心電図勉強会 第2回 リズムの異常 鉄門癌の会勉強会 担当:候 聡志 今日の目標 リズムの異常を呈する心電図が読める。 目次 Ⅰ.前回の復習 Ⅱ.徐脈性不整脈 Ⅲ.頻脈性不整脈 Ⅳ.期外収縮 前回の復習(その1) 心電図とは、心臓の電気的活動を記録した ものである。 正確には、電位差を記録する。 興奮が向かってくる場合、心電図は+。 波にはP、Q、R、S、Tといった名前が付けら れている。 前回の復習(PQRST) R P波:心房興奮 QRS波:心室興奮 ST部:心室興奮極期 T波:心室興奮の消退 P T Q S 前回の復習(その2) 心電図には12の誘導(電位差の測定方法)が ある。 誘導には四肢誘導と胸部誘導がある。 四肢誘導にはⅠ、Ⅱ、Ⅲ、aVR、aVL、aVFが ある。 胸部誘導にはV1~V6がある。 前回の復習(その3) 調律、心拍数 →PとQRSが対応、P波はⅠ、Ⅱで正 →心拍数は60(50)~100/分 P波 →Ⅱで幅3mm(0.12秒)未満、高さ2.5mm未満 →V1で陰性部分0.04mm・秒未満 前回の復習(その4) PQ時間 →0.12秒以上、0.20秒(or 0.22秒)未満 QRS群 →電気軸が正常、異常Q波がない。 →QRS時間<0.10秒 →R波の増高が正常 →SV1+RV5 < 35mm RV5 < 26mm、 (RV6 < 20mm) 前回の復習(その5) ST-T →STの上昇、下降がない。 →T波はⅠ、Ⅱ、V3~V6で陽性 高さは12mm未満かつ R波の1/10以上 QT時間 →T波の終点がRRの1/2を越えない。 徐脈を呈する心電図 徐脈って心拍数がいくつまでだった? 心拍数が60(or 50)/分未満です! 徐脈にはどんなものがあるの? 洞徐脈 洞停止 洞房ブロック 2:1または第Ⅲ度房室ブロック などなど・・・ 洞徐脈 洞結節からの刺激発生頻度が低下したために 心拍数が減少した状態を指す。 徐脈以外に異常がない。 洞徐脈の判定 心拍数60(or 50)/分未満 P波がⅠ,Ⅱ(Ⅲ,aVF)で陽性→洞性のP波 同一のP-QRS関係が続く 刺激伝導系 → → → → → → 洞結節 心房 房室結節 His束 右脚・左脚 プルキンエ線維 心室 四肢誘導 aVL aVR Ⅰ Ⅲ aVF Ⅱ 洞徐脈 P波がⅠ,Ⅱで陽性 Ⅰ 心拍数が50/分未満 30015010075 60 50 43 38 Ⅱ 同一のP-QRS関係が続く 洞停止(sinus arrest) 洞結節の刺激発生が一時的に欠如した状態。 → P波がQRSと共に脱落する。 延長したPP間隔は他の整数倍にならない。 洞停止の判定 P波を欠くRR間隔の延長 延長したPP間隔が前後のPP間隔の整数倍 にならない(洞房ブロックとの鑑別点) 刺激伝導系 → → → → → → 洞結節 心房 房室結節 His束 右脚・左脚 プルキンエ線維 心室 洞停止 Ⅰ P波を欠くRR間隔の延長 Ⅱ PP間隔の延長は整数倍でない 洞房ブロック(SA block) 洞結節の刺激生成は保たれているものの、 洞結節から心房への刺激伝導が障害されて いる状態のことである。 Ⅰ度:洞房伝導時間の延長のみ Ⅱ度:間欠的に洞房伝導が途絶する (Wenckebach型,MobitzⅡ型) Ⅲ度:完全に途絶 洞房ブロックの詳細 (まずは分かりやすいものから…) 洞房ブロック(MobitzⅡ型Ⅱ度) 洞結節と心房の間の刺激伝導障害。 突然洞房伝導が欠落する。(→突然P-QRSが 欠落する。ちなみにWenckebach型では徐々 に伝導時間が延長する。) 延長したPP間隔は他の整数倍。 MobitzⅡ型洞房ブロックの判定 P波がなく、RRが延長 延長したPP間隔は前後のPP間隔の整数倍 刺激伝導系 → → → → → → 洞結節 心房 房室結節 His束 右脚・左脚 プルキンエ線維 心室 洞房ブロック(MobitzⅡ型Ⅱ度) Ⅰ P波を欠くRR間隔の延長 Ⅱ PP間隔の延長は整数倍 洞房ブロックと洞停止を見分けるには・・・ 洞房ブロックでは延長したPP間隔が前後のPP 間隔の整数倍だが、洞停止ではそうではない。 