メディア社会学 ー学歴ー 2009年11月17日 6.1 学歴についての予備的議論 6.1.1 学歴社会と学校歴社会 • 日本は、「学歴社会」というよりも「学校歴社 会」 – 「どんな教育を受けてきたか」よりも「どの学校を 出たか」 – 「学歴ロンダリング」、「学歴フィルター」なる用語 • 高学歴なはずの「博士」は就職難 – 理系修士は、就職がいい – 文系修士は、就職難 6.1.2 達成価値と属性価値 • 学歴は、本来、達成価値であるが、属性価値 的な要素も強い。 – 18,9歳のときまでの頑張り次第で決まってしまう ものだったので アスクリプション(属性原理、属性主義)と アチーブメント(業績、達成)の対比 • 業績主義 – 「地縁・血縁・家柄・性別・人種」といった個人に とって変更不可能な属性によってではなく、その 人の能力・努力・実力に応じて、資源を配分した り、地位を決定すること • 属性主義 – 血縁・家柄などの属性によって地位を決定するこ と 6.1.3 学歴インフレ① • 学歴は、いろいろな属性に関係する – 学歴→職業→収入→居住地、未既婚、家族構成な ど、その他の属性に多く相関する – 意識や行動様式を多く規定する • そのため、親は子どもに良い学歴を望む → 世代交代を経るごとに学歴は良くなる傾向にある → 学歴インフレ 6.1.3 学歴インフレ② • 文化的蓄積、知識の蓄積に伴い、一人前の 技術者や研究者になるために必要な年数が 増えている。 – 理系は、修士に進む学生が大半 – 薬学部では、6年制課程の設置がスタート – 教員養成も?? • その意味で、高卒よりも大卒、大卒よりも院 卒が望まれる世界的な傾向がある 6.1.3 学歴インフレ③ • 学歴をアンケート調査で調べる際・・・ – 「学歴インフレ」の状況に考慮する必要がある – つまり、学歴の要因を年齢で、コントロールする • お金も資格も学歴も希少性があって初めて価 値を持つ – 大卒の価値の低下 – 末は博士か大臣か 6.2 学歴と階層再生産 • ピエール・ブルデュー (1930-2002) • フランスの社会学者 • 階層再生産の議論 出典:藤原出版 よい学歴(学校歴)のある人の DISTINCTION(卓越化)の構成要素 1. 能力そのものの差(頭の良さ、努力の結果の差) – 立ち居振る舞い(ハビトス)の差(文化資本) – ハビトスとウェーバーのエートス概念との類似性にブ ルデュー自身が言及 2. 周囲の評価の差 3. ネットワーク、人脈の差(社会資本) – 慶應義塾大学の人脈力 階層再生産① • 高学歴(支配階級)の親の戦略 → 子どもに対する階層再生産戦略を施す → 良い学校に入れ、よい就職をさせる → つまり、教育投資 • 学校教育が、子どもに求める能力 → 支配階級の好む文化、知識、教養 • そのため、支配階級の文化に接して育った子ど もは、学校教育についていきやすい 階層再生産② • その結果・・・ 1. 学歴が階層流動化の要因ではなく、階層再生 産の道具としてのみ機能するようになってしまう 2. 同じ一流とされる学校の卒業生において、親が 一流の職業に就いている人の方が、早く高い地 位に就ける → 学歴が専門的能力の証明であるよりも、教養 の高さ、文化資本の伝達・授受の証拠に使われ る 日本でも言えること、言えないこと 1. 東大・早慶の学生の親の年収は、他大学よ り高い – 東大と慶應の隔世遺伝 2. 日本では、階層の格差がフランスなどに比 べ少ないという説と、日本でも階層の格差が あるという説がある。 3. 芸術等の趣味という意味での文化資本のあ るなしは、社会的地位に関係しない – 階層による違いというよりも、世代による違い 文化資本① • 文化の持つ社会的な価値の側面、親から子 へと相続される側面を強調した用語。 – 流暢な標準語、クラシック音楽への素養 • 家庭生活を通じて、親から子へと受け継がれ る場合が多く、文化資本をより多く持った家の 子どもはやはり優位な位置に立つ – ブルデューの「階層再生産」 文化資本② • 文化資本は必ずしも金銭的な資産に比例す るものではない – 経済資本○ 文化資本× – 経済資本× 文化資本○ • ブルデューは、文化資本の中身を「身体化さ れた様態」、「客体化された様態」、「制度化さ れた様態」の3つに分類した。 文化資本③ 1. 身体化された様態 – 話し方や立ち居振る舞いなど 2. 客体化された様態 – 物としてのピアノ、百科事典など 3. 制度化された様態 – 学歴や資格など ブルデューの議論 • フランス、ヨーロッパ型の階級社会を前提 → 日本にそのままの形ではあてはまらない が、それに類するものは日本でも存在してい る 6.3 学歴の高低と権威主義① • 低学歴のものほど、権威主義的な性格 • 進学校の生徒ほど、上下重視態度が弱く、権 威主義的でない ⇔ 親が高学歴の子どもほど、上下重視態度 が強いとも 6.3 学歴の高低と権威主義② • 学歴の低い人ほど、日常生活上の不満を自 国への誇りで解消させようとする傾向 → 高学歴者よりも権威主義になりやすいという指 摘 6.3 学歴の高低と権威主義③ • 従来、高学歴な者ほど、政治的にリベラルある いは、左寄り – 岩波書店、朝日新聞 • 低学歴な者ほど、保守的(なおかつ、保守的) • しかし、今日では、このような分け方が成り立た なくなっている – 朝日新聞、日経新聞の両紙を購読 – 若い高学歴層は、反朝日、反テレ朝、反中国、反韓 国
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