日語文法研究 (大学院)

日本語學文獻選讀
(大学院)
3月22日(月)~
担当 神作晋一
1
音声と音韻
ここでは、音声学と音韻論について
お話しします。
2
音声と音韻 P.24~40






1 言語音
2 音声学と音韻論
3 音声器官
4 母音と子音
5 音韻論
6 韻律(アクセントとイントネーショ
ン),プロミネンス・ポーズ
3
1 言語音
4
言語は音である

文字は2次的なもの。


文字を持たない(文字が決まらない)言語が数
多く存在。
言語音


人が意思疎通(コミュニケーション)に発するも
の。
小さく分解でき、別の組み合わせを作ることが
できる。
5
2 音声学と音韻論
音声学:phonetics
音韻論:phonology
6
言語音の研究

文系的なもの


物理学・工学


調音音声学、音韻論
音響音声学
医学

聴覚音声学、言語聴覚士
7
音声学と音韻論

音声学:
 音声器官のどの部分をどのように使って、
どのような音が作り出されるのかを物理的、
現実的な事実として捉える。
 ひとつの言語のみならず、あらゆる言語を
対象とすることができる。
 音声学的にとらえた音の最小単位を単音
という。
 音声学の分野には、調音音声学・聴覚音
声学・音響音声学がある。
8
音声学と音韻論

音韻論:
 ある言語で、音声学的に捉えられた音の
異なりを、「意味の区別に役立つか否か」
という観点から捉える。
 この観点は個別の言語のみに有効であり、
この点が音声学と異なる。
 音韻論的にとらえた音の最小単位を音素
という。
9
音声学と音韻論
観点
多言語
最小単位
音声学 物理的・現実的 汎用的
単音
音韻論 意味の区別
音素
個別的
10
3 音声器官
11
音声器官

音声器官


調音器官


呼吸器官、摂食器官
さまざまな異なった音を作り出すための器官
→次のスライドへ
12
音声器官
13
4 母音と子音






4-1
4-2
4-3
4-4
4-5
4-6
音声記号・音声表記
単音
母音
子音
五十音図の音声表記
音声の音響学的研究
14
4-1 音声記号・音声表記

音声記号(音声字母)



目に見えるようにするため
国際音声字母
 (International Phonetic Alphabet
略称I.P.A)
音声表記


精密表記 アルファベット+記号
簡略表記 アルファベットのみ
15
4-2 単音

単音:音声学的にとらえた音の最小単位
呼気の流れ
の妨げ→
有
若干有
無
声帯振動
有
有声子音
半母音
母音
声帯振動
無
無声子音
(無声化母音)
16
4-2 単音

声帯:図の上が喉仏(前)↑
17
4-3 母音




現代日本語にはア・イ・ウ・エオの5つがある
「口の開き」と「舌の位置」(と唇の丸め)で決
定。
母音三角形
基本母音

(イギリス:D・ジョーンズ)
18
19
4-3 母音


日本語の母音の特徴
口の開き具合(大=広,小=狭)で三段階


舌の前後位置で三段階



「狭母音イ・ウ,半広(半狭)母音エ・オ,広母
音ア」,
「前舌母音イエ,中舌母音ア、後舌母音オウ
ウは非円唇母音[ɯ]で、オよりも前
母音の無声化が起こることも

草(くさ) 舌(した) 母(はは) です
20
4-3 母音
21
4-4 子音



音声器官の中でなんらかの妨げがある。
調音点:妨げの加わる(音の出る)ところ
調音法:妨げの(音の出る)方法
22
4-4 子音
23
4-4 子音

日本語の子音調音法
 破裂音…閉鎖音とも呼ばれ,溜めておいた
呼気を一気に放出する
 摩擦音…調音点で呼気の通り道を狭め,そ
の際聞から呼気を通す
 破擦音…破裂の直後に摩擦を伴う
 弾き音…舌先を軽く一度弾く
 鼻 音…呼気口腔ではなく鼻腔を通して出す
24
4-5 五十音図の音声表記(日本
語の音節)
25
音節





