第12章 核酸とATP

何が遺伝子か
● ウイルスの構成要素: タンパク質と核酸だけ;
どちらが遺伝子か?
● 遺伝子: DNA(デオキシリボ核酸); 全細胞に含まれる
● 従来の説 植物: 1つの体細胞 ⇒ 1つの個体
哺乳類: 子孫を残せるのは生殖細胞だけ
● 1997年: 体細胞の核酸からクロ-ン羊が作られる
2001年: ヒトのクローン卵子の細胞分裂
2006年: 人工多能性幹細胞; 受精卵使わず分化万能細胞
●DNAの情報: タンパク合成
タンパク質以外のもの(糖や脂肪等): 酵素反応で合成
●酵素はタンパク質
⇒ タンパク質以外の物質の遺伝情報もDNAで
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タンパク質の合成経路
タンパク質は遺伝子
の情報で作られる
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遺伝子をめぐる話題
●ヒトの遺伝子数: 約2万個余り(イネ科の植物より少ない)
タンパク質数: 約10万種
→ 1つの遺伝子が 3~4個のタンパク質に対応
●ヒトの遺伝情報: 99.9%は共通
0.1%違いで、 髪や目の色など属性が決まる
●ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いは1.2%
●チンパンジーになくてヒトにだけにある遺伝子: ない
●チンパンジーありヒトにない遺伝子群: 四
● 蝿とヒトの遺伝子も約8割同じ。ウニ(下等生物?)とは70%が共通。
●脳の容積:
初期の原人: 類人猿と大差ない
ネアンデルタール人や現代人: その2~3倍
●CMAH(遺伝子): 動物では人間にだけない
これが突然変異で失われた時期に、脳の大型化が始まった。
ネアンデルタール人にもない → 脳成長抑制遺伝子?
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人類の進化と生活域
人類は700万年前に類人猿の祖先から分化
現生人類(ホモ・サピエンス)は20万年前にアフリカ
に出現
核酸の構造
核酸塩基は4種類ある
コドン(3個の核酸塩基の
組合せ)でアミノ酸を指定
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DNA(遺伝子)
●タンパク質合成でのアミノ酸の指定:
4種類の核酸塩基の内の3個の組み合わせ
●微生物から高等動物まで同じ ⇒ 全生物が1つの原
始生命体から分化?
●DNA: 20世紀最大の発見
●対応する2本の鎖(二重ラセン):
遺伝情報の伝達、安定性向上
●DNAの損傷: 遺伝や生体機能の障害(癌)
●日光消毒: 紫外線による細菌のDNAの損傷
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DNAの複製
・・・・・ 水素結合
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遺伝子操作
●遺伝情報の表し方は全生物で共通
⇒人間と植物や微生物の間でも遺伝情報の
交換が可能
●例: 大腸菌にインシュリン、ヒト成長ホルモン、
インタ-フェロンなどを作らせる
●遺伝子組み換え食品の問題点: 目的のタン
パク質以外のタンパク質もできる ⇒ 安全性
の確認が難しい
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雄と雌の存在理由(結婚の生物的価値)
●DNA:安定性が高い
●紫外線、放射線、化学物質などで損傷
⇒ 健全なもう一方をもとに修復可
●交配:
●DNAに修復不能部分 ⇒ 雄と雌のDNAの健全な
部分の組合わせ ⇒ 健全なDNA ⇒ 種の絶滅を防ぐ
●DNAの交差(混合再配列) ⇒ 多様な遺伝子 ⇒ 環
境変化への対応力向上
(●環境が厳しくなると: 無性生殖 ⇒ 有性生殖)
●DNAが変化したまま ⇒ 突然変異 ⇒ 生物の進化
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“RNAワ-ルド”から“DNAワ-ルド”へ
●タンパク質合成: 酵素が必要
●DNA: 酵素なしには何もできない
●RNA: 1本鎖 ⇒ 変異が速い
●レトロウイルス(エイズなど): 遺伝子がRNA
⇒ ワクチンを作りにくい
●一部のRNA: 遺伝情報+触媒作用 ⇒ タンパク合成 ⇒
(自己複製可: 危険) ⇒ 生物はRNA分解酵素をもつ
●“RNAワ-ルド” : 偶然に誕生したRNA ⇒ 多様なRNA
●“DNAワ-ルド”: 遺伝情報は安定なDNA、
タンパク合成はRNA
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遺伝子診断
● 遺伝子診断: DNA解析 ⇒ 胎児の遺伝的素
質 ⇒ 新しい優性学
● ヒットラ-の優性学: 劣等なユダヤ人の絶滅
● アメリカでの調査: 「肥満遺伝子をもっていると分
かれば中絶する」と答えた女性が30%
● 保険会社: 遺伝子診断の結果を知る権利を主張
● 結婚相手の遺伝子診断の結果を知りたい?
