アジアのインフラ貿易 愛知学院大学 多和田ゼミ 近藤 宏樹 松田今日子 長岡美の里 前川英里佳 インフラとは・・・ • 経済インフラ エネルギー、水、運輸、廃棄物処理、情報通信、工業団地 • 社会インフラ 教育・文化・観光・スポーツ、医療・衛生、住居・矯正 • 機器輸出 相手国政府・政府機関や民間事業者から注文を受け、事業に 必要な機器を製造、輸出 • 出資・操業 相手国政府から入札等によって事業権あるいは運営権を意味 する「コンセッション」を取得 事業会社に出資して操業を行い、その収益をもって投下資金 を回収 インフラ・ビジネスの特徴 長所 長期に安定した事業収入 インフレ・ヘッジ 市場商品との非関連性 短所 分割・移動できない資産 大きな初期投資・為替変動リスク 電力事業 電力事業について 供給予備率➡最大電力需要に対して供給力にどのくらい 余裕があるかを示すもの。 アジア諸国では25%を目標にしているところが多い 日本では3~8%を維持するのが一つの目安 供給予備率がゼロとなっている国も 電力事業について 今後、アジアのエネルギー需要は大幅な増加が予想。 世界のエネルギー消費の6割を占める巨大な消費地域に。 しかし・・・ 経済成長に電力の供給力が追いついていないのが実状 火力発電 火力発電は・・・ 石炭火力発電 天然ガス焚き発電 の2つに大きく分類される 日本は電力事業用大型ガスタービンの分野では比較優位にある しかし・・・ 韓国企業も石炭火力発電などの分野で受注を拡大してきている。 再生可能エネルギー • アジアでは水力・風力・太陽光・地熱・バイオマスを使った事業 これら事業において重要なこと ➡「固定価格買取制度」が用意されているか 再生可能エネルギー事業の成否 適した自然環境 補助金制度が長期にわたって継続するかどうか 原子力発電 原子力発電所を導入するにあたって・・・ 莫大な事前投資が必要 各種の手厚い支援が不可欠 特異な側面➡一度事故が発生すれば、近隣国に放射能 漏れの影響が及ぶ可能性がある。 運輸事業 運輸事業の成功の秘訣 1 「上下分離」 鉄道や港湾・空港のプロジェクトでよく採用される ビジネスモデル 2 「競合する交通手段の排除」 3 「他の交通手段との結節」 鉄道需要について ○鉄道需要=都市人口が100万人を超えると生じるもの。 世界で398都市あり、そのうち40%はアジアにある。 例)インド:39都市、中国:72都市 アジアでは市場規模は大きく、公共輸送手段がいまだに限 られているので鉄道事業は有望である。 車両について • 車両の輸出については大量に受注すれば大きな商談となる。 1車両あたり‥新幹線のN700系:2億5000万円 路面電車:1億5000万~2億5000万円 通勤車両:1億円 • 車両の寿命については一般に30年程度であり、15年目頃に大きな定期 検収が必要になる。メンテナンスが良ければ50~60年は利用可能であ る。 メンテナンスや定期検収は同じ製造元へ依頼するので車 両をいったん納入するとその後長く商売することも可能である。 しかしアジアの多くの国ではそのノウハウが不足している。 日本の鉄道事業 1 車両が軽量で省エネに優れており、定時・大量・ 安全輸送 2 新幹線では専用軌道を使うため、衝突時の耐久性 よりも運行管理で安全性を確保するので、車両の軽量 化が可能 海外に売り出し、事業参画する価値が十分 にあるので海外進出を目指している 道路事業について アジア主要都市の交通渋滞はひどいものになっている。 例)フィリピン・マニラ:車の平均時速は20km未満 インドネシア:渋滞による経済損失年間5兆5000億ルピア →道路建設の需要は大きい。 民活の道路事業は道路やトンネル・サービスエリア・料金所といった 関連施設の管理・運営が中心で通行料や施設利用料が収入となる。 →インフラ事業の中でも日々現金収入がある。 日本の高速道路 2011年9月に日本の高速道路各社共同で日本高速道路インターナ ショナルを設立 →海外進出を目指している。 アジアの道路は日本と異なる点がたくさんあるので、 「安心・安全・快適・便利」 をモットーとする日本がどのようなビジネスを展開するのか注目 されている。 