洞房ブロックは大体~3秒くらいで復活するが、 洞停止では何時復活するかは分からない。 ちなみに・・・ 洞徐脈,洞停止,洞房ブロックなどの洞結節機 能不全に関係した不整脈を全てまとめて洞不 全症候群(sick sinus syndrome:SSS)という。 房室ブロック(AV block) 房室伝導系の障害で、心房から心室への興奮 伝導が遅延,途絶する状態。 一過性:虚血,心筋炎,薬剤性,迷走神経過緊張,心房頻拍,急性リウマチ熱 慢性:変性,心筋症,冠動脈疾患,石灰化弁,心筋炎,膠原病,特発性 Ⅰ度:房室伝導時間の延長(PQ時間≧0.20秒) Ⅱ度:心室への興奮伝導が間欠的に脱落する (Wenckebach型,MobitzⅡ型) Ⅲ度:房室伝導が完全に途絶する 刺激伝導系 → → → → → → 洞結節 心房 房室結節 His束 右脚・左脚 プルキンエ線維 心室 2:1房室ブロック(<Ⅱ型) 房室ブロックとは、房室間の伝導経路に障害 が生じた状態。 房室伝導比が2:1になる場合を2:1房室ブロック という。(なお、房室伝導比が2:1より低い場合 を高度房室ブロックという) 2:1房室ブロックの判定 P波は一定間隔 P波の1つおきにQRS脱落 2:1房室ブロック Ⅰ Ⅱ 一つおきにQRS脱落 P波は一定間隔 第Ⅲ度房室ブロック 第Ⅲ度房室ブロックとは、心房から心室への興奮 伝導が完全に途絶した状態。 心房と心室の興奮が無関係に生じる。 第Ⅲ度房室ブロックの判定 P波とQRSが無関係 P波もQRSも規則的(P波もQRSも一定の間隔 で出現するため、PP間隔,RR間隔は一定) PP間隔よりRR間隔の方が長い 第Ⅲ度房室ブロック Ⅰ Ⅱ P波とQRSが無関係 P波もQRSも規則的 刺激伝導系 → → → → → → 洞結節 心房 房室結節 His束 右脚・左脚 プルキンエ線維 心室 第2章のまとめ 徐脈を呈する主な心電図 洞徐脈 洞停止 洞房ブロック 2:1房室ブロック 第Ⅲ度房室ブロック 頻脈を呈する心電図 頻脈は心拍数がいくつ以上だった? 100/分以上です。 頻脈にはどんなものがあるの? 洞頻脈 心房粗動 心房細動 心室頻拍 発作性上室性頻拍(→第4回で説明) などなど・・・ 洞頻脈(sinus tachycardia) 洞頻脈とは、洞結節からの刺激発生頻度が 増加した状態のこと。 頻脈以外に異常がない。 洞頻脈の判定 心拍数100/分以上 P波がⅠ,Ⅱで陽性→洞性のP波 同一のP-QRS関係が続く 洞頻脈 P波がⅠ,Ⅱで陽性 Ⅰ 300 150 100 心拍数が100/分以上 Ⅱ 同一のP-QRS関係が続く 心房粗動(atrial flutter:AFL) 興奮が右房内を反時計(時計)方向に旋回。 心房の興奮頻度は250~350/分。 心房粗動の判定 F波(鋸歯状の波)が生じる (Ⅱ、Ⅲ、aVFで特に 大きく記録される) 房室伝導比は2:1、4:1が多い (2:1伝導のときに頻脈になりやすい) 心房粗動 心房粗動 Ⅰ Ⅲ Ⅱ QRSは2:1で伝導 aVF Ⅱ、Ⅲ、aVFでF波がある 心房細動(atrial fibrillation:AF) 心房細動とは、心房全体が統率のない興奮に 陥った状態である。 局所的に心房の興奮は350~700/分に至る。 心房細動の判定 P波がなく f 波がある RR間隔が不規則 塞栓症に注意してね! 心房細動 Multiple wavelet reentry 説 期外収縮によってリエントリが生じて、 それが持続して旋回するというマイクロ リエントリが心房内に多数発生する。 Spiral reentry 説 単一の渦巻き波が興奮可能な領域を 彷徨い歩くような運動(meandering) をしながら連続的に変化し、一次的に 分裂したり新しい興奮波を作り出したり することで心房細動を維持するという 説。 近年この説の支持が増えている。 超高齢社会とAF 如何に慢性化を防ぐか? 無症候性AFの問題 合併症の問題 治療は? 