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病気の環境要因と遺伝要因
肥満にも、環境要因だけでなく、50種類以上の遺伝子が関係。
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好気性生物の出現
● 酸素がなかった時代: 生物は嫌気性生物だけ。
● 光合成生物の出現 ⇒ 酸素の放出
● 海: Fe2++O2 ⇒ Fe3+ (鉄鉱石: Fe2O3)( O2の消費)
Fe2+ がなくなる ⇒ 大気中のO2増加 ⇒ 3-4 億年前
に現在とほぼ同濃度
● 嫌気性生物の大絶滅 ⇒ 酸素呼吸をする生物の優位
問題 光合成では酸素が放出される。しかし、ここ数億年間
大気中の酸素濃度はあまり変わっていない。なぜか。さ
らに、大気中の酸素濃度が高まるための条件を述べよ。
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炭素原子の循環
CO2:炭素原子の大気中で最も安定な形 → 他のものに変え
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るのにはエネルギーが必要 → 処理して除くのが困難
ATP⇒ADPでのエネルギー発生
ここで加水分解される
→ ADP
ADP
ATP
ATP → ADP でエネルギー(7.3 kcal/mol)が発生
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酸素呼吸の優位性
● エネルギー発生:
ATP + H2O → ADP+H3PO4 + 30KJ(7.3Kcal)
● 呼吸: ブドウ糖+6O2→→6CO2+6H2O+38ATP
● 発酵:
ブドウ糖 →2乳酸+2ATP
ブドウ糖 →2エタノール+ 2CO2+ 2ATP
醗
酵
(
嫌
気
性
)
● 酸素呼吸は、エネルギー源の利用効率を 20 倍近く高
めた。
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醗酵と腐敗
● 醗酵:人間に有益な場合:
醗酵食品(酒類、味噌、醤油、納豆、ヨ-グルト、パンな
ど)
●腐敗:悪臭等で人間が嫌悪感をもつ場合:
腐敗臭は、危険を知らせるシグナル
●醗酵と腐敗も、酸素のない状態で、微生物が有機物を分
解してATPを得るプロセス
(生成物が有害な例:
酵母は醗酵でできる15%以上のエタノールで死ぬ)
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ATPの使われ方
● ATP : 高エネルギ-物質: エネルギ-の通貨
● ATP → ADP : 発生エネルギ-の
60%が仕事、 40%が熱(体温の維持)
● ナトリウム-カリウムポンプによる物質移動
(ATP消費量の約 1/3 )
Na+
K+
細胞内(赤血球)
1
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周囲の体液中
10 (濃度比)
1
● Na+ と K+ 細胞膜内外間での濃度差
⇒ 情報伝達、脳の働き
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脳でのATP
● ADP⇒ATP には、O2 が必要
● 大脳: 1日に体重くらいのATPを消費
(全酸素の 20 %を消費)
● 大脳のATP量は約1g
⇒ ATP⇌ADPが1万回/日(6秒間隔)
⇒ 酸素濃度が低いとATPができない
⇒ 急速な意識喪失
● 脳のエネルギ-源は、ブドウ糖だけ。
脳で全エネルギ- の 1/4 (血糖の8割)を消費
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ATPと料理
● 運動: ATPをエネルギ-源にしたタンパク質の滑り
● 死後硬直: ATPがないので筋肉での滑りが起こらない
● タンパク質分解酵素でタンパク質が分解
⇒ また軟らかくなる。
● 洗い: 鮮度のよい魚肉を薄切りにして冷水で洗う ⇒
ATPの流出 ⇒ 筋肉が硬直しコリコリした歯ごたえ
●鰹節: 猛スピ-ドで泳ぐ鰹には、ATPが多い ⇒ 多量
のイノシン酸(ATPの分解生成物: 旨味物質)ができ
る ⇒ 「だし」がよく出る
● 死後硬直が解ける頃にイノシン酸が最も多くなる
(歯ごたえは弱くなる)
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1分子の合成に必要なATP数
生合成に使われるATPの 88%がタンパク質の合成に使われ
る。
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ATPの働き
● 細胞膜を通した物質の輸送(ポンプなど)
● 情報の伝達
● 筋肉運動などの力学的仕事
● 生体物質を作る生合成
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炭素原子の循環
(
エ
ネ
ル
ギ
ー
光
合
成
CO2消費量=発生量
太
陽
エ
ネ
ル
ギ
ー
)
CO2:炭素原子の大気中で最も安定な形 → 他のものに変え
るのにはエネルギーが必要 → 処理して除くのが困難
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