2001年度 経済統計処理講義内容

2006年度
計量経済学 講義内容
担当者: 河田 正樹
e-mail: [email protected]
計量経済学とは
• さまざまな経済理論にもとづき数式の形で表された
経済モデルを、データを用いて、統計的手法によっ
て検証するもの。
• 経済理論は因果関係の積み重ねである。
(例) 「利子率を下げると消費が拡大し、需要が喚起される」
このような論理の積み重ねによって、経済の現状把握・予測
をおこなうことを定性的分析という。
• これから一歩踏み込んで、
「利子率を○%下げると消費が拡大し、○○円程度の需要が喚起される」
というように、数量的な把握をするものが定量的分析である。
• このような定量的分析をおこなうために、統計データが用い
られる。
• 統計データを用いた定量的分析のことを、計量分析という。
経済分析における計量分析が計量経済分析である。
経 済 学 統 計 学
経済統計論 経済理論
計量経済理論 種々の統計的手法
経済データ 経済モデル 計量経済学
定式化されたモデル 実証分析
出典: 山本 拓(1995) 『計量経済学』 より作成
関連する科目
• 統計学
• 経済データ解析
• 経済統計
これらの科目は、計量経済学を理解する上で重要である。
特に統計学は、計量経済理論の基礎となる。
「計量経済学」の講義では統計学を履修済みであることを前
提とするが、最初の数回において要点を復習しながら進め
る。
<参考> 統計学・計量経済学関連科目関連図
計量経済分析の手順
モデルの定式化
モデルに含まれる変数と実際のデータの対応
パラメータの推定
不合格 モデルのテスト
合格
政策・予測への応用
<ステップ1>
モデルの定式化
• モデルの定式化は、おもに経済理論にもとづいてお
こなわれる。
• 経済理論から
所得↑ → 消費↑
という関係が導かれる。これを数学の用語を用いて
表現すると、
「消費は所得の関数である」
といえる。
• これを数式の形で表したものが消費関数であり、
代表的なものがケインズ型消費関数である。
Y(消費) = a + b X(所得)
↑
↑
結果
原因
Y
(
消
費
)
Y=a+bX
X(所得)
定式化したモデルについて、おもに2種類の疑問
が考えられる。
1 関数型への疑問
Y = a + bX2
Y = a × bX
ではいけないのか?
⇒ 所得と消費の散布図からを描くことによって
最適な関数型が選択される。
どちらでも構わないような場合には、解釈しや
すい、より単純なもの(1次式など)が選ばれる。
2 経済理論への疑問
消費を決定する要因として所得だけで良いの
か?
⇒ 1期前の消費も要因となる?
⇒ 資産も要因となる?
これらの疑問が、既存の経済理論の問題点を明
らかにし、提言をおこなうことになる。
この2種類の疑問への回答は、分析の結果
によって明らかになる。
モデルに含まれる
変数と実際のデータとの対応
<ステップ2>
• 最初に分析目的に応じて、2種類の統計データのう
ちどちらを用いるかを決める。
– 時系列データ
データを時間の順序にならべたものであり、過去の変動から現状を
把握し、将来を予測するなどの目的に用いる。
– クロスセクションデータ
ある1時点において何らかの属性に関してならべたものであり、地
域差などの現状を把握するために用いる。
• その上で「所得」「消費」といった経済学の概念に対
応した最適なデータを選ぶ。
• ここでは、日本全体の家計についての時系列
データを用いて分析をおこなう。
年
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
所得(X) 消費(Y)
212
173
217
181
223
187
228
192
234
198
243
205
248
214
259
225
271
236
280
246
290
252
296
257
300
260
304
265
• 「所得」は実質家計可処分
所得、「消費」は実質家計
消費支出をもちいる。これ
らはともに国民経済計算か
ら得られたデータである。
<ステップ3>
パラメータの推定
• パラメータ(回帰係数)の推定は、散布図にX,Yの
関係をもっともよく表す直線を書き入れることである。
280
260
消費
240
220
200
180
160
200
220
240
260
所得
280
300
320
• 回帰係数の推定値は最小2乗法という方法で求
•
めることができる。
最小2乗法はデータの各点と直線との距離(これ
を残差という)の2乗和が最小となるように直線を
引く方法である。
推定値は次のような式
で求められる。
11
10
9
bˆ 
8
 ( X  X )(Y  Y )
(X  X )
i
i
2
i
7
aˆ  Y  bˆX
6
5
4
3
6
9
12
15
(詳しくは第2章で)
• このデータに最小2乗法を適用した結果、直線の
方程式は Y= -31.46 + 0.980 X となった。
• これより、たとえばX=320のときのYが、
Y= -31.46 + 0.980×320 = 282.14
と求められる。
⇒ 将来の消費額の予測
<ステップ4>
モデルのテスト
• パラメータを推定したモデルは、経済学的な面と
統計学的な面から検討される。
• 回帰係数の検定で、よくおこなわれるのが
H0: b=0 vs. H1: b≠0
という検定である。
• この検定で、H0が採択された場合、
Y=a+bX
↑
0
となるので、真の回帰式はY=aとなる。
• この式は、「Yの大きさはXの値
•
にかかわらず一定値aをとる」と
いうことを表している。
Y
回帰分析は、Xの大きさが大きく
a
なることが原因となってYが大き
くなる(または小さくなる)ときに
行う分析であるので、 H0が採択
された場合には、「この分析は
行う意味がなかった」ということ
になってしまう。
(統計的検定については第1章で復習します)
Y= a
X
• また、回帰分析を行う場合にはさまざまな仮定が
•
•
なされている。
しかし現実のデータ(特に経済データ)はその仮
定を満たさないことが多く、その場合には最小2
乗法で求めたパラメータ推定値が信用できない。
そこで、以下のような諸問題に対する対処が必
要となる。
• 多重共線性
• 系列相関
• 不均一分散
(詳しくは第4章で)