私たちはどこに行こうとしているのか ー周産期医療のこれまでとこれからー

2011年7月3日
平成23年度大分県産科婦人科学会・大分県産婦人科医会総会
特別講演
私たちが学び続けていること
ー医療改革の方向性ー
北里大学医学部産婦人科教授
北里大学病院副院長
公益社団法人日本産科婦人科学会理事
医療改革委員会委員長・周産期委員会委員長
海野信也
Twitter: NobuyaUnno
Website: 「周産期医療の広場」 http://shusanki.org/
私たちの大切な組織 「公益社団法人 日本産科婦人科学会」
と 「公益社団法人 日本産婦人科医会」 の関係について
• 原則
– 『医学は学会、医療は医会』
– 『大学病院は学会、産科病院・診療所は医会』というくくりも?
– 国や医師会との関係では、医会が主で学会が従
• 2006年以降、医療崩壊が表面化、病院が弱体化し、学会で「産婦
人科医療提供体制検討委員会」を作ったころから話がおかしくなっ
てきた
• 政治的な働きかけの方法
– あるときは協力し、あるときは対立し、どうしたらうまくいくのか、模索
を続けている
• 学会の「医療改革委員会」と医会の「医療政策委員会」
産婦人科医療提供体制検討委員会・
医療改革委員会の守備範囲
• 医療資源不足
– 医師不足
– 産婦人科医減少
• 医療システム機能不全
• 危機対応・危機管理?
– 大野病院事件
– 看護師内診
– 救急「たらい回し」
• 未受診妊婦
• 母体救命救急
• 新型インフルエンザ
• 出産育児一時金直接支払制度問
題
• 東日本大震災
• 妊婦・小児 放射線被曝問題
• マスコミ対応
•
•
•
•
定期記者会見
随時直接対応
積極的情報提供
情報操作?
• 現場を支援する
• 政府・厚労省対策
– 診療報酬改定
– 政府予算
– 情報提供・共有
• 日産婦学会はぶれない。
「チーム水上」
•
水上尚典 北海道大学教授
– 日産婦学会・理事・ガイドライン産科篇作成委員会委員長
•
久保隆彦 国立成育医療研究センター医長
– 日本周産期新生児医学会・理事
•
斉藤 滋 富山大学教授
– 日産婦学会・周産期委員会前委員長・若手育成委員会委員長
•
中井章人 日本医科大学多摩永山病院教授
– 日本産婦人科医会・常務理事
•
海野信也 北里大学教授
– 日産婦学会・理事・医療改革委員会委員長・周産期委員会委
一晩でどんな文書も書
き上げる。
ガイドラインをまとめあ
げた柔軟性
強引な実行力
厚労省との密接なパイプ
抜群のacademic power
サマースクールを実現
抜群のデータ処理能力
医会の組織力を動員できる
調査・解析・提案 担当
産婦人科外ネットワーク
員長
– 周産期医療の崩壊を食い止める会・現場からの医療改革推進
協議会
55会・全国周産期医療(MFICU)連絡協議会・
日産婦産婦人科医療提供体制検討委員会・産科医療協議会
「ネットワーク」でいこう
• 組織は老化・劣化する
• 縦割り構造では危機に対応できない
• でも「組織力」は必要
• 組織は大切に
• 組織横断的な「ネットワーク」が状況を展開させる
• 通常ルートでだめなら、別ルートを使えばいい
– 携帯電話・メール
– マスコミ・政治家・役人
– Twitter、SNS
私たちはなにをやってきたか
わかる
調べる
実行する
わかってもらう
提案する
本講演の内容
• 【報告】出産育児一時金制度問題の交
渉過程について
• 新型インフルエンザ
• 母乳中放射性物質
• 東日本大震災 被災地支援
経
過
• 2008年3月25日 関係省庁連絡会議
– 医政局:「正常分娩に係る費用」調査 設置主体による病院
間の費用格差をはじめて公的に指摘
• 2008年8月22日 舛添厚生労働大臣
– 贅沢しなければ、手元に現金がなくても、安心して妊娠、出
産ができるよう、支給額、支払い方法について検討する
• 2008年11月27日 厚生労働省
– 出産育児一時金に関する意見交換会
• 2009年5月29日 日本産婦人科医会
– 会長以下の関係役員 直接支払制度実施要綱を了解
• 2009年9月29日 厚生労働省保険局長通知
– 今年度に限り、準備が整うまでの間、直接支払制度の適用
を猶予する
2008年11月27日 厚生労働省
出産育児一時金に関する意見交換会
• 妊婦健診の14回分出産育児一時金の補助
– 実施する方向が確認された。
• 都道府県ごとの分娩費用の実態に応じた出産育児
一時金の増額
– 地域格差設定はとりやめ
– 全国一律引き上げの方向
• 出産育児一時金の病院への直接支払
– 反対者はいなかったが、資金ショートの問題を日本助産師
会が指摘
– 舛添大臣の発言:タイムラグがある問題は、いかようにもそ
の間緊急融資するとか、それは幾らでも 技術的に2か月、
3か月のタイムラグについては、政治的な補修はそんなに
難しくないと思って おります。
直接支払制度についての経過
(厚労省保険局の説明)
• 2009年5月29日に、日本産婦人科医会の会長以下
関係役員に対して、実施要綱の内容を説明し了解を
いただくとともに、日本医師会、日本助産師会、健康
保険組合連合会、全国健康保険協会、全国市長会、
全国町村会、支払機関等関係者の合意を得て、同
日「実施要綱」を定め、併せて関係団体等に対して、
その周知をお願いしている。
• 2009年6月1日に、出産育児一時金の見直しに伴う、
独立行政法人福祉医療機構における低利融資を開
始。
