小学部児童が友だちに要求を 受け入れられなかったときに自傷をせず 言葉で伝えることができるための支援 事例の概要 本児は要求を受け入れてもらえなかったとき、 否定的な言葉を言われたとき、思い通りになら ないとき、思っていいたこととは違う出来事が あったとき、未経験の活動、初めての場所での 活動など負荷が高い場面で、額を拳や床や壁 に打ち付ける、肘で壁を叩くといった自傷行為 が目立つ。このような場面で定着している自傷 行為の代替行動を見つけ、自傷行為を減らす ことを目標に本実践に取り組んだ。 対象児のプロフィール 小学部4年 男児 知的障害 新版K式発達検査2001(H23.12.7実施) 全領域 2:8 (姿勢・運動 2:4 適応 2:1 言語・社会 3:4) S-M社会生活能力(H23.12月) SA 3:5 認知・ SQ 35 長期目標 嫌なことがあった時に自傷をせず言葉で伝えることが できる 短期目標 要求を受け入れられなかったときに自傷をせず言葉で 伝えることができる 標的行動(増やしたい行動) 友だちに要求を受け入れられなかったときに言葉で 伝えることができる 標的行動(減らしたい行動) 友だちに要求を受け入れられなかったときに自傷を する 現状のABC分析 Yくんの動き がとまる Yくんが大き な声を出す Yくんが 離席する Yくんが質問 に答えない 5 Yくんが先生の 指示に応じない 自傷を する 教員の注 目あり 教員が本児 の言いたいこ とを代弁する 痛みの感覚 あり 5 解決策のABC分析 教員がYくん に注意する Yくんが大き な声を出す Yくんが 離席する 「静かにして」 「ちがうよ」と 言う Yくんが質問 に答えない 6 Yくんが先生の 指示に応じない 教員の ほめ言葉 あり 教員が本児 の言いたいこ とを代弁する 痛みの感覚 なし 6 指導手続き 指導1 ・朝の会の前の対面学習の時間に,アンパンマンか らの手紙形式でクラスメイトのYくんがするべきことに 取り組まない時や逸脱行動などが見られたときに「Y くんちがうよ」と言い,Yくんが大きな声を大きな声を 出したときは「Yくん静かにして」と言って対応できる ことを賞賛した内容のソーシャルストーリーズの読み 聞かせをする。 ・適切な言葉で対応できたときはすぐに賞賛する。ま た,共感する。 ・自傷する場合は,無反応で対応する。 ・適切な言葉で対応できた日は,アンパンマンから褒 め言葉の手紙が届くようにしておく。 指導手続き 指導2 ・Yくんに関することで自傷が起こりそうな学習場面の直前に 「Yくんちがうよ」「Yくん静かにして」という練習を行うことを追 加した。 記録の取り方 Yくんがするべきことに取り組まない時や要求に応 じてくれない時に 自傷があったら × 適切な言葉で対応できたら ○ を記録する。 (適切な言葉で対応できても自傷があれば ×とする) 日ごとに適切な言葉で対応できた割合を出す。 (○の数/○と×の合計) どのような言葉で対応できたかも記録しておく。 指導期間と達成基準 指導期間 12月1日から1月17日 達成基準 自傷せずに対応できる割合が80%以上の 日が5日間続いたら達成とする。 結果 考察1 指導1として,朝の対面学習の時間に「Yくんが大きな声 をだしたときは『Yくん静かにして』という」ことと「するべき ことに取り組まない時は『Yくんちがうよ』という」ことのア ンパンマンからの手紙を読んで,その言葉を言う練習を することで,そのような場面時に自傷をせずに,言葉で 対応する場面が出てきた。 より効果を高めるため,指導2としてYくんに関することで 自傷が起こりそうな学習場面の直前に「Yくん静かにし て」「Yくんちがうよ」という練習を行うことにした。言葉で 対応できた時に,すぐに褒めることで,その後も言葉で 対応できることが何度か続けて見られた。また,「Yくん 座ってください」といったような自分なりの言葉で対応す る場面も見られるようになった。 考察2 本児は不安が強く過敏な部分があるため,不快な出来 事に過剰反応して他害や自傷で対応することが多く,そ の他の解消方法を習得できていなかったと考える。落ち つているときに適切な行動を伝えて練習し,できたときに すぐにほめられることで適切に対応できる場面が定着し てきたと思われる。 Yくん関係以外の場面で自傷することもたくさん残ってい るため,今後は自傷が起こりやすい場面を想定して指導 場面を増やしていき,適切場面を増やしていきたいと思 う。
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