略語 AⅡ:アンジオテンシンⅡ SAC:進展活性化チャネル Erk:extracellular signalregurated kinase 心房細動 RR間隔が不規則 Ⅱ P波がなくf波がある V1 ← 心房粗動 心房細動 → 心室頻拍(ventricular tachycardia:VT) 心室頻拍とは、心室内で100~250/分の反復 性の興奮が生じた状態である。 興奮が心室筋から生じるため、伝導速度が 遅くなり、QRS幅が広い。 心室頻拍の判定 心拍数が100/分以上 QRS幅が3.5mm(0.14秒)以上 脚ブロックと異なる波形 → 説明は次回 心室頻拍のタイプ 心室頻拍の各タイプの鑑別 心室頻拍 QRS幅が0.14秒以上 Ⅱ 300 150 心拍数が100/分以上 第3章のまとめ 頻脈を呈する主な心電図 洞頻脈 心房粗動 心房細動 心室頻拍 発作性上室性頻拍 → 第4回で説明 期外収縮とは 期外収縮って何? 本来の収縮より早期に認められる収縮です。 期外収縮には何があるの? 上室性期外収縮 心室性期外収縮 の2つに大きく分類されます。 上室性期外収縮 (supraventricular premature contraction:SVPC) 予測される周期より早期に、洞結節~房室 接合部から異所性の興奮が発生した状態。 実は心房性期外収縮(PAC)と房室接合部 性期外収縮の総称である。 上室性期外収縮の判定 予測周期より早期にP’-QRS-Tが出現 P’の形が通常(洞調律のとき)とは異なる QRSの形は通常とほぼ同じ 説明図(PACの場合) 上室性期外収縮 Ⅱ 予測周期より早期にP’-QRS-T出現 P’の形が通常と異なる (正常時とは伝わる方向が逆) QRSの形は正常 心室性期外収縮(PVC) 予測される周期より早期に、His束遠位部~ 心室から興奮が発生した状態。 興奮は伝導速度が遅い心筋を伝わっていくた め、心室内伝導に時間がかかる。また、正常 な刺激伝導系を通っていないため、再分極が 脱分極と同じ方向に進む。 心室性期外収縮の判定 予測周期より早期にQRS出現 先行P波がない QRS幅が3mm(0.12秒)以上 T波がQRSと逆向き 説明図(PVC) 心室性期外収縮 予測周期より早期にQRS出現 先行P波がない QRS幅が0.12秒以上 T波がQRSと逆向き ※ 心室内変行伝導(aberrant conduction) 上室性不整脈に伴って見られる一拍もしくは数拍 のwide QRS群のことであり、その形からPVCと 間違われやすい。 心室内伝導系の不応期が右脚>左脚前枝>左脚 後枝と不均一であるため、刺激が伝導系の生理 的不応期に遭遇して生じる機能的な伝導障害で ある。 長いRR間隔の次に早いタイミングで入ったQRS に生じやすく、多くは右脚ブロック型であり、初期 ベクトルがほぼ全ての誘導で正常QRSと同様と なることが特徴である。 心室内変更伝導を伴う上室期外収縮 心室内に不応期が残っているため、心室内 の伝導が遷延してQRSが幅広くなる 判定 先行するP’波がある QRSの立ち上がり方向は通常と同じ。 (↑心室内への伝導は通常の経路と同じなので) ※ Blocked SVPC 洞停止や洞房ブロック,(Ⅱ度)房室ブロックなど と間違えやすい 上室期外収縮によって心房は興奮しても、房室 伝導の不応期によって興奮が心室の方に伝わ らない 正常なP-QRSが予定通りに出現しないが、予定 よりも早期に出現する異所性P’波があることが 特徴。 第4章のまとめ 期外収縮とは、本来の周期より早期に認めら れる収縮。 期外収縮の種類 上室性期外収縮 心室性期外収縮 期外収縮のタイプを 表す用語→ 参考文献 去年度「癌の会心電図勉強会」スライド http://www.cardiac.jp/ 心電図の読み方パーフェクトマニュアル(羊土社) 心電図のABC(日本医師会発行) 心電図を学ぶ人のために(医学書院) わかりやすい心電図の読み方(Medical View) 不整脈 ベッドサイド診断から非薬物治療まで (医学書院) 参照した論文:数知れず・・・
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