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会社法1
第6回
本日のお題
• 株式の譲渡方法
• 株主名簿
• 株式の譲渡制限
2
株式の譲渡
3
本来の株式は有価証券たる株券に表章されて流通するもの
株式流通の態様
株券不発行
制度の採用手続
振替なし
振替制度採用
なし
発起人全員の同意または
取締役会決議(振替128Ⅱ)
※譲渡制限株式は振替不可
譲渡の
意思表示の合致
効力発生要件
(会127)
対会社対抗要件
株券発行
定款の定め
(会214)
意思表示の合致+
意思表示の合致
譲受人振替口座簿の記載 +株券の交付
(振替140)
(会128)
原則として総株主通知
譲受人の請求に
共同申請による
(振替152)による名義書換
よる名義書換
名義書換
少数株主権については
(会130,133ⅠⅡ,
(会130,133ⅠⅡ)
個別株主通知(振替154)
会施規22Ⅱ①)
名義書換
(会130Ⅰ)
(振替口座簿の記載)
(株券の所持)
※振替161Ⅲ
※会130Ⅱ
権利者推定
なし
あり(振替143)
あり(会131Ⅰ)
善意取得
なし
あり(振替144)
あり(会131Ⅱ)
対第三者対抗要件
指名債権的
有価証券法理が支配
4
株券不発行(振替不採用)
会社の株式譲渡
会社
名義書換請求
(原則共同申請)
意思表示の合致
譲渡人
株式
譲受人
5
株券発行会社の株式譲渡
名義書換請求
(譲受人)
①意思表示の合致
譲渡人
②株券の交付
譲受人
6
振替制度採用会社
の株式譲渡
振替機関
総株主通知
名義書換
③
振替口座
②振替通知
(振替132)
③
発行会社
買
売
譲渡人
振替口座
甲証券会社
(口座管理機関)
証券取引所
①取引成立
乙証券会社
(口座管理機関)
譲受人
個別株主通知
7
株式振替制度の概要
① 基本的には、銀行の口座振替のイメージ(現金を直接
相手方に渡すのではなくて、銀行口座の残高の操作で
相手方に金銭が渡るという現象の株式版)
② 譲受人口座の残高の増加が株式譲渡の効力発生要件
(振替140。一般承継等は例外)
※振替の申請は譲渡人側が行う
③ 理論的には超過記載(発行済株式総数を口座の残高総
数が超過する)可能性があるが、その場合には振替機
関等が株式を取得し権利を放棄して調整(その間は超
過分だけ一般株主の権利が縮減)
8
譲渡以外の移転の効力要件
株券発行会社
振替制度採用会社
株券の交付
振替口座への記録
①一般承継(相続・合併)
不要
不要と解される
②弁済代位(民500,501)
不要
不要と解される
③詐欺等による取消
不要
不要と解される
④取得請求権の行使
請求権行使要件(必然的に
効力発生要件)(会166Ⅲ)
振替申請が請求権行使要件、
振替が効力発生要件(振替
156)
移転の原因
⑤取得条項付株式、全部 効力要件ではないが株券提 効力発生要件(振替157ⅡⅣ)
取得条項付種類株式、 供と対価交付は同時履行
の取得
(会219Ⅰ③④、Ⅱ)
⑥自己株式の処分
不要(会209、128)
必要?(振替140)
9
株式譲渡の対抗要件
10
「対抗要件」の意義
I. 「株式の譲渡の対抗要件」

条文の直接の意味は、株主としての地位が譲渡株主か
ら譲受人に移転したことの対抗要件

実質的には、株主が自らの株主としての地位を主張す
るための要件
※株主の地位を対抗する相手方は会社(債務者)とそれ以外の第
三者が考えられるが、会社法で重要なのは会社に対する対抗の
可否
 株式譲渡の対抗要件の具備の方法についてはスライド4
参照
11
II. 対抗要件
1. 一般的な権利
① 指名債権 ・・・譲渡人による債務者への通知
② 動産 ・・・占有
③ 不動産 ・・・登記
④ 有価証券 ・・・占有
←有価証券を用いると債務者は債権者が誰であるかを把握する必
要がなくなる(省力化に資する)
2. 株式における対抗要件
i.
基本的な考え方
 株式(株主権)の性質は指名債権に類似するが、古くから株券を
用いた譲渡が行われており、有価証券法理に従って処理(無記
名証券)
⇒基本的には証券の占有が対抗要件(民469、会130Ⅱ)
ii. 制度の多様化
①
②
株券不発行会社 ・・・指名債権的処理
振替制度採用会社 ・・・有価証券的処理
12
III. 株主名簿
1. 株券による処理の限界

