第1章.金融仲介 • 資金移転プロセス: – 資金の流れの側面と証書・金融資産の流れの側面 (資金の流れと反対方向) – e.g. 株券、借入証書、預金証書、投信受益証券 • 本源的証券: – 資金不足主体が発行する証券 • 間接証券: – 金融仲介機関が発行する証券 • 資産変換: – ある資産の権利・キャッシュフローを組み換えて、性質 の異なる別の資産に変換すること 1 • e.g. 銀行による金融仲介(預金受入れ、貸出実行) – 証書・金融資産の流れの側面:借り手(不足主体)か ら借入証書(本源的証券)を受け取り、預金者(余剰 主体)に預金証書(間接証券)を提供 – ⇒銀行は借入証書を預金証書に変換している (資産変換機能) ( 借不 り足 手主 体 ) 銀行のB/S 借入 証書 貸 出 預 金 預金 証書 ( 預余 金剰 者主 体 ) 2 • ○金融仲介の方式 • 直接金融: – 資金不足主体が発行する本源的証券がその まま資金余剰主体に提供されるという形で資 金が移転(資産変換なし) • 間接金融: – 資金余剰主体に対して、本源的証券がそのま ま提供されるのではなく、間接証券に変換さ れて提供されるという形で資金が移転(資産 変換あり) 3 • 直接金融(→)と間接金融(⇒) 証書・証券の流れ 本源的証券 資金不足 主体(企業) 間接証券 金融仲介 機関 資金余剰 主体(家計) 本源的証券 ・金融仲介機関(間接金融機関):資産変換を行なう金融機関 4 ○証券化における資産変換:優先劣後構造 ・優先劣後構造:証券化によって発行される複数の証券に弁済の順序付け が行われること 債権譲渡 借入証書 企 業 向 貸 出 負 債 資 本 ・ 債( 不 務足 者主 企体 業) 銀行・ノン バンク 企 業 向 貸 出 A B S SPC(特別 目的会社) ( 優 先 債 と 劣 後 債 ) ・Special Purpose Company ・Asset Backed Security(資産担保証券) 証 券 市 場 投( 余 資剰 家主 体 ) 5 • 優先劣後構造の数値例 – 格付のランク付けを以下のように仮定する • 格付:発行される債券のデフォルトリスクの評価・ラ ンク付け • A:1年間のデフォルト確率1%未満 • B:1%~6% • C:6%以上 – ローンaとローンbをプールして証券化する • ローンa、ローンb共に返済期限が1年後で、元利返 済額が共に1000万円 • 共にデフォルト確率5%、両者に相関がない(統計的 に独立)、デフォルトした場合返済額はゼロ • ローンa、b共に格付はB 6 ・ローンa、bをプールした全体の元利返済状況は、以下の 4つのケースとなる。 ローンa 債務履行 ローンb デフォルト 債務履行 ケース① 返済額:2000万円 確率=0.95×0.95 =0.9025 ケース② 1000万円 0.05×0.95 =0.0475 デフォルト ケース③ 1000万円 0.95×0.05 =0.0475 ケース④ 0円 0.05×0.05 =0.0025 7 • ローンa、bをプールして、それを裏付け担 保とする証券化を考える。 – 証券化により優先債と劣後債の2種類の債券 を発行する – 優先債:担保資産からのキャッシュフローを優 先的に1000万円を受け取ることのできる権利 – 劣後債:優先債への支払いが行われた後、 1000万円を受け取ることのできる権利 – 優先債のデフォルトはケース④のみ、デフォル ト確率:0.25% ⇒ 格付:A(高格付の債券) – 劣後債のデフォルトはケース②、③、④で発生、 デフォルト確率9.75% ⇒ 格付:C 8 • 証券化における資産変換 – 個々の企業の借入証書が証券化SPCを通じ て、より信用度の高い証券(優先債)とより信 用度の低い証券(劣後債)とに資産変換され ている。 – 優先債はローリスク・ローリターンを望む銀 行・保険・年金等に販売され、劣後債はハイリ スク・ハイリターンを望むファンド等に販売され る(資金提供者の望むタイプの証券を証券化 によって作り出す) 。 9 ・ローンのプールと優先劣後構造 SPCのB/S ・ローンa、b の キャッシュフロー 95%の確率で1000万円 5%の確率で0円 格付:B ・キャッシュフロー 90.25%の確率で2000万円 9.5%の確率で1000万円 0.25%の確率で0円 ・優先債のキャッシュフロー 99.75%の確率で1000万円 0.25%の確率で0円 格付:A ・劣後債のキャッシュフロー 90.25%の確率で1000万円 9.75%の確率で0円 格付:C 10 ・劣後債のハイリスク・ハイリターン性 • ローンa、bそれぞれの元本を900万円、金利 を100万円とする。 • 優先債、劣後債をそれぞれ10枚に分ける – 1枚100万円を受け取ることのできる権利 • 優先債1枚=97万円、劣後債1枚=83万円で 売出す。 • • • • • • 優先債の期待収益率 =(0.9975×100万円+0.0025×0円)÷97万円 =1.0284 (2.84%) : 劣後債の期待収益率 =(0.9025×100万円+0.0975×0円)÷83万円 =1.0873 (8.73%) : 11 • 投資信託も間接金融 • ○投資信託の仕組み 投 資 家 資金 投 資 信 収益分配 託 投資 投資収益 証 券 市 場 等 12 投資信託 ( 企不 業足 主 体 ) 証 券 市 場 有 価 証 券 投 信 受 益 証 券 ( 投余 資剰 家主 体 ) ・投資信託における資産変換 ある程度大きな金額の証券を発行して資金調達したい企業 のニーズと、 とのギャップを、資産変換を通じて埋める 13 • 銀行と証券会社 直接金融において証券会社は、本源的証券の発行体と投資家 の間で仲介的役割を果たしている。⇒間接金融との違いは何? 本源的証券 資金不足 主体(企業) 本源的証券 間接証券 金融仲介 機関 銀行等 資金余剰 主体(家計) 証券会社 14 (金融仲介機関ではない) – 資金調達主体が発行した証券を資産変換すること なく、そのまま投資家に販売しているだけ • 証券会社: • 銀行・投資信託委託会社: – 本源的証券を原料として、間接証券という資金提供 者向けの製品に加工(資産変換)している。 15
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