17.寡占

17.寡占
<キーワード>
カルテル
ゲーム理論、ナッシュ均衡
寡占市場に注目
生産する財の質
同質
企
業
の
数
多数
 完全競争
 牛乳
 タクシー
少数
 寡占(かせん、oligopoly)
 携帯電話
 鉄鋼
1つ
 独占
 水道
 ケーブルテレビ
類似しているが同質でない
 独占的競争
 小説
 映画
(モデル化しにくい)
(-)
自社の利潤は何に依存しているか
 自社の生産量
 他社の生産量?
17.寡占
2
複占
2つの企業--最も単純な「寡占」
果樹農家だったとしよう
 柿の木が庭に
町にはもう1軒、柿農家があった
 自社、他社の2社
週1回、市場に収穫した柿をもっていく
柿はふんだんに実っており、限界費用はゼロとしよう
17.寡占
3
柿に対する需要表
17.寡占
総需要量
(個)
価格
(円)
総収入(利潤)
(円)
0
120
0
10
110
1,100
20
100
2,000
30
90
2,700
40
80
3,200
50
70
3,500
60
60
3,600
70
50
3,500
80
40
3,200
90
30
2,700
100
20
2,000
110
10
1,100
120
0
0
マンキュー『ミクロ』p508とほぼ同じ
4
もし完全競争だったら
完全競争
 企業が多数いるという想定
 供給量はどう決まっていたか?
(復習)限界費用曲線⇒供給曲線である
______________
 ここでは、限界費用=ゼロ
⇒ 供給量は_______
⇒ 価格は _______
𝑀𝐶
価格
𝑃2
𝐴𝑇𝐶
𝑃1
𝑄1
17.寡占
𝑄2
生産量
5
もし独占だったら
独占
 独占企業はどう行動するか
 あなたしか柿農家はいなかった
 供給量をいくらにするか
⇒ 供給量は _______
⇒ 価格は
_______
☆ 効率的な供給は行われたか?
 完全競争では (効率的・非効率的)
なぜなら__________________
 独占では
(効率的・非効率的)
なぜなら__________________
17.寡占
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では複占だったら
あなたはどうすれば、利潤を最大にできるか
 供給量
 価格
あなたはその時、何を思うだろう
☆ 今月はどうしてもカネがいる
☆ 供給量を10個増やしたら?
 そして、他社は、何を思うだろう
 カルテル(協定)
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どこかで増産は止まるか
40個ずつ供給していた
 あなたの利潤は______
 あと10個増やすと得か
☆ 50個作ると利潤は_____
☆ 増産は
(得、損)
生産量効果 増産で「自社」の収入増
価格効果
総供給量の増加で「市場」の価格が下落
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ナッシュ均衡
ひとたびそこに到達すると、行動を変えると損になる(得じゃない)
行動を変えるインセンティブを持たない
自分だけでなく、相手も(すべての参加者が)
☆ ナッシュ均衡(理論経済学者ジョン・ナッシュにちなむ)
協調と利己心の綱引き
 独占的結果に到達できない
 競争的な結果にも到達しない
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生産量と価格は
生産量は
 独占の場合より
(多い、少ない)
 完全競争の場合より (多い、少ない)
価格は
 独占の場合より
(高い、低い)
 完全競争の場合より (高い、低い)
 限界費用より
(高い、低い)
17.寡占
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企業が増えると
隣町の柿農家2軒も市場に参入
 カルテル 合意・拘束が難しくなる
企業が増えると・・・
生産量効果 増産で「自社」の収入増
価格効果
⇒
⇒
⇒
⇒
総供給量の増加で「市場」の価格が下落
価格効果が小さくなる傾向
企業数が非常に多くなると、価格効果は消滅
完全競争へ(生産量は効率的な水準へ)
自社が「市場」に与える影響が小さくなる
市場統合は価格を引き下げる
 価格は限界費用に近づく
 自由貿易は便益をもたらす
17.寡占
収穫量を高め
る小麦の新種
を農家は使うだ
ろうか
11
囚人のジレンマ(1)
協調すればより良い結果が得られるのに、協調に失敗してしまう
囚人のジレンマ
 2人が警察につかまった(拳銃所持+強盗容疑)
 一郎 と 二郎
 別々の部屋で取り調べ(お互いの連絡は取れない)
 自白 or 黙秘
» 2人とも自白
→8年の刑
» 一方だけ自白 →無罪放免 もう一方は20年の刑
» 2人とも黙秘
→1ヵ月の刑
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囚人のジレンマ(2)
二郎の意思決定
一郎の
意思決定
黙秘
自白
黙秘
(1年、1年)
(20年、無罪)
自白
(無罪、20年)
(8年、8年)
(左が一郎、右が二郎の刑を表す)
一郎の立場で考える
 二郎が 黙秘 と想定しよう。得なのは
 同
自白 と想定しよう。得なのは
二郎の立場で考える
 一郎が 黙秘 と想定しよう。得なのは
 同
自白 と想定しよう。得なのは
17.寡占
(黙秘、自白)
