ミクロ経済学II 第20回 独占の理論2 独占企業への規制 今日やること 独占企業をどのようにして規制するべきか? 1.そもそもなぜ独占がおきるのか? 2.価格規制 3.独占利潤を許すケース なぜ他の企業は市場参入できないのか? 参入障壁 原材料の独占 De Beers ダイアモンド 法律 – 特許, 著作権, 免許 新薬 酒屋 巨大な固定費 電力 規模の経済 固定費用が高い⇒ 企業数が少ないほうが効率的 莫大な資本投資が必要な産業の例: 電気・水道・鉄道・電話 どんな選択肢があるか? →投資の重複 →非効率的 規制された独占 競争 今日やること 独占企業をどのようにして規制するべきか? 1.そもそもなぜ独占がおきるのか? 2.価格規制 3.独占利潤を許すケース 独占企業の供給量・価格の決定 1.独占企業は限界収入MR P と限界費用MCが等しくな るように供給量Q**を決定 MR: 限界メリット P** MC: 限界デメリット 2.供給量がQ**のときに需 給が一致する価格はP** ⇒これが独占価格 MC D Q** MR Q 限界費用逓増の場合の独占と完全競争の比較 完全競争 独占市場 P P 消費者 余剰 MC P* 生産者 余剰 消費者余剰: 減 生産者余剰: 増 消費者 総余剰: 減 余剰 P** MC 生産者 余剰 余剰の損失 D D Q* Q Q** MR Q 限界費用ルール=完全競争価格の強制 完全競争価格を法律で義務付ける ⇒ 完全競争均衡と同じ数量・価格が実現 ⇒ 消費者余剰・生産者余剰も完全競争と同じ ⇒ 総余剰が最大化 限界費用価格規制のもとでの独占企業の行動 独占企業はprice takerと して利潤最大化 P 完全競争価格=限界費 用となるよう生産量を選択 完全競争均衡と同じ数 量・価格が実現 規制 価格 MC D 規制価格の 下での数量 Q 固定費が大きいときの限界費用価格規制 • 固定費用を含めた利潤は 数量×(価格ー平均費用) • 限界価格費用規制では 平均費用>規制価格 ⇒ 利潤<0 となることがある • 赤字分を政府が補填する 必要がある P 規制 価格 赤字 MC AC 規制価格 の下での 平均費用 D 規制価格の 下での数量 Q 平均費用のグラフ 120 100 80 60 40 20 0 0 2 C=固定費+Y+Y 固定費小 • 固定費が小さい(=10) 固定費大 ときと大きい(=100)とき 平均費用最小 の比較 • 限界費用逓増⇒平均費 用は一度下がってまた 上がる • 固定費大⇒生産量が非 10 20 常に大きくなるまで平均 生産量 費用が下がり続ける 限界費用ルールの問題点 1.不完全情報: 政府が限界費用を知らなければダメ 帳簿から限界費用を推定するのは難しい 企業は限界費用をなるべく大きく見せようとする 2.固定費大⇒限界費用価格では赤字 事後的な損失補填⇒経営努力が失われる 事前に補填額を決めておく一括補助金が望ましいが、 現実には難しい 平均費用価格ルール 平均費用と需要が一致す AC る点の価格と数量を独占 P 企業に強制 メリット: 独占価格よりは低い価格 利潤がゼロなので補助金 規制 の必要なし 価格 帳簿を提出させれば平均 MC 費用は算出可能 デメリット: 限界費用価格ルールと比 較すると総余剰は減少 規制価格 の下での 平均費用 D 規制 数量 Q 平均費用価格ルールと限界費用ルールの比較 AC 平均費用価格 P ルール 消費者 余剰 余剰の損失 規制 価格 生産者 余剰 AC P 限界費用価格 ルール 総余剰が最大 規制 MC 価格 MC D 規制 数量 Q D 規制価格の 下での数量 Q 今日やること 独占企業をどのようにして規制するべきか? 1.そもそもなぜ独占がおきるのか? 2.価格規制 3.独占利潤を許すケース 新薬の市場分析 • 低い限界費用 • 非弾力的な需要 ⇒ 高いマークアップ 複製は技術的には容易 だが、特許により禁止 ⇒なぜ法的に独占が保護 されているのか? AC P 独占 価格 P=AC P=MC MC D 独占 数量 MR Q 独占を許すことで技術革新を促進 技術開発はリスクと費用が大きい -なぜやるのか? 技術革新を行えば、他の企業が真似できない間は独 占企業になれる 独占が許されないなら、技術開発にお金をかけるイン センティブも減る 特許と著作権: 技術革新の報酬として一定期間だけ独占権を与える 例: AIDS治療薬 メルク社のCrixivan 開発費: 10億ドル(1000億円)超 毎年の収入: 5億ドル(500億円) ドラッグ・カクテル(1年分) アメリカでの価格: 1万ドル(100万円) 競争価格: 300ドル(3万円) もし政府がAIDS治療薬の特許を取り消したら? 患者は助かる 製薬会社も倒産はしない 特許制度への信頼がなくなる ⇒技術開発がなくなる
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