新しいカリキュラム(6) 現行の学習指導要領 「生きる力」:中学校

数学科教育論(8)
新しい学習指導要領:「活用力」
「学習指導要領」2008年改訂
中学:2011年度から実施
高校:2013年度から実施」
「活用力を重視」の新しいカリキュラム
文部科学省は,2008(平成20)年3月28日,現行の学習指導要領で掲げ
られた「ゆとり教育」で学力が低下したなどの批判に答える狙いで,主
要科目の授業を一割以上増やすことなどを柱とした次期の小・中学校
の学習指導要領を発表した。これは小学校が2011年度,中学校が
2012年度から実施されることを予定」
教育内容の主な改善事項:

(1) 言語活動の充実

(2) 理数教育の充実

(3) 伝統や文化に関する教育の充実
(4) 道徳教育の充実

(5) 体験活動の充実

(6) 外国語教育の充実

改善のポイント/中学校



基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着のため,発達や学年の段
階に応じた反復 (スパイラル)による指導を充実。(小・中学校で指導
内容を一部重複させるなど)
国際的な通用性,内容の系統性の確保や小・中学校の学習の円滑
な接続等の観点から,必要な指導内容を充実。(「資料の活用」を新
設し,統計に関する指導を充実など)
知識・技能を活用する力を育成し,学ぶことの意義や有用性を実感
できるよう,既習の数学を基にして数や図形の性質を見いだす活動
などの「数学的活動」を指導内容として学習指導要領に規定。
新しい授業時数:中学校
(1)必修教科
区分
(週当り時間数)
国語
社会
数学
理科
1年
140
(4)
105
(3)
140
(4)
2年
140
(4)
105
(3)
3年
105
(3)
385
(11)
全体
音楽
美術
105
(3)
45
(1.3)
105
(3)
140
(4)
140
(4)
140
(4)
385
(11)
385
(11)
保健
体育
技術
家庭
外国
語
45
(1.3)
105
(3)
70
(2)
140
(4)
35
(1)
35
(1)
105
(3)
70
(2)
140
(4)
140
(4)
35
(1)
35
(1)
105
(3)
35
(1)
140
(4)
385
(11)
115
(3.3)
115
(3.3)
315
(9)
175
(5)
420
(12)
新しい授業時数:中学校
(2)その他、授業時数
(週当り時間数)
その他教
科
道徳
特別活動
選択教科
総合的
学習
授業
総時数
1年
35
(1)
35
(1)
0
50
1015
(29)
2年
35
(1)
35
(1)
0
70
1015
(29)
3年
35
(1)
35
(1)
0
70
1015
(29)
全体
105
(3)
105
(3)
0
190
(3.4)
3045
(87)
目標について/中学校

