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『経済学』 by 矢根 真二 ([email protected])
資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/becon/
Behavioral Economics < 1 >
<S10>
市民 と 専門家 の意見の対立
利用可能性ヒューリスティック と 感情ヒューリスティック
本日の課題
■
1
2
3
K(14): 12-13章: 市民 or 専門家, いずれを信じる?
予想外の非利用可能性ヒューリスティック
感情ヒューリスティックの特徴
市民 と 専門家 の意見の対立
前回の復習 偶然が引き起こすバイアス
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2
1.
「知ってる」事と「理解してる」事が異なる例は?原因は?
2.
偶然によって引き起こされる2種のバイアスの例は?
3.
少数の法則,アンカリング効果とは?
4.
ホットハンドとは? 上記いずれの例?
5.
少数の法則に陥らないようにするには?
6.
アンカリング効果を回避するには?
本日の読解力Check
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1.
3
利用可能性および感情ヒューリスティックとは? 具体例は?
 政治家の浮気,原子力やバイクの好き嫌いと純便益評価
2.
予想外の非利用可能性ヒューリスティックとは? 思い出
しやすさと例の数,どっちが強力?
p.238
3.
リスクに関する判断で,市民と専門家の意見が対立する
例は? いずれの意見を重視すべきか,その理由は?
原発の安全基準・防潮堤の高さ  スロビック 対 サンスティーン

4.
利用可能性カスケードの原因,問題,対策は?
1 予想外の非利用可能性ヒューリスティック
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4
利用可能性ヒューリスティック

震災後の保険購入
p.244
 <S2>
思い出しやすさ
 <S2> 政治家と弁護士の不倫
頻度を見積もるメカニズム: 60歳以上で離婚する人,毒を持つ植物
記憶からカテゴリーに属する例を呼び出す
2. If 容易に呼び出せる  カテゴリーの規模(頻度)↑
∴ 置き換え: カテゴリーの規模,事象の頻度  思い出しやすさ
1.
幾つの例が浮かべば,「思い出しやすい」のか?
0
p.231
Q1 利用可能性バイアス
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5
利用可能性ヒューリスティックが起こりやすい以下の原因の
具体例は? どのようなバイアスが起こりがち?
1. 世間の注目を集め,目立つ事象



2.


p.232-3
ハリウッドのセレブの離婚,政治家の浮気,飛行機事故
 頻度の過大評価,安全性の過小評価
<注> マスメディアの影響と責任  プライム
個人的な直接経験,写真・生々しい実例の見聞
自分の訴訟への不当な判決,教師の不当な扱い等の実体験
 司法制度・学校制度への信頼の低下(過小評価)
<注> 自分の貢献度の過大評価: 家族・チームの合計> 100%
思いつく例の数 と 思い出しやすさ
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6
 判断」に影響する2要因
 アナタの自己主張の強さは?  6例 or 12例
1. 思い出した例の数
2. それらの例の思い出しやすさ(流暢性)
「利用可能性
p.235
流暢性は,具体例の数より,強力に作用しがち
12例を求められた場合の方が,自己主張の度合いを低く評価
  自転車の利用頻度と使用例,選択の自信と根拠数,事故
回避とその方法,車の魅力と長所の数,講座の評価と改善点 p.237

Q2 予想外の非利用可能性
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7
1.
流暢性が例の数より判断に強く影響することを,利用可能性
ヒューリスティックと呼ぶよりも,むしろ「予想外の非利用可能性
ヒューリスティック」と呼ぶべきという理由は?
p.238
「予想していた以上に思い出せない」という意外感に基づくから
 「6例  12例」による流暢性減少幅の 予想値 < 現実値
2.
このヒューリスティックを打破するシュワルツの方法は? p.239
流暢性の増減理由の事前予告: (非)効率化するBGM
 意外感が偽りの説明によって解消  数に左右されなくなる
2 感情ヒューリスティックの特徴
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8
リスクと利用可能性ヒューリスティック
災害後の保険購入や予防行動パターンをうまく説明
 「災害心配油断」サイクル,過去最悪の事態想定

 受け取る情報の頻度・期間,感情・新規性
  メディア報道  大衆の要望 ( 教育)
頻度予想
<S7>
スロビックの感情ヒューリスティック p.247, 186
 = 感情に従い判断: 恐怖・危険  流暢性・鮮明性
Q3 スロビックらによる米国での実験結果
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9
1.
いずれの原因による死亡の頻度が,どれほど高い? p.246
1. 脳卒中(or 糖尿病 or 病気)とあらゆる事故
2. 雷と集団食中毒, 喘息と竜巻
 1: 2倍(4倍,18倍),2: 52倍,20倍  報道が歪める
2.
技術への好き嫌いと,メリットとリスクの評価は? p.248
好きばら,メリットを高く評価し,リスクを無視。嫌いなら?