直接支払制度についての経過
(厚労省保険局の説明)
• 2009年8月21日に、日本産婦人科医会より、直
接支払制度の3ヶ月程度の実施猶予について要
望を受ける。
• 2009年9月2日から3日にかけて、実施猶予の枠
組みを、厚生労働省から保険者等に対して説明。
• 保険者からは、実施猶予に反対はしないが、被
保険者に対する説明責任を果たすとともに、現
場の混乱を避けるため、直接支払制度に対応で
きない、又は対応する医療機関等の名称等を事
前に周知するべきとの意見
直接支払制度についての経過
• 2009年9月16日:鳩山内閣発足
– 日本のお産を守る会 署名運動開始
• 2009年9月17日:陳情の方法について民主党議員と
相談
• 2009年9月25日・28日:厚労省 出産育児一時金に
関する意見交換会 出席
• 2009年9月29日:長妻厚生労働大臣記者会見
• 2009年10月1日:直接支払および一部猶予の制度発
足
– 日本のお産を守る会の署名数 8289名
直接支払制度導入猶予が実現した要因
• 日本産婦人科医会の要望により、厚生労働省保険局側の
対応準備ができていた
• 日本のお産を守る会、および全国の産婦人科医のメールお
よびFAXによる働きかけが非常に有効に作用した
• 長妻昭厚生労働大臣、足立信也厚生労働政務官、仙谷由
人行政刷新担当大臣、鈴木寛文部科学副大臣、梅村聡参
議院議員らが状況を短期間で正確に理解し、尽力してくれ
た
• 井上清成弁護士が、医療機関の損害の大きさと制度の不
当さを訴えてくれた
出産育児一時金制度
日本産科婦人科学会の対応
• 2009年10月16日:理事長名厚生労働大臣宛要望書
「出産育児一時金制度の抜本的改革に関する要望書」
– 平成22年度には、今回導入された直接支払制度を廃止し、
被保険者が出産直後に出産育児一時金の給付を受けること
のできる制度を導入すること
– 制度導入時に被保険者、保険者、分娩施設に過剰な負担が
かからないよう配慮すること
– 直接支払制度による現場の分娩施設の負担軽減措置を早
急に実施すること
– 平成23年度には、出産育児一時金を55万円程度まで増額し、
被保険者の出産前後の経済的な負担をさらに軽減する制度
を整備すること
出産育児一時金制度
• 2010年2月1日:日産婦学会理事長 民主党小沢一郎幹事長宛:「出産育
児一時金制度の抜本的改革に関する要望書」
• 2010年3月12日:厚生労働省保険局総務課 報道発表
– 出産育児一時金の医療機関への直接支払制度に係る4月以降の対応につ
いて
•
制度の全面的な実施により、分娩の取扱いが困難となる医療機関が出てくると、か
えって妊婦さんに御迷惑をおかけすることとなるため、本年4月以降については、
1. 妊婦さんの経済的負担への配慮のための措置を講じていただきながら、出産育児
一時金の引上げ等に係る暫定措置期間である平成23年3月末まで、実施猶予を延長
2. 支払の早期化や、低利融資のさらなる条件緩和など、医療機関の資金繰りへの支
援を実施
することといたしました。また、
3. 出産育児一時金制度について議論する場を設け、直接支払制度の現状・課題や、
平成23年度以降の制度の在り方について検討することとします。
• 2010年3月31日:日産婦学会・医会 共同要望書
• 2010年6月13日:出産育児一時金制度改革を考える公開フォーラム
• 2010年7月14日:第38回社会保障審議会医療保険部会
– 日本医師会・日産婦学会・医会で同一歩調で主張
•
•
•
•
2010年9月 8日:第39回社会保障審議会医療保険部会
2010年10月13日:第40回社会保障審議会医療保険部会
2010年11月15日:第42回社会保障審議会医療保険部会
2010年12月 2日:第43回社会保障審議会医療保険部会
2010年3月31日 厚生労働大臣宛 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 共同要望書
出産育児一時金の医療機関への直接支払い制度終了後の抜本的改革に
関する要望書
• 「出産育児一時金の医療機関への直接支払い制度」は平成23年3
月をもって終了し、これに代わる新たな制度を創設すること。
• 平成23年4月以降の新たな制度の検討は、出産に直接要する費
用や出産前後の健診費用等の出産に要すべき費用の経済的負
担の軽減を図るために支給されるという出産育児一時金の本来
の趣旨に沿って行うこと。特に下記の点が考慮されること
– 出産育児一時金の請求と支給は、保険者・被保険者間での完結を原
則とすること。(直接申請)
– 出産育児一時金はお産をした人が事前申請を行えば、出産事実の
通知の直後に受領できる制度とすること。
– 振込指定制度を活用することなどにより、被保険者が希望する場合
は、出産育児一時金の全部あるいは一部を分娩施設等への支払に
充てることができることとすること。
– 事前申請および出産事実の通知に係る手続きは可能な限り簡略化
すること。
– 無保険者等受給資格のない人への制度上の目配りがなされること。
• 子育て支援のため、平成23年度以降、出産育児一時金支給額を
さらに増額すること。
2010年9月3日:海野専門委員
「平成23年度以降の出産育児一時金制度について」
論点整理案
• 次回以降の会議で検討されるべき課題:
– 被保険者の立場の重視:
– 平成23年度以降の出産育児一意金制度を検討する際の基本理念の確認(以