単独、または複数の単音の集合
「それ自身に切れ目がなく、その前後に切
れ目の認められる単音の連続または単独
の音」(服部四郎(1951))
母音 V vowel
子音 C consonant
半母音 S Semivowel
26
音節の組み合わせ
単独
+撥音 +促音 +長音
V構造
あいうえお
あん
いっ
ええ
CV構造
かさたな
かん
たっ
こお
CSV構造 きゃ、しゃ
ちゃん しゃっ
よお
SV構造
やん
わあ
やゆよわ
やっ
27
4-6 音声の音響学的研究



音響分析
聞こえの違いを視覚的に提示
サウンドスペクトログラフ

(音の周波数など音声の物理的特徴を表示す
るもの)
28
4-6 音声の音響学的研究
29
5 音韻論



5-1 音素と拍
5-2 拍と音節
5-3 異音と相補分布
30
5 音韻論

最小対立(ミニマルペア minimal pair)





いか 烏賊
いけ 池
いき 息
いし 意志
「秋」「~一番すきなのは秋」


[ika]
[ike]
[iki]
[isi]
音は違うが意味は同じ
音声学的観察とは異なる音による意味の
区別
31
5-1 音素と拍




音素:意味を区別する一つの音の単位
音韻表記:/a/ /e/ /i/ cf音声[]
音の単位 拍(モーラ) ※モジュール
俳句・短歌など かな一文字に相当
32
5-1 音素と拍







Ⅴ:母音音素のみ…ア,イ,ウ,エ,オ
CV:子音音素+母音音素…カ,ガ,サ,ザ,夕,
ダ,ハ,バ,パ等
SV:半母音音素+母音音素…ヤ ,ユ,ヨ,ワ
CSV:子音音素+半母音音素+母音音素…ヒヤ,
ビャ,ビャ等
R:特殊音素(引き音素)のみ…アー、イー、ウー、
エー、オー
N:特殊音素(撥音素)のみ…ン
Q:特殊音素(促音素)のみ…ッ
33
5-1 音素と拍
34
5-2 拍と音節


拍:特殊拍を1つと見る
音節:特殊拍は前の拍の付属(あわせて
一つ)
35
5-3 異音と相補分布

異音:同じ音素でも異なるもの




自由異音:無作為に
条件異音:特定の条件、後続の音で決まる
相補分布(互いに補う)になる
例:撥音の例
36
5-3 異音と相補分布
37
6 韻律(アクセント・イントネー
ション)、プロミネンス・ポーズ

アクセント:音の高低変化で語の意味を区別


「雨あめ」「飴あめ」 赤を高く発音
イントネーション:音の高低変化で文の意味を
区別


今日は雨↘(肯定文)
今日は雨↗(疑問文)
38
6-1 アクセント


アクセントとは,同一の体系を有する言語
(方言)の中で,個々の単位(=アクセント
論的単位。日本語では,語・文節・あるい
は文節の連合体など)について,社会的な
慣習としてきまっている,音声の相対的な
高低,あるいは強弱の関係である。
(国語学研究辞典)→日本語学研究辞典
39
6-1 アクセント

高さアクセント:音節間の相対的高低


強さアクセント:音節の強弱による


日本語
強調アクセントとも。英語、ドイツ語など
声調アクセント:音節内の高低変化

中国語、ベトナム語、タイ語
40
6-1 アクセント

高いところを「H」、低いとことを「L」と書くの
もある。
41
6-1 アクセント



弁別機能:同音語の意味を区別する働き
統語機能:語の切れ目を示す働き
Cf.無アクセント方言
ここではきものをぬいでください
履物はきもの 着物きもの
42
6-1 アクセント

複合語になるときなどアクセントが消えるこ
とがある。


低から高に変わることはある(橋)
高から低に変わることはなく、重要である(箸)
43
6-1 アクセント

高から低に変化する部分を(アクセントの)
滝といい,滝の直前に(アクセント)核があ
るという。



「橋」ではシとガの間に滝が,シにアクセント核
があり,
「箸」ではハとシの間に滝が、ハにアクセント核
がある。
「端」は、滝、アクセント核ともにない。
44
6-1 アクセント




