中国経済(終章)

高度成長から安定成長へ
GDP
16
15.2
14.214
14
13.5
12
13.1
11.6
11.3
10.9
9.2
8.8
9.3
9.1
7.8 7.6
5.2
0
10 10.1
10.4
9.6
9.2
9.3
8.4 8.3
7.6 7.8
6
2
11.3
10
9.1
4
12.7
10.9
10
8
14.2
4.1
3.8
7.7 7.7
7.4
6.9
世界第二位の中国経済
China as No.1に向かうのか
1820年代は世界のGDPの1/3は中国
*2010年日本を抜いて世界第2位の経済大国
(日本5兆4742億㌦、中国5兆8786億㌦
14年日本4兆6014億㌦、中国10兆3548億㌦
一人当たりGDP(14年)
日本3万7920㌦、中国7590㌦
購買力平価でみると
14年中国17兆9669億㌦、米国17兆4190億㌦
「新常態」下の中国経済
・高度成長から安定成長へ(「保八」言及せず)
・中所得国の罠
・未富先老(人口ボーナスから人口オーナス)
若年労働力の減少(人件費の高騰)
二人子の容認
・「三期重複(成長の変換期、構造調整の陣痛
期、過去の刺激策の消化期の同時到来)」
・なぜ「一帯一路」なのか
一帯一路
*インフラ建設に8兆㌦
* 「韜光養晦」路線の変更
覇道か王道か
*中国の夢~世界(平和、発展、協力、双赢)
国内(富強、民主、文明、調和)
中華民族の偉大な復興
*過剰生産のはけ口
*AIIB~早い審査(FSはきちんと行われているのか)
各種機関のGDP成長率予測(%)
アジア開発銀行
経済協力開発機構
2016年 2017年
6.5
6.3
6.5
6.7
世界銀行
6.4
国際連合
6.3
国際通貨基金
社会科学院(中国) 6.6~6.8
6.2
6.5
6.5
6.0
n.a.
四半期ごとの成長率
GDPの項目別寄与度
成長率に対する需要項目別寄与度
16
14
12
10
8
6
4
2
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
-2
-4
-6
純輸出
資本形成
最終消費
GDP
2011
2012
2013
2014
2015
人民網2014年12月25日
「中所得国の罠」と中国
→7%成長でもスウェーデン並みのGDP
→2012年の経済総量は1978年の24倍、90年の
8.6倍、現在の1%の成長は78年の24%、90年
の8.6%に相当(「中国信息報」2013年7月18日)
→1960年以降101カ国が中所得国に→2008年で
高所得国になったのは13カ国のみ
→高度成長のうちに解決しておくべき問題山積
未富先老
*65歳以上人口(1億3755万人)10.1%
*一人っ子同士の場合→単独两孩(2014年)
から条件なしの二人子容認(2016年)
*若年労働力の不足(賃金の高騰)
・出稼ぎ労働者は2億5300万人
(近場で就職できるようになる)
・三高一低の一人っ子世代(八〇后、九〇后、〇〇后)
(教育レベル、職業選択意識、物質的・精神的
要求が高い、忍耐力が低い)
*貿易不振、金融、マンション投機、過剰生産
*労働集約産業の国外流出
*所得格差、高度成長のときにも解決できな
かった社会保障の問題
*内需拡大vs奢侈品の規制
*悪化する環境
*反腐敗運動(2013年汚職摘発5万人超)
ギアチェンジ
構造調整
(釜底抽薪~根本的な問題の解決)
当局に意見の対立か
*V字回復は望んではいけない→L字
vs 再度4兆元の投資が必要
*誰が経済政策に責任をもっているのか
*2017年の党大会を前に権力闘争(?)
所得格差
*ジニ係数 0.421(世銀、2009年)~危険ライン超
(中国統計局2013年0.473)←2012年0.477
*中国都市部の貧富格差242倍
(最富裕5%と最貧困5%の差)(『日本経済新聞』
2013.8.4)
*新貧困線(年収2300元)
1億2238万人(2010年)→8249万人(2013年)
(「人民網」2014年3月11日)
*地域格差は縮小しても、居住者の格差は縮小せず
少数民族の不満
所得格差~終-1の続き
都市住民一人当 農村住民一人当
A/B
収入A
収入B
2009
17175
5153
3.33
2010
19109
5919
3.23
2011
21810
6977
3.13
2012
24565
7917
3.10
2013
26955
8896
3.03
福利厚生を考慮すれば、格差はさらに拡大、農民収入には農業以外収入も含む
所得格差(世銀データ)
ジニ係数
0.421
0.426
0.425
0.426
0.392
0.357
0.355
0.324
都市内部、農村内部での格差
• 都市:最も所得の多い10%と最低所得の
10%の比較、95年は3.2:1、2000年5.0:1、
11年8.24:1
• 農村:世帯一人当たり純収入の最高収入世
帯20%と最低収入世帯20%の比も02年4.87
倍、11年は8.39倍
• 失地農民が増える→最低限の生活の糧を得
られない
業種の所得格差
*最高所得の業種、たとえば金融業と最低の
業種、たとえば飲食業の所得の比は1990年
の1.72:1から1999年の2.63:1、2011年の
2.95:1に拡大→(平均賃金なので、実際はさ
らに格差)
*相対的格差が拡大するだけでなく、絶対的貧
困層が拡大
*社会保障、教育水準、識字率、平均寿命など
総合するとさらに格差拡大
拡大する格差(2014年)『中国信息報』2015年5月29日
都市の非私営企業の年収
平均5万6339元(うち国有6万2315元)
金融業10万8273元、飲食業2万8356元
(3.82:1)
都市の私営企業の年収
平均3万6390元
私営企業 情報・ソフト技術5万1044元、
金融業4万1553元
飲食業2万6862元(1.90:1)
4.03:1
幹部の腐敗問題
• アンケートにみる腐敗問題の深刻さ
• 腐敗の3大傾向:「腐敗幹部の地位はますま
す高くなり、所得金額はますます増加し、集
団化現象がますます増える」
• 成果を上げない腐敗への取り組み
→ネット社会で地方の役人などは批判にさらさ
れることも
→政治闘争か、腐敗の取締か
持続的発展の可能性
• 格差は拡大しているが、絶対的な所得水準
は上昇
• 量の拡大を追求してきた発展方式の見直し
• 労働者の権利保護、底辺化の抑制に政府が
乗り出す
民主化が必要か
選挙で選ばれたわけではない政権
所得格差拡大の不満が爆発するか
→共産党自身が変貌
狭義の政治体制を変化させることなく、社会体
制の変化は可能か
*経済問題~所得格差、環境、社会保障
インフレ、失業
(経済発展によって解決できる問題とできない
問題)
*社会問題~官僚の腐敗、争議、抗議活動
(規制や取締りだけでは対処できない)
中国といかにつきあうか
• 中国の経済発展動向、景気動向が、日本を
含む世界経済の行方を左右
• 中国の持続的安定的発展には、腐敗、貧困
問題や環境問題等の解決、あるいは社会的
セーフティーネットの形成等に国際的な資金・
技術・知的支援が不可欠。
• 民主化が少しずつにでも進展できるような国
際協調、平和的国際環境、そして知的支援も
必要。
中国といかにつきあうか
• 中国“脅威”論や“警戒”論に陥ることなく、そ
の発展を、問題点、限界を含めて冷静にとら
えた日中関係を構築する必要