権利行使ごとの株券呈示は困難(会社にとっても煩瑣)

会社側から株主へのアクセスが必要な場面が多くあり、多数
の変動する株主を逐次把握する必要
⇒会社が権利者の情報を一括して管理することが必要かつ有益
2. 株主名簿制度の採用
i.
制度の趣旨


もっぱら会社の事務処理の便宜上の制度 →会130Ⅰ
株券の呈示の代替 ⇒本来は有価証券法理が支配
ii. 制度の建て付け



株主の住所・氏名を記録して会社に備付け
会社は株主名簿の情報を基準に事務処理をすれば足りる
株主は株主名簿に登載されないと権利行使ができない
13
株主名簿
14
株主名簿
I. 株主名簿の記載
1. 記載事項(会121)
①
②
③
④
株主の氏名・住所
保有株式数
株式取得日
株券発行の場合には株券番号
2. 備置き(会125Ⅰ)

本店または株主名簿管理人の営業所に備置き
3. 記載事項証明発行請求(会122)

株券不発行会社においては株主は株主名簿記載事項
を記載した書面の発行を請求可(第三者に対して株主で
あることを証明でするため)
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II. 株主名簿閲覧・謄写請求(会125Ⅱ~Ⅴ)
1. 請求権者
①
②
③
株主
債権者
親会社社員(裁判所の許可が必要)
2. 請求拒絶事由(会125Ⅲ)
① 正当目的の不存在
② 不当目的の存在
③ 情報漏洩目的
④ 過去2年内の情報漏洩行為
※H26改正前には競業関係者からの閲覧請求を拒絶できることとさ
れていたが削除された
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株主名簿の効力
I. 株主名簿の効力
有価証券法理
① 権利者推定(資格授与的効力)
・・・名簿上の株主は権利者の証明(株券の呈示等)をしなくても権利
行使可能(会社側が無権利者の証明の責任を負う) ※個別株
主通知は例外
② 免責的効力
・・・会社は名簿上の株主を株主として取り扱えば、当該人物の無権
利を容易に立証できるのに故意または重過失でこれを怠ったの
でない限り免責(手40Ⅲ。民478対照)。かつ、株主に対する通
知・催告は株主名簿上の住所に宛てて発すれば足りる(会
126Ⅰ)
③ 確定的効力(対抗力制限効。会130Ⅰ)
・・・会社は名義書換未了株主については、たとえ権利者の証明が
あっても株主として扱わなくて良い(or 扱ってはならない)
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II. 効力に関する問題点
① 株券不発行振替不採用会社の名義書換および株主
名簿の権利推定効力(資格授与的効力)、免責的効力
の存否
・・・株主名簿制度は株券(有価証券)前提の制度のため、ほぼ指
名債権である株券不発行(振替不採用)の株式にはきちんと
対応できていない
② 株主名簿の対抗力制限効の意義
③ 名義書換未了株主による権利行使の可否
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株主名簿の効力の基礎
I. 名義書換時の株券・振替口座簿の効力
① 資格授与的効力 ・・・株券の所持、振替口座簿の記載
は当該人物を正当な株主と推定する効力を有する(会
131、振替143。なお、手16Ⅰ)
⇒株券所持人、振替口座簿の名義人は自らの権利を証明せずに名
義書換請求が可能
② 免責的効力 ・・・①の人物(形式的資格者)からの請求
に応じて名義書換を行った会社は、形式的資格者が無
権利者であることを容易に立証できたにもかかわらず、
悪意・重過失で名義書換をした場合以外は免責される
(=真の株主からの請求に応じる必要がない。手40Ⅲ)
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II. 権利行使時の株券・振替口座簿の効力
① 資格授与的効力 ・・・株主名簿に登載された人物は正
当な株主と推定される(株券の資格授与的効力に由来)
⇒名簿上の株主は自らの権利を証明せずに名義書換請求が可能
② 免責的効力 ・・・①の人物(形式的資格者)に株主とし
ての権利を行使させた会社は、形式的資格者が無権利
者であることを容易に立証できたにもかかわらず、悪意・
重過失で権利行使をさせた場合以外は免責される(=
真の株主からの請求に応じる必要がない。手40Ⅲ)
III. 問題点
 上記の効力は有価証券法理に基づく株券(振替口座
簿)の資格授与的効力を根拠とするものであるから、株
券不発行振替制度不採用会社の株主名簿については
当てはまらない議論
