中村さやか

経済学入門 第7回
独占の理論
中村さやか
宿題の解説 (提出の必要なし)
50
45
price
価格(万円)
S
40
1.市場均衡での消費者余
剰と生産者余剰を求めよ。
2.公定価格が20のときの
生産者余剰と消費者余剰
を求めよ。
35
30
25
20
15
10
5
D
100 200 300 400 500 600 700 800
3.1単位当たり5万円の従
量税が供給者に課税され
たときの生産者余剰・消費
者余剰・税収を求めよ。
数量
quantity
今日やること
独占は悪か?
1.
2.
3.
独占とは何か
なぜ独占は非効率的か
独占が正当化されるのはどういうときか
横浜駅で聞きました: 「独占は悪ですか?」
たぶん返ってくる答え:
「独占は不公平だからよくない」
お金
消費者
独占企業
=庶民
=金持ち
近代経済学者に質問 「独占は悪ですか?」
ほとんどの経済学者の意見:
 「独占は悪」
 不公平だからではなく非効率的だから
 ある状況の下では独占も正当化できる
独占って何?
 一つの企業だけがその商品を供給

何かの理由で他の企業は 供給できない
 それに代えられる商品がない


そうめん vs. ひやむぎ
うどん vs. そば
なぜ他の企業は市場参入できないのか?
原材料の独占
 De Beers ダイアモンド
 法律 – 特許, 著作権, 免許
 新薬
 酒屋
 巨大な固定費
 電力

独占市場の対極: 完全競争市場
 無数の企業が供給可能
 消費者は1円でも安いところから買う
→ 企業はコストぎりぎりまで値段を下げる
完全な独占も完全な競争も現実にはない
でも単純化するとわかりやすくなる
今日やること
 独占は悪か?
1. 独占とは何か
2.
3.
なぜ独占は非効率的か
独占が正当化されるのはどういうときか
単純化のために限界費用が一定のケースを考える
限界費用(MC)が一定
→限界費用曲線は水平
完全競争と独占のもとでの
 市場均衡
 総余剰
を比較
P
MC
D
Q
完全競争のもとでの市場均衡
均衡価格: P* = MC
 MC以上の価格をつけた
ら他の企業がそれより安
く売るので全く売れない
 限界費用曲線が供給曲
線と一致
価格がP* = MC
⇒ 需要は Q*
⇒ 均衡数量はQ*
P
MC
P*
D
Q*
Q
完全競争の下での総余剰
生産者余剰
= 利潤
= Q* x (P* - MC)
=0
消費者余剰
=
P
P*
払ってもよい
最大価格
MC
D
Q*
Q
独占
 独占企業は限界費用より高
い価格をつけることができる P
⇒ P** > MC=P*
 価格が高いので、数量は少
P**
なくなる
⇒ Q**<Q*.
 利潤 = Q** × (P** ー MC) P*
=
利潤
マージン
MC
D
Q**
Q*
Q
独占による余剰の損失
完全競争
独占
P
P
消費者
余剰
余剰の損失
P**
消費者
余剰
生産者
余剰
P*
Q*
MC
MC
D
D
Q
Q**
Q
なぜ独占は非効率的なのか?
 消費者が払ってもよいと思
P
う最大価格 > MC
⇒売買すれば少なくとも片方
は利益を得る
 独占市場では企業は値段 P**
を上げるために矢印の範
囲の消費者に売るのをあ
きらめてしまう
⇒行われるべき取引が行わ
れない
MC
D
Q**
Q
独占は格差を拡大するか?
 独占企業のオーナーが消費者より金持ちだとは限らない
 年金基金で株式運用
 家族経営の酒屋
 所得分配だけが問題なら、独占企業に課税して低所得者
に分配すればいい
 ビル・ゲイツは世界有数の慈善家
今日やること
 独占は悪か?
1. 独占とは何か
2.
3.
なぜ独占は非効率的か
独占が正当化されるのはどういうときか
ケース1: 規模の経済
固定費用が高い⇒ 企業数が少ないほうが効率的
4人でひとり1杯ずつお茶をいれるのと、
ひとりで4杯お茶を入れるのはどちらが効率的?
規模の経済の大きい産業の例
 莫大な資本投資
 電気・水道・鉄道・電話
 どんな選択肢があるか?
 競争
投資の重複
 規制された独占
不完全情報
汚職
ケース2: 独占で技術革新を促進
技術開発はリスクと費用が大きい -なぜやるのか?
 技術革新を行えば、他の企業が真似できない間は独
占企業になれる
 独占が許されないなら、技術開発にお金をかけるイン
センティブも減る
特許と著作権:
技術革新の報酬として一定期間だけ独占権を与える
例: AIDS治療薬
 メルク社のCrixivan
 開発費:
10億ドル(1000億円)超
 毎年の収入: 5億ドル(500億円)
 ドラッグ・カクテル(1年分)
 アメリカでの価格: 1万ドル(100万円)
 競争価格: 300ドル(3万円)
 もし政府がAIDS治療薬の特許を取り消したら?
 患者は助かる
 特許制度への信頼がなくなる⇒技術開発がなくなる
結論 – 独占は悪か?
 独占は非効率的
 でも独占が効率的な場合もある
 規模の経済
 技術革新が高額かつ重要