Record - 地理空間的思考の教育研究プロジェクト

2011-02-15
第1章 実世界のモデル化と形式化
7.被覆スキーマ
太田守重
[email protected]
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
ここで学ぶこと
地上をメッシュ (mesh) やグリッドと呼ばれる格子で区切り,その付近の特性
と結びつけると,位置を指定することで,その場所の特性を知ることができる
ようになる。この仕組みは,位置を独立変数,特性を従属変数とする関数に
相当する。このような、幾何図形と地域特性の対の集まりを,被覆 (coverage)
という。ここでは、被覆と地物の関係、被覆の種類、その利用、“空間属性を持
つ地物”と”被覆”の違い、そして応用スキーマ中の被覆表現について学ぶ。
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
被覆とは
任意の位置を指定して,その位置の特性値を返す,
関数として機能する空間
地点の範囲は関数の定義域 (domain)
T=f(p)
得られる特性値の範囲は関数の値域 (range)
ここの気温は?
24℃
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
被覆の利用
利用例
気象,測深,標高,土地,植生分布,
人口分布,地域経済指標,・・・・・・
土地利用
メッシュマップ
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数値標高モデル
被覆と地物
被覆:
同一の種類の属性で連続的に充填される空間。このような空間を記述するモ
デルは、Field-based modelとも言う。
地物インスタンスがつくる空間:
相互に関連するインスタンスの、離散的な集まりとしての空間。このような空間
を記述するモデルは、Object-based modelともいう。
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デカルトの考えとニュートンの考え
デカルト (1596-1650) は真空を認めず、宇宙は物質
で満たされた空間 (plenum)と考えた。ニュートンは、
万有引力の法則で関連する物質の空間を宇宙と考
え、物質間は真空 (vacuum) であると考えた。
http://plato.stanford.edu/entries/descartes-works/
Figure 3. Plenum vortices in the Principles, Pr III 53.
http://plato.stanford.edu/entries/descartes-physics/
*ベナールによる対流の実験は1900年
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
空間を充填する幾何による、被覆の分類
点被覆
線被覆
10
27
15
20
23
20
18
15
面被覆
10
住宅地
25
12
工業地区
9
温度
商業地区
高さ
14
22
種類
商業地区
気象観測網
Etc.
等高線、
等圧線、
Etc.
任意の位置の特性は、内挿によって求める。
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土地利用、
規制地区、
Etc.
求める特性値の分類尺度
•
名義尺度 (nominal scale)
– 他との識別を可能とする尺度 (例:地名、土地利用)
•
順序尺度 (ordinal scale)
– 他の値との順序(小と大,先と後など)関係を示す名義尺度.ただし,計
測値の任意の対をとって必ず順序が明らかになる場合は全順序 (例:
国道、県道、市町村道),そうでない場合があるときは半順序という (例:
私は、父と母の子である).
•
間隔尺度 (interval scale)
– 値の対に距離が与えられる順序尺度(例:摂氏の温度).半順序であって
も距離が与えられるとそれぞれの連結成分は全順序になる(例:父は
1920年、母は1925年、私は1950年に生まれた).
•
比率尺度 (ratio scale)
– 全ての値について,原点からの距離がわかる間隔尺度.全ての計測値
同士は全順序の関係になる(例:建物の階数、金額).