下 案)
•
•
•
•
•
妊産婦の分娩費用に係る経済的負担の軽減に資すること
地域分娩環境の確保によい影響を与えること
分娩に係る安全と安心の確保によい影響を与えること
安心して生み育てることのできる地域社会を構築し、子育て世代を支える制度とすること
我が国の政策全体との整合性をはかり、結果として、国の少子化対策に資すること
– 平成23年度以降の新制度として提案された4つの案のメリットと問題点の検討
•
•
•
•
現行制度の継続
現行制度を基本的には継続し、どうしても対応できない部分は修正を加える。
従来の被保険者の請求による償還払い
事前直接申請→振込指定による直後振込
– 日産婦学会・医会等が提案している新制度の実施可能性と問題点の検討
厚生労働省保険局の平成22年11月15日付
「平成23年度以降の出産育児一時金制度の在り方について(素案)」への意見書
海野専門委員
• 直接支払制度導入の分娩施設
の経営への打撃の大きさは、そ
の施設の収益構造によって大き
く異なっている。保険診療となら
ない正常分娩に係る費用収入が
収入全体に占める割合が多い
施設、すなわち産科診療を中心
としている産科診療所、助産所、
産科病院等の産科専門施設で
相対的に大きく、他の診療科を
有し保険診療の占める割合が高
い総合病院等で相対的に小さい。
この時点で残された問題点
• 受取代理制度の対象となる施設
– 総合病院
– 産科病院
– 産科診療所
– 助産所
• 受取代理の対象となるための条件
– 小規模施設? 分娩数制限(年間 200?)
– 産科専門施設? 分娩収入の総収入に占める割合
• 受取代理と直接支払の併用は?
出産育児一時金直接支払制度
全面導入の阻止と受取代理制度との並立がなぜ可能になったのか
• 2009年9月の政権交代
• 民主党政権の協力
– 鈴木 寛→仙谷由人→足立信也 梅村 聡
– 長妻大臣の決断
– 足立信也政務官の強い指示
• 2010年3月12日:「出産育児一時金制度について議論する場を設け、直接支払制度の
現状・課題や、平成23年度以降の制度の在り方について検討する」
– 社会保障審議会医療保険部会のメンバー
•
• 専門委員の人選:阿真京子・井上清成・海野信也・神野正博・寺尾俊彦・毛利多恵子
運が味方してくれていました。
• 臨時委員(仲間が沢山):大谷貴子・岡崎誠也・鈴木邦彦・高原晶・和田仁孝
保険局総務課長の交代
もうこんなことは二度とできないと思います。
– 神田課長の退場
– 武田俊彦課長・安田正人課長補佐の誠実な対応
• 彼らは約束を守りました
• 武田課長とはtwitter仲間です
• 「資金繰りへの影響が大きいと考えられる施設」
– 「収入全体に占める正常分娩に係る収入の割合が高い診療所」という概念
の提示
私たちはなにをやってきたか
収入全体に占める
正常分娩に係る収
入の割合
わかる
調べる
実行する
産科診療所
は50%以上
わかってもらう
提案する
新型インフルエンザ問題
• 調べる:ガイドライン作成の際に検討 2008
– CQ102-1: インフルエンザワクチンの母体及び胎児への危険性は妊
娠全期間を通じて極めて低いと説明し、ワクチン接種を希望する妊
婦には接種してよい(B)
– CQ102-2:妊婦・授乳婦への抗インフルエンザウイルス薬投与は安全
性が確認されていないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判
断される場合にだけ投与する(C)
• わかる:ガイドラインに記載済み 2008
• わかってもらう:学会・厚労省・マスコミを動員 2009.6
– 妊婦は危険、致死率が高いという情報
– タミフル、予防接種は安全
• 提案する:
– 妊婦はタミフルの早期投与を
– 妊婦は予防接種の優先接種対象に(やらないと損、「お得」な状況)
2009.9
• 実行する:
• 調べる:
IF: 3.060
738,766人の妊婦に関する情報を収集
新型インフルエンザ問題
• 調べる:ガイドライン作成の際に検討 2008
• わかる:ガイドラインに記載済み 2008
• わかってもらう:学会・厚労省・マスコミを動員 2009.6
– 妊婦は危険、致死率が高いという情報
– タミフル、予防接種は安全
• 提案する:
– 妊婦はタミフルの早期投与を
– 妊婦は予防接種の優先接種対象に(やらないと損、「お得」な
状況) 2009.9
• 実行する
• 調べる:
– 妊婦死亡 ゼロ
– 母体へのタミフルによる新生児合併症:ほぼゼロ
放射線被曝問題:妊婦・母乳
• 調べる:ガイドライン作成の際に検討(2008)
• わかる:ガイドライン2008 CQ103に記載
– 受精後11日から妊娠10週での胎児被曝は奇形を発生さ
せる可能性があるが、50mGy未満では奇形発生率を増
加させない(B)
– 妊娠10-27週では中枢神経障害を起こす可能性があるが、
100mGy未満では影響しない(B)
– 10mGyの放射線被曝は、小児癌の発症をわずかに上昇
させるが、個人レベルでの発癌のリスクは低い(B)
– 内部被曝についての検討が不十分
– 母乳移行について未検討
• わかってもらう
• 提案する
• 実行する
(μGy/hour)
Fig. 2 Unno et al
Chronological changes in air radiation dose
rates in various cities/areas.
