第8回 専門化する政治 公共政策大学院 鈴木一人 [email protected] 1 社会経済での役割を増す政治 国家の社会経済への介入 19世紀までは「小さな国家」 第一次、第二次大戦→総力戦と統制経済 福祉国家の発達→家計、公衆衛生、公共事業 政府主導型経済成長モデル→国家による産業政策 社会経済の管理の専門化 官僚制による分業体制と専門的知識 合理的な統治→法の支配と経済計画 官僚内閣制の発展→タテ割りの専門性を束ねる政治 2 専門家による政策の独占の弊害 政治家は政策の素人 官僚は政策はわかっていても専門知識に欠ける 「政策通」や「元官僚」→政策全体を見渡すのが政治家 政治家は専門家や官僚をうまく使いこなすことが必要 ローテーションの弊害→短い期間しか関与できない 法律職・行政職・経済職→専門性には欠ける 専門家が政策に独占的な影響力を持つ 科学技術政策(例:原子力政策)などで顕著 厚労省(例:薬事)、国交省(例:都市計画)なども 技官制度→専門知識を持つ官僚:影響力は限定的 3 専門行政機関の発達 独立行政法人などのエージェンシー 役所の監督の下で政策を実施する機関 公的な立場の専門家が集積し、政策決定に影響 行政機関であるが故の官僚制 専門化する政治の中核→「ムラ」の発達 予算獲得と事業推進が組織目標となる 政策推進を共有とする公的機関や民間企業の相互依存 予算獲得のための官僚と政治家への働きかけ 民間企業の発注元→予算を通じた権力関係 規制や政策への影響力→官僚制度との連携 専門家は必ずしも中立ではない 4 「ムラ」の構造 政治家 指示 提案 規制 官僚 依頼・補助金 陳情 協力 補助金 提案・擁護 補助金 学者 献金・陳情 集票依頼 説得 事業者 支援 雇用・支援金 地元自治体 メディア 5 要求 国際社会における専門性 国際機関は専門機関の方が圧倒的に多い 世界保健機構(WHO)、世界貿易機構(WTO)、国連児 童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所( UNHCR)、国連開発計画(UNDP)等々… 各国の専門家や行政機関による特定分野のグローバル なルールや解決策を調整する 専門機関の問題 現場での調整の困難→複数の機関の役割が重複 プロジェクトによる予算建て→非効率な予算や人事 全体を統制する仕組みの欠如→矛盾した活動 6
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