『経済学』 by 矢根 真二 ([email protected]) 資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/becon/ Behavioral Economics < 1 > <S6> 直感君が結論ありきの理由は? 基準理論,因果関係 および ハロー効果 本日の課題 ■ 1 2 3 K(14): 6-7章: 思い浮かぶ結論や因果関係を疑える? 直感君の基準理論 と 因果関係 信じる直観君 と 疑う熟慮様 WYSIATI と 結論ありきの理由 前回の復習 上機嫌な直感君には要注意 Slide 2 1. プライミング効果 および フロリダ効果 とは? 2. イデオモーター効果とは? その例が可逆的な例は? 3. 認知の身体化とは? その具体例は? 4. 認知の実行制御(タスク設定)能力とは? 5. 認知容易性は,上機嫌の原因,それとも結果? 6. 上機嫌な時にこそ,注意すべき理由は? 本日の読解力Check Slide 3 1. 基準理論(p.134)とは? なぜ私たちは,驚く? 現状を解釈し将来を予測する連想観念パターン ≠ 現実 初体験 vs. 安心? <S5> 過去性。単純接触効果 2. 直感君による因果関係(p.140)の特徴は? 単純で一貫した物語(因果関係を見る) ≠ <S5>科学的因果関係 3. ギルバートによる「信じる」プロセス(p.147)とは? 4. 確証効果(p.148),ハロー効果(p.149), WYSIATI (p.156) とは? 1 直感君の基準理論 と 因果関係 Slide 4 直感君による正常と異常の判断 p.134 直感君の機能: 世界の連想観念パターン・モデルの自動更新 p.131 1. 現状を解釈し,将来を予想する基準 知識・言葉の共有 p.136 2. 最新のコンテクスト(前後の脈略)により,その都度自動更新 3. 驚き 能動的予想 p.132 ≠ 現実, 初体験 基準理論 異常事態への感受性 進化的な適合性: 危険の察知 熟慮様へのトリガー(合理的回路): 知的に最終決定 「驚く」能力の重要性? 1. 2. Q1 おしゃれなレストランの客 p.134 Slide 5 「基準の共有,基準の更新とコンテクスト,連想活性化」を使い説明? 1. 2. 3. ウェイターと肩が触れただけで,突然怒り出す客を見た 場合,アナタは驚く? なぜ? その客がスープを飲んで顔ををしかめていたことを,直 前に見た場合は? なぜ? 同じスープを隣の客も注文し同じ反応,その結果によっ てどんな判断を下しがち? 2の根拠とした因果関係は? その原因の客観的な確度は? 直感君が連想する因果関係 Slide 6 直感君による因果的解釈の特徴 ≠ 科学的な因果関係 直感君のモデル(基準)に適合する因果的な物語として解釈 1. 問題の結果の説明となりそうな原因への連想活性化 2. 瞬時に一貫した 「原因 結果」 物語(ストーリー)を作る 3. この「直感君の解釈」の提案 最終決定は熟慮様 「相関 因果」ではなく,「因果関係を見る」 p.140 1. 2. 3. 最初に結論ありき 自動的に原因を探す傾向 p.138 連想一貫性のため,物語には一貫した整合性 ∴ 熟慮様(=<S5> 統計的推論) が作動しない傾向 p.139 Q2 ブラック・スワン by タレブ p.138 Slide 1. 2. 3. 7 「フセイン逮捕」の経済ニュース,納得できる? 1. 米国債価格上昇中,フセイン逮捕はテロ抑止につながらず 2. 米国債価格は下落,フセイン逮捕でリスク資産に魅力 こうした例は多い or 少ない? 具体例は? こうした説明が一流紙にも蔓延する理由は? 1. 結果(事件)が起こると,専門家への原因(説明)のニーズ 2. 手持ちの限られた情報だけで,直感君が支配 プライミング効果 2 信じる直観君 と 疑う熟慮様 Slide 8 p.144 ダニー・ケイ 危険 慣れぬ状況,失敗のコストが大,情報収集制約 1. 全体の脈絡 個々の要素の解釈 p.14 図6 ABC と 数字 2. 経験(最近の出来事や現在の脈絡)に従ったもっともらしい解釈 直観君が結論に飛びつく理由 他の解釈は,無意識のうちに排除 13 or B ∴ 直感君は,他の選択肢の存在や排除に気づかない 意識して疑う 知的努力: 熟慮様の役割 If 注意力の不足 or 合理的回路が鈍い バイアスに自信過剰 ∴ 信じる・信じない? By p.147 ギルバート Slide 9 「信じる」に至る(至らない)メンタルシステムのプロセス ある言明の理解 必ず信じようとすることから始まる 1. 最初の試みは,直感君の自動作用 = 状況を最もうまく説明できる解釈の組み立てを試みる 例: 「白い魚がキャンディを食べている」 無意味な文章の意味? 2観念を関連づける連想活性化 ∴ 直感君は,だまされやすく,信じたがるバイアス p.148 疑ってかかり,信じないと判断するのは,熟慮様 2. p.148 実験結果: 熟慮様が 疲弊 or 多忙 なら,何でも信じてしまう傾向 Q3 ハロー効果 p.150-1 Slide 10 1. アランとベン,どっちが好き? 