100
Fukushima
Iwaki
Kooriyama
Mito
Hitachioomiya
Sendai
Tokyo
10
1
0.1
16
23
March
30
6
13
20
April
27
4
11
May
Day of month, 2011
18
(Bq/kg)
Chronological changes in tap water pollution
with 131I in various cities/areas.
Fig. 4: Unno et al
350
Fukushima
300
Tokyo
Chiba
250
Iwaki
200
Mito
Kasama
150
Hitachi
100
50
0
16
23
March
30
6
13
20
April
27
4
11
May
Day of month, 2011
18
放射線被曝問題:妊婦・母乳
• 調べる:ガイドライン作成の際に検討(2008)
– 2011年4月30日【厚生労働省】母乳の放射性物質濃度等に関する調査について
– 2011年5月17日【厚生労働省 報道資料】母乳の放射性物質濃度等に関する追加調査につ
いて
– 2011年5月18日【母乳調査・母子支援ネットワーク】母乳の放射能汚染調査と母子支援につ
いて:関係各機関および市民の皆さまへの呼びかけ
• わかる:ガイドライン2008 CQ103に記載
– 内部被曝についての検討が不十分
– 母乳移行について未検討
• わかってもらう
– 2011年3月15日【学会】 「福島原子力発電所(福島原発)事故における放射線被曝時の妊
娠婦人・授乳婦人へのヨウ化カリウム投与(甲状腺がん発症予防)について」
– 2011年3月15日【学会】 「福島原子力発電所(福島原発)事故のために被曝された、あるい
はそのおそれがある妊娠中あるいは授乳中の女性のためのQ&A」
– 2011年3月16日【学会】「福島原発事故による放射線被曝について心配しておられる妊娠・
授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)」
– 2011年3月24日【学会】水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内
– 2011年4月18日【学会】大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておられる妊
娠・授乳中女性へのご案内 (続報)
– 2011年5月2日【学会】放射性ヨウ素(I-131)が検出された母乳に関し、乳児への影響を心配
しておられる授乳中女性へのご案内
母乳中の放射性物質濃度等に関する調査
• 調査対象:108人
– 宮城県10人、山形県12人、福島県21人、茨城県
12人、栃木県15人、群馬県12人、千葉県14人、
高知県12人
• 調査時期:平成23年5月18日~6月3日
• 母乳中の放射性物質濃度:
– 101人が不検出
– 7人で放射性セシウムを微量に検出
• 相馬市3人、いわき市2人、福島市1人、二本松市1人
放射線被曝問題:妊婦・母乳
• 現状認識:
– 現時点では懸念される母乳汚染、水道水汚染は認
められない。
– 水素爆発等がおきれば、また3月15日の時点にもどることになる。
– 低線量被曝は持続している。飲食物を介する内部被曝は評価困難であ
る。その一般市民の健康への影響、妊婦、胎児、乳児への影響は「わか
らない」としか言いようのない部分がある。
– この分野では、以前から政治的、理念的対立が存在している。ICRPに対
するECRRの批判など。
• 社会への提案:
– うまく提案できていない。
– 妊産婦、小児の放射線被曝は可能な限り最小限にすべきである。
– 環境中の放射性物質について、放射線防護の専門家の考え
方と一般市民の感覚に大きな隔たりがある。
「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」についてのQ&A(2011年6月8日)
ー母乳中の放射性物質の問題で心配されているお母さん方へー
• 私たちが生活している空間や土壌には天然自然の放射線や放射性物質
がたくさんあります。しかし学校教育ではそのようなことを教わる機会は
なく、ほとんどの方はそのようなことを意識しないで生活されていると思い
ます。今になって、あらゆる食べ物や、人の体内に放射性物質があると
言われても、受け入れられないお母さんも多いと思います。また、今回は
原発事故災害による放射性物質が余分に身体に入ってしまったのです
から、同じ放射性物質であっても、本当に残念に思う気持ちは当然のこ
とであり、その気持ちは私たち医師も全く同じです。
• でも、今回の基準値以下の放射線量は、あなたや、あなたの大切なお子
さんの健康に悪影響を及ぼす放射線量よりもはるかに少量です。そして、
このわずかな放射線量よりも、母乳に含まれる様々な子どもの成長に役
立つ成分のほうが、はるかにお子さんの成長にとって重要であることをご
理解いただければと思います。
放射性物質による環境汚染への対応
• 2011年5月19日【日本小児科学会】放射線被ばくによる小児の健康への
影響について
– 国や地方自治体は子どもへの被ばく線量を今後出来うる限り減らす施策を
早急に実施することを日本小児科学会は希望します。また、長期間の高度
の被ばくが避けられない場合には、子どもとその家族は避難すべきと考えま
す。
– 日本小児科学会は地域の放射線被ばく量を迅速に公開して戴くことを希望し
ます。さらに、低量被ばくを受けている子どもの健康追跡観察を長期間にわ
たり適切に行う必要があると考えます。子どもが受ける放射線被ばく線量が
十分早期に減少するための適切な措置が講じられているかについて、今後
学会として注視していきます。
• 2011年5月24日【日本医師会:賛同 日本小児科学会・日本小児科医会・
日本小児保健協会・日本保育園保健協議会】子どもたちの安全を守るた
めの放射線被曝線量の減少に向けた取組みの実施について(要望)
– わが国の将来を担う次世代の健全な育成という視点からも、国ができうる限
りの方策により、子どもたちの放射線被曝量の減少に努められること、子ども
たちの生活の場での放射線量について、より多くのポイントできめ細かく測定
すること、正確な情報を迅速かつわかりやすく公開していくことをここに強く要
望いたします。
日産婦学会は国のエネルギー政策の方向性について提言をしないのでしょうか?