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株主名簿の資格授与的効力
 株主名簿の趣旨は、権利行使の都度の株券の呈示に
かわるものであるから、名義書換時に、一度株券の呈示
がされれば、それに基づく株主名簿の記載にも、株券の
呈示と同様の資格授与的効力が働き、株主名簿上の株
主は、自らの権利の証明なしで(かつ株券の呈示もなし
で)権利行使ができる
 振替制度採用会社においても株主名簿に資格授与的効
力が備わるが、随時の名義書換がないことから、少数株
主権については特別な制度(個別株主通知)を用意
⇒株券不発行振替不採用会社においては、名義書換の時点で、譲
受人に権利者推定が働かないから、株主名簿にも資格授与的
効力はない(対会社では権利者として推定されるとの説もある)
21
株主名簿の免責的効力
I. 免責の必要性
 会社が真の権利者ではない者の権利行使を認容した場
合、本来であれば債権の準占有者に対する弁済(民
478)として処理
 有価証券の所持人は権利行使者として推定されること
から無権利を立証しての支払拒絶は困難であり、そのよ
うな債務者に対しては何らかの救済が必要
22
II. 一般的な免責的効力
1. 手形法における規範
 裏書の連続した手形の所持人に対して弁済をした場合、
その者が無権利であることが容易に立証できるにもかか
わらず、そのことを知り、あるいは容易に知ることができ
たにもかかわらず敢えて弁済したのでない限り、手形債
務者は免責される(手40Ⅲ)。
2. 株主名簿における規範
 株主名簿上の株主に権利者推定が及ぶ場合には、その
者が無権利であることが容易に立証できるにもかかわら
ず、そのことを知り、ありは容易に知ることができたにも
かかわらず敢えて権利行使を認めたのでない限り、会
社は免責される
⇒株券不発行振替不採用会社の株主名簿は資格授与的効力を有
しないから免責的効力もないことになる
23
II. その他の免責的効力
1. 対抗力制限効の反射的効果
 仮に名簿上の株主が無権利者であり、他に真の株主が
存在しても、真の株主は(名義書換未了だから)その地
位を会社に対抗できず、会社が名簿上の人物に権利行
使させたことについてこれを争うことはできない
※結果的に会社は免責されるが、会130Ⅰの反射的効果であり、手
40Ⅲの免責的効力とは別物
2. 株主に対する通知に関する免責
 株主に対する通知は名簿上の住所に宛てて発すれば
足り、通常到達すべき時期に到達してものと見なされる
(会126ⅠⅡ)
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株主名簿の効力
株券不発行
振替不採用
名義書換における
資格授与的効力
なし
株主名簿に搭載
されていることによる
資格授与的効力
なし*
名義書換における
会社の免責(手40Ⅲ)
なし
(民478で処理)
名義書換後の株主の
権利行使についての
会社の免責(手40Ⅲ)
なし
(民478で処理)
株券発行
振替制度採用
あり
あり
(株券の呈示、
(振替口座簿の記載、
会131)
振替143)
あり
あり
あり
あり
(株券呈示
(口座簿の記録
=権利者推定)
=権利者推定)
あり
あり
*会社との関係では資格授与的効力を認めるべきとの有力説あり
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対抗力制限効(確定的効力)
I. 対抗力制限効か確定的効力か
a. 会社は自らの危険で名簿不登載株主を株主とし
て扱ってよい(対抗力を制限するのみ。判例・通
説)
b. 会社は名簿上の株主のみを株主として扱わなけ
ればならない(少数説)
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II. 対抗力制限効の限界
1. 原告適格との関係
 たとえば、名義書換未了株主は株主総会で議決権を行
使できず、株主提案権も行使不可(会130)。では決議
取消しの訴え(会831)は提起できるか
a.
b.
831条の「株主」は当然に名簿上の株主であり、名義書換未了
株主は会社にその地位を対抗できない以上原告適格はない
(通説)
831条は「名簿上の株主」とは書いていないし、原告適格は対
裁判所の問題であって130条の問題ではない。総会後に株式
を取得した株主であっても(名義書換をすれば)決議取消の訴
えが可能なのだから、総会に出席できたかどうかも無関係(弥
永説)
※たとえば合併で締め出された名義書換未了株主は合併無効の
訴えを提起できないのか?
27
2. 会社による名義書換の懈怠、不当拒絶
1. 懈怠・拒絶した場合の対抗力制限効の主張の制限