3.
専門家では? メリットを説明すると?
同じ,リスクも減る
感情ヒューリスティックの特徴
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1.
10
利用可能性と同様,メディア報道に大きく影響される
難問は,連想活性化された観念によって,置き換えられる


2.



感情への訴えかけや新奇性  流暢性・鮮明性
感情の場合には,「好き嫌い」の判断に置き換えられる
感情の一貫性(白黒明白な世界)は,連想一貫性の中心
進化の産物: 危険に対する流暢性・鮮明性  健全な恐れ
強力: Q3 専門家も例外でない,<S7> 熟慮様も保証人化
∴ 意思決定を超単純化 but バイアスも大きい
3 市民 と 専門家 の意見の対立
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11
2つの代表的な考え方
スロビック: リスクの見方は,市民の方が豊か
1.




∴

リスクは計測法に依存,市民は統計で無視される要素も考慮
∴ 専門家の意見に無条件に従うのではなく,相互に尊重
サンスティーン: 専門家はポピュリストへの防波堤
2.
p.250
p.251
米国の法規制は,緻密な客観的分析よりも,世論の圧力に屈した形
∴ 失われる命も金も計測可能  合理的な費用便益分析
「客観的に計測可能なリスク」かどうかが問題の焦点
スロビックも,専門家の方が数字や合計のバイアスは弱い
政府の過剰介入 と 利用可能性カスケード
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12
当局が不合理な市民に過剰反応する理由 by サンスティーン
1.
2.
当局による政治的配慮
当局も市民と同じ認知バイアス
利用可能性カスケード
1.

2.
∴
と ポピュリズムの弊害 p.252-3
流暢性や鮮明性による広い意味でのヒューリスティック
思い出しやすさ: 利用可能性ヒューリスティック,感情の強さ: 感情ヒューリスティック
自己増殖的な連鎖: 報道  市民パニック,大規模介入
ポピュリズム: 利用可能性カスケード  政策の優先順位
Q4 利用可能性カスケード
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13
1.
利用可能性カスケードの増殖の連鎖過程とは?
p.253
刺激的な報道  危険の誇張 & 専門家による緩和の無視
 強い市民感情=国民的関心事  政策的優先
2.
テキストに挙げられた具体例で説明すると?
ラブ・キャナル事件,エイラー事件(化学物質),テロ
3.
近年の日本や世界での例は浮かぶ?
2016: 消費税増税の延期,オバマ大統領の広島訪問,桝
添知事の浪費,保育園おちた日本死ね,地球温暖化
p.253-6
自由主義における市民教育の重要性
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14
1.
と 衆愚(暴民)政治  アテナイの公職くじ引き制
民主政治の政策  自由な報道・投票
But 市民の衆愚化や報道・投票への自由の統制の危険は常
刺激的な報道  利用可能性カスケード  衆愚化
2.
政府による自由の制限・統制の強化  独裁・社会主義化
民主政治
1.
2.
∴
市民の見識(政策や報道への判断力)の重要性  教養・教育
1. 政府の政策やメディアの報道のインセンティブを疑う
2. 政策の科学的根拠(費用便益分析)をチェック:機会費用は?
本日の要点 & 次回への準備
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15
リスク判断に関する市民と専門家の意見の対立
1.
2.
スロビック: リスクの見方は,市民の方が豊か
サンスティーン: 専門家はポピュリストへの防波堤
利用可能性カスケード
と 科学・統計・専門家の役割
 刺激的な報道 過剰な市民の反応や政府の介入  専門家
次回準備: K(14) 序14-15 章 <S11> トム・W と リンダ

<S3> ベイズのルール の復習を前提
報道や教育 と 利用可能性カスケード
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利用可能性カスケードかどうかの判断のポイント

感情を煽るような報道によって,過剰な評価・優先政策
 科学・統計的な知識・報道・教育の重要性
客観的な評価基準(費用便益分析)を前提: サンスティーン
正当?
例:
1.
2.
地球温暖化対策に関する知識・報道・教育
知識: 京都議定書やパリ協定って? 感情ヒューリスティック
報道・教育: 温暖化対策は十分だと思う?  利用可能性カスケード
地球温暖化の費用便益分析の例
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ロンボルグの結論 『地球といっしょに頭も冷やせ』 『500億ドルでできること』
京都議定書は,便益・費用比が悪い  非効率な政策
1.
1.
2.
代わりに年に$40億使うだけで,
2.
1.
2.

費用は,年$500億かかるのに,
飲料水と衛生設備の改善人口はそのまま
 トレードオフ・機会費用
30億人がアクセス可能になり,
その金銭換算便益は,$2000億以上
報道・教育・政策を疑う  機会費用は?