ミクロ経済学II 第19回 独占の理論1 独占企業の行動 1.独占企業はどのように価 格と供給量を選ぶか? 2.価格差別 (限界費用一定の)独占企業 完全競争の下での均衡: P* Q* P 独占企業は限界費用より高 い価格をつけることができる ⇒ P** > MC=P* P** 価格が高いので、数量は少 なくなる P* ⇒ Q**<Q*. 利潤 = Q** × (P** ー MC) = 利潤 マージン MC D Q** Q* Q 価格と数量のトレード・オフ 値段を高くすると 数が売れなくなる P たくさん売ろうとす P ると値段が下がる P’ P’’ Q’ MC MC D D Q Q’’ Q 独占企業はどのように価格・数量を決めるか? 利潤=価格×数量-費用=py-C(y) 独占 ⇒ 価格pは生産量yの関数 ⇒ p=p(y) 独占企業は需要曲線上の価格と生産量の組み合わ せを選ぶ (yを増やすと値崩れ) 利潤が最大になるように生産量(y)を選ぶ: Max y p( y ) y C ( y ) p(y)y、すなわち販売収入(revenue)をR(y)とおくと、 Max R( y) C ( y) y 数学的な解き方 Max R( y) C ( y) y 利潤関数は逆U字型 利潤 ⇒yで微分して0→最大 ⇒R’(y) = C’(y) で最大 R’(y): 限界収入 (marginal revenue, MR) C’(y): 限界費用 (MC) ⇒限界収入=限界費用 傾き0 y* y 独占企業と完全競争企業の比較 独占企業:pはyの関数 完全競争企業:pは定数 Max R( y) C ( y) Max R( y) C ( y) 利潤最大化の条件: MR = R’(y) = MC = C’(y) R(y) = p(y)y MR=R’(y)=p’(y)y + p(y) 利潤最大化の条件: MR = R’(y) = MC = C’(y) R(y) = py MR = R’(y) = p ⇒ MC = MR ≠ p ⇒ MC = MR = p y y 直感的(?)説明ー独占のケース: 販売収入 R=p(y)y 販売収入Rは供給量yと 共に増加する yが増えるにしたがって、 限界収入R’(y)は減少 する(供給量が増えると 値崩れするため) R R 傾き: R’(y)=MR y 直感的(?)説明ー独占&限界費用逓増のケース1 C 費用Cは供給量yと共 に増加する 限界費用逓増を仮定 すると、yが増えるにし たがって、限界費用 C’(y)は増加する C 傾き: C’(y) 傾き: C’(y) y 直感的(?)説明ー独占&限界費用逓増のケース2 Max R( y) C ( y) C y RとCの差が利潤 R, C 利潤=R(y)-C(y) は、 R’(y)=C’(y) のとき最大 ⇒限界収入=限界費用 が利潤最大の条件 これが成立しているy* が利潤を最大化する生 産量 R 傾き: R’(y) 利潤:R-C 傾き: C’(y) y* y 直感的(?)説明ー独占&限界費用一定のケース1 費用Cは供給量yと共 に増加する 限界費用一定を仮定 すると、費用曲線は傾 き一定(=限界費用 C’(y))の直線 C 傾き: C’(y) C y 直感的(?)説明ー独占&限界費用一定のケース2 Max R( y) C ( y) y R C 利潤:R-C R, C 利潤=R(y)-C(y) は、 R’(y)=C’(y) のとき最大 ⇒限界収入=限界費用 が利潤最大の条件 傾き: R’(y) 傾き: C’(y) y* y 直感的(?)