会社が名義書換を不当に懈怠した場合には(故意でも過失で
も)、株主は名義書換なしで権利行使が可能(最判S41.7.28百15)
2. どれくらいの期間の懈怠が必要か
 信義則説 vs 合理的期間説
3. 名義書換の懈怠と同視できる場合
 株主権の所在に争いがあるが、真の株主が容易に権利を立証
しうる場合において、会社がその事実を知り、かつそのことを容
易に証明できる状態にあり、仮に会社が名義書換を拒絶すれ
ば不当拒絶と評価しうる場合には、名義書換請求前であっても
会社に対して株主の地位を対抗できる(名古屋高判H3.4.24)。
28
株式の譲渡制限
29
総 論
I. 譲渡制限の種類
① 法令に基づく譲渡制限
② 定款の規定に基づく譲渡制限
③ 契約による譲渡制限
II. 法令による譲渡制限
1. 時期による制限
① 権利株の譲渡は会社に対抗できない(会50Ⅱ、208Ⅳ)
② 株券発行前の譲渡は会社に対して効力を生じない(会
128Ⅱ)
※会社から譲渡を有効と認めることもできない(通説)
※会社が株券発行を遅滞した場合には株券なしで譲渡可、かつ会
社に名義書換請求可
30
2. 時期による制限
① 権利株の譲渡は会社に対抗できない(会50Ⅱ、208Ⅳ)
② 株券発行前の譲渡は会社に対して効力を生じない(会
128Ⅱ)
※会社から譲渡を有効と認めることもできない(通説)
※会社が株券発行を遅滞した場合には株券なしで譲渡可、かつ会
社に名義書換請求可
3. 自社株式取得の制限
① 自己株式取得規制(会155以下)
② 子会社による親会社取得の原則禁止(会135)
4. その他の法令による禁止
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定款による譲渡制限
I. 趣旨
 小規模閉鎖会社における人的要素の重視と投下
資本回収機会の確保との調和
II. 譲渡制限の定め
i.
全株式に譲渡制限を付す場合(会107Ⅰ①)

株主総会特殊決議(会107Ⅰ①,309Ⅲ①)
ii. 種類株式に譲渡制限を付す場合(会108Ⅰ④)