数学的活動を通して,数量や図形などに
関する基礎的な概念や原理・法則に理解
を深め,数学的な表現や処理の仕方を習
得し,事象を数理的に考察し表現する能力
を高めるとともに,数学的な活動の楽しさ
や数学のよさを実感し,それらを活動して
考えたり判断しようとしたりする態度を育て
る。
現行の指導内容:生きる力
中学1年
(3時間)
中学2年
(3時間)
中学3年
(3時間)
A 数と式
• 正の数、負の数と
四則計算
• 文字を用いた式の
計算
• 一元一次方程式
• 文字式の四則計算
• 連立一元一次方程
式
• 正の数の平方根
• 式の展開、因数分解
• 二次方程式
B 図形
• 基本的な図形の作
図
• 空間図形
• 平面図形の性質
• 三角形の合同条件
• 三角形の相似条件
• 三平方の定理
C 数量
関 係
• 比例、反比例
• 一次関数
• 確率
• 関数 y= ax2
1999年改訂2003年度から施行
「生きる力」
「数学I」(3単位)必修
(1)方程式と不等式:数と式、一次不
等式
(2)二次関数:二次関数とそのグラ
フ、二次関数の値の変化
(2)図形と計量:三角比、三角比と図
形
「数学A」(2単位)
(1)平面図形:三角形の性質、苑の性質
(2)集合と論理:数号と要素の個数、命題と証明
(3)場合の数と確率:順列・組合せ、確率とその
基本的な法則、独立な試行と確率
「数学II」(4単位)
(1)式と証明・高次方程式:式と証
明、高次方程式
(2)図形と方程式:点と直線、円
(3)いろいろな関数:三角関数、指数
関数と対数関数
(3)微分・積分の考え:微分の考え、
積分の考え
「数学B」(2/4単位)
(1)数列:数列とその和、漸化式と数学的帰納法
(2)ベクトル:平面上のベクトル、空間座標とベ
クトル
(3)統計とコンピュータ:資料の整理、資料の分
析
(4)数値計算とコンピュータ:簡単なプログラ
ム、いろいろなアルゴリズム
「数学III」(3単位)
(1)極限:数列と極限、関数とその極
限
(2)微分法:導関数、導関数の応用
(3)積分法:不定積分と定積分、積分
の応用
「数学C」(2/4単位)
(1)行列とその応用:行列、行列の応用
(2)式と曲線:二次曲線、媒介変数表示と極座標
(3)確率分布:確率の計算、確率分布
(4)統計処理:正規分布、統計的な推測
A.数と式/活用力重視
第1学年
第2学年
第3学年
(1)正の数・負の数
・正負の数の必要性と意味
(数の集合と四則(高校から移行))
・正負の数の四則計算
(2)文字を用いた式
・文字を用いることの必要性と意味
・文字式の乗法と除法の表し方
・一次式の加法と減法の計算
(不等式を用いた表現(高校から一部
移行))
(3)一元一次方程式
・方程式及びその解の意味
・等式の性質と一次方程式の解き方
・一元一次方程式を活用すること
(比例式)
[用語・記号]
自然数 符号 絶対値 項 係数
移行 ≦ ≧
(1)文字を用いた式の四則計算
・整式の加減,単項式の乗除の計算
・文字を用いた式で表したり読み
取ったりすること
・目的に応じた式の変形
(2) 連立二元一次方程式
・二元一次方程式とその解の意味
・連立方程式とその解の意味
・連立方程式を解くことや活用す
ること
[用語・記号]
同類項
(1)平方根
・平方根の必要性と意味
(有理数・無理数(高校から一部移
行))
・平方根を含む式の計算
・平方根を用いること
(2)式の展開と因数分解
・単項式と多項式の乗法と除法の計
算
・簡単な式の展開や因数分解
・文字を用いた式で数量関係をとらえ
ること
(3)二次方程式
・二次方程式とその解の意味
・二次方程式を解くこと
(二次方程式の解の公式(高校から
移行))
・二次方程式を活用すること
[用語・記号]
根号 有理数 無理数 因数 √
B.図形/活用力重視
第1学年
第2学年
第3学年
(1)平面図形
・基本的な作図の方法とその活用
・図形の移動(平行移動,対称移動,
回転移動)
(2)空間図形
・直線や平面の位置関係・空間図形
の構成と平面上の表現
(投影図)
・扇形の弧の長さと面積,柱体や錐体
及び球の表面積・体積
(球の表面積・体積(高校から移行))
[用語・記号]
弧 弦 回転体 ねじれの位置
π // ⊥ ∠ △
(1)平面図形と平行線の性質
・平行線や角の性質
・多角形の角の性質
(2)図形の合同
・平面図形の合同と三角形の相似
条件
・証明の必要性と意味及びその方法
・三角形や平行四辺形の基本的な性
質
[用語・記号]
対頂角 内角 外角 定義 証明
逆 ≡
(1)図形の相似
・平面図形の相似と三角形の相似条
件
・図形の基本的な性質
・平行線と線分の比
・相似な図形の相似比と面積比
・体積比
(相似な図形の相似比と面積比,体
積比(高校から移行))
・相似な図形の性質を活用すること(2
)円の性質
・円周角と中心角の関係(証明,活
用)(中2から移行)
(円周角の定理の逆(高校から移行)
)
(3)三平方の定理
・三平方の定理とその証明
・三平方の定理を活用すること
[用語・記号] ∽
C.関数/活用力重視
第1学年
第2学年
第3学年
(1)比例,反比例
・関数関係の意味(中2から移
行)
・比例,反比例の意味
・座標の意味
・比例,反比例の特徴
・比例,反比例を用いること
[用語・記号]
関数 変数 変域
(1)一次関数
・一次関数の意味
・一次関数の特徴
・二元一次方程式と関数
・一次関数を用いること
[用語・記号]
変化の割合 傾き
(1)関数 y=ax2
・関数 y=ax2の関係
・関数 y=ax2の特徴
・関数 y=ax2を用いること
・いろいろな事象と関数(高校か
ら移行)
[用語・記号]
D.資料の活用/活用力重視
第1学年
第2学年
第3学年
(1)資料の散らばりと代表値(高
校から移行)
・ヒストグラムや代表値の必要
性や意味
・ヒストグラムや代表値を用いる
こと
(近似値や誤差等を含む)
[用語・記号]
平均値 中央値 最頻値
相対度数 範囲 階級
(1)確率
・確率の必要性と意味及び確
率の求め方
・確率を用いること
(1)標本調査(高校から移行)
・標本調査の必要性と意味
・標本調査で母集団の傾向をと
らえ説明すること
[用語・記号]
全数調査
数学的活動