平板型:(へいばん~、核なし)
頭高型:(あたまだか~、語の最初の拍に核)
中高型:(なかだか~、語頭・語尾以外に核)
尾高型:(おだか~、語の最後の拍に核)
45
6-1 アクセント

日本語アクセントの特徴



①最初の相と二番目の拍は、高低が異なる(表8
参照)。すなわち,最初の拍が高ければ二番目の
拍は低く,最初の拍が低ければ二番目の拍は高く
なる。※一拍目と二拍目の高低の相違
②ひとつのアクセント単位内(語)には,複数のア
クセント核は存在しない。一度高から低に変化す
れば再び高に変化することはない。※一度下がっ
たら上がらない。
③n拍語には「n+1」種類のアクセント型が(たとえ
ば2相語には3種類)ある。※「n拍+1」種類のア
クセント
46
6-1 アクセント
47
6-1 アクセント
48
6-2 イントネーション

文末や文節末を昇降させることで、肯定・疑
問・断定・命令・問い返しなどを表現するもの。



明日は行く …意思表現「明日は行くよ」
明日は行く↗…疑問表現「明日は行くの?」
 アクセントの高低の差が大きくなる。○●
 雨●○
\/
明日は行く↘…命令表現「明日は行きなさい!」
 行く
/\
49
6-3 プロミネンス(卓立)


特に強調したい部分をアクセントとは別に
高く言ったり、強めて言う場合。
例:「明日学校へ行く」


「いつ学校へ行くの?」→ 「明日学校へ行く」
「明日どこへ行くの?」 →「明日学校へ行く」
50
6-4 ポーズ

発話におけるごく短い休止時間


文法的に異なった解釈を可能にする
例「ピロと①ケメ②ゆかりの地を③旅行する」



①「ピロと」の後…
 私はピロと「ケメゆかりの地を旅行する。
②「ケメ」の後
 ピロとケメが「(何かに)ゆかりのある地を旅行
する。
③「地を」の後
 私は「ピロとケメにゆかりのある地」を旅行する。
51
アンケート結果(点数は逆)
學號
姓名
音声 語彙 意味 文法 文体 文字 敬語 方言 教育 社会 心理 対照 文化
M96E0213 高逸芸
1
2
5
3
2
2
6
7
28
M97E0101 李靜茹
0
M97E0103 許慧玟
0
M97E0219 歐志豪
1
5
2
3
7
4
6
28
M97E0226 葉唯毅
1
2
4
7
5
6
3
28
M97E0302 王思淳
3
6
2
7
1
5
2
2
28
M98E0101 黃恩真
1
4
2
5
7
3
6
28
M98E0102 姚佩伶
2
3
7
1
5
6
4
28
M98E0105 許芳瑋
5
1
6
4
6
3
7
32
M98E0106 蔡佳樺
7
1
2
3
4
6
5
28
M98E0201 李郁珍
3
2
5
4
7
6
1
28
M98E0202 林建委
4
6
3
1
5
2
7
28
M98E0203 林偌家
4
1
6
3
5
7
2
28
M98E0207 賴約如
7
2
3
4
5
1
6
28
M98E0221 郭麗琴
6
3
5
1
7
2
4
28
M98E0224 吳本君子 3
2
4
5
1
6
7
28
M98E0225 杜氏明水 7
3
6
5
4
2
1
28
996J0902 黄韻璇
1
2
4
3
5
7
6
28
合計
26
34
37
49
36
25
35
20
25
35
47
46
37
データの数 8
11
11
11
10
6
9
5
7
9
11
9
7
データ間の平均 3.25 3.09 3.36 4.45 3.6 4.17 3.89
4 3.57 3.89 4.27 5.11 5.29
52
取り上げる項目




音声と音韻
文法/文章・文体
敬語/社会言語学
語彙/意味


集中講義 斉藤倫明(東北大学)
語彙
53
連絡事項

3/23(二)のこと
54
今後の予定
2月22日
3月1日
3月8日
3月15日
3月22日
3月29日
4月5日
4月12日
4月19日
本日
通常授業
通常授業
通常授業
通常授業
通常授業
休講
通常授業
未定
ガイダンス
日本語学とは
日本語学とは
日本語学とは
音声と音韻
文法
55