当該種類株式の種類株主総会特殊決議(会324Ⅲ①)
株主総会特別決議(会309Ⅱ⑪〔定款変更だから〕)
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III. 譲渡承認手続
1. 手続
譲
渡
前
譲
渡
株
主
2週間内に書面による
(不)承認決定通知なし
取
得
者
145②、規26②
40日間書面による条件決定通知なし
(買取指定有の場合)
承
認
136
請求
139Ⅱ
通知
決
137
請求
定
139Ⅰ
不
承
認
指
定
有
指
定
無
139Ⅱ
通知
みなし承認
譲受人に譲渡
140
買取
譲
渡
後
みなし承認
145①・規26①
条
件
決
定
144
141
通知
価
格
決
定
買
譲取
渡人
に
139Ⅱ
通知
譲渡の効力不発生
*指定買取人からの通知
33
2. 譲渡承認の決定機関
譲渡承認
(会139Ⅰ)
会社による買取り
(会140ⅡⅢ)
指定買取人による買取り
(会140Ⅳ)
取締役会非設置会社
取締役会設置会社
原則
株主総会普通決議
取締役会決議
定款の定め
株主総会決議
(要件の加重のみ可)
株主総会決議
原則
定款の定め
株主総会特別決議
※承認請求者(=譲渡人)は議決権行使不可
不可
原則
株主総会特別決議
取締役会決議
定款の定め
株主総会決議
(要件の加重のみ可)
株主総会決議
 定款の定めによる決定機関の変更はより上位の機関に限られる
(通説)
 指名委員会等設置会社において、決定を執行役に委任すること
はできない(会416Ⅳ①)
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3. 留意点
① 一人会社株主が譲渡制限株式を譲渡する場合には、
所定の譲渡承認決定がなくても、株式譲渡は会社に対
して有効(最判H5.3.30百-18)。総株主の同意がある場
合も同様(最判H9.3.27民集51-3-1628〔有限会社〕)
② 譲渡制限株式に担保権(質権など)を設定する場合に
は会社の承認は不要。担保権を実行して株主権が移転
する段階で承認請求(譲渡担保については争い有り)
③ 譲渡承認の決定は請求のあった株式全部に対して行い、
一部についてのみ承認することは許されない
④ 会社買取りの場面において、財源規制のために一部株
式の買取りができない場合、すべての株式について譲
渡を承認するか、指定買取人を指定する
⑤ 譲渡承認請求の撤回は、条件決定の通知(会414)の受
領前は自由、受領後は会社の同意が必要
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IV. 承認のない譲渡制限株式の譲渡の効力
a.
当事者間においても、会社との関係においても譲渡の
効力は生じない(絶対的無効説)
b.
当事者間では株式譲渡の効力は有効に発生するが、
会社との関係では効力を生じない(相対的無効説。判
例・多数説。最判S48.6.15百-19)
c.
当事者間では株式譲渡の効力は有効に発生するが、
会社に対しては譲渡を対抗できない
当事者間、対会社ともに譲渡は有効。ただし承認を得な
い限り名義書換請求は行えない(有効説。立案担当者、
有力説)
⇒条文の作りはd.の見解と整合的。ただし、未承認、名義書
換未了の状態で、会社が任意に譲受人を株主と認めるこ
とが可能になるのではないかとの疑問あり
d.
36
契約による譲渡制限
I. 契約による譲渡制限の可否
 一定の範囲では認められると解されている
i.
肯定の根拠
①
②
ii.
契約自由の原則(当事者の合意があるのでよい)
会社からの離脱を縛る実際上の必要性が生じる場面がある
否定の根拠
①
②
株式譲渡自由の原則の潜脱
弱い立場の株主が不利な立場に置かれる可能性が高い
II. 会社との契約による譲渡制限

原則として無効だが、株主の投下資本の回収を妨げな
い合理的な制限であれば例外的に有効(通説)
※譲渡制限の導入規整の潜脱になるから
37
III. 株主間契約による譲渡制限

原則として有効だが、譲渡制限制度に対する規整の潜
脱となる場合には例外的に無効
※契約自由の原則が働くから
IV. 従業員持株制度
1. 制度の概要
①
②
③
従業員に対して会社が奨励金を支出するなどして取得を支援
従業員は従業員持株会等を通じて株式を購入(購入株式の
譲渡の可否や議決権行使方法などは持株会規約で決定)
※持株会が取得する場合と信託銀行に委託する場合がある
退職したときには、持株会規約に従い株式を処分(保有できる
会社もあれば取得時の価格で売り渡す規定の会社もある)
2. 従業員持株会の性質

民法上の組合(証券業協会ガイドライン)、権利能力なき社団、
任意団体等の可能性
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3. 制度の問題点
i.
制度の趣旨
 従業員持株制度は経営者による安定株主工作であり、奨励金
の支出は会120違反なのではないか
⇒福利厚生目的であれば利益供与にはあたらない
ii.
退職時に売渡しを強制する条項の効力
 持株制度のなかには、退職時には指定価格で指定された者に
株式を売り渡すことを強制する条項が含まれることが多い。この
規定の効力如何
4. 強制売渡条項の効力
①
売渡しの強制 ・・・必ずしも株主の不利益ではない(閉鎖的会
社の場合は特に)
②
売渡先の指定 ・・・閉鎖的な会社においては株主構成の維持
の利益が考慮されるから必ずしも不当ではない
③
取得価格での売却 ・・・売却価格の事前の合意自体は(算定
が合理的であれば)違法ではない。キャピタルゲインの取得を
否定する内容であれば無効の可能性(最判H7.4.25百-21)
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