数学的活動の指導にあたっては:
(1)数学的活動を楽しめるようにするとともに,数学を学習すること
の意義や数学の必要性などを実感する機会を設けること
(2)自ら課題を見いだし,解決するための構想を立て,実践し,その
結果を評価・改善する機会を設けること
(3)数学的活動の過程を振り返り,レポートにまとめ発表することな
どを通して,その成果を共有する機会を設けること
改訂に伴う移行措置





平成21年度から可能なものは先行して実施。
小学校は平成23年度から、 中学校は平成24年度から新しい学習指導要領
を全面実施。
算数・数学及び理科については、新課程に円滑に移行できるよう、移行措置
期間 中から、新課程の内容の一部を前倒しして実施。(授業時数の増加も
前倒し実施)
これに伴い、小学校では、総授業時数を各学年で週1コマ増加。 (中学校
は、選択教科等の授業時数を削減するため、総授業時数は変更なし)
新課程の前倒しに伴い、現在の教科書には記載がない事項を指導する際
に必要 となる教材については、国の責任において作成・配布。
新しい数学内容/高校数学Ⅰ、A
数学Ⅰ(3単位)
数学A(2単位)
(1)数と式:数と集合(実数,集合),式(式
の展開と因数分解,一次不等式)
(2)図形と計量:三角比(鋭角の三角比,鈍
角の三角比,正弦定理・余弦定理),図形
の計量
(3)二次関数:二次関数とそのグラフ,二次
関数の値の変化(二次関数の最大・最
小,二次方程式・二次不等式)
(4)データの分析:データの散らばり,デー
タの相関
[用語・記号]正弦,sin,余弦,cos,正接,
tan
(1)場合の数と確率:場合の数(数え上げの
原理,順列・組み合わせ),確率(確率とそ
の基本的な法則,独立な試行と確率,条
件付き確率)
(2)整数の性質:約数と倍数,ユークリッド
互除法,整数の性質の活用,
(3)平面図形(三角形の性質,円の性質,
作図),空間図形
[用語・記号]nPr,nCr,階乗,n!,排反
(課題学習)
新しい数学内容/高校数学Ⅱ、B
数学Ⅱ(4単位)
数学B(2単位)
(1)いろいろな式:式と証明(整式の乗法・除法,
分数式の計算,等式と不等式の証明),高次
方程式(複素数と二次方程式,因数定理と高次
方程式)
(2)図形と方程式:直線と円(点と直線,円の方程
式),軌跡と領域
(3)指数関数・対数関数(指数の拡張,指数関数
とそのグラフ),対数関数(対数,対数関数とそ
のグラフ)
(4)三角関数:三角関数(三角関数とそのグラフ,
三角関数の基本的な性質),三角関数の加法定
理
(5)微分・積分の考え:不定積分と定積分,面積
[用語・記号] 虚数,i ,累乗根,logax ,極限値,
lim
(1)確率分布と統計的な推測:確率分布(確率変
数と確率分布,二項分布),正規分布、推測的
な統計(母集団と標本,統計的な推測の考え)
(2)数列:数列とその和(等差数列と等比数列,い
ろいろな数列),漸化式と数学的帰納法(漸化式
と数列,数学的帰納法)
[用語・記号] Σ
(3)ベクトル:平面上のベクトル(ベクトルとその演
算,ベクトルの内積),空間座標とベクトル
新しい数学内容/高校数学Ⅲ、数学活用
数学Ⅲ(5単位)
数学活用(2単位)
(1)平面上の曲線と複素数平面:平面上の曲線
(直交座標による表示,媒介変数による表示,
極座標による表示),複素数平面,(複素数の図
表示,ド・モアブルの定理)
(2)極限:数列とその極限(数列の極限,無限等
比級数の和),関数とその極限(合成関数と逆関
数,関数値の極限)
(3)微分法:導関数(関数の和・差・積・商の導関
数,合成関数の導関数,三角関数・指数関数・
対数関数の導関数),導関数の応用
(4)積分法:不定積分と定積分(積分とその基本
的な性質,置換積分法・部分積分法,いろいろ
な関数の積分),積分の応用
[用語・記号] 焦点,準線,∞,自然対数,e,第
二次導関数,変曲点
(1)数学と人間の活動:数や図形と人間の活動,
遊びの中の数学
(2)社会生活における数里的な考察:社会生活
と数学,数学的な表現の工夫,データの分析
改訂のポイント