1. アラン: 頭がいい,勤勉,直情的,批判的,頑固,嫉妬深い 2. ベン: 嫉妬深い,頑固,批判的,直情的,勤勉,頭がいい 2. アラン人気と,著者の論文試験採点(p.152)との共通点は? ハロー効果: 最初の印象に重み 順番が大切 3. アナタが最近経験したハロー効果は? 説明できる? 4. 同様に,他の人がアナタに感じたハロー効果はどう思う? ハロー効果 と 確証効果 Slide 11 ハロー効果(後光効果) とは? p.149 = 好感を持った人には,(未知のことを含む)すべてに好感する傾向 ∴ 第一印象や順番が重要(最初に重み: Q3) 連想 直感君の基準: 現実より単純で一貫したモデル 確証効果とは? p.148 = 曖昧な新情報を,自分の信念・意見と整合的な解釈をする傾向 直感君がいったん信じる 連想記憶 確証効果を助長 ∴ ハロー効果 (好感 意見) 信念に強化 (連想記憶 確証効果) 疑う熟慮様の働かせ方 Slide 12 科学的方法論・科学哲学 熟慮様でさえ,確証方略をとる傾向 p.148 ポパーの反証主義の活用 1. 2. = 自分の意見・信念を肯定する証拠を意図的に探す ∴ 反例を探す習慣,反論を試みる友人の重要性 エラーの相関性の排除 1. 2. ハロー効果は,個人固有の既存の基準モデルに依存 ∴ 「(独立した)みんなの意見は案外正しい」を活用 p.154 ∴ 直感君が苦手な科学(統計学)的手法の活用 3 WYSIATI と 結論ありきの理由 Slide 13 直感君は,「結論に飛びつく連想マシン」 1. 2. 3. 直感君の役割: p.156 活性化された情報から最高の物語を作る 手元にない情報は,考慮しない 評価基準: 作った物語の首尾一貫性 使ったデータや情報の量や質は,ほとんど気にかけない ∴ 直感君は,限られた情報に基づく結論に飛びつく 自分の見たものがすべて(WYSIATI),見えないものは存在しない ∴ 直感君が「結論ありき」になりがちな理由 疑えない 最も首尾一貫した物語で,その情報不足には気づかない Q4 WYSIATI( 結論に飛びつくマシン) p.156-7 Slide 14 1. WYSIATI とは? その具体例は? 1. 自分の見たものがすべて = What You See Is All There Is. 2. 組合と店主の訴訟 追加情報はなくとも弁護士説明で自信 2. 「ミンディクっていいリーダーになれるかしら? 彼女,頭 がよくて,意志も強い…」,どう答える? Yesに飛びつく傾向 but リーダーの資質等を考えた? 3. アナタは,「限られた手元情報だけで,結論に飛びつく」こ とはなかった? If No, 直感君の暴走 結論に飛びつけば,結論ありきになりがちな理由 Slide 15 1. 直感君は,「WYSIATI(見たものがすべて)の傾向 直感君 = 結論に飛びつく連想マシン 2. ∴ 結論と最も整合的な物語 but その材料の情報は不完全 むしろ手元情報が少ないほど,単純で一貫した物語を作れる 3. 情報不足の物語に自信 解釈や結論は揺るがない ∴ 最初に結論ありき 直感: 確証バイアス・熟慮: 確証方略 このバイアスの回避? 注意と自制 + 統計学的手法 Q5 WYSIATI Slide に関連するバイアス p.159-60 16 バイアスの例と内容は? WYSIATI との関連は? 1. 基準の無視 スティーブ問題 統計的事実を無視して飛びつく 2. フレーミング効果 手術後の生存・死亡率,肉の脂肪・無脂肪率 表現法 3. 自信過剰 Q4 判断に不可欠な情報を欠いていても,気づかない 本日の要点 & 次回への準備 Slide 17 結論に飛びつくマシンは,自信過剰で結論ありきになる傾向 直感君は,瞬時に一貫した「原因 結果」物語を作る 「見たものがすべて(WYSIATI) 」で,情報不足でも自信過剰 ハロー効果や確証効果は,自信過剰バイアスを助長 1. 2. 3. 直感君の暴走を回避? 熟慮様への注意・自制の支払い If 疑える 統計学: 反例・反論,エラーの相関排除 How 次回準備: K(14) 8-9 章 <S7> 直感君の判断の仕組みは? 質問の自動的な置き換え ヒューリスティック 科学的方法 と 反証主義 Slide 18 科学的な手続き: 理論的な仮説を実証的にテスト 科学的な仮説: 反証可能な命題 「雪男はいない」 1. 反証されていないという意味でサバイバル 統計的な検定: 帰無仮説を棄却 2. vs. 確証 「感染していない」 帰無仮説「感染している」を有意水準1%で棄却できるかどうか 科学哲学の発展 1. 2. と 経済学の主流 の例 戸田山(05) 『科学哲学の冒険』 NHK フリードマン(77) 『実証経済学の方法と展開』 富士
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