スカイバックグランドの再現性

すざく衛星搭載XISのスカイバックグランド
田和憲明、宮内智文、Eric Miller、林田清、勝田哲、鳥居研一、並木雅章、穴吹直久(阪大理)、 山口弘悦(京都大学)、
片山晴善(JAXA)、他Astro-E2 XISチーム
Abstract
2005年7月10日に打ち上げたX線天文衛星「すざく」は4台のX線CCDカメラXIS (X-ray Imaging Spectrometer) を搭載している。これらのうち3台 (XIS0, 2, 3) が表面照射型CCD (FICCD) で、残りの1台 (XIS1) が裏面照射型CCD (BI-CCD) である。これらのバックグランドグランド特性を調べるためには、夜地球のデータの他に、明るい天体を含まない天空領域や点源
の周りの観測データがスカイバックグランドとして利用できる。スカイバックグランドを構成する成分はNXB (Non X-ray Background) とCXB (Cosmic X-ray Background) であるが、
これに加えて地球大気による太陽X線の散乱が問題になる。NXBは主にCOR (cut-off rigidity) に依存し、散乱成分は昼地球の縁からの角度に依存する。
ここではまずスカイバックグランドの視野内における変化と時間変化について調べた。時間変化はCORに依存しているのでスカイバックグランドのCORによる補正を行なった。また、
エレベーション角によるスペクトルの変化と太陽活動との関係を調べた。
1.視野内の位置依存性
図3、4のようにスカイバックグランドはCORに依存し、各CORにおける露光時間は観測によって
異なる。そこで、CORによるスカイバックグランドの補正を行なった。以下にその方法を示す。
図1のようにそれぞれ同じ面積の1つ
の円と4つの円環領域内でスカイバッ
クグランドを調べ、視野内の位置依存
XIS1
性を求めた。中心の円領域で規格化
したカウントレートを図2に示す。スカ
イバックグランドは中心から離れるに
従って減少し、最外殻では中心の80%
程度に減少する。
Target observation
Exposure (s)
t1
t2
ti
t6
T
図1:中心の円領域はPSF
(FWHM) の4倍。それぞれ
の円環は中心円と面積が
等しい。
COR weighted BGD =
XIS2
Count rate
5.0-14.9keV
図3のようにスカイバックグランドはCORに依存し、その強度は2倍以上変動する。そして、ある
CORにおける露光時間はそれぞれの観測によって異なる。図4にそれぞれの観測における各
CORの露光時間の分布を示す。
Relative exposure time
スカイバックグランドの再現性
複数のBlank Sky又は点源を除いた領域からスカイバック
グランドの求め、その分散を調べた。使用した観測は図4と
同じ、NEP(2005-09-02観測), NPS, A2811 offset,
RXJ0852 NW offset, High Latitude A, High Latitude B,
NEP(2006-02-10観測)である。
以下の図に5-10keVにおけるカウントレートの、それぞれの
観測における分布を示す。上の黒線で示したヒストグラムが
上記のCORによる補正前、下の赤線が補正後である。補
正はNEP(2006-02-10)を基準(表1のターゲット)とした。
Number of observation
COR
COR
Count rate
0.1-5.0keV
図3:スカイバックグランドの時間変動
図4:各CORにおける
露光時間の分布。そ
れぞれの観測の総露
光時間で規格化した。
COR (GeV/c)
after
counts s-1 keV-1
before
before
after
after
after
counts s-1 keV-1
counts s-1 keV-1
全ての検出器で補正前より補正
後の方が分散が減少した。内部
バックグランドの影響が強いXIS1
で特に大きく減少した。CORでの
補正によって、さまざまな天空領
域でのスカイバックグランドの再
現性を向上することができる。
COR (GeV/c)
before
before
High Latitude A
High Latitude B
NEP(2006-02-10)
NEP(2005-09-02)
NPS
A2811 offset
RXJ0852 NW offset
ti
 ci

i 1 T
各CORにおけるバックグランドのカウントレートに (ti/T) をかけてそれぞれ足し合わせること
でターゲットとバックグランドの図4で示したようなCORの分布の比を等しくする。
2005年9月2日に観測されたNorth Ecliptic PoleからスカイバックグランドのCOR依存性を調べ
た。図3に示す。内部バックグランドの変動のため、スカイバックグランドもCORに依存して変動
する。FI-CCDよりもBI-CCDの方が、また低エネルギー側(0.1-5.0keV)よりも高エネルギー側
(5.0-14.9keV)の方が荷電粒子の影響を受け易いため、高エネルギー側の方が変動が大きい。
5.0-14.9keV
2.0 – 4.0
4.0 – 6.0
…
13.5 – ∞
Total
6
2.COR依存性とその補正
0.1-5.0keV
Background observation
Exposure (s)
Spectrum (cts/s)
b1
c1
b2
c2
bi
ci
b6
c6
B
C
CORで補正したバックグランドは以下の式で計算する。
図2:中心からの距離とスカイバック
グランドの相関
XIS1
COR
(GeV/c)
Number of observation
NXBではこのような位置依存性が
なかったことから、これは主に望遠
鏡のVignettingによる効果と考えら
れる。
表1:各CORにおける露光時間とスペクトル。
XIS0
XIS1
XIS2
XIS3
counts s-1 keV-1
標準偏差 (counts s-1 keV-1)
COR補正前 (x10-4)
COR補正後 (x10-4)
6.9
5.3
21
6.6
4.8
1.9
5.6
3.4
3.エレベーション角依存性
E0102-72, SN1006 NE BGD, Mrk 3, A2811 offset, NGC4388, MBM12 off Cloud について昼地球の縁からのエレベーション角 (DYE_ELV) によるXIS1のスペクトルと、太陽活動について調べた。
XIS1スペクトル (E<2keV)
N
O
E0102-72
DAY EARTH
0 < DYE_ELV < 5
5 < DYE_ELV < 10
10 < DYE_ELV < 20
20 < DYE_ELV < 30
’05 Aug
Solar X-ray Flux
SN1006
NE_BGD
’05 Sep
Mrk 3
’05 Oct
’05 Nov
A2811_offset
’05 Dec
NGC 4388
’06 Jan
(GOES12 databaseより)
MBM12
off Cloud
’06 Feb
l = 0.05 - 0.4 nm
l = 0.1 - 0.8 nm
Solar Wind data
(SOHOのCELIAS
Proton Monitorより)
http://umtof.umd.edu/pm/crn/
Proton
Speed
Proton
Density
Summary

スカイバックグランドは視野中心から離れるに従って減少し、8分角離れるとおよそ中心部分の80%に減少する。これは望遠鏡のVignettingの効果である。

スカイバックグランドはCORによって2倍以上変動する。そこで、CORによって補正を行い7つの観測についてスカイバックグランドの分散を調べた。結果、CORの補正によって各観測
での分散は減少し、その標準偏差はXIS0で5.3、XIS1は6.6、XIS2は1.9、XIS3は3.4 counts s-1 keV-1 であった。ここではCORを用いて補正を行なったが、PIN UDのカウントレートの
方が適しているとの報告(中本創 卒論)もあり、今後はPIN UDを使った補正を行なうことを考えている。

地球大気による太陽X線の散乱成分は昼地球の縁からの角度だけでなく、太陽活動にも依存している。しかし、太陽活動との相関を定量的に求めることは難しい。太陽X線の散乱成分
を確実に取り除くためには、観測毎に最適なエレベーション角を求める必要がある。