平成23年7月○日
(日本産科婦人科学会 声明(案))
これからのエネルギー政策の方向性について
•
福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質による
環境汚染はわが国の妊産婦と子どもをもつ家族、そして妊
娠を考えているカップルに極めて深刻な影響を及ぼしていま
す。今、私たちは、安心して妊娠・出産・子育てのできる環境
の重要性を改めて痛感しています。また、今回の事故を経験
して、原子力発電所の事故が、その地域のみならず国民生
活全体に重大な影響を及ぼすこと、そしてその影響は世代を
超えて長期にわたって持続することを学びつつあります。
•
今回の経験を踏まえ、私たち日本産科婦人科学会は、母
子の健康の増進に責任を有する専門団体として、今後のエ
ネルギー政策の方向性を検討する際には、事故が発生した
場合の結果の重大性を十分に考慮されることを、要望いたし
ます。
東日本大震災・日本産科婦人科学会の対応
• 2011年3月14日:
– 【学会】
• 東日本巨大地震に係る情報提供のお願いについて
(東北地方ならびに関東地方の会員宛)
– 【学会・医会】
• 平成23年東北地方太平洋沖地震に被災された国民
の皆様へ
• 会員宛:東北地方太平洋沖地震への対策について
– 被災地域の妊産婦さん、婦人科疾患を有する患者さんの安
全と健康のために全力をつくすこと。
– 被災地域での診療体制を強化するために全国の会員が相
互に連携して組織的な支援を行うこと。
– 被災地域での診療負担を軽減するため、被災地域からの妊
産婦、婦人科疾患患者さんを積極的に受け入れること。
平成23 年3 月14 日
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会
東北地方太平洋沖地震に被災された国民の皆様へ
• 東北地方太平洋沖地震という未曽有の災害に遭遇して命
を落とされた方々に対して深い哀悼の意を表しますととも
に、被災され今もなお苦しみのうちにある全ての皆様に心
よりお見舞い申し上げます。
• また被災地に御親族、御友人がいらっしゃる皆様におか
れましては、さぞかし心配と不安でいっぱいの日々を過ご
されているかと存じます。
• さて我々は産科・婦人科医療を通して、母子の生命健康を
保護するとともに女性の健康を保持・増進し、もって国民
の保健の向上に寄与する専門団体ですが、今回の災害に
対してできる限りの支援を全国の会員の協力を得て実施
いたしますことを宣言いたします。
• 具体的施策に関しましては今策定・調整中ですので、今し
ばらく時間をいただきたいと思います。
• 最後に一日も早い復興が遂げられることを祈念します。
東日本大震災・救援物資の調達・搬送
• 母子保健課からの依頼
– 「現地の必要物資を至急まとめてほしい」
– 成育医療センター 久保隆彦先生
• 3月16日 医政局経済課宛 日本産科婦人科学会・日本産婦人科
医会・日本周産期新生児医学会・日本小児科学会 共同要望書
要望書提出
役人は相手にせず、民間でできることをやる
• 3月17日:愛育病院からの特殊ミルク等:メドトロニクス便で東北大
学に搬送
• 3月18日:学会(阪大調達)救援物資(アメジストの協力):メドトロニ
クス便で東北大学に搬送 富山産婦人科医会便 東北大学に搬
送
• 3月18日:医会便:医会調達物資(ミルク・分娩セット等)学会物資
(北里調達 手術器材等) 青森県立中央病院、盛岡に搬送
• 3月18日:周産期新生児学会東急建設便:東北大学に搬送
• 3月21日:周産期新生児学会便:福島に搬送
沢山のタイガーマスクが出現しました
東日本大震災・救援物資の搬送
• 資金:
– 日産婦学会:学会負担で物資調達することを決定
– 日産婦医会:募金を直ちに開始
• 調達:
– 日産婦学会:西日本の大学に依頼→業者による調達
– 日産婦医会:医会事務局による調達・会員施設より
寄付
– 日本周産期新生児医学会:会員施設よりの寄付
• 搬送手段
– 民間ボランティア
平時にはシステムを動かす
– 民間業者依頼
危機に際しては自分でできることをやったうえで
システムの回復を待つ
東日本大震災・日本産科婦人科学会の対応
• 2011年3月15日
– 【学会】福島原子力発電所(福島原発)事故における放射線被曝時の
妊娠婦人・授乳婦人へのヨウ化カリウム投与(甲状腺がん発症予防)
について
– 【学会】福島原子力発電所(福島原発)事故のために被曝された、あ
るいはそのおそれがある妊娠中あるいは授乳中の女性のための
Q&A
• 2011年3月16日
– 【4学会】厚労省医政局経済課宛 要望書
– 【学会】福島原発事故による放射線被曝について心配しておられる妊
娠・授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)(改
訂版)
• 2011年3月17日
– 【学会】災害対策本部設置
• 2011年3月18日
– 【学会】内閣総理大臣・厚労省・東京都宛 今回の震災に遭われた褥
婦の受入れに関する要望書
東日本大震災・日本産科婦人科学会の対応
• 2011年3月19日
– 【学会】岩手県・宮城県への医師派遣開始
