検索系の処理

環境情報解析
第3回 空間情報の処理
(検索・操作・分析)
参考文献:入門地理情報システム(J.Star, J. Estes著) など
空間データの処理
検索系の処理
データ内をただ単に探す処理。(データの加工を伴わない処理)
解析系の処理
処理の結果として定量的な値が獲得できる処理。
解析系の場合、処理のためにデータの再加工を伴う、
あるいは処理の結果としてデータが再加工されることがある。
(操作・分析)
検索系の処理
a)位置による属性の検索、属性による位置の検索
地図上で位置を指定するとその位置の情報が獲得できる、
という処理。 逆に属性に対して何らかの条件を与えてやり、
その位置を獲得できる処理がこれにあたる。ただしこの処理
を行う前提として、地図のデータと属性データが相互参照でき
るような仕組み、あるいはデータ構造になっていることが必要
とされる。
b)位置関係を元にした検索
例えば「ある駅から半径500m以内のコンビニのリスト」や、
「公示地価の各ポイントからの最寄駅」を検索する処理。
このような検索を行うためには、距離を測ることができる
地図を利用していること、つまり地図の図形に対して定量
性が保証されているようなデータを使用していることが前提
となる。
地図・属性間検索
関係付けされている
地図
属性
「GISセミナー資料」より
(東京大学空間情報科学研究センター)
検索例
~23区から40Km以内の市区町村~
「GISセミナー資料」より
(東京大学空間情報科学研究センター)
操作と分析
(解析系の処理)
操作:
・ある目的のために対象物(ここでは空間データ)
を扱うこと。
・空間データから非空間データ(統計値など)を
作成すること
・原データから新たな情報を作り出すこと
分析:
・現象の背後にある普遍的原理の発見
針葉樹
(1)再分類と統合
針葉樹
例) 分類カテゴリーの再編
ヒノキ
広葉樹
b)再分類後の樹種分布
カラマツ
ブナ
a)樹種分布
針葉樹
広葉樹
c)余分な境界線を除去
例) 2つ以上のデータレイヤーの重ね合わせ
急勾配
岩
緩勾配
砂
平地
粘土
傾斜
土壌
「施工し易さ」の定義
平地
緩勾配
急勾配
岩
●
●
▲
砂
●
×
×
粘土
●
▲
×
「施工し易さ」の分布図
▲
×
●
●
例) 論理演算
論理和(OR)
A
B
排他的論理和(EOR・XOR)
A
B
論理積(AND)
A
B
否定
A
(2)空間統合
要素単位の大きさを変化させること
例) 2 x 2 pixel での統合
b)「多数決の原理」で統合
(決定規則)
a)元データ
:郊外
:都市
:混合
c)「混合」という新たな分類
を設けた場合
(3)空間操作
1)近隣操作(バッファリング)
バッファー:地図上の点、線、面などから一定の距離内
に含まれる領域
バッファー
2)ネットワーク解析
・ネットワークの結合及び近接性の評価
・最適経路の選択(距離、料金などをもとに判断)
・2点間の流動性解析
道路網
など
流路網
3)フィルタリング
局所的(隣接する)特性を利用した操作
ex. 平滑化(ノイズ除去),鮮鋭化(エッジ抽出),…
処理前
処理後
鮮鋭化の例
(http://www.imel1.kuis.kyoto-u.ac.jp/education/dip-arch/pic_send/sharp.html)
フィルタリング(空間たたみ込み)
カーネル(重み付け行列)
対象となるセル
近隣のセル
(3 x 3の「窓」)
平均化フィルタ
ローパスフィルタ(の例)
1/9 1/9 1/9
1/16 1/8 1/16
1/9 1/9 1/9
1/8 1/4 1/8
1/9 1/9 1/9
1/16 1/8 1/16
ハイパスフィルタ(の例)
メディアンフィルタ
[エッジ強調]
[ノイズ除去]
0
-1
0
-1
5
-1
0
-1
0
3x3内のメディアン
で置き換える
4)空間補間
限られた地点でのサンプリングデータから
空間的な分布状態を把握(推定)する方法
・ティーセン法
・逆距離重み付け法(IDW)
・スプライン補間
・クリギング法
ex. ポイントデータ → ラスタデータ
ティーセン法(ボロノイ分割)
・隣り合う母点間を結ぶ直線に垂直二等分線を引き、
各母点の最近隣領域を分割
(ティーセンポリゴン、ボロノイ領域)
・各領域内の値は母点の値と同じとする
ティーセンポリゴン
母点
ティーセン分割の例(富士川流域,降水量)
IDW
(Inverse Distance Weighting)
距離で重みをつけた平均値を対象地点の値とする
n
Zi 
Wij Z j
j 1
n
Wij
j 1
Wij:重み
i: 対象地点
j: サンプル地点
i
dij
計算手順
1) 距離に対してかける乗数wijを決定
ex. Wij=(1/dij) { or = (1/dij)2 }
2) 検索半径(どの範囲のサンプルを利用して
補間するか?)を決定
3) 検索半径内のサンプルに対して距離で重みを
つけた平均値を算出
j
IDWにおける検索範囲
①固定検索半径
対象セルから指定された半径内に
入るポイントを検索し,それらの
値を利用.
②可変検索半径
対象セルから最も近いポイントを
指定された分だけ検索し,それらの
値を利用.
(4)測定
ex. 距離、面積、体積の計算
5) 統計分析
統計値
:各属性(数値)の平均値,中央値,分散
ヒストグラム :各属性(数値)の領域内における分布
(度数分布)
極値 :領域内の最大値,最小値
相関解析 :属性(データレイヤー)間での相関
空間的な分布構造(空間相関)
など
6) モデル作成
入力
(空間情報など)
モデル
・物理的
・経験的
出力
例) 土壌浸食量予測モデル
入力
・降水量
・土壌浸食性
・斜面長さ,勾配
・土地被覆
・保全対策の程度
土壌浸食量
予測モデル
出力
・土壌損失