承前 実験装置 ポジトロニウム線源として、22Naを使用。 実験装置を理解するためにまず光子と電 子の相互作用を考える・・・ 物質内の光子と電子の相互作用 主な相互作用は3つ、 ・光電効果 (Photoelectoric Absorption) ・コンプトン散乱 (Incoherent Scattering) ・2電子相互作用 (Pair Production) +{・ レイリー散乱 (Coherent Scattering) } 減衰係数 光子は物質中で散乱されずに進める確率は その進行距離に対して指数的に減衰する。 その確率が 1/e になる距離を減衰長と呼び、 この逆数を減衰係数と呼ぶ。 減衰係数は散乱の起こりやすさを表す指標で あり、これは散乱断面積に比例することから、 これとほぼ同じ意味にとることができる。 それぞれの相互作用の起こりやすさは 物質、及び光子の入射エネルギー により異なる。 次のグラフは 横軸:入射光子のエネルギー 縦軸:減衰係数 として、それぞれの相互作用の減衰係数を表し たグラフである。 NaI の減衰係数 減 衰 係 数 入射光子のエネルギー 散乱体 (有機散乱体) の減衰係数 減 衰 係 数 入射光子のエネルギー 実験結果 以上を踏まえて、以下の流れで実験結 果を示す。 Calibrationの説明とその結果 本実験の結果 Rateの説明とその結果 •Calibration • フォトマルから出力されるのは電流パルス をデジタル化した数値(ADCchannel)のみ であり、これを観測された光子のエネルギー に変換する操作が必要である。 このため に、ADCchannelとエネルギーを対応させ るデータを取る必要があるので Calibrationというものを行う必要がある。 • 具体的には、実験装置に用いる2つのNaIシ ンチレーター実験環境におけるADCchannel をとった。 線源として 137Cs、60Co、22Na を用い、またペデスタルの値もCalibrationに 考慮した。それぞれの線源から出るγ線のエ ネルギーが既知のものであるので、これに よってADCchannelとエネルギーを対応でき る。この対応をとって、ADCchannelとエネル ギーの関係を求めることをCalibrationという。 • キャリブレーションの結果 NaI(下) Cs • キャリブレーションの結果 NaI(上) Cs キャリブレーションのグラフ NaI(下) • NaI(上) φ=π/2 におけるNaIのEnergy-Eventsグラフ NaI(下) NaI(下)Cutting NaI(上) NaI(上)Cutting ・考察 プラスチックシンチレータでコンプトン散乱し たときの光子の散乱角θとすると、散乱後の 光子のエネルギーは、 E’ = E/(2-cosθ) E ; 散乱前の光子のエネルギー E’ ; 散乱後の光子のエネルギー と表される。 ・考察 シンチレータに大きさがないと考えたとき、 散乱角60°方向に飛ぶ光子のエネルギー は、 E = 340.7 [keV] であるが、実験結果では 上: 363.0 [keV] 下: 359.7 [keV] となっている。 シミュレーションについて 実験の精度をよりよく知るために、今回の実験 を、現実と同じ実験環境でコンピュータ上で計 算を行った。 ・考察 シンチレータの大きさを考慮に入れたときの コンピュータ・シミュレーションの結果は、 E = 347.4 [keV] であり、理論値よりは少しエネルギーが大きく なっている。 •Rateの測定 • 2つの散乱面の成す角φ[rad]に対して、0~πまで π/6刻みに7points、さらにπ/4、3π/4での計測も加 えて計9pointsでの計測を行った。 • 4つのシンチレーターのコインシデンスを取り、各φ について約2000個の観測を行い(1pointにつき約 45時間かかった)、ノイズを省くためにそのうちNaIで 観測される光電ピークの部分のみでの有効数を考 え、 Rate=(有効数)/(計測に要した時間) として計算を行った。 Rateのグラフ エラーバー :誤差の大きさ (標準偏差) Rateのグラフ χ2 /7=0.525 k = 0.891 >1/√2 Rateのグラフ 量子力学 コンピュータ・ シミュレーション 実験結果 隠れた変数理 論で許される 最大値 • 考察 実験結果は、ベルの不等式の許すkの値 の範囲(k<1/√2)よりも大きくなっており、 隠れた変数理論が予言するよりも強い相 関を示している。 また、量子力学の予言する相関よりも弱く なっているが、これは観測装置であるシン チレータの大きさによって角度の広がりが 生じるためである。 これはコンピュータシミュレーションの結 果からも正しいと考えられる。 Fin.
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