A2 中間発表 ~Bellの不等式をめぐって~ 2006.2.27 1.実験の目的 古典論と量子論の大きな隔たり ・古典論・・・測定前でも物理量は一意に決定 されており、それは100%の確率 で予言できる。(決定論) ・量子論・・・測定前では物理量は一意に決定 されておらず、それは確率的にし か予言できない。 どちらが正しいのか? それを実験的に決定できるようにした のがBellの不等式(CHSH不等式) …隠れた変数理論が満たすべき不等式 α4β2 α4β3 α1β2 -α1β3 2 本実験の目的は二つある。 1.量子力学の正しさを確認する。 量子力学を用いて = cos 2φ 量子力学の予言 αβ を確認、Bellの不等式の破れを見る 2.隠れた変数理論を否定する。 量子力学を用いずとも Bellの不等式の左辺>2 となる場合があることを測定により示す ・・・・・・検討中 目的1に関して: φ1=0, φ2=3π/8, φ3=π/8, φ4=π/4とした時、 理論は Bellの不等式の左辺=2 √2 を出し、Bellの不等式は否定される。 実験においては、αβの平均はーk cos(2φ)として ちょうどk=1とはならないがk>1/√2 であれば、量子 力学と隠れた変数理論が相容れないことが示され る。本実験の目的はこのkの値を測定することであ る。 2.実験の原理 ポジトロニウム線源からでる2光子をそれぞれコンプトン散乱させ、 異なる方向に設置したディテクタで検出される確率を求める。 量子力学 →検出器D1,D2が同時に光子を検出する率Rate[s^-1] Rate ∝ P(π1//ε1){P(π2//ε2)|π1//ε1Δσ(θ,0) P(π2⊥ε2)|π1//ε1Δσ(θ,π/2)} + P(π1⊥ε1){P(π2//ε2)|π1⊥ε1Δσ(θ,0) P(π2⊥ε2)|π1⊥ε1Δσ(θ,π/2)} θ=π/ 3 とすると Rate ∝ 1 – k・0.28 cos(2 φ) となる。 このRateを計ればkの値が分かる。 3.実験の概要 •Calibration • 実験装置に用いる2つのNaIシンチレーター 実験環境におけるCalibrationを行った。 線源として 137Cs、60Co、22Na を用い、ま たペデスタルの値もCalibrationに考慮した。 そのCalibrationで得られたグラフ(近似式) からθ=π/3の時の散乱光子Energy とADCchannelとの対応を見て光電ピーク の位置をチェックした。 •Rateの測定 • 2つの散乱面の成す角φ[rad]に対して、0~π までπ/6刻みに7points、さらにπ/4での計測も 加えて計8pointsでの計測を行った。 • 4つのシンチレーターのコインシデンスを取り、 各φについて750個の観測を行い、ノイズを省 くためにそのうちNaIで観測される光電ピーク の部分のみでの有効数を考え、 Rate=(有効数)/(計測に要した時間) として計算を行った。 4.結果 • キャリブレーションの結果 NaI(下) Cs キャリブレーションのグラフ NaI(下) • NaI(上) φ=π/3 におけるNaIのEnergy-Eventsグラフ NaI(下) NaI(上) Rateのグラフ 5.結論と考察 • 結論 – Rateのグラフから、隠れた変数理論よりも量子 力学のほうに値が明らかに近い。 ・・・Fittingの結果、χ2/6=1.94で k=0.928 (>1/√2) となった。 よって(量子力学の予言が確認され、それは) Bellの不等式とは相容れない。 • 考察 – Rateのグラフ – Rateのグラフにおいて、0~πとπ~2πの計測結 果が対称的でない。これは恐らくセッティングの 影響であろうが、シミュレーションも含めて十分な 考察が出来ていない。 6.今後の予定 • 誤差を少なくする。 – 計数を多くして統計的誤差を小さくする。 – プラスチックシンチレーターからNaIシンチレーターへの 散乱角の広がりを防ぐためにシンチレーター間の距離 を大きくする。 • シミュレーションを行い、得られた実験データの正 しさを確認する。 • 今回の実験で現れた0~πとπ~2πの非対称性 の具体的な評価。
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