(黙秘、自白)
(黙秘、自白)
(黙秘、自白)
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囚人のジレンマ(3)
二郎の意思決定
一郎の
意思決定
黙秘
自白
黙秘
(1年、1年)
(20年、無罪)
自白
(無罪、20年)
(8年、8年)
(左が一郎、右が二郎の刑を表す)
1. ナッシュ均衡はどれか
2. 最も望ましいのはどれか
3. なぜ協調しないのだろうか
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寡占ゲーム
他社の意思決定
あなたの
意思決定
30個作る
40個作る
30個作る
(1800, 1800)
(1500, 2000)
40個作る
(2000, 1500)
(1600, 1600)
(左があなた、右が他社の状態を表す)
1. ナッシュ均衡はどれか
2. 最も望ましいのはどれか
3. なぜ協調しないのだろうか
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石油市場で何が起きたか(1)
45
(ドル/バレル)
原油価格(入着ベース)
40
35
30
25
20
15
10
5
0
70
72
74
76
78
(資料)財務省「貿易統計」
17.寡占
80
82
84
86
88
90
92
94
96
98
00
(月次)
16
石油市場で何が起きたか(2)
(100万バレル/日)
120
(%)
60
世界の石油生産量
100
FormerSovietUnion
Non-OPEC
OPEC
OPECシェア(右軸)
50
80
40
60
30
40
20
20
10
0
0
1965
70
75
80
85
90
(資料)BP Statistical Review of World Energy June 2012
17.寡占
95
2000
05
2010
(年)
17
軍拡ゲーム
ソ連の意思決定
米国の
意思決定
軍縮
軍拡
軍縮
(安全, 安全)
(危険+弱体, 安全+強力)
軍拡
(安全+強力, 危険+弱体)
(危険, 危険)
(左が米国、右がソ連の状態を表す)
自国の安全保障
国際情勢への影響力
☆ 相手より軍備が劣っていると弱体
☆ 相手より軍備が勝っていれば強力
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繰り返しゲーム(1)
Bの意思決定
Aの
意思決定
協調(C)
裏切り(D)
協調(C)
(8, 8)
(0, 10)
裏切り(D)
(10, 0)
(1, 1)
(左がA、右がBの利得を表す)
何回もゲームを繰り返す
戦略1「毎回協調する」 ALL-C cooperation
戦略2「毎回裏切る」
ALL-D defection
戦略3「相手が裏切ったら、自分も裏切る」 (お互いに)
 1期目は協調する
 相手がn期に裏切ったら、自分はn+1期以降ずっと裏切る
 トリガー(引き金)戦略
17.寡占
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繰り返しゲーム(2)
Bの意思決定
Aの
意思決定
協調(C)
裏切り(D)
協調(C)
(8, 8)
(0, 10)
裏切り(D)
(10, 0)
(1, 1)
(左がA、右がBの利得を表す)
ALL-Cが互いに対戦 ⇒毎回協調
ALL-Dが互いに対戦 ⇒_________
トリガーが互いに対戦 ⇒_________
トリガーとALL-Dが対戦
17.寡占
1
2
・・・
N
・・・
A(トリガー)
C
D
・・・
D
・・・
B(ALL-D)
D
D
・・・
D
・・・
20
繰り返しゲーム(3)
Bの意思決定
Aの
意思決定
協調
裏切り
協調
(8, 8)
(0, 10)
裏切り
(10, 0)
(1, 1)
(左がA、右がBの利得を表す)
ナッシュ均衡か
1. 戦略1「毎回協調する」
2. 戦略2「毎回裏切る」
3. トリガー(引き金)戦略は?
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トリガー戦略

Aがトリガー戦略をとるときのBの利得
1
2
3
・・・
N
・・・
Bは2回目に初めて裏切る
8
10
1
・・・
1
・・・
Bはずっと協調する
8
8
8
・・・
8
・・・
Bが一度でも(例えば2回目)裏切ると(↑)
⇒ したがって、自分からは_______
⇒ したがって、トリガー戦略はナッシュ均衡(である・でない)
Bの意思決定
「協調」の利得が8でなく、
4だったとしたらどうだろう⇒
 ほかに重要な
要素は何か
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Aの
意思決定
協調
裏切り
協調
(4, 4)
(0, 10)
裏切り
(10, 0)
(1, 1)
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繰り返しゲーム(4)
「囚人のジレンマ」状況で、自発的な協調が生まれる可能性
トリガー戦略
 裏切りに厳しい「処罰」
トリガー戦略がナッシュ均衡になるかどうか
 裏切りと協調の利得差
 どのくらい先までを考えるか
17.寡占
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