すざく衛星塔載XISの軌道上で の較正:検出効率 林田 清、Eric Miller、穴吹直久、勝田 哲、鳥居研一、並木雅章、田和憲明、 宮内 智文、内田裕之、常深 博(阪大理)、中嶋 大、山口弘悦、松本浩典、鶴 剛 (京大理)、馬場 彩(理研)、竹井 洋、堂谷忠靖(JAXA)、Mark Bautz、Steve Kissel(MIT)、国分紀秀(東大理)他 「すざく」XIS チーム JAXA提供 JAXA提供 MIT-LL CCID41 CCD with Charge Injection すざく搭載の4台のCCDカメラXISは、2005年8/12-8/13のファーストライト以降半年を越えた 現在も正常に動作し、様々な天体の観測を続けている。低エネルギー側での高いエネルギー分 解能はXISの特長のひとつで、実際、電離した炭素や酸素の輝線の検出から、多くの天体に関 して新たな知見がうまれつつある。しかしながら、打ち上げ後の時間とともに1keV以下の低エ ネルギー側で検出効率が低下する現象が発見され、観測効率の低下が避けられない状態になっ ている。現在、この現象はXISの可視光遮断フィルタに付着した炭素主体の物質による吸収に よるものと考えている。その時間変化、空間分布に関する現時点での理解をここで紹介する。 なお、付着物質を蒸発させるための安全な方策に関しても現在検討をすすめている。 XISの特長 Alumina Substrate Flexprint Torlon Standoffs Au coated Cu Heatsink 低エネルギー側検出効率の低下 1.低エネルギー側での高いエネルギー分解 能([email protected] for FI, [email protected] for BI)。レスポンスに テール成分がほとんどないことが特徴。 2.XMM-Newton衛星に準ずる大きな有効面積 3.低いバックグランドレベル。特に高エネ ルギー側、非X線バックグランドが効い てくるエネルギー範囲で、表面輝度の低 い天体の観測に有効 0.5keV単色X線入射に対するレスポン ス(XMM-Newton衛星のMOS,PNとすざく XIS FI,BIの比較 C-K edge ~0.3keV RXJ1856.5-3754の観測 RXJ1856は単独中性子星で、過去の複 数の衛星の観測で温度63.5eVの黒体 輻射スペクトルでよく近似できるこ とが知られていた。XIS1(BI)で 2005/10/24-26に観測したスペクトル (青十字)は、地上実験で決めたレス ポンス(黒実線)では再現できない。 0.15mmの炭素の吸収を導入すること で観測結果を説明できる(青実線) a: Based Cal on the Ground b: a x excess0.15mmC c: Dead Layer =Design Value d: c x excess0.15mmC *)0.3keV以下のデータを再現するために、XIS(BI)の不感層のモデ ルとして設計値を採用した E0102-72の観測 E0102-72はSMCにある超新星残骸で、過去の衛星でも多数回観測されている。 すざく衛星でも2005年8月から2006年2月の間に計5回観測され、打ち上げ後 の時間とともに低エネルギー側の検出カウントが減少していることが観測さ れた(下左図)。観測結果から吸収物質(炭素を仮定)の量を時間の関数と して評価したのが下右図。吸収物質の量がセンサーによって有意に2倍以上 異なること、吸収物質の増加がほぼlinearであったのが1月、2月の観測点で はそれまでの延長より下にあることがわかる。 JAXA提供 E0102-72.3のスペクトル(XIS ファーストライト) (低エネルギー側の特長を示す一例として)Cyg Loop (NE1)のスペクトル(XIS1,XIS0,XIS2,XIS3) 観測2005/11/23-11/24;総露出時間22ks OVIII NeIX NeX MgXI OVII 2005-08-13 2005-08-31 2005-12-16 吸収量の非一様性 2006-01-17 2006-02-02 Cyg-Loopの観測 シェル型超新星残骸Cyg-LoopのX線放射はXISの視野より大きくひろがって いる。0.3keVより下のバンド(C-band)と0.3keVより上のCVIバンドのカウン ト数の比をとることで、炭素主体の吸収物質の非一様性が推定できる。 (下右図;XIS1(BI)についてのカウント数比マップ;2箇所の観測位置で) 中心部に対して視野の縁で吸収物質量が約1/2であることがわかった。 PKS2155の観測 過去の衛星の観測からなめらかな連続成分をもつことが知られるblazar PKS2155の観測スペクトルから吸収物質に含まれる炭素以外の物質の量を評 価した。吸収物質には酸素が存在するものの炭素に対して6%,12%という値に なっている。RXJ1856の観測結果からは11%以下とい上限値が得られている。 CVI-band C-band 地球大気からの蛍光X線の観測 Color code is adjusted for each map 太陽X線でてらされた地球大気から窒素や酸素の蛍光X線が発生し、XISの 視野に混入する。窒素の蛍光X線のXIS視野内での強度分布は、打ち上げ当 初は中央部で高く、時間を経ると周辺部で高くなっていることがわかる。 吸収物質を時間、視野中心からの関数でモデル化する作業をすすめている。 N-K (0.39keV) 吸収物質の起源と対策 O-K DAY EARTH (0.52keV) 0 < DYE_ELV < 5 5 < DYE_ELV < 10 10 < DYE_ELV < 20 20 < DYE_ELV < 30 2005-8-13 2005-9-4 2005-10-22 2005-11-28 2005-12-24 2006-2-6 XIS1(BI) XIS3(FI) N_C(1e18cm^-2) 2.4+/-0.030 4.4+/-0.098 N_O(1e17cm^-2) 1.4+/-0.29 5.4+/-0.55 N_O/N_C 0.059+/-0.012 0.12+/-0.013 XIS1(BI) NH(Gal)*N_C*Pow NH(Gal)*N_C*N_O*Pow N-K line XIS3(FI)NH(Gal)*N_C*Pow NH(Gal)*N_C*N_O*Pow QE model(BI;XIS1) QE model(FI;XIS2) OBF 1 Day Earth 0 < DYE_ELV < 5 5 < DYE_ELV < 10 0.1 0.2 10 < DYE_ELV < 15 [Central 6mm radius count rate] / [Outer area count rate] N-K line O-K line 15 < DYE_ELV < 20 20 < DYE_ELV < 25 左図は、窒素、酸素輝線について中心部のカウント 数を周辺部のそれでわった値を示している。中心部に比べ て、周辺部の吸着物質の増加量が少ないこと(2.5x10-3 mm/dayに対して1.6x10-3 mm/day)、初期の傾き(ピンクの 破線)に比べて最近の傾きは緩やかであることがわかる。 Time(sec) DEHP 200nm 2.2g/cc DEHP 400nm 2.2g/cc NH=2e20 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.80.9 1 Ex(keV) 吸収物質の起源と対策 観測結果をもとに様々な可能性を検討した結果、XISのカメラに装備されてい る可視光遮断フィルタ(OBF)の表面に炭素主体の物質が付着したのが、検出効 率低下の原因だと考えている。吸着量の非一様性の原因がOBFの温度分布を反 映しているとすると、OBF全体の温度を上昇させることで付着した物質を蒸発 させられる可能性がある。現在、地上実験を含めた様々な視点からの検討を すすめ、原因のさらなる追究と安全な対抗策を追求している。 一方、観測データの解析のための吸収物質のモデル化を並行してすすめて いる。このポスターで紹介したように、モデル化の作業について方針は確立 している。
© Copyright 2025 ExpyDoc