日語文法研究 (大学院) 5月21日(木)~ 担当 神作晋一 第10章 ヴォイスの選択 ――話し手の視点 ねらい: 見方によって同じ事態が肯定的で好 ましいものと捉えられたり、否定的で 好ましくないものと捉えられたりします。 話し手は、間接受身、使役、授受など のヴォイスを使って、事態のさまざま な捉え方を描き分けます。 第10章 ヴォイスの選択 ――話し手の視点 キーワード: 話し手の視点、出来事の捉え方、好まれ る言い回し 第10章 ヴォイスの選択 ――話し手の視点 §1 使役と間接受身 §2 間接受身と恩恵の授受 §3 使役と恩恵の授受 →「出来事」の外からどう見 恩恵の授受 るか、という共通点 使役 間接受身 §1 使役と間接受身 使役 恩恵の授受 間接受身 §1 使役と間接受身 出来事の捉え方の視点(ペア対立) 他動詞:「誰が何をしたか」 スル 自動詞:「誰に何が起こったか」 ナル 使 役:「誰がどの出来事に働きかけたか」 受 身:「誰がどの出来事に影響を受けたか」 §1 使役と間接受身 使役と間接受身 →出来事の外からの視点 ※【】は出来事 (1)太郎は、ペットの犬を死なせた。(使役) 【ペットの犬が死んだ】 ←傍観(無力感・責任意識) Cf.ペットの犬を殺した。 (2)太郎は、ペットの犬に死なれた。(間接受身) 【ペットの犬が死んだ】 ←受影(被害者意識) §1 使役と間接受身 使役と間接受身 →出来事の外からの視点 ※【】は出来事 (3)田中は秘書{に/を}辞めさせた。(使役) 【秘書が辞める】 ←ヲ格(解雇)※強制・指示 【秘書が辞める】 ←ニ格(了解)※許可・容認 (4)田中は秘書に辞められた。(間接受身) 【秘書が辞める】 ←受影(迷惑の受身) §2 間接受身と恩恵の授受 使役 恩恵の授受 間接受身 §2 間接受身と恩恵の授受 間接受身と恩恵の授受 受け手に視点 ※【】内は出来事 (5)雨に降られた。 【雨が降った】 ←「ー」の影響を被る(迷惑) (6)雨が降ってくれた。 【雨が降った】 ←「+」の影響を受ける(恩恵) §2 間接受身と恩恵の授受 間接受身と恩恵の授受 受け手に視点 ※【】内は出来事 (7)忙しいところに電話もなしに友達に遊びに 来られた。 【友達が来た】 ←「マイナス」と判断(迷惑) (8)退屈していたら友達が遊びに来てくれた。 【友達が来た】 ←「 プラス 」と判断(恩恵) §3 使役と恩恵の授受 使役 恩恵の授受 間接受身 §3 使役と恩恵の授受 (9)太郎に食事代を払わせた。(使役)※太郎が受影 【太郎が食事代を払った】 ←与え手(話者)の指示) (10)太郎が払ってくれた。 (恩恵) ※【】内は 出来事 影響の与え手(使役)と受け手(授受)の視点 使役と恩恵の授受(テモラウ・テクレル) 【太郎が食事代を払った】 →与え手(太郎)の好意 (11)太郎に食事代を払ってもらった。(恩恵) 【太郎が食事代を払った】 →受け手(話者)の働きか けによる与え手(太郎)の行為 「使役」に近い部分 §3 使役と恩恵の授受 テモラウの複雑さ→使役と共通した点 例:「太郎に払ってもらった」 出来事が受け手(話者)の(太郎への)働きかけ の結果 依頼して実現したことへの感謝 例:「太郎が払ってくれた」 (働きかけの含意を回避し)与え手(太郎)の側の 自主的な行為であったかのように表現 §3 使役と恩恵の授受 出来事と話し手自身のかかわり→使い分け 「私~」を言語化しない。 →発話状況(文脈)から明らか(明白) 「太郎に殴られた」(「私」からの視点) 「田中が妹に本をあげた」→田中の妹 「田中が妹に本をくれた」→話し手の妹 §3 使役と恩恵の授受 好まれる言い回し(fashions of speaking) 「私~」を言語化しない。 他動詞文より直接受身文(「私」からの視点) 授受動詞による与え手・受け手の識別 「太郎に殴られた」>「太郎が私を殴った」 「田中が妹に本をあげた」→田中の妹 「田中が妹に本をくれた」→話し手の妹 →言語化されない「私」を指標する手段 授受動詞、恩恵の授受、間接受身、使役 まとめ 日本語らしさ、自然な日本語のために 主観の捉え方など ヴォイス(間接受身、使役、恩恵の授受) 出来事 の外側 出来事 (文に現れ た要素)
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