主無償割当)で既存株主に交付するが、買収者に ついてのみ新株予約権の行使を認めないというもの。結 果的に買収者以外の株主の持株数が増大して買収者の 持株比率低下 2. 差別的行使条件付新株予約権と株主平等 新株予約権の行使条件は会社と新株予約権者の債権 的な契約内容に過ぎないので株主平等とは無関係(ス トック・オプションを想定せよ)だが、株主割当発行や無 償割当による差別的行使条件付新株予約権発行は、実 質的には一部の株主を除外した新株発行と同じ 14 3. ブルドックソース事件(最決H19.8.7百-99) i. 事案 敵対的買収開始後に、対象会社が、買収者に予約権行使を認 めない(代わりに金銭補償)差別的行使条件付新株予約権を 株主無償割当てしたのに対して、買収者が差止仮処分申立て ii. 争点 ① 差別的行使条件付新株予約権の交付は、買収者にだけ株式 取得の機会を与えないもので株主平等違反 ② ①のような発行は著しく不公正 ③ 買収防衛策は支配権維持目的のもので、新株予約権の不公 正発行 iii. 争点①についての判旨 ① 新株予約権の株主無償割当てにおいて、その行使条件に株主 平等の原則の趣旨が及ぶ ② 株主平等原則は会社の存立を前提とするから、企業価値、株 主共同の利益が毀損される場合には、衡平の理念に反し相当 性を欠くものでなければ、特定の株主に対する不平等な取扱 いが許される 15 株式の共有 2015/12/7 専修大学2015 16 基本事項 株式は(準)共有可能 共有株式についての権利行使に際しては以下の いずれかが必要(会106ⅠⅡ) ① 権利行使者を指定して会社に通知 ② 会社が権利行使に同意 ⇒①権利行使者の指定方法、②同意の要件につ いて規定がなく争いあり 2015/12/7 専修大学2015 17 株式共有についての考え方 10株を3人等分で共有している場合 (A) 1株ごとに共有が成立し、議決権も共有される A B C A B C A B C A B C A B C 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) A B C A B C A B C A B C A B C 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 議決権行使を、①共有物の管理とする見解(過半数説)、②共有 物の変更とする見解(全員一致説)がある (A)’ 1株ごとに共有が成立するが、議決権は果実であり可分(果実説) A A A B B 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) B C 株式(1株) 株式(1株) C 株式(1株) C 株式(1株) 株式(1株) (B) 株式は共有持分に応じて分割されている(当然分割説) ※相続共有の場合を念頭に置く A 株式(1株) A A 株式(1株) 株式(1株) B B 株式(1株) 株式(1株) A B C C C B C 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 株式(1株) 議決権行使方法 過半数説 学 説 共有説 全員一致説 当然分割説 果実説 統 一 行 使 不 統 一 行 使 個 別 行 使 2015/12/7 専修大学2015 21 権利行使者 I. 権利行使者の意義 1. 権利行使の要件 権利行使者を選定し会社に通知(以下「指定」)しなけれ ば、共有株式にかかる権利の行使不可 ※当然分割説の場合にはそもそも分割済 2. 権利行使者の権限 i. 権限の範囲 共有株式全体について株主権の行使が可能 ii. 共有者の意思による拘束 a. 共有者の意思には拘束されず、事由に権利行使が可能 b. 共有者の指示に従う義務はあるが、その違反は権利行使の結 果に影響しない 共有者の指示に反した権利行使は無効(表見法理で処理) c. 2015/12/7 専修大学2015 22 3. 権利行使者の指定方法 i. 権利行使者の選定要件 a. b. c. 共有持分の過半数による(民252)(最判H9.1.28) 共有者の全員一致による(民251) 権利・議案の中身により過半数か全員一致かを使い分ける d. (判例)当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株 式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り、株 式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有 者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる(最判 H27.2.19民集69-1-25H27重判商1) ii. 