• 2011年3月22日
– 【学会・医会】合同対策会議
• 役割分担の明確化
• 人的支援は学会
• 物的支援・募金は医会
• 2011年3月24日
– 【学会】水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案
内
• 2011年4月18日
– 【学会】大気や飲食物の軽度放射性物質汚染について心配しておら
れる妊娠・授乳中女性へのご案内 (続報)
• 2011年5月2日
– 【学会】放射性ヨウ素(I-131)が検出された母乳に関し、乳児への影
響を心配しておられる授乳中女性へのご案内
日本産科婦人科学会 震災医師派遣担当校 一覧
震災医師派遣担当校
3月19日~25
3月26日~4月1日
日
宮古地区
順天堂大学
石巻地区
昭和大学
気仙沼地区
4月2日~8日
4月9日~15日
4月16日~22日
久留米大学*
京都大学
東京大学
神戸大学
順天堂大学
順天堂大学
大阪大学
4月23日~29日 4月30日~5月6日
久留米大学*
藤田保健衛生大学
岡山大学
5月7日~13日
久留米大学*
九州大学
新潟大学
*は1名派遣
5月14日~20
日
5月21日~27日
5月28日~6月3日
6月4日~10日
6月11日~17日
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
久留米大学*
石巻地区 横浜市立大学
北海道大学
名古屋大学
群馬大学
慶應義塾大学
近畿大学
宮古地区
東京医科歯科大学 東京慈恵会医科大学
6月18日~24日 6月25日~7月1日
7月2日~8日
*7月9日終了予
定
7月9日~15日 7月16日~22日
7月23日~29日
7月30日~8月5日
8月6日~12日
8月13日~19日
浜松医科大学
杏林大学
石巻地区 日本医科大学
大阪医科大学
金沢大学
名古屋市立大学
9月3日~9日
9月10日~16日
9月17日~23日
9月24日~30日
富山大学
熊本大学
広島大学
長崎大学
石巻地区
8月20日~26日 8月31日~9月2日
福井大学
宮崎大学
(注)学術集会期間の8月27日~30日は東北大学で対応
義援金(支援金)配分について
日本産婦人科医会 2011年5月24日
•
•
•
•
死亡 30万円
負傷 15万円
施設被害(全壊 200万円、半壊 100万円、一部損壊 20万円)
自宅被害(全壊 60万円、半壊 30万円、一部損壊 10万円)
• 参考:日赤の配分:
– 死亡 35万円、負傷 18万円
– 全壊35万円、半壊 18万円
• 2011年5月23日現在の義援金(支援金)
今回配分額
物資提供等
医師派遣等(学会へ)
138,217,003
119,150,000
1,533,104
15,000,000
支援金分配の内訳
全体
死
亡
者
数
負
傷
者
数
3
3
2
福島
1
茨城
千葉
支援金総額
計
半壊
一部
全壊
半壊
一部
17
12
194
9
26
198
0
0
2
0
0
4
1
13
1
5
6
56
1
7
2
1
1
0
1
宮城
自宅
全壊
青森
岩手
施設
(万円)
(%)
462
11915
100
1
3
50
0.4
2
18
40
1475
12.4
4
8
54
135
3800
31.9
57
1
9
73
151
3845
32.3
3
57
2
5
47
116
2395
20.1
0
9
1
2
5
16
350
2.9
今後への教訓
• 緊急時への準備不足
– 物流:物資の搬送手段の確保
• ヘリをもっと使えたはず
– 「災害時の母子支援」
• 避難所への支援体制の準備が必要 MCAT: Mother
and child assistant team(仮称)
• 産科医、小児科医、助産師、看護師、保健師、MSW、
臨床心理士、保育士、child life specialist等からなる
チーム
• 早期に避難所に入り母子支援のためのニーズを引き
出す役割を果たす
いざというときに役立つには、日頃の準備が必要
妊産婦の被災地外施設による引き受け
• 課題は、分娩前後の生活支援
• 公的支援
– 【学会】2011年3月18日付 内閣総理大臣・厚生労働省 雇用均
等・児童家庭局長・東京都知事宛:「今回の震災に遇われた褥
婦の受入れについての要望書」
– 【厚労省】2011年3月22日付 東北地方太平洋沖地震で被災し
た妊産婦、乳幼児の住居の確保及び出産前後の支援につい
て
• 被災妊産婦、乳幼児は、災害時要援護者。優先的に住まいの確保
に努める、母子生活支援施設(被災地以外の都道府県に所在する
施設を含む)等の利用も可能
• 仮設住宅、公営住宅等に入居した妊産婦、乳幼児に対して、市町村
母子保健事業(保健師・助産師等による訪問、母子保健推進員等の
ボランティアの活用等)により支援
• 妊婦、褥婦及び新生児については、助産師等相談にあたる職員を配
置し、避難所として適切な施設を確保すること。メンタルケア等、支援
を行う。できる限り、間仕切り用パーテーションの設置を行う等配慮を
行うこと。これらの支援については、災害救助法の国庫負担の対象
となること。
自主避難者には公的支援がほとんどない
次は?