港湾・空港事業の最大の利点 施設を利用する航空会社や船会社あるいは乗客から一部の収入を 外貨建てで得られる →現地通貨建ての収入でないので為替変動リスクを軽減 • 港湾事業では多くの船を呼び込んで旅客や貨物の取り扱いを増 やすのが重要 • 空港事業では免税店収入が空港経営の屋台骨である 水事業 水関連のビジネスは主に3種類 水道事業 灌漑事業 海水淡水化事業 灌漑事業は収益性が低く、事業として成り立つのはもっ ぱら上下水道と海水淡水化 相手国の地方自治体と契約する形 上水道事業 地方自治体 民間事業者 水 地方自治体 水 浄化 下水道事業 民間事業者 地方自治体 下水 水処理・汚泥処理・排水 地方自治体から水の供給を受けないやり方 上水道事業 民間事業者 取水・貯水・導水・浄水 下水道事業 雨水・利用者 民間事業者 原水 それぞれのビジネスモデルの利点・欠点 相手国の地方自治体と契約する形 地方自治体から水の供給を受けないやり方 • 利点 • 利点 水を確保する心配がない 営業努力によって収入が伸びる 買水・買水の料金が固定 地方自治体の信用力に左右されな い • 欠点 契約が地方自治体の信用力に依存 する • 欠点 水の量・利用者に対する水道料の 集金の状況で収入が変動 海水淡水化 • 蒸発法 • 逆浸透膜法 膜市場の日本シェアは50% 高いノウハウも有する 日本企業の海外展開と課題 アジアのインフラの投資額は約8兆米ドル 事業分野別(単位:兆米ドル) 新規プロジェクトの割合 水・衛生, 0.4 情報, 1.1 既往, 2.6 電力, 4.1 運輸, 2.5 新規, 5.4 日本企業の海外展開 2007~2010年の日本企業による受注成績は約760億米ドル (うち45%はアジア・大洋州向け) 海外インフラ受注額 日本 中国 2005年 韓国 2010年 日本と中国の競争 2015年9月29日、インドネシアの高速鉄道計画につい て、インドネシア政府は、日本側の提案を採用せず、 中国側の提案を採用するという考えを示した。 日本はなぜ負けたのか? 中国の条件 融資に対する 返済保証を政 府は行わない 政府に財政負 担が生じない 企業連合などが建設から 運営まで当たる 日本の条件 資金調達の大部分 はインドネシア政 府の保証が必要 日本企業の課題 先行する欧米企業や安さで勝負する中国・韓国企業との競合 に十分に備える必要がある • 中国・韓国企業の特徴 製造コストが廉価 自国政府からの支援 高い機動性 →日本企業がこれらに対抗するには・・・ 品質で勝負するために入札評価で高技術製品にはボー ナス点が与えられるように相手国の当局に働きかける 日本の技術による国際標準化を推進する 価格競争力を高めるために日本製品のスペックダウン それでも人命に関わる分野では慎重な対応が必要不可欠 AIIBとADBについて AIIB(アジアインフラ投資銀行) • 本部 北京 • 加盟国57カ国 • 資本金1000億ドル • 設立 2015年末予定 • 総裁 金立群氏が内定 • 融資案件 インフラ事業のみ ADB(アジア開発銀行) • 本部 マニラ • 加盟国 67カ国と地域 • 資本金1531億ドル • 設立 1966年 • 総裁 日本人が歴任、現在は中 尾武彦氏 • 融資案件 インフラほか教育や 衛星、保健事業など AIIBは 出資額(国内総生産によって決まる)=議決権 中国は議決権の26%を持ち、75%の賛成で議決な ので、拒否権は中国のみが持つことになる 中国の発言権は絶大 本部も中国 総裁も中国人 中国の国内銀行のようになっている AIIBとADBの国別出資比率 •AIIB •ADB 1位中国 30% 1位日本・米国 15% 2位インド 8% 3位中国 6.46% 3位ロシア 6% 今後の課題と日本 AIIBは中国の出資比率が30%を超え、他国を 大きく引き離し発言権が限られてしまう。 組織運営、審査基準の不透明さへの懸念が払 拭されない限り日本は加盟しない方針。 今後の課題と日本 日本は融資決定基準、運営における透明性の 確保を求めている。 もし日本が加盟しても、出資に見合うだけの 受注は見込めないおそれがある。 まとめ 日本の技術力、製品の質の高さは世界に誇れるもので ある しかし いくら日本が良いものを持っていてもそれを相手国に 押し付けるように提示するだけでは他国との競争で勝 ち残れない 相手国の経済状況、政府の意向などを調査しその国のニーズ に応える必要がある 例えば・・・ 必ずしも高い技術を必要としない製品を低コストで生産 資金面に難がある国には融資を積極的に行う 今後は柔軟な対応が期待される ご清聴ありがとうございました!! <参考文献> 加賀隆一 『実践 アジアのインフラ・ビジネス 最前線の現場から見た制度・市場・企業とファイナンス』 伊藤元重 『ゼミナール 現代経済入門』
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