選定における協議の要否 2015/12/7 共同相続人間の権利行使者の指定は、・・・暫定的状態である ことにかんがみ、・・・共同相続人間で事前に議案内容の重要度 に応じしかるべき協議をすることが必要であって、この協議を全 く行わずに権利行使者を指定するなど、共同相続人が権利行 使の手続の過程でその権利を濫用した場合には、当該権利行 使者の指定ないし議決権の行使は権利の濫用として許されな い(大阪高判H20.11.28判時2037-137) 専修大学2015 23 iii. 権利行使者の会社に対する通知 権利行使者の住所、氏名(名称)を会社に通知 前提として、共有株式について共有名義に書換えが必要(会 130Ⅰ)。名義書換未了の場合、会社は通知を拒絶可(通説) iv. 通知に代わる会社の同意 2015/12/7 会社は、権利行使者からの通知がない場合でも、会社が特定 の共有者に対して権利の行使に同意すれば、当該同意を受け た共有者は株主権の行使が可能(会106ただし書き) 「同意」は、権利行使の「通知」を代替するものであって、「選定」 手続きが省略できるわけではない 「会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたま ま当該株式についての権利が行使された場合において,当該 権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないと きは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行 使は,適法となるものではない」(前掲最判H27.2.19) 専修大学2015 24 II. 権利行使以外の共有者の地位 1. 原則 2015/12/7 ① 権利行使者が指定されている場合、権利行使者以外の共有者 は株主権を行使できない ② 権利行使者が指定されていない場合、誰も当該共有株式につ いて株主権を行使できない 専修大学2015 25 1. 株主訴訟における例外 i. 2015/12/7 判例が認める例外 「権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知してい ないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しない (が)・・・、共同相続・・・株式が会社の発行済株式の全部に相 当し、共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の株主 総会決議がされた・・・ようなときは、前述の特段の事情が存在 し、他の共同相続人は、右決議の不存在確認の訴えにつき原 告適格を有する」 (会社は)「通知・・・を前提として株主総会・・・決議の成立を主 張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、他方、右手 続の欠缺を主張して、・・・共同相続人の原告適格を争うという ことは、右株主総会の瑕疵を自認し、また、本案における自己 の立場を否定するものにほかならず、右規定(=会106)の趣 旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟 上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されない」 (最判 H2.12.4百-、同旨、最判H3.2.19) 専修大学2015 26 〔解説〕 H2最判、H3最判はどちらも、“共有者の一部が権利行 使者の指定がないまま全共有株式について議決権を行 使して総会決議が成立したが、その後に他の共有者が 決議不存在確認訴訟、合併無効訴訟を提起すると、権 利行使者の指定が行われていないことを理由に原告適 格を争った”事案 ※どちらの事案も、当該共有株式の賛成がなければ決議は成立し なかった 2015/12/7 会社は、一方では共有株式についての議決権行使を有 効と認め、他方では当該共有株式の権利行使者の未指 定を理由に権利行使を拒絶しており、このような矛盾す る態度が「特段の事情」にあたるとの判示と解されてい る 専修大学2015 27 ii. 学説が提唱する例外 確認の訴え(会830ⅠⅡ等)については原告適格の限定がない から、訴えの利益があれば各共有者が提訴可〔菱田政宏〕 b. (a.