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離散被覆と連続被覆
離散被覆 (discrete coverage)
連続被覆 (continuous coverage)
22.4
23.6
21.5
対応表
p
幾何形状 特性値
A
c1
B
c2
C
c3
…
…
ci
P
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対応表をもとに,
内挿法による
計算
c
離散被覆のスキーマ
DiscreteCoverage
id:String
1..*
element
DiscretePointCoverage
GeometoryValue Pair
geom:GM_Primitive
value:Record
PointValuePair
geom : Point
DiscreteCurveCoverage
CurveValuePair
geom :Curve
SurfaceValuePair
DiscreteSurfaceCoverage
geom :Surface
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
レコード (Record)
Record:値の列。レコード型によって値の名前とその型名を参照する。
RecordType:レコードに含まれる値のベクトルの要素それぞれの型を定義する。
NameTypePair:ベクトルの要素の名前とデータ型の対
Record
item: Sequence<String>
Record
(“小川町”、3254、“江戸時代から続く商人の町”)
type
RecordType
itemType 1..*
NameTypePair
name: String
typeName:String
RecordType
(itemType(1), itemType(2), itemType(3))
NameTypePair
(1) 町名、文字列
(2) 人口、整数
(3) 地誌、文字列
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点被覆のインスタンス(例)
<DiscretePointCoverage id=“dpc0”>
<aggregation>
<element idref=“pvp01”/>
<element idref=“pvp02”/>
</aggregation>
</DiscretePointCoverage>
<PointValuePair id=“pvp01”>
<geom idref=“p0”/>
<value idref=“r01”/>
</PointValuePair>
<PointValuePair id=“pvp02”>
<geom idref=“p1”/>
<value idref=“r02”/>
</PointValuePair>
<Point id=“p0”>
<position idref="c0"/>
</Point>
<Point id=“p1”>
<position idref="c1”/>
</Point>
<Coordinate id="c0" component=“345.2,230.5” dimension=“2” />
<Coordinate id="c1" component=“456.2,500.8” dimension=“2” />
<Record id="v01"
item=“小川町,3254,江戸時代から続く商人の町”>
<type idref="vType01"/>
</Record>
<Record id="v02"
item=“北町,1287,明治時代の都市整備事業で生まれた町”>
<type idref="vType01"/>
</Record>
<RecordType id="vType01">
<aggregation>
<itemType idref="it01”/>
<itemType idref="it02" />
<itemType idref="it03" />
</aggregation>
</RecordType>
北町
小川町
<NameTypePair id=“it01” name="町名" typeName="String”/>
<NameTypePair id=“it02” name="人口" typename="Integer" />
<NameTypePair id=“it03” name="地誌" typeName="String" />
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連続被覆の考え方
各点に,標高と,点の種類を示す記号が与えられていたとする。
10, b
10, b
15, c
12, h
12, a
18, f
13, g
15, c
12, h
12, a
13, g
18, f
11, d
11, d
16, e
(0, 10) 15, c
(3, 3) 標高?
(0, 0) 18, f
16, e
10, i
(10, 0) 13, g
10, i
三角形の中は平面とすると,その方程式は
ax + by + cz = 1
とすることができ,3点からパラメータ,a,b,cを
求めることができる(*次頁)。
計算すると,a=0.0278, b=0.0167, c=0.0556
になる。これを適用すれば,(3,3)の標高は
15.6
と,推定される。
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
三角形の定義と標高の推定
(0, 10) 15, c
(3, 3) 標高?
(0, 0) 18, f
(10, 0) 13, g
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連続被覆のスキーマと属性値の計算
1.位置を指定して、離散被覆からその周辺の部分被覆を取り出す。
2.内挿法を適用して、指定された位置の特性値を求め、それを返す。
内挿の型: 重量平均、平面内挿、
双1,2,3次曲面など(例:平面内挿)
内挿パラメータの型:
補間法ごとに必要なパラメータそれぞれ
のデータ型を指定(例:a,実数,b,実数,c,実数)
locate:
位置を指定して、その位置を含む最小の
部分被覆を生成する。(例:最近傍の3点と内挿パラメータ)
evaluate:
位置及び一つ以上の特性の種類を
指定して(例:(3, 3),標高)、その属性値を求める。(例:15.6)
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(0, 10) 15, c
(0, 0) 18, f
(10, 0) 13, g
a=0.0278,
b=0.0167,
c=0.0556
応用スキーマ中の被覆表現
地物型が被覆の性質をもつ場合、被覆型に関連させることで,被覆となる地物を
表現できる。例えば、特性値を“人口密度”だとすれば、町を単位とする、市域の
人口密度分布を、以下のように表現することができる。
DiscreteCoverage
id:String
1..*
element
DiscreteSurfaceCoverage
GeometoryValue Pair
geom:GM_Primitive
value:Record
SurfaceValuePair
geom :Surface
町域
市域
市
町
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
まとめ
ここでは被覆のスキーマについて学んだ。被覆とは、任意の位置を指定し
て,その位置の特性値を返す,関数として機能する空間のことである。被覆
は、一般的にフィールドビューと言われるが、それ自体がある地理的な範囲
で起きている現象なので、地物の一種と考えることができる。
被覆の基本形は離散被覆である。離散被覆は、点の集合、曲線の集合、
及び曲面の集合を使って、位置を指定すると、その位置に最も近い幾何要素
が関連するレコードの値を返す。離散被覆を基本とする連続被覆では、与え
られた位置の周辺にある幾何要素の集まりを使って、内挿法によってレコー
ドの値を推定し、それを返す。
地理情報科学教育用スライド ©太田守重
参考文献
1. 有川正俊、太田守重監修(2007)『GISのためのモデリング入門』ソフトバン
ククリエイティブ
2. 村山祐司,柴崎亮介監修(2008)『GISの理論』朝倉書店
3. ISO, ISO 19123:2005 Geographic Information – Schema for coverage
geometry and functions
地理情報科学教育用スライド ©太田守重