(1)学習内容の改善・充実
◎ 「数と式」「図形」「関数」「資料の活用」の4領域構成,また,あたらに「数学的
活動」を指導内容として規定。
◎ 小・中学校で指導内容を一部重複させること(例,文字式等)により,基礎的・
基本的な知識・技能を確実に定着させること。
◎ 既習の関連する内容を再度取り上げ,学び直しの機会を設定することにより,
基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させること。(スパイラル方式の指導)
第3学年で新しく加わった内容:有理数・無理数[H元年],二次方程式の解の公式
[H元年],相似な図形の面積比・体積比[H元年],円周角の定理の逆[H元年],い
ろいろな事象と関数[H元年],標本調査[H元年]
第1学年で新しく加わった内容:数の集合と四則 [H元年],図形の移動(平行移動
,対称移動,回転移動)[H元年],投影図[H元年],球の表面積・体積[H元年],資
料の散らばりと代表値[H元年],不等式を用いた表現([H元年]は2年生の一元一
次不等式で指導)
改訂のポイント/学習内容の改善・充実
◎ 「数と式」「図形」「関数」「資料の活用」の4領域構成,また,あたらに「数
学的活動」を指導内容として規定。
◎ 小・中学校で指導内容を一部重複させること(例,文字式等)により,基
礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させること。
◎ 既習の関連する内容を再度取り上げ,学び直しの機会を設定すること
により,基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させること。(スパイラル
方式の指導)
第1学年で新しく加わった内容:数の集合と四則 [H元年],図形の移動(平
行移動,対称移動,回転移動)[H元年],投影図[H元年],球の表面積・体積
[H元年],資料の散らばりと代表値[H元年],不等式を用いた表現([H元年]
は2年生の一元一次不等式で指導)
第3学年で新しく加わった内容:有理数・無理数[H元年],二次方程式の解の
公式[H元年],相似な図形の面積比・体積比[H元年],円周角の定理の逆[H
元年],いろいろな事象と関数[H元年],標本調査[H元年],
改訂のポイント/言語力の育成/活用力の重視
◎ 新設の「数学的活動」において,「既習の数学
をもとにして,数や図形の性質を見いだす活動」
,「日常生活や社会で数学を利用する活動」,「数
学的な表現を用いて,根拠を明らかにし筋道を立
てて説明し伝え合う活動」等を規定。
◎ 各内容の特質に応じ,「具体的な場面で活用す
ること」,「説明すること」を新たに規定。
終わり