に加えて)共有持分が1株以上に相当すれば、決議取消訴 訟、会社の組織に対する訴えも、訴えの利益があれば可能〔大 杉謙一〕 c. 監督是正権には会106本文の適用はない〔込山芳行〕 d. H2最判の「特段の事情」を精緻化して、①会106但の同意が不 当に行われた、②権利行使者の指定なしに議決権行使がなさ れた、③共有株式の議決権行使が排除された状態で不要不急 な会社の基礎的変更(合併等)の決議がなされた、④相続共有 の場面において権利行使者の指定・権限行使が不適法、と いった場合には各共有者が提訴可〔神作裕之〕 〔解説〕 a. 過半数説、全員一致説のどちらも、共有状態であることを奇貨と して、本来以上の権限を有する共有者が出てきてしまうこと、多 数決を貫徹すると少数共有権者の利益が不当に害されること、と いった問題が残っており、柔軟な解決が必要 2015/12/7 専修大学2015 28 株主の権利の行使に関する 利益供与 29 会社法120条の意義 I. 立法趣旨 ① 総会屋対策(贈収賄罪の空文化) ② 浪費の防止 ③ 議決権歪曲の防止(健全性確保) 対象が狭い 対象が広い ・・・当初は①が強調されていたが、現在は②③がメインで、 特に近時は③に焦点があたっている II. 要件 ① ② ③ ④ 何人に対しても 株主の権利の行使に関して 会社または子会社の計算で 財産上の利益を供与 30 III. 要件の検討 1. 何人に対しても 供与の相手方(被供与者)は株主に限られない 被供与者は総会屋等の反社会的勢力である必要もない 2. 株主の権利の行使に関して 通説は会社に主観的な目的があれば足りるとする(客観 的な影響力を要件とする見解もある) 権利の行使・不行使を含む幅広い態様を含む(モリテック ス事件参照) 31 株式の譲渡または譲受けに関して利益を供与する(取得資 金の供与や手放したことへの謝礼、取得しないことを確約 した謝礼)ことも含まれる ※「会社にとって好ましくない株主」の権利行使を回避する目的での供 与が株主の権利に行使に関するものとする判例(最判H18.4.10百12)があるが、好ましくないとはいえない株主の権利行使を回避する 目的(=多数派工作目的)での資金提供が本条に該当するかどうか は見解が分かれる(東京高判H22.3.24) 株主に対して、無償または著しく低い対価で利益が供与さ れた場合には、株主の権利の行使に関するものと推定 (120Ⅱ) 32 「株主の権利の行使」 立法目的 理由付け 禁止される 供与目的 総会屋対策 /浪費の防止 立法の経緯 反社会的勢力へ の資金の供与 客観的 原則なし 議決権歪曲防止 条文の文言 会社資金での 議決権歪曲 主観的 原則あり 書誌 最判H18.4.10 事件名 蛇の目事件 対象行為 株式譲渡 東京地判 議決権 モリテックス事件 H19.12.6 行使勧誘 東京高判 株式譲渡 グランド東京事件 H22.3.24 (保証) 判決 ○ 「好ましく 支配権争い 権利行使への ない株主」 への適用 影響(意図) 供与の態様 主観的 客観的 客観的 理由 会社から見て好ましくないと判 断される株主の議決権行使回 反社会的勢力 避目的での利益供与は120 条違反 ○ 多数派工作 (MBO) 会社提案に賛成する議決権行 使の獲得をも目的とするもの で正当な目的とはいえない × 多数派工作 (相続争い) 亡オーナーの相続人は「会社 から見て好ましくない株主」に 該当しない 会社の行為と利益供与該当性 行為 120条該当性 隠れた利益配当 原則違法 株主優待 従業員持株 社会通念上許容される範囲であれば 適法(高知地判S62.9.30) 備考 同時に配当規制(会461Ⅰ⑧)違反 控訴審は主観的意図を強調して消極 株主平等違反のおそれ 会社の意向を議決権行使に反映できない 株主平等原則違反にもならない ので福利厚生目的(福井地判S60.3.29) 第三者割当増資 理論的には本条該当の可能性はあるが、 主要目的ルールとの棲み分けの議 (有利発行) なぜか議論されていない 論が深化していない 自己株式取得 「会社から見て好ましくない人物からの取 得」は違法(前掲蛇の目事件) 第三者割当増資との整合性を要検討 買収防衛策 ブルドックソース事件の買収者への支払 いの適法性について議論あり 立案担当者・・・「供与」にあたらない 予約権割当自体が違法との見解あり 委任状勧誘工作 勧誘に際して利益を供与することは違法 勧誘のための株主把握等の費用は適法 前掲モリテックス事件の実質はこちら 社会通念上相当なら適法 総会の 特定の議決権行使を勧誘するなら違法 「おみやげ」 (前掲モリテックス事件) 何を以て特定の議決権行使を勧誘 下と言えるかの事実認定が問題 3. 