説明 ー完全競争&限界費用逓増のケース 市場価格pは定数 ⇒販売収入曲線R=pyは, R, C 原点を通る傾きpの直線 利潤=R(y)-C(y) は、 R’(y)=p=C’(y) 傾き: のとき最大 R’(y)=p ⇒市場価格=限界費用が 利潤最大の条件 C R=py 傾き: C’(y) 利潤:R-C y* y 限界収入曲線MRの特徴 需要曲線が直線の場合 限界収入曲線MRは: 切片は需要曲線と同じ 傾きは需要曲線の2倍 需要曲線: P=a-bQ, a,b>0 R = P×Q = Q×(a-bQ) = aQ – bQ2 MR = R’(Q) = a – 2bQ P D MR Q 独占企業の供給量・価格の決定 1.独占企業は限界収入MR P と限界費用MCが等しくな るように供給量Q**を決定 2.供給量がQ**のときに需 P** 給が一致する価格はP** ⇒これが独占価格 (よくやる間違いに注意) MC D Q** MR Q 限界費用逓増の場合の余剰分析 完全競争 独占市場 P P 消費者 余剰 MC P* 生産者 余剰 消費者余剰:減 生産者余剰:増 消費者 総余剰:減 余剰 P** MC 生産者 余剰 余剰の損失 D D Q* Q Q** MR Q 限界費用一定の場合の余剰分析 完全競争 独占 P P 消費者 余剰 余剰の損失 P** 消費者 余剰 生産者 余剰 P* Q* MC MC D D Q Q** MR Q なぜ独占は非効率的なのか? 矢印⇔の範囲では 消費者の留保価格 > MC P ⇒売買すれば少なくとも片方 は利益を得る 独占市場では企業は値段 P** を上げるために矢印の範 囲の消費者に売るのをあ きらめてしまう ⇒行われるべき取引が行わ れない MC D Q** Q MR 需要の弾力性による比較 需要が非弾力的なケース 需要が弾力的なケース ⇒独占価格と限界 費用の差が小さい P (無限に弾力的 ⇒完全競争と同じ) P ⇒独占価格と限界 費用の差が大きい P** P** MC MC D Q** MR Q D Q** Q MR 価格差別 独占企業が二つの異なる市場でそれぞれ利潤を最大 化する供給量・価格を選んでいるとする 需要弾力性の高い市場では低い価格を、需要弾力性 の低い市場では高い価格を選ぶ 例) 日本と中国 学生・女性・高齢者割引 平日割引 価格差別が成り立つ条件 1.企業が独占力を持っている 2.売る側が価格弾力性の高い消費者と低い消費者を 区別することができる 弾力性の高い消費者が低い消費者のふりをすること ができない 転売できない 例) 日本と中国 (逆輸入) 学生・女性・高齢者割引 (身分証明) 平日割引 完全な価格差別の例 消費者は太郎・二朗・三郎の三人 トヨタVitzに太郎は200万円、二朗は180万円、三郎は 150万円支払う用意がある 限界費用は145万円 トヨタのディーラーが車の独占的供給者で、3人の支 払ってもよい最高価格を知っていて、3人は転売がで きないとする ⇒ディーラーは太郎に200万円、二朗に180万円、三郎 に150万円で売る 完全な価格差別のもとでの社会的余剰 独占企業は各消費者に支 払ってもよい最高価格と 同じ額で販売 ⇒均衡数量は完全競争の 時と同じ 消費者余剰はゼロ 生産者余剰= ⇒社会的余剰は最大 P MC D Q*** Q 完全な価格差別と完全競争の比較 完全な価格差別 完全競争 P P 消費者 余剰 生産者 余剰 MC MC D D Q*** Q Q* Q 完全な価格差別と価格差別なしの独占の比較 完全な価格差別 P P 価格差別なしの 独占 消費者 余剰 余剰の損失 P** 生産者 余剰 生産者 余剰 MC MC D D Q*** Q Q** Q 価格差別は悪か? 消費者の支払ってもよい最高額>生産者の限界費用 ならば取引するのが効率的 価格差別の下では価格差別なしの独占と比べて取引 量が多いので、価格差別のない独占より効率的 消費者余剰は価格差別によって減少 生産者余剰は価格差別によって増大
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