• 医療改革委員会
–
–
–
–
「婦人科腫瘍診療に関するアンケート調査」:集計中
平成23年度 産婦人科医療改革アクションプラン策定
第4回 産婦人科意識動向調査
次期診療報酬改定 対応
• 周産期委員会
– 周産期登録事業に関する小委員会(委員長 佐藤昌司)
– 新規周産期登録データベース構築に関する小委員会(委員長 斎藤 滋)
– 周産期における医薬品・医療機器の諸課題に関する小委員会(委員長
竹田 省):ニフェジピン・ヘパリン自己注射・ノボセブン
– 胎児機能不全診断基準の妥当性検討に関する小委員会(委員長 池田
智明)
– 周産期救急医療体制の構築とその対応に関する小委員会(委員長 松田
義雄):常位胎盤早期剥離
– 妊産婦死亡の原因究明とその対応に関する小委員会(委員長 金山尚
裕):羊水塞栓・弛緩出血
– 胎児診断の向上に関する小委員会(委員長 増崎英明)
– 胎児骨系統疾患の出生前診断と周産期ケアのガイドライン作成に関する
小委員会(委員長 室月 淳)
– 震災・放射能問題(担当 藤森敬也)
学会と医会の新しい関係
• 構成員は共通
– ふたつの組織をいかに使い分けるか
• 組織の特性
– 情報発信
• 国民への情報発信力はまだ学会のほうがありそう
• 産婦人科医への情報伝達力は医会
– 情報収集力
• 一般会員からの情報収集力は圧倒的に医会
• 大学病院・基幹病院からの情報収集力は学会
– 経済的基盤:圧倒的に医会
• 伸縮自在な距離感
• 重要課題について学会・医会が一体化すれば非
常に強力
謝
辞
• 本講演の機会を与えて頂きました大分県産
科婦人科学会会長 楢原久司先生、大分県
産婦人科医会会長 松岡幸一郎先生をはじ
めとする会員の先生方にこころより御礼申し
上げます。
• 今後ともご指導をお願い申し上げます。
「水商売」について
• 2011年3月24日:JR東日本より、日本産科婦人科学
会・医会にミネラルウオーター 2400 L(2Lボトル6本入
り、200ケース)提供の申し出
– 日本産婦人科医会で対応
• 福島県産婦人科医会に100ケース
• 茨城県産婦人科医会に 50ケース
• 日本産婦人科医会本部のストックに100ケース
• 2011年3月25日:楽天より産科診療所へのミネラルウ
オーターの優先販売枠設置の提案
– 日本産婦人科医会で対応
• 2011年4月4日:株式会社ウォーターダイレクト「新しい
命を救う」プロジェクト
– 福島県及び茨城県に所在する産婦人科医院に対し、無
償で水を届ける
産科医療崩壊
調べる
出生場所別出生数の推移
2500000
その他
2000000
助産所
診療所
1500000
病 院
1000000
500000
0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2008
産科医療崩壊
調べる
分娩取扱医療施設数の変化
(厚生労働省・医療施設静態調査)
産科医療崩壊
調べる
施設あたり出生数の推移
600
496
500
400
379
390
402
300
200
238
256
297
413
312
361
施設あたり出生数 病院
100
施設あたり出生数 診療所
0
1995
2000
2005
2010
産科医療崩壊
調べる
産婦人科+産科 医師の
全勤務医師数に占める割合
12%
10%
8%
6%
4%
2%
0%
1 970
1 980
1 990
2 000
2 010
産科医療崩壊
調べる
450
日本産科婦人科学会
年齢・性別 会員数
2011年1月11日現在
400
350
300
女性
男性
250
200
150
100
50
0
25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95
産科医療崩壊
調べる
分娩施設に勤務している割合
日産婦学会 女性医師継続的就労支援委員会2007年調査
産科医療崩壊
調べる
年齢層別 月間在院時間
当直体制のある一般病院
400
350
300
250
200
150
100
50
0
月間時間外在院時間
月間勤務時間数
29歳以下 (59) 30-34歳 (77) 35-39歳 (53) 40-44歳 (38) 45-49歳 (47) 50-54歳 (38) 55-59歳 (35) 60歳以上(17)
2008年 日本産科婦人科学会調査
産科医療崩壊
調べる
年齢層別 大学病院勤務医の在院時間
450
400
350
300
250
200
150
非常勤施設 での月間在院時間数
100
大学病院での月間在院時間
50
0
29歳以下
(19)
30-34歳
(59)
35-39歳
40-44歳
45-49歳
50歳以上
(36)
(21)
(28)
(19)
2008年 日本産科婦人科学会調査
産科医療崩壊
調べる
日本産科婦人科学会新専門医調査
5年後に希望する勤務場所
その他
H22 男性
H22 女性
病院または診療所
で非常勤または
パートタイム勤務
H19 男性
H19 女性
分娩を取り扱わな
い診療所で常勤
分娩を取り扱う診療
所で常勤
分娩を取り扱わな
い病院で常勤
分娩を取り扱う病院
で常勤
大学病院産婦人科
常勤
0%
20%
40%
60% 0%
20%
40%
60%
産科医療崩壊
調べる
わが国の医療訴訟・診療科別既済件数(2006)
医師1000人あたりの件数
医療訴訟は明らかに外科系に多い
16
13.7
14
12
10.5
10
8.7
8
6.3
6
4
2
0
3.9
3.6
2.2 2.6 2.4
2.3 2.6
0.9
1.6
産科医療崩壊 わかる
• 分娩取扱施設は減少を続けている。
• 産婦人科医の入り口である勤務医は
– 勤務条件がきわめて過酷
– 女性医師は継続的就労が不可能
• 新規産婦人科専攻医は
– 女性医師の占める割合が増加
– 男性医師の絶対数が減少
• 産科は医療紛争が多い実態があり、それだけでも研修医に敬遠さ
れがち(他の診療科との競争に勝てない)
• 診療所も病院も持続可能性のない状態であるとの確信
産科医療崩壊
わかる
調べる
実行する
わかってもらう
マスコミ対応
政治家対応
厚労省対応
提案する
産科医療崩壊 提案する
• 産婦人科医療提供体制検討委員会中間報告書
• 緊急提言
– 分娩取扱公的病院の集約化
