あべこべの世 ハイネ じっさい世の中あべこべで われらは頭で歩きおる

あべこべの世
ハイネ
じっさい世の中あべこべで
われらは頭で歩きおる!
猟師は十把ひとからげ
鷸に鉄砲で射たれおる。
いまや仔牛がコックを炙り
人の背中に駄馬が乗る。
教義の自由、光の権利、と
カトリックの梟が奮闘しおる。
サンキュロット
かのへーリンクは過激な共和派、
ベッティーネが真理を説き、
長靴をはいた牡猫が
ソフォクレスをば舞台にかける。
ドイツの英雄のためだとて
猿がパンテオンを造りおる。
ドイツの新聞報ずるところ、
かのマースマンが髪を梳いたそうな。
ゲルマンの熊らが信仰を棄て
無神論者になるそばで、
フランスの鸚鵡らは
よきクリスチャンになっておる。
ウッカーマルク報知には
奇怪至極の記事がある、
死にたる者が生者のために
下劣極まる碑銘を書いておる。
流れに逆らっては泳ぐまい、
さあみんな!詮なきこと!
テンプローブの山にのぼって
呼ばわろうぞよ、
「王様万歳!」