会社または子会社の計算で 取締役等のポケットマネーの供与は本条の対象外 実務上は利益供与は総務担当部長等が「独断で」行っ たこととされおり、取締役は当該利益供与は横領行為で あり会社の計算ではない、と主張することがあるが、そ のような主張は通らない 4. 財産上の利益の供与 財産の形態は問わない 対価が均衡していても財産上の利益を供与したことにな る(例:総会屋の機関誌の購読) 35 IV. 効果 1. 供与行為自体の効果 供与行為は当然に無効。議決権行使に関して利益供与 がなされた場合には、決議方法の法令違反(モリテック ス事件) 2. 被供与者の返還義務 行為が無効であることから利益は不当利得だが、不法 原因給付等による返還の困難にそなえ返還義務法定 返還義務はすべての利益だが、引換えに会社に給付し たものがあれば会社に返還請求可 3. 取締役等の支払義務 供与した取締役、執行役は無過失責任 その他の取締役、執行役は過失責任 36 4. 責任追及等 被供与者、取締役等に対しては株主代表訴訟による 責任追及が可能(役員でない者に対する例外的な訴 権) 取締役等の支払責任は総株主の同意がなければ免 除不可。被供与者の義務の免除については規制なし (ただし免除自体が利益供与、あるいは取締役の任 務懈怠となる可能性大) 被供与者、取締役等の責任は不真性連帯債務 (120Ⅳ参照) 37 株式の譲渡(頭出し) 本来の株式は有価証券たる株券に表章されて流通するもの 株式流通の態様 株券不発行 採用手続 振替なし なし 譲渡の効力発生要件 意思表示の 合致(会127) 対会社の対抗要件 対第三者対抗要件 権利者推定 善意取得 株券発行 振替制度採用 発起人全員の同意または取 定款規定(会214) 締役会決議(振替128Ⅱ) ※譲渡制限株式は振替不可 意思表示の合致+譲受人振 意思表示の合致 替口座簿の記載(振替140) +株券の交付(会 128) 原則は総株主通知(振替152) 譲受人の請求に 共同申請の 名義書換(会 による名義書換。少数株主 よる名義書換(会 130,133ⅠⅡ) 権については個別株主通知 130,133ⅠⅡ,会 (振替154) 施規22Ⅱ①) 名義書換(会 (振替口座簿の記載) (株券の所持) 130Ⅰ) ※振替161Ⅲ ※会130Ⅱ なし あり(振替143) あり(会131Ⅰ) なし あり(振替144) あり(会131Ⅱ) 39 株券不発行(振替不採用) 会社の株式譲渡 会社 名義書換請求 (原則共同申請) 意思表示の合致 譲渡人 2015/12/7 譲受人 株式 専修大学2015 40 株券発行会社の株式譲渡 名義書換請求 (譲受人) ①意思表示の合致 譲渡人 2015/12/7 ②株券の交付 専修大学2015 譲受人 41 振替制度採用会社 の株式譲渡 振替機関 総株主通知 名義書換 ③ 振替口座 ②振替通知 (振替132) ③ 発行会社 買 売 譲渡人 甲証券会社 (口座管理機関) 証券取引所 ①取引成立 2015/12/7 振替口座 専修大学2015 乙証券会社 (口座管理機関) 譲受人 個別株主通知 42 株式振替制度の概要 ① 基本的には、銀行の口座振替のイメージ(現金を 直接相手方に渡すのではなくて、銀行口座の残高 の操作で相手方に金銭が渡るという減少の株式 版) ② 譲受人口座の残高の増加が株式譲渡の効力発生 要件(振替140。一般承継等は例外) ※振替の申請は譲渡人側が行う ③ 理論的には超過記載(発行済株式総数を口座の 残高総数が超過する)可能性があるが、その場合 には振替機関等が株式を取得し権利を放棄して調 整(その間は超過分だけ一般株主の権利が縮減)。 2015/12/7 専修大学2015 43 譲渡以外の移転の効力要件 株式に固有の移転の効力要件の要否 移転の原因 株券の交付 振替口座の記載 ①一般承継(相続・合併) 不要 不要と解される ②弁済代位(民500,501) 不要 不要と解される ③詐欺取消 不要 不要と解される ④取得請求権の行使 請求権行使要件(必然的に効 力発生要件)(会166Ⅲ) 振替申請が請求権行使 要件、振替が効力発生要 件(振替156) ⑤全部取得条項付種類株式、 効力要件ではないが株券提 取得条項付株式の取得 供と対価交付は同時履行(会 219Ⅰ③④、Ⅱ) 効力発生要件(振替 157ⅡⅣ) ⑥自己株式の処分 必要?(振替140) 2015/12/7 不要(会209、128) 専修大学2015 44
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