– 分娩費用の引き上げによる財源の確保・現場の改善
• 産婦人科医療提供体制検討委員会最終報告書
• 産婦人科医療改革グランドデザイン2010骨子案
• プロジェクト500
• 産婦人科新規専攻者を増やす努力を全力で推
進しながら、現場を改善していく
産科医療崩壊 実行する
• 診療報酬改定における勤務医の労働環境・処遇
の改善への配慮
• 出産育児一時金の引き上げ
• 産科医等確保支援事業
– 後期研修医への奨学金助成
– すべての分娩取扱に対する分娩手当助成
•
•
•
•
医学部における診療科枠
医学部学生に対する特定診療科奨学金
サマースクール等の取り組み
好意的なマスコミ報道
日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査
「全体としての産婦人科の状況」
全体として 良くなっている
全体として 少し良くなっている
全体として 変わらない
全体として 少し悪くなっている
全体として 悪くなっている
2008 5
2009 14
2010
22
0%
59
116
156
87
70
181
177
20%
77
178
40%
60%
35
63
80%
15
100%
2010年7月 日本産科婦人科学会
第3回 産婦人科動向 意識調査
全体としての産婦人科の状況
回答の理由(複数回答)
悪くなっていると感じる理由
1. 産婦人科医不足
21
良くなっていると感じる理由
1. 志望者増
85
2. 分娩施設減少
2. 一般の方・マスコミの理解 26
7
3. 施設減少のための残ってい
る施設の負担増・勤務条件
の悪化
6
4. 地域格差の拡大
6
3. 待遇改善
22
4. 人員増
21
産科医療崩壊
調べる
日本産科婦人科学会・年度別入会者数(産婦人科医)
2011年3月31日現在
600
500
400
300
241
214 238
213 202
200
100
0
152 137 53
48
262 299
93
50
190 192
161
116 133
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
女性
男性
産科医療崩壊
調べる
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
日本産科婦人科学会・卒業年度別会員数(産婦人科医)
2011年3月31日現在
215 232
232
220
254
256
女性
男性
227
179 147
162
133 136 108 125
50
38
20
20
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
産科医療崩壊
調べる
600
日本産科婦人科学会
卒業年度別会員数(産婦人科医)
2010年3月31日現在
400
200
0
600
400
200
0
215 232 220 226 228 244
133 136 107 125 157 158
女性
男性
32
30 20
15
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
2011年3月31日現在
254 256
215 232 220 227 232
133 136 108 125 162 179 147
50
38 20
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
女性
男性
産科医療崩壊
まだわからない
産科医療崩壊
• 分娩施設減少に歯止めはかかったか?
• 現場の勤務条件は改善したか?
• 女性医師は就労の継続ができるようになった
のか?
• 産婦人科医は増え続けるのか?
• 産科医療に持続可能性はあるのか?
周産期救急医療体制機能不全
しらべる → わかる
• 全国MFICU連絡協議会による調査
– 2007年3月:平成18年度全国MFICU実態調査
– 2007年10月:平成19年度 周産期救急体制の実態に
関する緊急調査報告と緊急調査結果に基づく提言
• NICU病床の増床
• 周産期情報センターないし搬送コーディネータを整備
• 東京圏、近畿圏、福岡圏において、周産期広域搬送情報シ
ステムを早急に構築
• 広域搬送情報システムの構築を積極的に誘導未受診妊婦
を含む産科一次救急患者への対応
• 救急医療に従事する医師の勤務条件において、労働基準
法等の法令を遵守した体制
– 2009年1月:2008年度全国MFICU実態調査
周産期救急医療体制機能不全
わかってもらう → 提案する
• 2006年10月 奈良県 町立大淀病院 妊婦脳出血事例報道
• 2007年 9月 奈良県 未受診妊婦報道
• 2008年10月 東京都 妊婦脳出血事例報道
• 2008年11月 周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会
• 2008年11月 平成20年度厚生労働科学特別研究事業「救急部門と周
産期部門との連携強化に資する具体的手法に関する研究」(杉本班)
組織
• 2009年3月 「周産期・救急医療専門家会議」
実行する
• 2009年4月 消防法改正:2010年度中の搬送先受入基準の策定
• 2010年1月 「周産期医療体制整備指針」の改定
まだわからない
周産期救急医療体制機能不全
• 母体救命救急体制は機能しているか?
• 未受診妊婦への対応に問題は生じていない
か?
• 広域搬送システムは機能しているか?
– (首都圏ではまだできていない)
• NICU不足解消のめどは?
• 周産期救急医療現場の労働条件は改善した
か?
• まだ何も解決していないのではないか?
産科医療紛争
•
•
•
•
•
調べる:長年の検討
わかる:最後の切り札(?)
わかってもらう:
提案する: 無過失補償制度
実行する: 「産科医療補償制
度」
–
–
–
–
似て非なるもの?
審査委員会
原因分析委員会
再発防止委員会
• 調べる:長年の検討
• わかる:このままでは無理
というコンセンサス
• わかってもらう:
• 提案する:ガイドライン作成
• 実行する:学会・医会が共
同で作成
– 産婦人科医療機関に広く普
及
– 診療水準の底上げに貢献
わからない:産科医療紛争の減少につながったかどうか