非平衡プラズマとは

宇宙X線観測とプラズマ診断
京大理 小山勝二
X線天文が解明した物理?
宇宙は極限環境の実験室 しかし複雑、多様故に、純粋
な科学情報を抽出しにくい
 地上で検証された物理法則を応用
Q: 地上では解明できない物理法則はなんであったか?
(いまや当たり前と思っているかもしれないが)
超新星残骸、楕円銀河、銀河団に大規模高温プラズマが
あったこと自体、X線天文学のみが発見した重要な事実
銀河団プラズマ:
宇宙バリオンの最大の容器 宇宙大規模構造、宇宙進化
銀河団プラズマが果たした(果たす)宇宙物理学的
意味は計り知れない
そこで一言だけ
宇宙進化(カオスからコスモスへ)と銀河団
WMAP-Plank衛星のデータ
137億年前 の姿
高速(高温)電子と電磁波との
相互作用
現在の姿
バリオン
音響振動
の予言
宇宙物理というより、基礎物理学という視点から
S-Z 効果
銀河団
銀河
超新星残骸プラズマ:
星の進化の最終段階と重元素起源
プラズマ診断学
(1) X線天文は非平衡プラズマ物理の基礎データの提供した。
非平衡プラズマとは:
(一言でプラズマ温度というが!)
電子温度 (Te)、イオン温度 (Ti)、電離温度(Tz) が異なるプラズマ
Te=Tz :
Te> Tz :
Te< Tz:
電離平衡プラズマ
電離進行プラズマ
再結合プラズマ
(2) X線天文は「非平衡」に進む物理:フェルミ加速機構の基礎デー
タを提供する。
非平衡プラズマ=時間スケール
宇宙X線プラズマ: Te=1 keV, n=1/cc (超新星残骸)
te-e = le/<ve>
1010 s
n-1 Te1.5
tp-p = (mp/me)0.5 te-e
4 ×1011 s
n-1 Te1.5
te-p = (mp/me) te-e
2 ×1013 s
n-1 Te1.5
tionization
1013 s
n-1
tcooling
4 ×1017 s
n-1 Te0.5
tsound
6 ×1010 s (1pc)
l Te-0.5
tcond
6 ×109 s (1pc)
l2 n Te-2.5
緩和時間=103--105 year  μ秒– m秒 (実験室)
実験室で平衡プラズマを作り制御するのは容易でない
= 実際のプラズマは非平衡状態
加熱源付近は電離進行プラズマ
壁付近は低温に冷やされるから、再結合プラズマ?
加熱が切れるとプラズマは冷える: 複雑な過渡現象 最近の研究
このプラズマの状態を無接触で知りたい=X線プラズマ診断
短時間(μ秒– m秒)の過渡現象の測定  困難
実際、スペクトル線は電離・励起過程が主な場合が多く、
再結合プラズマを明瞭に示す例は炭素イオン一例のみ?
地上プラズマの例 (核融合研 LHD)
温度:密度1014 - 13 cm-3、
 緩和時間= μ秒– m秒 (宇宙 103--105 year)
サイズ~102 cm
 継続時間= μ秒– m秒 (宇宙 103--104 year)
実際には分のorder (磁場などの効果)
X線天文の成果=超新星残骸高温プラズマの2形態
Shell-Type
Mixed Morphology
SN1006
Tycho (1572)
Kepler (1604)
Cas A (~1700?)
IC443
W28 (?)
W44 (?)
日本のグループも大きく寄与してきた超新星残骸のプラズマ
進化の標準モデル(Shell type)
衝撃波通過
原子(イオン)、電子の加熱
イオン温度 Ti
mv2 = 3kT
エネルギー輸送
電子温度 Te
十分時間がたっていな
い (数万年以下)
( nt <1012cm-3s)
常に Te > Tz
Ionizing Plasma
(電離進行プラズマ)
電離温度 Tz
時間
ところが、 いくつかのMixed Morphology SNRs では
Te <Tz :再結合プラズマ であった。
(日本発)
再結合プラズマ
自由電子の基底状態への遷移+高励起状態から下位へカスケード
普通のプラスマ
励起状態
基底状態
再結合プラズマ
電子温度
Astro-Hで非平衡プラズマ学は完成するだう。
:ほとんどの基礎データを提供する
第一励起状態
カスケードライン
スピン上向きは
1P 許容線以外へ
1
基底状態
SN1006
超高エネルギー宇宙線の生成
:Fermi加速
2003-4-09
2012-4-23
= 0.6 arcsec/yr
(v=6000 km/s)
動く壁の間
で「ピンポン玉
が跳ね返る
玉はスピード
を増す
shock
初期のrarefaction
Shell-likeでの通常のDiffusive
高密度のCSMで Te=Tz 低密度のISMへbreak out
Shock断熱膨張で
Accelerationではエネル
Te 小
ギーはKnee
までいかない。
○ 衝撃波の速度が急上昇
(通常の描像より速度大)。
(宇宙線加速エネルギー問題)
短時間で高エネルギー
に(速度の2乗に比例する)。
MM-SNRのNew Scenario
 ISMの低密度状態では熱的粒子とのCoulomb衝突が抑え
られるので、加速された粒子はさらに加速されやすくなる
でこの問題が解決するか ? 。
log r
(pc)
ISM
n ~小
1
0
CSM
n ~大
log t (year)
Itoh & Masai
Astro-Hは高温プラズマのイオン温度(Ti)を初めて
決定するだろう。
また非熱的粒子の運動を正確に決める
=超新星残骸のEnergeticsを解明する
超新星残骸の全エネルギーは1051 erg
現在は 電子温度のみを計測している。
 電子の総エネルギー (~1049 erg)
(99% はダークエネルギー?)
これはイオンの熱エネルギーか(Ti) ?
te-p = (mp/me) te-e = 2 1013 s
あるいは: 非熱的粒子エネルギーか
結語
極限状態: 時間が引き延ばされるので
非平衡のプラズマ物理の基礎現象が観測できた
プラズマ診断学の基礎をあたえた。
 巨大時空に巨大なエネルギーの注入 「非平衡」に
進む物理の実証例を与えた。
フェルミ加速による超高エネルギー宇宙線の起源。
 TeV, GeV ガンマ線天文の主要な研究テーマを
提供した。