AMPKは膜のコレステロール量を低下させることで、 インスリン刺激による

AMPK Enhances Insulin-Stimulated
GLUT4 Regulation via Lowering
Membrane Cholesterol
Endocrinology, May 2012, 153(5):2130–2141
AMPKは膜のコレステロール量を低下させることで、
インスリン刺激によるGLUT4の膜移行を促進する。
2015/06/01
M1 眞野 僚
骨格筋における糖取り込みのメカニズム
Sakamoto K and Holman GD,
Am J Physiol Endocrinol Metab, 295: E29–E37, 2008
コレステロールの生合成について
←←←←←←←(以下ACCと表記)
←律速酵素
(以下HMGRと表記)
http://www.f-gtc.or.jp/ketogenic/AMPK-FOXO.html
背景と目的
・細胞膜上の過剰のコレステロールは、インスリンシグナルのリン酸化を阻害すること
なく、F-actinの構造を破壊することで、インスリン誘導性の糖取り込みを阻害した。1)
・膜の流動性が穏やかに上昇することで、糖取り込み量が増加した。2)
・AMPKは、コレステロール合成の律速酵素であるHMGRを阻害した。3)
・AMPKの活性化は、SREBPの活性を抑制した。3)
本研究では、
①AMPKの活性化が細胞膜のコレステロール量とGLUT4の膜移行に
及ぼす影響
②AMPKの活性化が高インスリン状態時に上昇する細胞膜のコレステ
ロールを制御できるかどうかについて検討を行った。
1)Elmendorf JS et al, Diabetologia, 2012
2) Czech MP et al, Diabetes, 1980
3)Liu ZM et al, Biochem Biophys Res Commun, 2008
AMPKの活性化がL6-GLUT4myc筋管細胞で起こるか確認
1.GLUT4にmycを導入した
L6筋芽細胞を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.1 mM AICARを45分添加、
または200 µM DNPを30分添加
4.細胞を回収し、ウエスタンブロット
AICAR
DNP
AMP/ATP↑
P
AMPK
P
ACC
AMPKの活性化を引き起こすこと
を確認した。
inactive
AMPKの活性化がGLUT4の膜移行を引き起こすか確認
緑:GLUT4-myc
赤:核酸
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞
を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICAR、DNPを添加
(100 nM インスリンで20分刺激)
4.Mycに対する抗体を用いて免疫染色
(核は、Syto60を用いて染色し、
蛍光強度を測定した)
AMPKの活性化はGLUT4の膜移
行を促進することを確認した。
AMPKの活性化はインスリンシグナルに影響を及ぼすのか?
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細
胞を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICAR、DNPの添加
(インスリンの添加)
4.細胞を回収し、それぞれの抗体を
用いてウエスタンブロット
AMPKの活性化は、IRS-1、
Akt2、AS160のリン酸化に
は影響を及ぼさなかった。
⇒インスリンシグナルとは別
の経路でGLUT4の膜移行を
促進している。
AMPKの活性化が細胞膜のChol量に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICAR、DNPの添加
4.コレステロール量をamplex red cholesterol assayで
測定した。
AMPKの活性化により、細胞膜のコレス
テロール量が有意に減少した。
外因性のCholの添加が細胞膜のChol量に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞を筋管細
胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICAR、DNPの添加
(2-3の間に、1 mM βCD:Cholを同時に添加)
4.コレステロール量をamplex red cholesterol
assayで測定した。
βCD:Cholの添加により、細胞膜の
コレステロール量が減少しなかった。
βCD:Chol : methyl-β-cyclodextrin
preloaded with cholesterol
細胞膜のChol量の変化がGLUT4の膜移行に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞を
筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICAR、DNPの添加
(2-3の間に、1 mM βCD:Cholを同時に添加)
4.Mycに対する抗体を用いて免疫染色
(核は、Syto60を用いて染色し、蛍光強度を測定した)
βCD:Cholの添加により、
AMPKが促進するインスリ
ン誘導性のGLUT4の膜移
行のみを阻害する。
AMPKのノックダウンが細胞膜のChol量に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞
を筋管細胞に分化
(2.細胞播種後、siRNAをトランスフェク
ションして、AMPKをノックダウン)
3.血清飢餓30分
4.AICAR、DNPの添加
5.A:細胞を回収してウエスタンブロット
B:コレステロールを定量
siRNAのトランスフェクションによって、AMPKの発現量が減
り、それに伴って細胞膜上のコレステロール量がControlに
比べて増加した。
AMPKのノックダウンがGLUT4の膜移行に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽細胞を
筋管細胞に分化
(2.細胞播種後、siRNAをトランスフェクションして、
AMPKをノックダウン)
3.血清飢餓30分
4.AICAR、DNPの添加
(インスリンの添加)
5.Mycに対する抗体を用いて免疫染色
(核は、Syto60を用いて染色し、蛍光強度を測定した)
AMPKによるインスリ
ン誘導性のGLUT4の
膜移行の促進を抑制
した。
高インスリン状態が細胞膜のChol、F-actinに与える影響
1.GLUT4にmycを導入した
L6筋芽細胞を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICARの添加
(5 nM インスリン 12時間刺激)
4.コレステロール量をamplex
red cholesterol assayで
測定した。
4.F-actinに対する抗体を用いて
免疫染色
AMPKの活性化によ
り、Chol量の増加、
F-actinの破壊は抑
制された。
高インスリン状態がGLUT4の膜移行に与える影響
1.GLUT4にmycを導入したL6筋芽
細胞を筋管細胞に分化
2.血清飢餓30分
3.AICARを添加
(5 nM インスリンで12時間刺激)
4.100 nM インスリンで20分刺激
5.Mycに対する抗体を用いて
免疫染色
(核は、Syto60を用いて染色し、
蛍光強度を測定した)
AMPKの活性化により、インスリン抵抗性を有するときでもイ
ンスリン誘導性のGLUT4の膜移行を促進した。
in vivoにおけるF-actin、Chol量の変化
1.6週齢の雌のZucker ratを購入
2.2週間の順化後、食後のラットから
組織を単離した
Fig.A
1.Lean/Obese Zucker ratsから
滑車上部筋を単離
2.F-actinに対する抗体でラべリング
3.共焦点顕微鏡で観察
Fig.B
1.単離したヒラメ筋のコレステロール
量を定量
高インスリン血症を有するObese ratsは、F-actinの減少、
細胞膜のChol量の増加が確認された。
Cholの減少が肥満型ラットの糖取り込みに与える影響
1.ヒラメ筋を単離
2.2.5 mM βCDを60分添加
1.ヒラメ筋を単離
2.2.5 mM βCDを60分添加
(13.3 nM インスリンを30分添加)
3.F-actinに対する抗体でラベリングし、
観察
3.8 mM 2-[1,2-3H]DGを含む
バッファーで培養し、放射活性を測定
βCDの添加によってコレステロール量を減らすことで、糖取
り込み能が改善し、F-actinも回復した。
まとめ
・AMPKによるGLUT4の制御には、細胞膜のコレステロール
の低下が関わる。
・AMPKの活性化はインスリン抵抗性の改善にも寄与するこ
とができる。
Supplemental fig.1
推測されるモデル
Fig.4とFig.5のC、DのBar7の比較により、
・AMPKには、コレステロール非依存の経路も存在すると示唆される。
⇒おそらくAS160以降のシグナルが存在しそう
筆者らの先行論文
βCDの添加によって、GLUT4の膜移
行と2-DGの取り込みは回復する
しかし、Aktのリン酸化は回復しなかった。
⇒AMPKはAS160以降に関与する可能性
あり
βCDの添加により、basal , Insulin-stimulatedのどちらも上昇した。
①AICARやDNPよりβCDの方がコレステロールが減少しているので、GLUT4のエンドサイ
トーシスを阻害しているのかも⇒GLUT4が膜に留まる
②βCDがAMPKのactivatorであるかも?
変わらないので、βCDがAMPKの活性剤である可能性を否定
Amy J. Davidoff , Proceedings of the Australian Physiological Society , 2005