ポリオ 中国医科大学附属第二病院伝染病科 李智偉 概念 ポリオウイルスの感染によって、不顕性感染 から脊髄前角炎による運動麻痺にいたる病 像を呈するものである。 臨床症状:発熱、咽部の痛み、四肢の痛み、 四肢の馳緩性麻痺である。小児によく見られ る。不顕性感染は90%以上に達する。 原因 ポリオウイルスはRNA、長径20-30nmウイル スで円形を呈する。Picornaviridae属中の enterovirus属し、I,II,IIの血清型がある。低温 に抵抗が強い、-70℃のもとで、8年間生きる。 熱と乾燥に弱い。60℃、30分間で殺滅される。 水と糞便中に数週間生きる。わが国では主な 感染型はI型である。 疫学 1.感染源 患者とキャリアである。不顕性感染および不全型 の患者は発現しにくいから、流行に大きな意義が ある。 咽部からウイルス検出は1週間以内であるが、 便より発症後40日にもウイルスを検出できる。 2.感染径路 早期:主に飛沫感染と便によって伝播させ る。その後、便によって伝播させる。発症3 -6週後、ウイルスが消失する。ときに3-4 カ月に伸びる。汚染された水、食物、手お よび道具は伝播の媒になれる。 3.感受性 普通である。感染後、同型ウイルスに対し て持続性免疫が生じる。 新生児は母から免疫を獲得するから、4ヶ 月以内に発症例がない。わが国では、1-5 歳に発病率が一番高い。 発症機序 ウイルス (扁桃)咽部 腸管(小腸のリンパ装置) 腸内特異性抗体 ウイルスの除去 腸内特異性抗体 頚部、腸間膜のリンパ節 血液 不顕性感染に終わる 抗体産生が遅れ 抗体産生が早い ウイルス血症 全身リンパ装置 不全型 抗体 ウイルス血症 抗体 中枢神経 無菌性髄膜炎型 麻痺型 病理 主な病変は脊髄前角灰白質の炎症で、強 い充血と水腫がある。 組織学的には運動神経領域の神経細胞の 溶解、液化に至る強い炎症像がある、血管 周囲には、初期は好中球、その後はリンパ 球を主とする強い細胞浸潤をみる。 臨床症状 臨床症状によって四型に分けられる。 不顕性感染 不全性 無菌性髄膜炎型 麻痺型 1.潜伏期 3-35日(5ー14日) 2.前駆期 発熱、無力、全身不快感は主症状である。ときに咳、 咽部の痛み、不安、食欲減退、悪心、嘔吐、腹痛、下 痢などを伴う。この期に症状が軽い、1-4に日持続す る。感染者の90-95%はポリオウイルスの感染を受け、 特異抗体が産生されるが何らか症状を現さないで、 不顕性感染に終わる。 腸炎期の発熱のみに止まり、いわゆる夏カゼ症状に 終わるもので、麻痺をきたさない症例を不全型と言う。 3.麻痺前期 前駆期なし、麻痺前期に入る症例が見られる。 前駆前期の症状消失1-6日後、熱が再び上昇 し、この期に入る。大部分は全駆期のつき、す ぐこの期に入る。 症状: 不全型の髄膜炎症状が加わったもので、 一般症状は強いが麻痺はなく、非麻痺型と言 う。 髄膜炎症状: 高熱、激しい頭痛、不安、感覚 過敏、髄膜刺激症状としては、頚部強直、 Kernig症状が現れる。また、病的反射も現れ る。 4.麻痺期 大部分は下熱の開始のとき、麻痺が現れる。 平温になると、麻痺がとまる。 病変の部位によってさらにつきのような病型 に分かれる。 脊髄型 麻痺は上肢よりも下肢に多い、また一側の ことが多い。 特徴: 下位運動ニューロン障害で馳緩性の麻痺戸 なる、筋緊張は低下し、腱反射は減弱、消 失する。 知覚障害はない。 非対称性麻痺、規律性はない。 四肢麻痺は遠位部より近位部が重い。 脳橋延髄型 軟口蓋、咽頭、喉頭、顔面神経などの麻痺が おこる。 脳神経性麻痺:VII,Xの神経核の障害がようく みられる。 VII,IX,X,XII: 球麻痺: 口唇、舌、軟口蓋、 咽頭、の麻痺をきたし、口唇音、舌音、口蓋音 の構音はいじれも障害され、麻痺性構音障害 をきたす。どうじに、咽下が障害される。 血管運動中枢麻痺。 呼吸中枢麻痺 脳型 稀な病型であるが、予後は悪い。大脳が 障害される。高熱、昏睡、痙攣など。 混合型 脊髄型と脳橋延髄型が同時に出現する。 4.回復期 麻痺が回復し始める。麻痺は最初1-2ヶ月 回復が早い。6ヶ月後、遅くなり。大部分は1 年以内回復する。 5.後遺症期 18ヶ月後回復しない麻痺は後遺症と言う。 実験室検査 血液像: 著明な変化がない。 脳脊髄液: 蛋白ー細胞分離現象を認める。 ウイルス分離 血清学検査 診断 疫学 麻痺の特徴 実験室検査 治療 1.前駆期および麻痺前期 臥床休息、(下熱1週後)、筋肉注射、手術など の処置を避ける。 Glucose+vitamin C静脈滴点、神経細胞の水腫 を防止する。 重症: 副腎皮質ホルモンの投与。 治療 2.麻痺期 四肢を機能体位に置かせる。 Galantamine 筋肉興奮剤 Dibazol 球麻痺: 気道内に液の貯留があれば吸引 する。呼吸障害に対しては呼吸器を用いる。 抗生物質の応用。 呼吸中枢麻痺: 呼吸興奮剤投与、人工呼 吸器の使用。 治療 回復期、後遺症期 比較的早期からリハビリンーションを開始 する。 予防 1.感染源の隔離 患者: 40日、 早期:呼吸道と消化管の伝染病として隔離。 後期: 消化管の伝染病として隔離。 接触者: 20日監視する。 2.感染径路の遮断: 患者の呼吸気道の分泌物、糞便および汚 染物を徹底的に消毒する。 3.感受人群の保護 生ワクチン投与 わが国では1958年より生ワクチンの投与を行う。 対象: 生後2ヶ月-7歳の小児。 時間:冬、春に投与。 受動免疫: -グルブリンを投与。
© Copyright 2024 ExpyDoc