1 中学部の自閉症の生徒が、不安定時に 他害をしないで、教師の指示を聞いて いすに座ることができる支援。 奥田先生コンサルテーション事例 徳島県立板野支援学校 教諭 竹田 真理子 指導目標 2 【長期目標】 要求や拒否等の場面で、他害(叩 く、 つねる、かみつく)ではなく、適 切な方法で自分の意思を教師に伝え ることができる。 【短期目標】(2.3学期) 他害をしないで、教師の指示を聞い て 標的行動(増やしたい行動) 3 他害をしたとき、「(いすに)すわ る」という教師の指示を聞き、いす に座ることができる。 標的行動(減らしたい行動) 教師や周囲の友だちに対して 他害(叩く、つねる、かみつく)を する。 現状のABC分析 (遊びの場面) 4 (↑) 休み時間の終了 「遊びおわり」の声 かけ メロディ絵本あり 嫌な課題あり 教師の反応や注目 あり (↑) 教師をたたく 手を押さえられる 感触有り (↑) メロディ絵本なし (↓) 課題をする時間が遅れ る( ↑ ) 解決策のABC分析 5 (↑) 他害をする 「いすに座る」の 声かけ いすがある 教師の注目あり (↑) いすに座る ほめ言葉あり(↑) タッチの感触あり (↑) 次の指示(スピード感 や楽しさ)あり( ↑ ) 方法 【対象者】 Bさん(特別支援学校中学部1年男子) 自閉症、 PEP-R検査:1歳9ヶ月(H20.1月) 【指導場面】 他害が複数回起こった場面 【指導期間】 H22.10月 ~ H23.3月 【般化場面】 日常生活全般、家庭 【教材】 いす 手続き 7 【指導1】(10/7 ~ 12/8) 《日常場面》 1.普段の生活の中で「いすに座る」という指 示に従えるように練習する。 一日に1回以上、教室や玄関など色々な場面 で練習をする。 座らない場合は、身体的プロンプトでいすに 座らせる。 手続き 8 《他害が複数回起こった場面》 2.複数回の他害があったとき、いすを指さし「い すに座る」という指示を出す。 いすに座った場合は、手を伸ばしても届かないく らいの距離をあけて落ち着くのを待つ。再び立ち 上がった 時は、「いすに座る」の指示を繰り返す。 繰り返し他害をして落ち着かない場合は、かみか みグッズ(ホース、歯固め)を渡したり、課題 (机上での靴下干し)を提示して取り組むように 指示する。落ち着いたらほめて、次の活動を指示 する。 手続き 9 【指導2】 (12/9 ~ ) 《日常場面》 1.普段の生活の中で「いすに座る」という指示に 従えるように練習する。 一日に1セット以上、教室や玄関など色々な場面 で練習する。( 1セット5回以上) 他害が起こりやすい場面で練習する。Bさんの手 の届かない位置から、声かけとジェスチャーでい すに座るように指示する。 従うことができたらタッチしてほめ、すぐ次の指 示を出すことを5回以上繰り返す。 手続き 10 《他害が複数回起こった場面》 2.複数回の他害があったとき、指導1の手続 き「いすに座る」の指示を出す。 再び他害が起こったときは、指導1の手続 きを 繰り返す。 達成基準・中止基準 11 達成基準 正反応率100%が5回連続で達成とする。 ● 中止基準 正反応率50%以下3回連続で見直しをする。 記録方法 12 《他害が複数回起こった場面》 【指導1】 指さしや声かけの指示が3回以内でいすに座るこ とができた正反応率 【指導2】 指さしや声かけの指示で、他害を一度もしない でいすに座ることができた正反応率 指示に従えた回数 一日に指示した回数 ×100 =正反応率(%) 記録方法 13 《1日の他害の回数》 一日の他害(たたく、つねる、かみつく)の回 数を 登校から下校までの各時間ごとに記録する。 ただし同じ時間に複数回起こっても一回とする。 結果 不安定時にいすに座ることができた正反応率 % 指導1 指導2 100 80 正 反 応 率 60 40 20 0 14 日付 結果 1日の他害の回数 回数 10 ベースライン 指導1 指導2 9 正 反 応 率 8 7 6 5 4 3 2 1 0 9/16 9/23 9/30 10/7 10/14 10/21 10/28 11/4 11/11 11/18 11/25 12/2 12/9 12/16 12/23 12/30 1/6 日付 15 1/13 1/20 1/27 2/3 2/10 2/17 奥田先生の助言(指導2について) 16 他害が起きそうになったら、「座る」の指示が通 るようにする。他害が起こったとき普段の練習が 生かされる。 1日に1~2回の練習ではなかなか身につかない。 エクササイズのように1分間に何回も行う。 遊びの感覚で興奮や楽しさが大切、本人のやらさ れ感がない。 他害に対する距離を保つために身体には触らず、 言葉や指さしで指示する。Bさんからの距離はだ んだんのばしていく。 結果 【指導1】 結果にばらつきがあり、すぐ指示に従い落ち着く時 もあれば、何度も立ち上がり他害を繰り返す時が あった。 普段の練習では、ほぼ100%指示に従うことがで き不安定時もいすに座ることはできていた。 17 【指導2】 機嫌の良いときに練習する機会を増やすことによっ て、不安定時でも正反応率が増加し達成できた。 「いすにすわる」の指示で、身体が反射的に反応す るようになり、時には楽しんでいる表情も見られ 考察 18 【指導1】で正反応率にばらつきがみられたのは、日常で の練習が少なさと、他害時の状態により対応が異なっていた ので「座る」という行動が十分強化されていなかったと思わ れる。 【指導2】で、すぐ達成できたのはゲーム感覚の楽しさ と、練習を増やしたことで、「座る」という指示に対し身体 がすぐ反応するようになったから。 また、教師が距離をあける、「座る」を示す両手を前に出し たジェスチャーが他害をブロックする等、他害をされない関 わりかたも効果を上げている。 問題行動から、楽しい活動への発想の転換(奥田先生のアド バイス)は大変参考になり、普段の練習の大切さを感じた。 今後の課題 19 いすがない場面や、式や校外等で指導ができ にくい場面でどのようにしたら良いのか。 問題行動を無くすには、他害に代わる適切な コミュニケーション手段を身につけなる必要 がある。
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